日本の周辺国が装備する兵器のデータベース


▼59-II式。レーザーレンジファインダーは未搭載で暗視装置は59-I式戦車(59A式/WZ-120A)水準(ただし砲手サイトは旧式のMK-4のまま)のタイプ。59-IIA式との識別点は戦車砲のサーマルスリーブの有無。

▼59-IIA式。防盾上部にレーザーレンジファインダーを装備したタイプ。波切り板右部にあったライトはフェンダー上部に移設されている。

▼59-IIA式。防盾上部にレーザーレンジファインダーを装備しないタイプ。サーマルスリーブの形状も数種類が存在する。ゴムパット付のダブルピン・ダブルブロック式履帯を装着している。(注)一枚目の車両は79式主力戦車の可能性もある。



▼最近登場した59-II式のアップグレード型。防盾上に新型レーザーレンジファインダーを搭載、砲塔上のベンチレーター直前には「北斗」衛星位置測定装置の受信器を装備。射撃統制装置も改造され新型弾道計算機や照準操作用液晶パネルが搭載された。主砲は79式105mm戦車砲のまま。(c)CCTV7



■"59-II式中戦車性能緒元"
全備重量36.2トン
全長9.235m
車体長6.002m
車体長6.04m
全幅3.320m
全高2.218m(砲塔頂部)、2.59m(機銃含む)
エンジン12150L(520hp)、もしくは12150L-7BW(580hp)
最高速度50km/h
燃料搭載量812L
航続距離420〜440km(車内燃料のみ)、600km(増加タンク付き)
渡渉深度1.4m
武装79式51口径105mmライフル砲×1(38発)
 54式12.7mm重機関銃×1(500発)
 59式7.62mm機関銃×2(3,000発)
戦車砲俯仰角-4〜+17度
装甲150〜203mm(砲塔)/79〜97mm(車体前面)
乗員4名

■"59-IIA式中戦車性能緒元"
全備重量36.5〜37トン
全長9.235m
車体長6.002m
車体長6.04m
全幅3.320m
全高2.4m(砲塔頂部)、2.59m(機銃含む)
エンジン12150L(520hp)、もしくは12150L-7BW(580hp)
最高速度48〜50km/h
燃料搭載量812L
航続距離420〜440km(車内燃料のみ)、600km(増加タンク付き)
渡渉深度1.4m
武装81A式51口径105mmライフル砲×1(37発)
 54式12.7mm重機関銃×1(500発)
 59式7.62mm機関銃×2(3,000発)
 4連装発煙弾発射機×2
戦車砲俯仰角-4〜+17度
装甲150〜203mm(砲塔)/79〜97mm(車体前面)。車体・砲塔前面にモジュール装甲の装着が可能。
乗員4名

開発経緯
59式中戦車の量産化によって戦車の自給体制を整えた中国であったが、その後のソ連との断行や文化大革命による国内の混乱によって、装甲部隊の近代化は長らく停滞を余儀なくされた。文革の終息と、小平による改革開放政策の実施により、1970年代末からようやく軍の近代化が本格的に推進されるようになった。

戦車大国であるソ連と直接国境を接する中国にとっては、1950年代末のレベルに留まっている装甲部隊の近代化は急務であった。次世代戦車の開発は1960年代から続けられていたが、技術的な立ち遅れや経済発展優先による国防予算の制限等により満足できる水準の戦車を実用化するには至らなかった。そのため、生産体制の整っている59式の量産を進めるとともに、59式中戦車の近代化によって、少しでもソ連との戦力ギャップを埋める事が求められるようになった。実際、59式の生産状況を見ると、1970年代初めまでが500〜700両、1979年1,000両、1980年500両、1981年600両、1982年1,200両、1983年1,500〜1,700両(ほか輸出向けに約3,000両を生産)となっており、生産のピークは1980年代であった事が分かる。

59式の近代化としては、59-I式戦車(59A式/WZ-120A)が1984年に実用化されたが、中国軍では59-I式の開発と並行して西側技術を導入した59式の改良型の開発に着手していた。中国は、アメリカとの関係改善を成し遂げた1970年代末から、西側各国の軍事技術の導入を積極的に推進するようになる。西側諸国にとっても、中国の軍事力の一定程度の近代化はソ連を牽制する上で好ましい事であり、多くの装備・技術の移転が行われるようになった。

