日本の周辺国が装備する兵器のデータベース





▼最初の試作車。シャーシは321型共通車体を使用


性能緒元
重量30トン
全長8,320mm
全幅3,307mm(サイドスカート込み)
全高2,800mm
エンジン1215L-7BWディーゼルエンジン(581馬力)
最高速度55km/h
航続距離420〜450km
武装59式57mm機関砲×2(300発)
 7.62mm機関銃×1(750発)
装甲均質圧延装甲鋼板。砲塔/車体(12mm/正面45mm、側面・車体上面20mm、後面30mm) 
乗員6名

80式57mm自走対空砲(研究名称WZ-305、輸出名称W88)は、ソ連のZSU-57-2自走対空砲(S-68)をベースにして輸出向けに開発された防空システムで、中国軍には試験的に少数の車両が配備されただけで終わった。

【開発経緯】
1980年代、中東ではイランとイラクが長期にわたる戦争を行っていた。1970年代末の改革開放以後、外貨獲得の手段として兵器輸出を拡大していた中国は、イラン・イラク戦争を兵器輸出拡大の機会と捉え、特にイラクに対してを69-II式戦車63式/80式装甲兵員輸送車(WZ-531/YW-531C)などを大量に輸出する事に成功した。これを契機に、イラクと中国の間では軍事的協力関係が緊密化し、その一環としてイラク軍で使用していたZSU-57-2自走対空砲(S-68)を中国でリバースエンジニアリングにより量産化し、戦争による損耗を補うという計画が立案されるに至った[2]。

中国は、イラクから秘密裏に送られたZSU-57-2と、自軍で使用していた59式57mm高射砲(S-60)、海軍の66式57mm連装高射砲76式57mm連装機関砲のデータを基にして開発に着手した。上の記述とは矛盾するところだが、実際にはイラン・イラク戦争前から検討を開始していた模様で、開戦前の1980年4月から66式57mm連装高射砲の開発経験を有する内蒙古第二機械製造廠が中心になって開発を開始している[2]。WZ-305の研究代号が付与された。手本があることもあいまって開発は順調に進み同年9月には設計作業が完了、1981年2月には試製一号車が完成した。この車輌は、83式152mm自走榴弾砲などの共通シャーシとして使用されている321型共通車体に57mm連装高射砲を搭載したオープントップ砲塔を載せたものである。1983年に、外国使節団(イラクと思われる)の前で射撃試験を実施したが、その際に、シャーシをイラク軍で運用を開始した69-II式戦車に変更する事が要求された。69-II式戦車の製造メーカーとも協力して、1984年3月にはシャーシを69-II式戦車に変更した試作車が完成した。その性能は輸出先を満足させるものであり、1985年6月には第三次試作車2輌の製造が承認され、1988年に正式に輸出向け兵器としての国家承認を得ることに成功した[2]。同年の軍事雑誌では「W88」の輸出名称も紹介されている[2]。

しかし、イラン・イラク戦争が同年8月20日に停戦を迎えたことで、想定していたイラク軍からの発注は消滅した。WZ-305自体は、1950年代にソ連が開発したZSU-57-2自走対空砲(S-68)と大差ない設計であるため、技術的な立ち遅れは明白であり他国への輸出は見込めなかった。中国軍からは80式57mm自走高炮(自走対空砲)の制式名で呼ばれたが、正式配備には至らなかった。試作車輌は各種試験に供された後、予備装備として保管された[2]。

【性能】
《砲塔部分》
80式自走対空砲は69-II式戦車の車体に、57mm高射砲二門を装備したオープントップの全周旋回式砲塔を搭載している。砲塔は均質圧延装甲板製だが最大装甲厚はZSU-2-57の15mmよりも薄い12mmに抑えられている[2]。操縦手以外の乗員はすべて砲塔に配置される。内訳は、車長、照準射撃手、照準操作手が各一名と装填手が二名。砲塔バスケットが採用されているのは原型を踏襲している[2]。搭載する57mm高射砲は、高度6,000m以下を秒速350m以下で飛行する目標に対して有効[2]。また、経済空脅に留まらず、大口径機関砲の連続射撃は、地上目標に対しても有効性を発揮しうる。レーダーや計算機など高度な射撃管制システムの類は搭載しておらず、完全に目視照準に頼っているため、天候の良い昼間にしか戦闘力を発揮できないが、これはZSU-2-57の設計を踏襲すると決めた段階で分かっていた事で、開発時には問題にはならなかった。光学照準器は半自動モードと、緊急時の手動モードの二種類が用意されている[2]。搭載弾数は、ZSU-2-57が砲塔に176発、車体前部に72発、車体後部に52発を搭載したのに対して、80式は砲塔内部に192発、車体前部右側に40発、砲塔バスケット底部に68発を搭載した。これは即応弾である砲塔内部の搭載数を出来るだけ増やしたかったことによるもの。砲弾は4発ずつの装填クリップに収納され、装填手二名により給弾される[2]。砲弾の種類は曳航殺傷榴弾のみが用意された[2]。

《車体部分》
80式のシャーシは、最初の試作車では中国軍の砲兵部隊で広く運用されている321型共通車体が使用された。321型共通車体は車体後部に各種装備を搭載することを前提に開発されていることから、57mm連装砲塔を搭載するのも問題は無かったとされ、車体後部にハッチがあるため弾薬の補給にも利便性が高かった[2]。しかし、321型共通車体は中国軍以外では運用されていないことがネックとなった。想定ユーザーであるイラク軍では、前述の通りシャーシを69-II式戦車に変更することを要求し、それに伴う開発期間の延長が80式の実用化がイラン・イラク戦争の終結に間に合わなかった要因の一つとなったのは間違いないだろう。

69-II式戦車の車体をベースにしたとはいえ、戦車戦を行うわけではないので軽量化のため装甲減厚が行われ、正面45mm、側面・車体上面20mm、後面30mmとなった。足回りには69-II式戦車と同じ形状サイドスカートが装着されている、このほか、57mm連装砲を搭載する大型砲塔を搭載するため、車体が延長され車内空間を増加させている。69-II式戦車は車体前面中央部に開けた穴に固定式に7.62mm機関銃一門を搭載しているが、これはそのまま残されており750発の弾薬が用意されている。これは自走対空砲にとってはあまり意味のある装備ではないので、量産化された段階では廃止される可能性も考えられている[2]。エンジンは69-II式戦車と同じ1215L-7BWディーゼルエンジン(581馬力)を搭載、最高速度は55km/h、航続距離は420〜450kmとされている[2]。

【参考資料】
[1]Chinese Defence Today
[2]王笑夢「紅色天幕−国産57毫米高射炮家族(下)」『現代兵器』2017.05 66〜75ページ

中国陸軍

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