日本の周辺国が装備する兵器のデータベース


▼59-I式。2本のアンテナを備え、防盾右部にレーザーレンジファインダー、左フェンダー上部に赤外線サーチライトが増設されているのが59式との識別点。


▼HEAT弾対策に車体側面にサイドスカート、砲塔側面にスラットアーマーを装着した59-I式。


■"59-I式中戦車性能緒元"
全備重量36.3トン
全長9.239m
車体長6.002m
車体長6.04m
全幅3.320m
全高2.218m(砲塔頂部)、2.59m(機銃含む)
エンジン12150L水冷ディーゼル 520hp
最高速度50km/h
燃料搭載量812L
航続距離420〜440km(車内燃料のみ)、600km(増加タンク付き)
渡渉深度1.4m
武装59式56口径100mmライフル砲×1(34発)
 54式12.7mm重機関銃×1(500発)
 59式7.62mm機関銃×2(3,000発)
戦車砲俯仰角-4〜+17度
装甲150〜203mm(砲塔)/79〜97mm(車体前面)
乗員4名

開発経過
中国では59式中戦車の量産化によって、戦車の自給体制を実現することに成功したが、その直後中ソの路線対立により、ソ連はすべての軍事支援を打ち切ることになった。これは、全面的にソ連の援助に依拠していた中国兵器産業にとっては極めて重大な事態であった。さらに、文化大革命による政治的混乱は兵器産業にも影を落とし、兵器産業全体の停滞をもたらすことになった。

59式中戦車もその影響を免れることは出来ず、1970年代末まで装備の近代化も施されること無くほとんど原型のまま生産が継続されることになった。59式中戦車は、その登場時点では世界各国の戦車と比べても遜色の無い性能を有していた車両であったが、1970年代末には各国の戦車と比べて旧式化は明白なものになっていた。砲安定装置を垂直/水平軸安定式に換装(59式(双穏)中型坦克)したり、レーザーレンジファインダーを搭載したタイプも登場していたが、その生産数は一部に留まった。

1979年に勃発した中越紛争で59式中戦車を運用した装甲部隊からは、59式に関して照準装置の旧式化、夜間戦闘能力の欠如、被弾時に容易に二次爆発を起こしやすい等、多数の問題点があることが提示された。この戦訓を受けて、59式中戦車初の本格的な改良型を開発することが決定された。改良型の生産番号はWZ-120Aの名称が与えられた。1984年には試作車両の試験が完了し、「59-I式中型坦克」として制式化された。

59-I式の改良点について
59-I式の開発の主眼は、命中精度の向上、防御能力の改善、機動力の向上に置かれた。

まず、命中精度の改善では59式(双穏)中型坦克で採用された水平/垂直二軸の砲安定装置を採用、旧式のスタジアメトリック式照準器に換えて73式レーザーレンジファインダー(またはS-83-II、82式「揚州」を搭載した車両も有る。)と自動計器より構成された簡易射撃統制システムを採用した。主砲防盾右側に搭載されたレーザー照準装置は、S-83-II の場合300〜5000mの照準能力を有し、照準精度は+−10度、1分間に7回照準が可能。レーザー照準装置の採用により、59-I式は照準精度を大幅に向上させることに成功した。ただし、射撃統制システムとしての自動化はまだ十分では無く、発射速度の劇的な向上や完全な行進間射撃の実現までは達成し得なかった。

59式は操縦手席だけに暗視装置が装備されていたが、実戦では視認距離が短く夜間の操縦は危険であるとの訴えがなされた。また、車長や砲手には暗視装置が無かったため、夜間の射撃は困難であった。これを受けて、夜間戦闘力の強化として、レーザー照準器側面と車長用キューポラに新たに赤外線サーチライトが搭載され、車長用ペリスコープと砲手用ペリスコープ(MK-4に換えてPKN-1砲手用暗視サイトを装備)に赤外線検出機能が組み込まれた(未改修の車両も有り)。砲手用ペリスコープの夜間最大視認距離は800m、倍率は7倍。車長用ペリスコープは昼間の倍率5倍、夜間の視認距離は400m。操縦手の暗視装置には変更は無かったが、車体前方の左側フェンダー上部に新たに80wの6610型赤外線ヘッドライトが追加装備され、赤外線照射量を増やしたことで夜間の視認距離を延伸することに成功した。

59-I式には19箇所に上る改修が加えられたが、その多くが現場の搭乗員から指摘された人間工学的な問題に配慮した改良であった。以下に主な改良点について記載する。

まず12.7mm重機関銃と7.62mm機関銃の弾倉の装弾補助装置が標準装備された点である。これまでは、搭乗員が一発一発手作業で装填作業を行っていたが時間と手間を要し、乗員にとって辛い作業の1つであった。装弾補助装置の採用により、省力化、時間の節約に大きな効果があったとされる。

トランスミッションの操作に大きな力を要するのが59式の問題であったが、59-I式では操縦系統に油気圧パワーステアリング機能が組み込まれたことで、操作性は大いに改善された。また、寒冷地の凍結・積雪地帯でのスリップを防ぐため、着脱式のスパイクが標準装備とされた。この装置の登場以前は、走行前に凍結地帯に適した履帯の張度の調整を行い、走行後は数時間かけて重い履帯を張り直す必要があり、搭乗員にとって大きな悩みの1つとなっていた。