戦車開発もその例外ではなく、様々な西側技術の導入が図られたが、その中でも中国軍が特に重視したのは当時の西側戦車の標準的戦車砲であったロイヤル・オードナンス製 51口径105mm L7戦車砲に関する技術であった。L7戦車砲を使用するイスラエル軍が、中東戦争でソ連製戦車を使用するアラブ諸国に対して大きな戦果を納めている事は、中国軍に大きな印象を与えていた。イスラエルは捕獲したT-54/55戦車にL7戦車砲を搭載する改造を実施しており、中国は同様の改造を59式中戦車に施す事で59式の火力強化を実現する事を目指すようになった。当時、イスラエルと中国は国交を樹立していなかったが、中国の兵器輸出市場としての潜在性を見越したイスラエルは秘密裏に技術協力を行う事を決定した。最終的に、L7戦車砲については開発国であるイギリスからライセンス生産権を購入、優れた装甲貫通力を有するAPFSDS-T弾と105mm砲の59式中戦車への取り付けについてはイスラエルの技術支援を、射撃統制装置についてはオーストリアの協力を得る事が決まった。

59式戦車にL7戦車砲を搭載するための準備作業は1979年に開始され、1980年から具体的な開発が開始された。 L7戦車砲搭載型59式中戦車にはWZ-120Bの生産番号が与えられた。改良の主要項目は、L7戦車砲の搭載による火力強化、通信設備の近代化、二次爆発対策として戦闘室への自動消火装置の搭載等が掲げられた。1980年3月には2両の試作車両(1両は通常型、1両は指揮戦車型)が完成した。4月から試作車を使用した性能実証試験が開始された。これによって得られたデータを基にして実用性を高めるための設計変更が施され、操縦系統の油気圧パワーステアリング機能や動力部の自動消火装置も新たに付与された。1981年には3両目の試作車が完成し、4月には設計作業が完了した。この後、増加試作車両の生産と部隊での運用試験を経て、1984年「59-II式中型坦克」として制式採用に漕ぎ着けた。

59-II式の改良点について
59-II式の開発は、同時期に開発が進められていた59-I式戦車(59A式/WZ-120A)の開発で得られた技術が取り入れられており、59-I式と共通する人間工学を配慮した改修が施されていた。59-II式独自の改良点としては、105mm砲の搭載、VRC-8000通信機の採用、自動消火システムの採用の3点がある。

59-II式の最大の特徴としては51口径105mm L7戦車砲の搭載をあげる事が出来る。イギリスからライセンス生産権を購入したL7は「79式105毫米線膛(ライフル)坦克炮」の名称で制式化された。使用できる砲弾はAPFSDS-T、APDS-T、HEAT-T、HESH-T等があるが、特にイスラエルから提供された技術を元に実用化された86式APFSDS-T弾は砲口初速1,600m/s、射程2,000mで装甲貫徹力460mmの性能を誇り、この砲弾の実用化により中国は懸案であった戦車砲弾の技術的立ち遅れを解消するに至ったといえる。

中国が運用している105mm砲弾については下記の表を参照。1990年代に入って、貫通力を強化した93式APFSDS-T弾や劣化ウランを使用したAPFSDS-T(DU)弾、ロシアから技術導入した砲発射式対戦車ミサイル(射程100〜5,000m)が新たに運用可能な砲弾に加わるようになった。ただし、GP-2を使うためには目標照射用のレーザー・デグジネーターを新たに装備する必要があり、全ての59-II式がGP-2を運用できるわけでは無い。
弾種弾頭重量総重量砲口初速装甲貫徹力
HE-T13kg24kg900m/s
86式APFSDS-T5.8kg23.51kg1,500m/s射程2,000mで460mm
93式APFSDS-T5.8kg23.51kg1,500m/s射程2,000mで540mm
APFSDS-T(DU)5.8kg17.5kg1,500m/s射程2,000mで600mm
HEAT-T10.5kg22kg1,100m/s距離に関わりなく460mm
GP-2砲発射式対戦車ミサイル不明17.8kg不明500〜600mm
【参照】
「中国戦車開発史[1]」『月刊グランドパワー2004年6月号』(古是三春/ガリレオ出版/2004年5月25日)
Chinese Defence Today
亜東軍事網「ZTZ-59DI主戦坦克」

