日本の周辺国が装備する兵器のデータベース




600t級大型哨戒艇(700t級大型哨戒艇との名称も[1])は中国船舶重工集団公司(China Shipbuilding Industry Corp:CSIC)が輸出向けに開発した水上戦闘艦艇。艦分類は中国語では大型巡邏艇(もしくは巡邏艦)。英語では「Large Parole craft」もしくは「Large Parole Missile craft」と表記されることが多いが略称はいずれの場合も「LPC」が使用される[1][2][3][4][5]。バングラデシュではダッカ級LPCという表記を使用するサイトもある[2]。

2009年、CSICはバングラデシュ海軍向けに600t哨戒艇2隻の建造に関する契約を締結[1]。一隻あたりの建造費用は約5,000万ドル[1]。艦の設計はCSIO所属の第701研究所が担当。2隻の建造は武漢造船所で行われ、2011年8〜9月に進水、2012年12月には2隻そろってバングラデシュ海軍に引き渡され、一番艇は「ドゥジョイ(Durjoy)」(艦番号P811)、二番艇は「ニーマル(Nirmul)」(艦番号P813)と命名された[1][3][4]。三、四番艇は中国からの技術支援を受けてバングラデシュで建造されることが取り決められ、2016年12月29日には三番艇「ドュルガム(Durgam)」(艦番号P814)が進水式を行っている[7]。

バングラデシュ海軍では、600t級大型哨戒艇を近海での領海警備活動、漁業や海底資源の保護、排他的経済水域の監視任務、海上での法執行任務、海上救難活動などに使用する[3]。バングラデシュにとって、ベンガル湾での資源開発や領海をめぐる周辺国との緊張の高まりを背景に領海警備能力の向上は海軍の重要な課題となっており、中国からLPCを調達すると共にフリゲイト2隻の輸入について合意[5]、さらに自国でも250t級ミサイル艇6隻の建造に着手するなど海軍艦艇の整備が積極的に進められている[1]。

【性能】
600t級大型哨戒艇は、対艦ミサイルを装備しているが速力は28ktsとミサイル艇としては比較的低速で、主に領海の警備・哨戒任務に用いられることを想定している。船体サイズはミサイル艇としては比較的大型の部類に属し、コルベットにも分類可能なサイズとなっており、領海警備任務に必要な良好な航洋性能を確保している。同艦の設計はパキスタンに輸出されたアズマット級ミサイル艇と共通する点が多く、メーカーや建造を担当した造船所は異なるもののアズマット級が設計のベースとなっているとの分析もある[1]。

同級のサイズは、排水量648t、全長64m、全幅9m、喫水2.5m[1]。船体やマストには近年の流行であるレーダー反射断面積(Radar Cross Section:RCS)を低減化する設計が施され、艦首と艦尾にはRCS値低減のため甲板上の装備や艦砲を隠す目的でブルワークが設置されている[1][4]。上部構造物は比較的大型で、主船体と一体化させた構造になっている。対艦ミサイルは艦後部に搭載されており、ミサイルの爆風を逃がすため艦尾中央が切り欠かれている。切り欠きの両側には開閉扉が付いておりレール状の機材も確認できるので、機雷敷設条を装備しているものと推測される[6]。

機関はディーゼルエンジン4基。スクリューは4軸で、最高速度は28kts[1]。外洋での比較的長期の活動を前提としているため、船体動揺を抑えるビルジ・キールとフィン・スタビライザーが船体側面に設置されており、乗員の居住性に配慮している。煙突は装備されておらず舷側排気を行う。

主兵装は、比較的小型の艦艇への搭載を前提として開発されたC-704(射程35km)で、連装発射機2基を艦尾近くに配置。火砲としては、艦首にH/PJ-26型76mm単装砲1門とEDS-25A型6連装250mm対潜ロケット発射機(87式250mm6連装対潜ロケット発射機の輸出名称)2基、上部構造物後端にエリコン20mm連装機関砲2門を装備している[1]。20mm連装機関砲は有人砲塔に搭載されており、近接防御火器として対艦ミサイルの迎撃に使用するにはストッピングパワーや砲の自動化が十分ではなく、主に哨戒・警備活動における水上目標への対処に使用されるものと思われる。艦のサイズから本格的な防空ミサイル・システムを搭載するのは困難であるが、歩兵携行対空ミサイルであるQW-2携帯対空ミサイル(前衛2/ヴァンガード2)の発射機4基を搭載することで、ある程度の対空戦闘能力の強化が行われている[1][2]。

電子装備としては、艦橋構造物上部にMR-123-02火器管制レーダー(76mm艦砲管制用)、直後のマストに360型対空/対水上捜索レーダー(対艦ミサイルの目標捜索にも使用)と352型航海レーダーを搭載[1][2]。20mm機関砲の管制用に347G型火器管制レーダーを搭載するとされるが[2]、就役後の写真では搭載場所は確認できない。電子戦装備としては、艦橋構造物直前の甲板にチャフ・フレア発射装置2基を装備。水中捜索用センサーとしては、艦首部にESS-3型バウ・ソナーを備えている[1]。

性能緒元(原型)
排水量648t
全長64m
全幅9m
喫水2.5m
主機ディーゼル 4軸
速力28kts
航続距離
乗員60名

【兵装】
対空ミサイルQW-2携行式対空ミサイル発射機4基
対艦ミサイルC-704艦対艦ミサイル/連装発射機2基(4発)
艦砲H/PJ-26型76mm単装砲1門
近接防御エリコン20mm連装機関砲2門
対潜ロケットEDS-25A型6連装250mm対潜ロケット発射機2基

【電子装備】
レーダー360型対空/対水上捜索レーダー1基
MR-123-02型火器管制レーダー砲用1基
火器管制レーダーEFR-1型(347G型/Rice Bowl)機関砲用1基(未搭載?)
352型航海レーダー1基
センサー電子/光学センサー1基
チャフ/フレア発射装置2基
バウ・ソナーESS-31基

【同型艦】
1番艇ドゥジョイDurjoyP811中国武漢造船廠で建造。2012年8月26日進水、2012年12月バングラデシュ海軍に引渡し。
2番艇ニーマルNirmulP813中国武漢造船廠で建造。2012年9月26日進水、2012年12月バングラデシュ海軍に引渡し。
3番艇ドュルガムDurgamP814バングラデシュのクルナ造船所で建造中。2016年12月29日進水
4番艇バングラデシュのクルナ造船所で建造中。

▼進水直前の600t級大型哨戒艇


【参考資料】
[1]MDC軍武狂人夢「孟加拉700噸級巡邏艦」
[2]Bangladesh Defence「Bangladesh Navy Large Patrol Vessel BNS Durjoy」(2013年2月)
[3]Bangladesh Defence「Bangladesh Navy Large Patrol Vessel BNS Durjoy」(2013年2月)
[4]China Defense Blog「The first Large Patrol Craft (LPC) for Bangladesh Navy launched」(2012年8月31日)
daily sun「Large patrol craft for Navy launched」(2012年8月27日)
[5]Press Of Pakistan ( Pakistan's Premier NEWS Agency )「China set to build for Bangladesh large patrol craft with modern missiles」(2011年4月11日)
[6]Global Military Review「Bangladesh Navy's Large Patrol Missile Craft (LPC)」(2012年9月)
[7]East Pendulum「Mis à l'eau du 3ème patrouilleur LPC de classe Durjoy pour la marine bangladaise」(HENRI KENHMANN / 2017年1月27日)

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