59式では、エンジンの起動用にバッテリーと圧縮空気ボンベ1本を用意されていたが、実際の運用ではバッテリーを消耗した上にボンベの空気を使い尽くすことが多発した。予備のボンベが無いことから、随伴戦車や支援部隊の助けなしには走行不能になる車両がしばしば発生した。これを受けて59-I式では、ボンベに圧縮空気の再充填装置を取り付け、砲の俯仰装置によって圧縮空気を製造する機構を採用した。これによって搭乗員はボンベの空気残量を心配することなく戦闘を行うことが出来るようになった。

中越紛争では、戦争慣れしたヴェトナム民兵により二本のアンテナを備えた指揮戦車が優先的に狙われて被害を出したことから、59-I式ではすべての車両が二本のアンテナ(指揮戦車でない車両のアンテナの内1本は偽物)を備えるようになった。また、被弾時に迅速な脱出が出来なかったことから、車体底部の脱出用ハッチを開閉しやすい形状のものに変更している。

信頼性の向上も、59-I式の開発で目指された改良点である。59式では、燃料系統のオイルや冷却水パイプの破損によりエンジンの焼け付きや発火がしばしば発生し、搭乗員にとっては深刻な悩みとなっていた。エンジンの状態については簡素な計器があるだけであり、事前にエンジンの不調を判断するのは困難であった。59-I式では、油気圧センサー、油気圧計、警報機、指示ランプ等が追加装備され、エンジンの状態やパイプの破損を即座に知ることが可能になった。

戦車は過酷な運用が行われるため、各部装置の消耗は通常の車両よりも激しい。そのため、装置の寿命について記録するのは戦車の搭乗員にとって重要な作業の1つである。59式の場合、装置の寿命をはかる装置は存在しないため、すべての機器について搭乗員が一々記録を付けておき、消耗具合に応じて交換する必要があった。59-I式では、エンジンの累計作動時間記録装置が搭載され、累計作動時間をすぐに把握することが可能となった。

59-I式の改良部分の多くは、ソ連のT-54譲りの人間工学軽視を改善するための物であった。59-I式の開発によって、戦車の戦闘力の向上のためには、人間工学への配慮が不可欠であることが広く認識されるようになった。これは、中国の戦車開発における1つの画期であるということが出来るだろう。本車の開発で得られた成果は、同時並行して開発が進展していた105mmライフル砲搭載型の59-II/59-IIA式戦車(59B式/WZ-120B)にも適応されている。

59-I式の改良は、上記の作業(第一期改装)の後も断続的に行われ、第二期改装型、第三期改装型の計3種類が存在する。また、防御力強化を図った試作車両も開発された。第二期、第三期の改良点は更なる防御性能の向上が中心であり、HAET弾対策として車体側面にサイドスカート、砲塔側面に柵状のスラット装甲を装着、車体や砲塔の前面にはモジュール式の複合装甲の取り付けが可能とされる改修が施された。59-I式は、新規生産されると同時に、既存の車両の一部にもオーバーホール時に所定の改修が施された。ただし、改装の度合いは車両によって異なり、上記の改装内容の一部のみが施された車両も見受けられる。59-I式は700両がイラクに輸出されているが、輸出向けの59-I式ではゴム製サイドスカートが標準装備となっている。

1980年代中期には、西側から導入した技術を元に中国が開発したAP100-II型100mmAPFSDS-T弾が新たに運用可能な砲弾に追加された。AP100-II型の砲口初速は1,415m/s、150mm/65度傾斜の均質鋼板を貫通する能力を有しており、最大射程は2,400mとされる。AP100-II型の実用化によって、ようやくBM-8 HVAPDS弾を使用するソ連のT-54/55に対する貫通力の劣勢を解消することが出来るようになった。

【59-I式派生型】
59-I式(第一期改装)WZ120A別名59A型。レーザー照準器やアクティブ赤外線暗視装置を装備。人間工学的な改善が施されたのも特徴。
59-I式(第二期改装)59-I式の改良型。
59-I式(第三期改装)59-I式の改良型。
59-I式(防御力強化試験型)モジュール式複合装甲やスラットアーマーを装備。
59-I式地雷処理型 マインプラウや地雷原処理用ロケットを搭載。

【参考史料】
「中国戦車開発史[1]」『月刊グランドパワー2004年6月号』(古是三春/ガリレオ出版/2004年5月25日)
「中国59式改進型中型坦克」『火力戦神-THERMODYNAMIC POWER 陸戦編【2】』(彭援朝編集/中国文聨出版社/2004年7月)
Jane's Armour and Artillery 2006-2007 (Jane's Information Group)
戦車研究室
青葉山軍事図書館
全国文化信息資源共享工程-「中国坦克発展之程」
坦克與装甲車両「中国59式中型坦克」
中国武器大全 「中国59式到88式主戦坦克的技術発展」
中国武器大全「中国坦克族譜」
中国武器大全「中国59式到88式主戦坦克的技術発展(上)(下)」
中華網「中国坦克之痛-59式主戦坦克編-」
「中日坦克工業50年発展対比與反思」
人民網「俄羅斯媒体評中国坦克業:仍受俄式坦克影響」
Chinese Defence Today
Global Security

その他の59式戦車近代化改修型
59式戦車125mm滑腔砲搭載型
59式戦車120mm滑腔砲搭載型
59DI/59D/59P式戦車(WZ-120C・D/ZTZ-59DI・D/アル・ズバイル2)
「ジャガー」戦車(美洲虎)【米中共同開発・試作のみ】
59-II/59-IIA式戦車(59B式/WZ-120B)
59式戦車(WZ-120/ZTZ-59/T-54)
中国陸軍

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