日本の周辺国が装備する兵器のデータベース




【開発経緯】
99/99G式戦車は、攻・防・速の各項目において良好なスペックを得ることに成功したが、中国の交通インフラの限界に近い54tの重量、サイズが大きく重量増の原因となった動力室のコンパクト化の必要性、超信地旋回が出来ない従来型の機械式変速装置など多くの解決すべき課題も指摘されていた[2][3]。

上記の問題点を解消するため、2003年から北方工業集団公司(NORINCO)と、その傘下にある中国北方車輌研究所(201所)が共同して新型戦車の開発に着手することになった[3]。新型戦車の設計主任は毛明技師で、開発計画には「0910工程」の開発名称が付与された[3][9]。

新型戦車の開発に当たっては、各国でまだ次世代戦車の方向性が具体化しない状況において、どのような開発目標を立てるのかが課題となった[9]。開発陣では、新型戦車は99式で獲得した性能をベースとして、火力・防御力・機動力といったこれまで重視されてきた項目に加えて、情報化戦争への対応や各種システムの自動化をさらに推進するとの方向性を採用することとなった[9]。

開発陣が注目したのは、1990年代にパキスタンと共同開発した90-II式戦車(MBT-2000/アル・ハーリド)であった。90-II式/アル・ハーリドは、極めてコンパクトなウクライナ製の6TD-IIディーゼルエンジンを搭載した事で、動力室の容積を最小限に抑える事に成功しており、車体長は6.487mと99式(7.3m)より1m近く短くする事に成功していた。また、全自動変速装置を搭載しており、中国製戦車としては唯一超信地旋回が可能であった。新型戦車の開発陣は、この90-II式/アル・ハーリドの車体に99式戦車の砲塔(の改良型)を搭載する事で、99式の攻撃・防御能力を維持しつつ全備重量を50t以内に抑えた新型戦車のベースとする事が出来ると考えた[3]。このコンセプトを実証するために製作されたと思われる、90-II式系列のシャーシに98/99式戦車の砲塔を搭載した戦車の写真が何枚か確認されている[3]。

新型戦車の存在が明らかにされたのは、2007年7月に開催された人民解放軍建軍80周年記念展示会で展示された一枚の写真であった。2007年に初公開された写真では、90-II式系列の車体に爆発反応装甲を装着した新設計の大形砲塔を搭載した姿が明らかになった。2008年頃から、中国各地で新型戦車が実施試験に供されている写真がインターネット上で紹介される様になったが、こちらの車輌では2007年の写真では見られなかった装備が追加されており、実用化に向けた改良が進んでいる事が窺えた。開発の過程では、99式戦車のシャーシに新型戦車用砲塔を搭載した砲塔要素試作車や、逆に新型戦車のシャーシに99式戦車の砲塔を搭載したシャーシ要素試作車といった一連のテストベッド車輌が製造されている[3][6]。

2011年頃からは、実際に部隊運用される新型戦車の写真が紹介される様になり、この頃から同車が試作段階から量産体制に入ったものと推測される[3]。西側メディアでは、この新型戦車を99式戦車の改良型として、「99A2式」の名称で呼んでおり[1][2]、そのほか、「99式改進型」「99式大改型」などいくつもの呼称が存在していた。

新型戦車の設計承認が行われたのは2010年で、2014年には機密指定が解除され[9]、同年8月に中国で開催された「和平使命2014」国際合同軍事演習では複数台の新型戦車をはじめとする各種新型AFVが参加して、中国軍の陸上装備の近代化を印象付けた。この演習に参加した新型戦車は、雑誌『現代兵器』2014年10月号で「99A式主戦坦克」として紹介された[8]。「99A式」の制式名称は、2015年9月3日の「抗日戦争と反ファシズム戦争勝利70周年記念」軍事パレードにおいても新型戦車の名称として報道されたことから、これが新型戦車の制式名称であることが確定したといえる[7]。

【性能】
前述した通り、99A式は、90-II式戦車系列のシャーシを採用しているため、車体長は99式戦車に比べてかなり短縮されている。ただし、90-II式とまったく同じ設計ではなく動力系統を中心として変更も見られる。

99A式のパワーパックは、出力1,500hpの新型エンジンと新型自動変速装置を組み合わせたものであるとされる[3]。車体後部には99式には無かったエンジングリルが配置されており、動力系統の構造は99/99G式とは大きく変更されていることを窺わせている[3]。エンジンは車体長短縮のため横置きとされ、動力室の容積を99式に比べて大きく減らすことに成功している。変速装置は全自動式[3]で、超信地旋回が可能となったが、中国軍に制式配備された戦車でこの機能を備えたのは、99A式が初になる[3]。全自動式変速装置の採用は、機動力の向上に加えて操縦手の疲労軽減に効果が高く、長期間の作戦においての戦車の戦闘力維持に効果が認められるとされる[9]。

