日本の周辺国が装備する兵器のデータベース




▼海軍陸戦隊に配備された89式

▼水上航行試験を実施する89式。


性能緒元
重量20トン
車体長6.63m
全幅3.2m
全高2.4m
エンジン12V150L12 液冷ディーゼル 450hp
最高速度57km/h
航続距離500km
武装122mm榴弾砲D-30×1(40発)
 12.7mm重機関銃×1(500発)
 84式76mm4連装発煙弾発射機×2
装甲溶接鋼板
乗員5名(車長、砲手、装填手二名、操縦手)。さらに、砲兵中〜小隊指揮官1名の搭乗も可能

89式122mm自走榴弾砲(PLZ-89)は1990年に制式化された中国第二世代の122mm自走榴弾砲。

従来、中国軍では牽引式の122mm榴弾砲を使用していたが、それでは近代的な機動戦に対応できない事は明白であった。そのため1970年代から各種の自走榴弾砲を開発してきたが、中々中国軍が必要とする条件を満たした車輌を完成させる事ができなかった。オープントップ式に122mm榴弾砲を搭載した70式122mm自走榴弾砲(WZ-302)の実用化に続いて、1981年から全周式砲塔に86式/96式122mm榴弾砲(W-86/PL-96/D-30)(ソ連のD-30榴弾砲のコピー)を搭載した本格的な自走榴弾砲の開発が開始された[2]。合計6輌の試製車輌が製造され、各種試験を経て1990年3月に「PLZ89式122毫米自行榴弾炮」として制式化。同時に、シャーシについても「PDZ-31型自行火炮履帯式軽型通用底盤」の制式名が授与された。89式は1990年10月1日には天安門広場での建国記念軍事パレードに参加して、その存在を公にしている。

【性能】
89式のスペックは以下の通り。全備重量20トン、車体長6.63m、全幅3.2m、全高2.4m(砲塔キューポラ含む)。89式のシャーシである「PDZ-31型自行火炮履帯式軽型通用底盤」は77式水陸両用装甲兵員輸送車(WZ-511)を元にしているといわれるが、実際には砲兵車両用共通シャーシとして抜本的な設計変更が図られておりほぼ別物と化しているとされる[2]。車体は溶接鋼板で製造されており、防御水準は歩兵戦闘車以上(86式歩兵戦闘車/BMP-1を念頭に置いたものか?)とされる[2]。NBC防御装置、二次被害防止用の自動消火装置の採用、発煙弾発射機の搭載、三色迷彩の採用など、1980年代末の中国軍の第二世代主力戦車(88式戦車など)と同等の装備が搭載・用意されている[2]。

エンジンは450馬力の12V150L12型液冷ディーゼルを車体前部右側に搭載している。エンジンと変速装置はパワーパック化されており、整備の際には迅速な交換が可能[2]。操縦レバーはパワーステアリング式になっており、操縦時の負担軽減に資している[2]。サスペンションはトーションバー+油気圧式(第二〜五転輪がトーションバー、第一、六転輪が油気圧)であり、89式に主力戦車以上の良好な走行性能と良好な乗り心地を保証している[2]。履帯の張力調整には油気圧式が採用されており、従来のように兵員による手作業で調整する必要性がなくなっている(59式戦車や88式戦車の場合は、二名の乗員が半日がかりで調整作業を行っていた。)[2]。

89式はある程度の浮航能力を有しているが、元来の浮力が少ないため、浮航時には車体前部に波除け板、車体両側面にゴム製の浮袋を取り付ける必要がある。推進力は履帯の回転によって確保[2]。その航行性能は内陸の沼沢地や渡河などでは利用できるが、外洋からの着上陸作戦に使用するには不十分な物に留まっている。そのため、21世紀に入ると海軍陸戦隊向けに優れた外洋航行能力を有する07B式122mm水陸両用自走榴弾砲(PLZ-07B)が開発されて配備が開始されている。

乗員は車長、砲手、装填手2名、操縦手の合計5名で操縦手以外は車体後部の砲塔が搭載されている戦闘室に配置される。操縦席のキューポラには3つのペリスコープが用意されており、真中のものは夜間の移動に際して暗視装置を装着することが出来る。操縦手席後方には、別途座席と上部ハッチが用意されており、ここには必要に応じて砲兵中〜小隊指揮官が搭乗する[2]。車体後部中央には横開き式の大型ハッチが用意されており、兵員の乗降や砲弾や装薬の搭載作業に使用される。