59-II式は、車内の設計変更を行い、継戦能力の向上を意図して砲弾の搭載数を原型の34発から38発に増加させている。この105mm砲の高い威力を十全に発揮させるため、59-II式では新型の射撃統制システムを装備した。このシステムの開発ではオーストリアの企業の協力を受けており、2軸砲安定装置、レーザーレンジファインダー、弾道計算機等から構成されている。

59-II式は旧来のA-220無線通信機に換えてVRC-8000無線通信機を搭載している。VRC-8000は、電子妨害に強く、通信傍受に対抗して通信内容の暗号化を行った上で通信波を自動的に変更(2,000の通信波を自動選択)しながら通信を行う機能を備えた当時の先進的な戦車用通信機であった。通信距離もA-220の16kmから35kmに延伸されている。通常の59-II式はこの通信機を1台、59-II式指揮戦車型では2台を搭載している。指揮戦車型では、搭載スペースを確保するため砲弾搭載数が2発減少している。

中越紛争で59式中戦車が被弾後にしばしば二次爆発を起こした戦訓を受けて、59-II式では消火装置の能力向上が行われている。59-II式は、外国から調達した自動消火システムが戦闘室と動力部に搭載されている。このシステムは、車内各部に高感度の光学探知装置とマイクロ計算装置が設置して、被弾時の爆発や火炎を10ミリ秒以内に探知して60ミリ秒以内に自動消火装置を機動させて消火する。同システムは2度の二次爆発抑制、4度の車内火災鎮火能力を有している。自動消火装置の採用により、被弾後の二次爆発の危険性を減少させ、乗員の生存性を高める事が可能となった。

西側の史料では、59-II式はエンジンを512150L-7BW水冷ディーゼル(580hp)に換装したとされるが、中国側の59-II式に関する記述では59式と同じ12150L(520hp)を搭載しているとする記事も多い。そのため、本稿の性能諸元では、両論併記の形をとっている。

59-II式は1984年の国慶節(建国記念日)の軍事パレードでその存在が公にされた。このパレードに登場した59-II式はドイツのディール社製ダブルピン・ダブルブロック式履帯やゴム製サイドスカートを装着しており、L7戦車砲と合わせて中国に対する西側の軍事技術移転が進展している表れとして国際的な注目を浴びた。

59-II式の実用化は、中国軍にとって既存の59式の戦力を大幅に向上させる事を可能とするもので、西側諸国の第二世代初期の戦車に相当する性能を得る事に成功したとする事が出来る。中国軍では、59-II式の量産を行うとともに、既存の59式に対してもオーバーホールの際に59-II式に準ずる近代化改修を実施している。ただし、改良の度合いは車両によってかなりのバリエーションが確認されており、105mm砲への換装のみを行い射撃統制装置の近代化は実施していない車両も存在する。

59-IIA式の登場とその改良点について
59-II式の実用化は、中国の装甲部隊の戦力向上に大きな役割を果たすものであったが、中国軍ではそれに満足する事なく、59-II式に更なる改良を施す事を決定した。1984年、中国軍は59-II式の改良型「59-IIA式中型坦克」の研究開発を行う事を各機関に指示。59-IIA式の開発では、防御力と機動力の面での改善が主な開発目標とされた。

開発は1984年11月に開始され、1985年4月には設計案が完成した。同年10月に最初の試作車が完成し、性能試験とそのデータに基づく設計変更作業が繰り返された。1986年5月までに合計3両の試作車が完成し、内1両はマインプラウ等の地雷処理装置を搭載した地雷処理型であった。これらの車両は、部隊に送られて延べ6,000kmに及び走行試験、車両性能試験、信頼性試験、寒冷地や高温地帯での運用試験を受けた上で、要求性能を満たしている事が証明された。この結果を受けて、1988年4月、軍は「59-IIA式中型坦克」の制式採用を決定した。