99A式の正確な重量は未公開だが、毛明技師のインタビューによるとサイズのコンパクト化と重量軽減を進めたことで重量は「50余t」とNATO諸国の戦車よりも15tは軽量化に成功したとしており、99式の54tよりは軽いものに収まっているものと推測される[3][9]。サイズのコンパクト化は前方投影面積を縮小し、被発見率を減らし生存性の改善につながるが、99A式ではコンパクト化と一定の車内容積を確保するという人間工学的な配慮を両立させることが目指されたのがポイントとみなすことができる[9]。

99A式の砲塔は、99式よりも容積を拡大したことで砲塔高が増加しているが、NATO諸国の戦車に比べると30cm以上は低いものに抑えてあるとのこと(毛明技師の発言だと99A式の車高は2m40cm以下と判断できる)[9]。砲塔には新型の爆発反応装甲が搭載されたため、その外観は99G式とはかなり異なっている。砲塔正面に装着された分厚い爆発反応装甲はHEAT弾だけでなく運動エネルギー弾に対する防御能力も兼ね備えており、特に爆発反応装甲に対する貫通能力の高いタンデム式成形炸薬弾に対する抗堪性を強化したのが特徴[3]。99A式は、トップアタック攻撃を想定して、砲塔上面各部に爆発反応装甲を装着している。砲塔前面の複合装甲には運動エネルギー弾に対する防御力の高い拘束複合装甲が採用されているとの情報もある[5]。運動エネルギー弾に対する防御要求は、韓国のXK-2戦車の55口径120mm滑腔砲から発射されるAPFSDS弾に対する防御能力の獲得が目標とされたとのこと[4]。砲塔側面には装具ラックが配置されているがその表面にも爆発反応装甲が装着されている。99A式では、車体下部の装甲も強化され、対戦車地雷に対する防御能力を向上された[3]。99式ではアクティブ防御システムが搭載されていたが、新型戦車でも99式のものと形状の異なる新型アクティブ防御システムが砲塔左側に装備されている[3]。

戦車砲の口径は99式戦車と同じ125mm。2007年に公開された試製車両では砲身中部に位置する同軸排煙装置の位置が99式よりも後退しており砲身長を変更した可能性が指摘されていたが、部隊配備された99A式では外観上は99式と同じ形の戦車砲に変更された[3]。99A式では、砲の俯角を挙げるために砲塔頂部を嵩上げしており、それが砲塔大型化の要因の1つであると指摘されている[5]。99A式では、砲身先端に砲口照合装置が装備されたが、これは中国戦車としては初の試みで、砲身の歪みを射撃時の諸元の1つとして反映させる事で命中精度をさらに向上させることが可能となり、いちいち乗員が歪みの検知を行う手間が省けるメリットが存在する[3][9]。

99A式では、140mm滑腔砲の搭載も考慮され、技術実証として2004〜2005年にかけて99式戦車に試製140mm砲を搭載して射撃試験が行われた。しかし、膅内爆発が発生するなどの技術的問題が生じた事と、大型の140mm砲弾を搭載した場合には搭載弾数が大幅に減少してしまい継戦能力に悪影響が出てしまうなどの点を解決できずに未採用に終わっている[3]。自動装填装置については、砲塔直下にターンテーブル式に砲弾(弾頭+分離装薬)を収納した99式と同系列(T-72のカセトカ自動装填装置がベース)のものが採用されている[5]。

副武装としては主砲同軸の7.62mm機関銃と砲登上搭載の12.7mm重機関銃各1丁を装備している。この内、砲塔上の対空機関銃は、2007年に写真が公開された試作車両では、99式の85式12.7mm重機関銃に替わってより大口径の02式14.5mm重機関銃(QJG-02)に換装されていた。しかし、99A式量産型では99式と同じ12.7mm重機関銃にされている。

【情報化への対応】
新型戦車の開発で軽量化と共に特に重視されたのが電子装備に関する改良項目である。射撃統制システムは99G式のものをベースに改良を加えて、反応速度の向上とシステムの自動化を進めている。暗視装置の探知距離は1,300m[3]。99A式では、レーザーレンジファインダーに加えて、主砲基部にミリ波レーダーを搭載しており、目標の追尾や飛翔中の弾道を検知して、次弾修正のデータに反映することで命中精度をさらに向上させている[3]。

