日本の周辺国が装備する兵器のデータベース




63A式水陸両用戦車(生産番号WZ-213。軍の制式名称はZTS-63A)は63式水陸両用戦車の発展型。開発は1995年初め頃から始まり、1998年3月に制式採用された[1][2]。年間50両ほどのペースで生産が行われ、現在約500輌が生産[3](サイト「坦克與装甲車両」では600両というデータが提示されている[4]」)され主に台湾海峡付近の海軍陸戦隊に配備されている。

【開発経緯】
中国軍は台湾への着上陸作戦を前提として、10km以上沖合の揚陸艦艇から発進可能で、素早く海岸まで到達し得る新しい水陸両用戦車を必要としていた。従来の63式は内陸部の河川や湖沼を進撃するために開発された車輌で、波の激しい台湾海峡での運用には不向きであり、航行速度も12km/hと比較的低速であったため、海岸に到着するまで長時間に渡って防衛側の攻撃に曝される危険性が存在した。またその85mm砲は水上航行中に発射する事ができず防御側の攻撃に一方的に曝される危険性が高かった[2][4]。上陸後の走行速度が遅い事、戦闘室の水密性が万全では無い、淡水域での運用を前提としていたため、塩分による腐食対策が十分でない…など多くの問題がある事が認識されていた。この様な問題を克服するため、中国は63式をベースにより強力な装備を持ち、上陸作戦にも使用できる安定した浮航能力を持つ車輌の開発に着手することになった。

1995年の初め、中国軍の総参謀部の関係機関は63式を元にして洋上での運用を前提として性能を大幅に向上させた水陸両用戦車の開発を行うことを決定した[1]。要求では、戦車砲の威力と命中精度の向上(第二世代戦車の正面装甲やトーチカなど防御用陣地の破壊が目標)、洋上航行速度と荒天時の安全性向上、全天候下で揚陸作戦を実行可能とする、などの目標が提示された[1]。既存の63式を改修して製造される事もあって、短期間で試製車輌の生産に漕ぎ着けた。WZ-211の試製車両には、鋳造砲塔型と溶接砲塔型の二種類が存在し、車体の形状にも差異があった。試製車両は、まず安徽省巣湖において水上航行性能の確認を行い、その後遼寧省大連に輸送されて、海上での長距離航行試験、洋上での射撃試験、性能確認試験、設計確定試験が実施。その後、WZ-211は陸海空三軍合同上陸演習に参加したり北京において性能展示デモンストレーションを行い、その性能は中央軍事委員会の指導部に高く評価された[1]。1998年3月にWZ-211は「63A式水陸坦克(ZTZ-63A)」として制式採用され、中国軍の水陸両用作戦部隊への配備が開始された[1]。

【性能】
63A式は新型砲塔の採用や装備の増加などによって重量が63式に比べて2t程度増加している。重量増加への対応と水上航行性能の改善のため、63A式では車体の前後を延長してその空間を浮力タンクとしている。これによって63A式は、原型の63式に比べて浮力が30%近く増加しており、シーステート4クラスの波浪の中でも水上航行が可能[1]。設計では、車体の水密性の確保に留意した事もあって、車体が大波で水中に没しても、直ぐに浮かび上がるだけの安全性を確保したとされる[1]。車体前端部には折畳み式の波除板が配置されており、水上航行時にはこれを展開する。車体側面にはサイドスカートが装着されているが、これは足回りの防御力の向上だけでなく、水上航行時に足回り周辺の水の流れを良くして航行速度を増す効果も備えているとの事[1]。

エンジン出力は63式の400hpから520hpに強化された。ただし、520hpの出力は水上航行時のものであり、陸上での最大出力は63式と同じ400hpとされている。陸上走行時の出力を400hpとしたのは、陸上での走行性能改善はそれほど優先度が高くなく、出力強化はトランスミッションなどの設計変更を必要とするので、その手間を省くためであった[1]。エンジンの改良とあわせて水上航行時に推進力を得るウォータージェットの設計変更も実施され、従来エンジン出力の22%しか推進に利用できなかったのを36%まで利用できる様になった。これらの改良によって、63A式の水上航行速度は14.9km/hとなり、それまでの中国製水陸両用AFVの中では最速性能を得ることに成功した。