59-IIA式は59-II式の発展型であり、基本的な性能には大きな変化は無い。施された改良の多くは、防御能力の向上を意図したものである。主な改良点については、以下の表の通り。
主砲の換装金属性サーマルスリーブを装着する等の改良を加えた81A式51口径105mmライフル砲に換装。砲弾搭載数は37発。
発煙弾発射機搭載砲塔側面に4連装発煙弾発射機×2を装備。発煙弾の最大射程は1,000m。幅60m、高さ8〜10mの範囲を覆う事が出来る。煙幕の持続時間は2分。
HEAT弾対策車体側面にサイドスカートを、砲塔後部に装備品ラックを兼ねたスラットアーマーを装着。
射撃統制装置の改良59-II式よりも反応時間を短縮、命中精度を向上させている。ただし、行進間射撃は困難で、停車-射撃-機動のパターンを取る。停止目標に対する照準時間は7秒、移動目標に対しては10秒。有効照準距離は停止目標に対して2,500m、移動目標に対して2,400m以上。
暗視装置の改善車長、砲手、操縦手の各サイトに微光増幅式のパッシブ式暗視装置を搭載。
モジュール装甲の装着車体前面と砲塔前面に着脱式の複合装甲モジュールの装着を可能とする。
推土板の装備車体前面下部に折畳み式の推土板を装備。約20分で戦車1両分の戦車壕を作る事が可能。

59-IIA式は、59-II式で達成された成果を元に、実用性や信頼性を高める方向で開発が進められた。その結果、配備された部隊からは、59式の特製である簡素な構造や安価さを失う事なく、現代戦に対応しうる戦力向上を成し遂げたと高い評価がなされた。部品の品質向上に努めたことや維持補修の便を考慮に入れた設計もあって信頼性の面についても高評価を得た。

59式シリーズの量産は1980年代で終了したため、新規生産車両としては59-II式シリーズが最後となった。しかし、1990年代に入っても59式に対して様々なアップグレードが施され多種多様な発展型が登場し続けることになる。その詳細については次項以降で扱う。

【59-II式・59-IIA式の派生型一覧】
59-II式WZ120B別名59B型。主砲を79式51口径105mmライフル砲に換装。新型射撃統制システムを搭載。
59-II式指揮戦車BW120B59-II式の指揮戦車型。VRC-8000通信機を2台装備。砲弾搭載数が3発減少している。
59-IIA式 59-II式の改良型。主砲を81A式51口径105mmライフル砲に変更。
59-IIA式指揮戦車 59-IIA式の指揮戦車型。CWT-176通信機を追加装備。砲弾搭載数が3発減少している。
59-IIA式地雷処理型 マインプラウや地雷原処理用ロケットを搭載。
名称不明(59-II式改造型)最近登場した59-II式のアップグレード型。防盾上に新型レーザーレンジファインダーを搭載、砲塔上のベンチレーター直前には「北斗」衛星位置測定装置の受信器を装備。射撃統制装置も改造され新型弾道計算機や照準操作用液晶パネルが搭載された。主砲は79式105mm戦車砲のまま。

【参考史料】
「中国戦車開発史[1]」『月刊グランドパワー2004年6月号』(古是三春/ガリレオ出版/2004年5月25日)
「中国59式改進型中型坦克」『火力戦神-THERMODYNAMIC POWER 陸戦編【2】』(彭援朝編集/中国文聨出版社/2004年7月)
Jane's Armour and Artillery 2006-2007 (Jane's Information Group)
亜東軍事網「ZTZ-59DI主戦坦克」
全国文化信息資源共享工程-「中国坦克発展之程」
坦克與装甲車両「中国59式中型坦克」
中国武器大全 「中国59式到88式主戦坦克的技術発展」
中国武器大全「中国坦克族譜」
中国武器大全「中国59式到88式主戦坦克的技術発展(上)(下)」
中華網「中国坦克之痛-59式主戦坦克編-」
「中日坦克工業50年発展対比與反思」
人民網「俄羅斯媒体評中国坦克業:仍受俄式坦克影響」
Chinese Defence Today
Global Security

その他の59式戦車近代化改修型
59式戦車125mm滑腔砲搭載型
59式戦車120mm滑腔砲搭載型
59DI/59D/59P式戦車(WZ-120C・D/ZTZ-59DI・D/アル・ズバイル2)
「ジャガー」戦車(美洲虎)【米中共同開発・試作のみ】
59-I式戦車(59A式/WZ-120A)
59式戦車(WZ-120/ZTZ-59/T-54)
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