日本の周辺国が装備する兵器のデータベース



▼83式の273mmロケット弾


性能緒元(自走発射機)
重量15,134kg(空虚重量)、17,541kg(全備重量)
全長6,190mm
全幅2,600mm
全高3,180mm
エンジン12150L-1 V-12 四サイクル水冷ディーゼル(295hp)
最高速度45km/h(路上)、30〜35km/h(野外)
航続距離400km
武装273mm4連装ロケット発射機×1
発射機旋回範囲左右各10度
発射機俯仰角5.5度〜56度
乗員5名

性能緒元(273mmロケット弾)
ロケット重量484kg
ロケット全長4,520mm
ロケット直径273mm
弾頭重量134kg
弾頭種類榴弾
推進装置固体燃料ロケットモーター
初速39m/s
最大飛翔速度810.9m/s
射程23〜40km

83式273mm4連装自走ロケット砲(輸出名称:WM-40)は、中国最初の大口径多用途戦術ロケットシステムである。開発を担当したのは123廠と東北127廠[1][2]である。なお、東北127廠は後に中国北方工業公司(NORINCO)の傘下に入っている。

【開発の経緯】
83式の開発は1960年にまで溯る。1958年、中国軍と台湾軍との間で大規模な砲撃戦が行われた金門島事件において、中国軍砲兵部隊の主力装備であった130mmカノン砲は射程こそ長かったものの低伸弾道のため、反射面陣地に展開した台湾軍に対して有効な打撃を与えることが出来なかった。また、多くの火砲は威力、発射速度が十分でなく、単位時間当たりの制圧面積には限界があることも明らかになっていた[1][3]。

金門島砲撃の戦訓を受けて、中国軍では長射程、大威力で命中精度の高いロケット砲を実用化することを決定[1]。1960年の年末には長射程ロケット砲の研究開発が各関係機関により正式に承認され、同時に口径273mm、射程40kmといった具体的な目標数値も提示された[1]。これに応じて開発陣では、60式中型装軌式牽引車をシャーシとして、車体後部に6連装発射筒を搭載するという開発案を策定、砲兵科の承認を得ることに成功した。1965年には試製車両4輌が完成、各種試験を経た上で部隊での実地試験に供された。試製車両に搭載されたロケット弾は、尾部に装着された安定翼により飛翔中の弾道を安定させる翼安定式を採用していた[1]。1965年から66年にかけて実施された部隊での運用試験では、ロケット弾の命中精度が十分でなく散布界が大きすぎるとの指摘がなされていたが、同時期に勃発した文化大革命の余波を受けて開発作業は一時停止となってしまう[1]。

1969年には中露両国の間で国境紛争が頻発、ソ連軍への対応が中国軍にとって最も重要な目標として浮かび上がってきた。中国軍の装備開発部門では、ソ連軍に対抗可能な兵器の開発を行うことを決定。陸軍の砲兵科においてもソ連軍の強力な砲兵戦力に対抗するため装備の近代化を進めることとなり、その重点項目の1つとして長射程ロケット砲の開発作業が再開されることになった[1]。開発中止前の試験において問題となっていた低い命中精度を改善することが最優先課題とされた。当時の中国の技術水準では、長射程と高い命中精度を両立させることは困難であるとの分析がなされたことから、開発の重点を命中精度の向上として、最大射程については要求値を30kmに低下させることで開発の負担を軽減する措置が取られた[1]。

開発陣では命中精度不良に関する調査を進めた結果、2つの原因を突き止めた[1]。1つは、安定翼による弾道安定が不十分なため、ロケットの飛翔コースに影響を与えていたことであった。そしてもう1つの原因は、ロケットの推進装置にあった。273mmロケット弾の推進装置は固体燃料ロケットモーターであったが、これは63式130mmロケット弾の推進装置と装薬を流用したものであった。しかし大型化されたロケットモーターの中で搭載された装薬が均一に燃焼しない現象が発生しており、これが飛翔中の安定性に悪影響を与えていたことが明らかになった。この問題に対して、開発陣では2つの対策を講じて問題の解決に成功した。まず、安定翼に加えてロケットモーターに改良を加えて、ロケット弾を旋回させながら飛翔させることで弾道を安定させる措置を取った。装薬の燃焼不良については、燃焼性質が異なる数種類の装薬をロケットモーターに搭載することで燃焼不良の改善には成功した。しかし、装薬を変更したため固体燃料搭載部の強度不足が生じ、さらにロケットの長期保存に問題が発生する等のトラブルが相次いだため、開発作業は再度の中断を余儀なくされた[1]。

1974年、砲兵科の関係部署と軍事工業部門による長射程ロケット砲に関する合同会議が開催され、最終的に開発を継続することが合意された。同時に要求性能の見直しも行われ、下記のような要求変更が行われた[1]。
最大射程を再び40kmとする
ロケットの搭載数を6発から4発に削減
シャーシを60-擬庵羞人帯式牽引車に変更
命中精度の更なる向上