前述した様に、63A式の試製車輌では鋳造砲塔型と溶接砲塔型の二種類が製造されたが、制式採用されたのは溶接砲塔型であった。砲塔には105mmライフル砲が搭載されている。63式の85mm砲に比べて重量がある105mm砲を搭載しても車体の重心バランスを崩さない様に、砲塔後部にはカウンターウエイトとして砲弾12発を収納する砲塔バスルを設けている。正面装甲の一部にはHEAT弾対策に空間装甲を取り入れており[7]、砲塔後部周辺にはHEAT弾体策を兼ねた装備用ラックが取り付けられている。被弾時の二次火災を防ぐため、車内には自動消火装置が標準装備されている[1]。

63A式が搭載している105mm砲は、59-II/59-IIA式戦車(59B式/WZ-120B)79式戦車(69-III式戦車/WZ-121D)などに搭載されている81A式51口径105mmライフル砲をベースに開発された。原型の81A式は射撃時に強い後坐力を発生させるため、搭載プラットホームは30t以上の重量が必要[1]。これを20tの63A式に搭載するには、砲の反動を大幅に減少させる必要性が存在した。反動低減のため、砲身長が短縮され砲口には多孔式マズルブレーキが装着、砲身改造と合わせて駐退機の設計変更も実施され、反動を抑制するため81A式よりも後坐長を多めに取っている[1]。低反動化された事により、63A式は水上航行中でも戦車砲の射撃が可能となった。63A式の105mm砲は、設計の全般的な見直しにより原型の81A式51口径105mmライフル砲に比べて300kg以上の重量削減が行われている。また、砲尾と砲身の連結方式を変更した事により、砲身との連結を解除すればそのまま砲身を砲塔から抜き取ることが可能となり、砲身交換が容易になっている(従来の81A式は砲身を交換するには、砲塔を車体から取り外して砲全体を取り外す必要があった。)。なお、戦車砲の設計変更に伴い砲口初速や弾道特性などが変化したため、改めて砲の諸元を確認する必要が生じた。これは数多くの射撃試験を必要とする手間のかかる作業であったが、何とか原型の砲と同等の弾道性能と威力を確保した[1]。

この105mmライフル砲はAPFSDS(装弾筒付徹甲弾)、HE(高性能榴弾)、HEAT(対戦車榴弾)を発射でき、APFSDS弾を使用すると2000mの射距離で460〜500mmの均質圧延鋼板(RHA)、1m〜1.5mの厚さを持つ鉄筋コンクリート陣地を貫通可能。榴弾の場合は、4,000mの有効射程を有する。63式水陸両用戦車は、水上航行時には船体が揺れるため正確な射撃が困難であったが、63A式はこの問題を解決するためGP-2砲発射式対戦車ミサイルの運用能力が付与された[2]。GP-2は5,000mの最大射程を有しており、戦車だけでなく低空を飛行するヘリコプターへの攻撃能力も持っているとされる。

63A式の射撃統制装置は、69-II式戦車のTSFCS-C簡易射撃統制システムを流用している[1]。TSFCS-Cは、TLR1Aレーザー測距器(82式/S-83-II)、BCLA弾道計算機、TGS-A昼夜兼用照準器、二軸砲安定装置、暗視装置等から構成されている。レーザー測距器の探知距離は300〜5,000m。照準精度は+−10度。射撃時には、目標距離、弾種、気温(-40〜50度)、炸薬温度(-40〜50度)、横風(+−20m/s)、砲身磨耗率、高低/方位/傾斜角などの諸元を基にして弾道計算を行う。諸元計算に要する時間は最速0.3秒で、砲手は出力された数値に従って戦車砲を操作して射撃を行う。弾道計算機の照準距離は200〜3,990mとなっている。63A式は、水上航行中の射撃は可能ではあるが、陸上での行進間射撃能力は有していない。TSFCS-Cは、西側第三世代戦車が搭載する全自動式の射撃統制システムに比べると照準・射撃過程の自動化のレベルは高くないが、取得費用がその分安く済むという利点がある[1]。

夜間暗視装置は微光増幅式(最大視認距離1,000m)を採用しており、これと衛星位置測定システムを利用する事により、夜間や荒天下においても着上陸地点に正確にたどり着くことができる。

【派生型】
63A式は上記の改良により、攻撃力と水上航行性能における能力向上を実現したが、防御力については装備搭載に伴う重量増加もあって、63式水陸両用戦車と余り変わらない水準に留まった。新設計の溶接砲塔の正面装甲の一部にはHEAT弾対策に空間装甲を取り入れているものの[7]十分な防御性能を確保しているとは言えなかった。