89式の車体後部には全周旋回式の砲塔が搭載されている。砲塔のターレットリング口径は2400mm。砲塔内部は給弾作業を前提に出来る限りの容積を確保しており、人間工学に配慮した設計が取り入れられている[2]。車長は砲塔右部の車長席に座る。車長席上部には車長用キューポラがあり、全周旋回式のペリスコープ(赤外線暗視装置を装着可)と二基の観測照準用潜望鏡(防霜装置付き)が設置されている。赤外線暗視装置はアクティブ式。これらの装置は83式152mm自走榴弾砲にも装備されていない進んだ装置であるとしている[2]。車長用キューポラには対空用の88式12.7mm重機関銃(QJC-88)も装着されている。榴弾砲を挟んだ砲塔左部前方には砲手席があり、砲塔前右部の直射用照準器と砲塔上部の間接射撃用照準器、砲の俯仰角や砲塔の旋回などを調整する操砲用装置が用意されている。砲手には専用のハッチは用意されていない。砲尾左右には装填手二名が位置し、左側の装填手は装薬の装填を担当、右側の装填手は砲弾の装填を担当している。各装填手にはそれぞれ上部ハッチが用意されている。砲塔後部にはベンチレーター二基とNBC防護装置、そして二ヶ所の即応砲弾ラック(各9発搭載)が配置 [2]。砲塔側面左右には4連装発煙弾発射機が2基装備。発煙弾発射機からは通常の発煙弾のほか、近接戦闘時の対人攻撃用擲弾を発射する事も可能。

【砲システム】
89式の主兵装である122mm榴弾D-30はソ連の同名の榴弾砲を某国より入手して1980年代にリバースエンジニアリングにより国産化したもの。89式への搭載に当たっては、砲身の中頃にエバキュエーターが付加されている。さらに、装填補助装置(半自動装填装置)が開発されており、砲がいかなる俯仰角にあっても使用が可能で毎分7〜8発の安定した砲発射速度を確保している(なお、装填手の負担は増えるが完全手動装填も可能)。砲の俯仰角や砲塔の旋回は油気圧式を採用。エンジンを停止した状態でもバッテリーの電気を使用して油気圧操砲システムの作動が可能であるが、これは中国の装甲戦闘車両としては始めて導入された技術である[2]。89式は、デジタル式火器管制システムと砲塔上部に装備された昼夜間兼用光学測距システムにより精密射撃を行う[1]。

D-30の最大射程は榴弾で18km、後に開発されたFRFB弾で21km。通常榴弾やFRFB弾以外にも、照明弾、ビラまき用砲弾、対戦車子弾搭載砲弾、誘導砲弾など各種砲弾が用意されている。89式の砲弾搭載数は40発。戦闘室直前に装薬ラック(40発分)が、戦闘室後部には左右に分かれて砲弾ラック(各12発)、そして砲塔後部に即応弾ラック(9発×2)が配置されている。砲弾ラックの合計は42であるが、通常は砲弾40発を搭載して、二発分は予備として空にしておく[2}。)車内には、この他に12.7mm重機関銃用の銃弾500発と降車戦闘用のロケットランチャー3基も搭載される。

【配備状況】
89式自走砲は1990年代後半までに陸軍の機甲師団/旅団の自走砲連隊(3個大隊編制、1個大隊に18輌装備)や海軍陸戦隊の装甲連隊の自走砲大隊に配備され、現在も運用が継続されている[1]。89式は、大口径砲を搭載した83式152mm自走榴弾砲に比べると口径が小さいことから砲弾の破壊力については見劣りするが、主力戦車並の機動性を有しており、ある程度の水上浮航性を備えていることから、83式が師団クラスの全般的な火力支援任務に当たるのに対して、89式は部隊に追随して前線に近い距離での直接・間接の火力支援を行う事が想定されている[3]。

近年、89式の後継車両として、陸軍向けには07式122mm自走榴弾砲(PLZ-07)、水陸両用部隊向けには07B式122mm水陸両用自走榴弾砲(PLZ-07B)が開発され配備が開始されているが、89式は今後もしばらくはこれらの車輌と併用して運用が継続されると思われる。

89式をベースにして輸出向け122mm自走榴弾砲(SH-3 122mm自走榴弾砲(WMZ-322))も開発されているが、89式共々輸出実績は得られていない[2]。

【参考資料】
[1]Chinese Defence Today「PLZ89 122mm Self-Propelled Howitzer」
[2]孔凡清・将言「中国PLZ-89式122毫米自行榴弹炮」(『坦克装甲車両』2007年8月号)
[3]水銀「共和国的鉄流方陣-2009年国慶節陸軍参閲装備大掃描(三)」『坦克装甲車両』2009年第9期(《坦克装甲車両》雑誌社)22-26ページ

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