99A式は、各国で推進されている情報化の動きに対応し、本格的な車輌間情報システム(IVIS:Inter-Vehicular Information System)を搭載、各車両間で車両の位置や目標情報などを共有し、IVISを装備する別部隊とのデータリンクも可能となった。これを踏まえて設計主任の毛明技師は、99A式戦車は中国軍で初の「信息化坦克(情報化戦車)」であるとしている[9]。中国軍では軍の機械化と情報化を近代化の二本柱としており、戦術データリンク網の構築が推進されており、近年採用された各種AFVでもネットワーク化に対応するための各種システムの採用を積極的に行っている。燃料や弾薬のデータ、車両の状態や故障の有無などの各種データについてもリアルタイムで確認することが可能であり、戦車の維持・補修面で有利になっている[9]。

99A式は、乗員の疲労軽減と作戦持続時間の延長を目的として、中国軍の戦車としては初となる空調システムを装備している[3]。空調システムにより夏季には車内温度を外気温より5度低くすることが可能となっている[3]。99A式の空気循環システムは、濾過装置を通じて車外から空気を取り入れ、車内の空気圧を外気よりわずかに高めることで外部からの排気やNBC兵器の流入を防ぐようになっている[3]。

【今後の動向】
前述した通り、99A式戦車は2011年ごろから部隊配備が開始され、2013年ごろからは各地の演習でもその姿を確認できるようになっている。

毛明技師によると、99A式は外国戦車と比較すると信頼性の面においてまだ遜色が見られるとのこと[9]。これは中国の基礎工業における蓄積の少なさに起因するもので、特にオイルや水漏れ、プラグの緩みなどに問題が集中しているとのこと。この問題については、2017年を目標として各国の先進的戦車の水準に並ぶ信頼性を確保するための改良作業が進められている[9]。

99A式の派生型としては、シャーシを転用した装甲回収車が開発されており、99A式と同じく2015年9月3日の軍事パレードで一般公開されている。99A式は軽量化に意を払ったとは言え50トン台に達しているため、既存の装甲回収車では回収能力が十分ではなく、99A式と平行して装甲回収車も開発が進められたものと想定される。

性能緒元
重量50トン+
全長
全幅
全高
エンジンディーゼルエンジン(1,500hp)
最高速度
航続距離
渡渉深度
潜水深度
武装125mm滑腔砲×1
 85式12.7mm重機関銃×1(初期の試作車は14.5mm重機関銃を搭載)
 59式7.62mm機関銃×1
 94式5連装76mm発煙弾発射機×2
使用砲弾APFSDS-T弾、HEAT弾、HEAT-FRAG弾、砲発射対戦車ミサイル
装甲溶接鋼板+拘束セラミック複合装甲+爆発反応装甲
乗員3名(車長、砲手、操縦手)

▼99A式戦車のテストベッド車輌と思われる車輌。新型シャーシに98/99式戦車の砲塔を搭載している。


▼2007年に公開された試作車両の写真。上の車輌よりも砲塔が大型化しており、新型の爆発反応装甲を砲塔上面まで装着しているのが分かる。

▼トランスポーターで輸送中の99A式戦車。車体後部の形状が確認できる。

▼99A式戦車の射撃試験の写真。99式に比べて大型化した砲塔の様子が伺える。

▼99式戦車の車体に99A式戦車の砲塔を搭載した車輌。砲塔システムのテストベッド車輌か?


【参考資料】
[1]Jane's Defence News「China trials enhanced Type 99 MBT」(Jonathan Weng/2007年8月24日)
[2]StrategyPage.com「Chinese Type 99A2 Arrives」(2007年8月27日)
[3]MDC軍武狂人夢「99式/99式改/0910主力戦車」
[4]中華網「外刊:中国99A2坦克可洞穿所有三代坦克」(原載『兵工科技』2007年12月号/2007年12月6日)
[5]騰訊網「軍情瞭望025期:躍居世界第一的99大改坦克」(璞・黄治茂/2012年2月15日)
[6]中華網「媲美豹2A7:99大改坦克强悍细节图曝光」
[7]CCTV1の軍事パレード中継放送より
[8]「中国陸軍新型99A式主戦坦克(劉逢安撮影)」(『現代兵器』2014年10月号/中国兵器工業集団公司)
[9]陳瑜「掲秘信息化的“陸戦之王”――訪中国兵器工業集団公司主席専家・99A式坦克総設計師毛明」(『科技日報』2015年9月1日号)

【関連事項】
99A式戦車の派生型
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