そのため、この点を改善した改良型の63A1式水陸両用戦車(WZ-213-1。軍の制式名称はZTS-63A1)の開発が、63A式に続いて行われることになった。63A1式は装甲防御力を強化するため砲塔前面に複合装甲が装備され、さらにその上に爆発反応装甲の装着も可能。63A1式と同等の防御能力を有すると思われる輸出型の03P式水陸両用戦車の場合、砲塔正面は1.000mの距離から発射された25mm徹甲弾、100mの距離からの12.7mm徹甲弾に抗堪し、砲塔後部は100mmの距離からの7.62mm弾に対して抗堪する能力を有している[4]。そのほかにも、射撃統制装置の近代化や、重量増加に対応したエンジン出力のさらなる増加が行われたとの情報も有る[7]。2004年には、98式戦車(WZ-123/ZTZ-98)に搭載された物と同じレーザー検知式アクティブ防御システムを装備した車両も確認されている。

2007年にアラブ首長国連邦のアブダビで開催された国際兵器展示会IDEX2007兵器見本市では、63A式の輸出型である03P式水陸両用戦車の存在が明らかにされた[5]。03P式の主なスペックは63A式と同じだが、砲弾搭載数は63A式の41発から38発に減少している。03P式は、中国戦車として砲塔の駆動に始めて電動式を取り入れている。電動式は、従来の油圧式に比べて被弾の際の火災の発生を抑えることが可能で、システムの重量や容積を削減できるメリットがある。

なお、63式と共同作戦を行うことを前提に開発された77式水陸両用装甲兵員輸送車(WZ-511)についても、一部の車輌では水上航行性能を向上させるため、車体の前後を延長してその空間を浮力タンクとしたり、出力向上型エンジンに換装するなど、63A式で行われたものに準じた改良が施されており、これらも63A式の派生型と見なす事も可能[10]。

【総括】
63A式シリーズは、原型の63式と比較すると防御力はともかく、火力面では西側第二世代戦車に相当する能力を手に入れることに成功した。上陸部隊に直協して火力支援を実施するという当初の目標を達成することを可能とした、という点では存在価値の大きな車両と見なすことができる。ただしその反面、その防御力の脆弱性から一旦反撃を受けた際には大きな被害を生じるのは免れないであろう。洋上航行性能についても、かなりの改善を成し遂げたが、車体に比して大型の砲塔を搭載したためにバランスに問題が生じたのか、2005年に行われた中露合同演習「和平使命2005」では上陸作戦の演習中に2両の63A式が水没して8名の死者を出している[9]。

これらの問題点を解消するため、63A式の後継として水上航行性能をさらに向上させた05式水陸両用戦車(05式両棲突撃車/ZTD-05)が開発され、配備を開始している。

性能緒元(63A式水陸両用戦車)
重量20トン
全長10m
全幅3.3m
全高3.15m(12.7mm重機関銃を含む)
エンジン液冷ディーゼル (陸上400hp/水上520hp)
最高速度55km/h
浮航速度14.9km/h
航続距離(陸上/水上)400km/90km
武装105mm低反動ライフル砲×1(41発)
 12.7mm重機関銃×1
 7.62mm機関銃×1
 GP-2砲発射式対戦車ミサイル
装甲溶接装甲+中空装甲
乗員4名



▼63A式の砲塔換装シーン。砲塔バスケットが無いことが分かる。


▼改良型の63A1式(WZ-213-1/ZTS-63A1)。砲塔左側の直接照準口が廃止されているのが分かる。


▼砲塔形状の異なるタイプ。


【参考資料】
[1]坦克装甲車両2008年11月号「我軍登陸作戦的“鉄拳頭” - 我軍研制的ZTZ63A式水陸坦克」(孔凡清・将言/《坦克装甲車両》雑誌社)11〜16頁。
[2]Chinese Defence Today「Type 63 Amphibious Tank」
[3]"Jane's armour and artillery 2006-2007" (Jane's Information Group)179頁
[4]坦克與装甲車輌「中国63式水陸坦克」
[5]中華網「中国最新03P水陸坦克進軍国際市場」
[6]軍武狂人夢「63/63A兩棲輕戰車/77式兩棲裝甲車」
[7]月刊グランドパワー 2004年7月号「中国戦車開発史(2)」(古是三春/ガリレオ出版)
[8]新中国之戦「漢和:中国改良63A水陸両用坦克」
[9]軍事研究2005年12月号「中露合同軍事演習に見る中国の軍事力」(稲坂硬一/株ジャパン・ミリタリー・レビュー)202頁。
[10]"Jane's armour and artillery 2006-2007" (Jane's Information Group)302頁

【関連項目】
63式水陸両用戦車(WZ-211)
77式水陸両用装甲兵員輸送車(WZ-511)

中国陸軍

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