改定された要求項目に基づいて試製車輌が製造され1974年から78年にかけて四回のロケット発射試験を実施、軍の要求項目を満たす成果を得ることに成功した。開発陣では、システムの自動化を進めるなどの改良を行い、1981年6月には、制式化に向けた発射試験に漕ぎ着けた。試験では様々な条件でのロケット発射が行われたが、高温下でのロケット発射の際、ロケットの飛翔コースがばらつく現象が発生。これを受けて制式化試験は中断され、原因究明に向けた検証が進められた。その結果、気温が高い状態では装薬の燃焼が通常よりも激しくなり、ロケット発射機のレールの形状が各発射機で異なることもあって、発射後のロケットの飛翔コースにずれが生じ散布界が広がってしまったことが判明した。これに対処するため、ロケットモーターに改良を加えると共に、レール式発射機を新設計の箱型発射機に変更し、発射後に飛翔コースのばらつきが生じないようにする措置が取られた[1][4]。1982年8月に実施された試験では、合計90発以上のロケット弾の発射試験を行い、飛翔コースの不安定が解消され命中精度は軍の要求値を超える良好な精度を実現していることが証明された[1]。1984年5月、関係機関によって設計案が最終的な承認を受け、「83式273毫米遠程火箭炮」として制式化された[1]。

83式の開発は文化大革命による混乱や各種トラブルの解決に時間がかかったことにより、24年間という歳月を要することになった[1]。その間の国際情勢の変化に伴い、ソ連や台湾向けに長射程ロケット砲を配備する必要性は減少していた[1]。さらに、開発に時間を要したことにより、83式が制式化された時点ではその性能は各国の同クラスの装備と比較して時代遅れなものになっていた[1][3]。

1984年5月から部隊への配備が開始された83式であるが[3]、軍の評価は高いものではなかった。83式の性能や技術的水準はすでに陳腐化しており、弾頭が榴弾しか存在せず、ロケットの搭載数が少ない。各種装置の自動化が十分でなく、再装填作業に手間がかかり、シャーシの走行性能も十分では無いなどの問題点が指摘されていた[3]。結果として83式の配備は限定的なものに留まり、1988年には生産を終了した[3]。

83式は、既に中国軍の第一線部隊からは姿を消しているとされる[3]。なお中国軍の演習において、83式のロケット弾を敵の弾道ミサイルに見立てて、防空部隊の訓練を行っていることが伝えられている[3]。

【性能】
83式は軍区の独立砲兵師団に配備され、その長射程(40km)を活かして敵機甲部隊や砲兵の集結地、後方の司令部や補給地点への攻撃を実施することを主要な任務とする。

83式のシャーシは野砲の牽引用に開発された60-擬庵羞人帯式牽引車を使用している。自走発射機の空虚重量は15.134t、全備重量は17.541t。12150L-1 V-12四サイクル水冷ディーゼルエンジン(295hp)を搭載し、最高速度は路上で45km/h(路上)、不整地では30〜35km/h。航続距離は400km[2]。

車体後部には273mmロケットの4連装箱型発射機が搭載されている。発射機の仰角/射界調整動作は電動で行われるが、細かい調整は手動で行なう必要がある。発射機の仰角は5.5〜56度、左右射界は各10度。車体後部には油圧式スタビライザー2基が装備されており、射撃時にはスタビライザーを地面に接地させて車体を安定化させる[2]。陣地に展開後、発射までに要する時間は3〜4分[3]。4発全てのロケット弾発射に必要な時間は7.5秒[2]。

83式の273mmロケット弾の主なスペックは全長4,520mm、直径273mm、全備重量484kg、弾頭重量134kg。最高速度810.9m/秒。弾頭の種類は榴弾のみ。ロケット弾は弾体を旋回させながら飛翔することで、尾部の安定翼と共に弾道を安定化させる。各自走発射機には、SX-250野戦トラックをベースとした弾薬輸送車が用意されている[3]。弾薬輸送車には4発のロケットが搭載されており、備え付けのクレーンを利用してロケット弾の再装填が行われるが、発射機への装填では人力を使用する[3]。再装填に要する時間は5〜8分とされる[3]。

83式の派生型としては、273mmロケットを元にして標的用ロケットが開発されて、防空兵器の試験に使用された[1]。

【参考資料】
[1]「遠火呼嘯、万鈞雷霆-我国遠程火箭炮発展全掲秘」(『全球防務叢書』第四巻 輔国号/内蒙古人民出版社)6〜17頁
[2]「NORINCO 273mm(4-round) Type 83 multiple rocket system」(『Jane's Armour and Artillery 2006-2007』)906頁
[3]軍武狂人夢「83式273mm履帶底盤多管火箭車」
[4]中国武器大全「83式273mm履带式自行火箭炮」

中国陸軍

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