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▼HJ-10のミサイル発射-命中のデモンストレーション映像


AFT-10(HJ-10/紅箭-10/Red Arrow-10)対戦車ミサイルは、中国陸軍最新の対戦車ミサイルである。光ファイバーTVM/赤外線画像誘導システムによる見越し外目標に対する打撃能力を有し、戦車のみならず、陣地、対砲兵戦、低空を飛行する航空機、海上目標など多様な目標に対する攻撃を可能としているのが特徴[1][3]。同クラスのミサイルとしては、日本の96式多目的誘導弾システム、ブラジルのFOG-MPM、イスラエルのスパイクNLOSなどが存在するが、AFT-10もこれらライバルに遜色のない性能を備えた有力な多用途ミサイルと見なされている[2]。

制式名のAFTとは、「A」はミサイルを意味する記号で、「FT」とは反坦克(対戦車)のイニシャルにちなんだ略称[1]。AFT-10以外にも「HJ-10/紅箭10/Red Arrow-10」の名称もよく使われる。なお、Z-10攻撃ヘリコプターが搭載する対戦車ミサイルも一般にHJ-10と呼ばれるが、こちらは空対地ミサイルを表すAKD-10という型式名を有する、性能も開発経緯も全く異なる別種のミサイルなので注意。

【性能】
AFT-10は、2011年に制式化され、2012年から配備が開始された新型ミサイル[7]で、04A式歩兵戦闘車(ZBD-04A/WZ-502G)のシャーシに積んだ全周旋回式ターレットに、連装発射機四基とセンサーを搭載している[1]。04A式歩兵戦闘車をシャーシにすることで、同車と同じく戦車との共同運用を前提とした高い不整地機動力と相応の防御力を確保でき、シャーシの共通性を確保することで補給や整備面でもメリットがある[1]。シャーシの防御能力は、車体前面が30mm徹甲燃焼弾に、車体側面は14.5mm徹甲燃焼弾、車体後面は7.62mm徹甲弾および榴弾の弾片に対する抗湛性を備えている[1]。590馬力の150型6気筒水冷式ターボチャージド・ディーゼル・エンジンを搭載し、CH400D型流体変速機と合わせて良好な機動性を発揮する[5]。水上航行能力も備えており、その際には履帯により推進力を得る[5]。AFT-10の自走ミサイル車輛の乗員は、操縦手、車長、砲手二名の計4名[5]。

車体後部に搭載されたターレットは全周旋回式で、ミサイルを打ち出す時は発射機に40〜80度の仰角を付けて発射を実施する。合計8発のミサイルランチャーをターレットの左右に「田」の字型に配置して、その間に光学/電子センサーを積んでいる[1]。光学/電子センサーは、伸縮式マストの上に配置されており、マストを展開することで遠距離の目標の捜索、照準を可能としている。また、車体を隠蔽した状態でマストだけを伸ばして目標をとらえることもできる。センサーには、TVカメラ、レーザー測距装置、赤外線暗視装置が内蔵されており、悪天候や夜間においても目標の探知と精密な照準を保障する[1]。車体前面左部には敵味方識別装置が搭載されている[4]。このシステムはミリ波レーダーを利用したもので、悪天候下においても敵味方の正確な識別を可能としている。

AFT-10は、各車輛が独自に目標を探知、照準してミサイルを発射する場合と、前線に進出した偵察車輛や他部隊からの情報をデータリンクで入手して、目標の探知、照準を行わずにミサイルを発射する二通りの射撃方法を備えている[1]。

【ミサイル】
AFT-10の大きな特徴は誘導システムに光ファイバーTVM赤外線画像誘導方式を採用したことである[1][3]。ミサイル弾頭センサーが捉えたTV/赤外線映像が光ファイバーを通して砲手モニターに表示され、砲手はその映像をもとにして目標の指示を行う[1]。AFT-10は二名の砲手を配置することで、同時に二発のミサイルの誘導を可能としている[1]。二名の砲手は並列座席に着座してそれぞれのモニターで目標の確認と指示を行う。ミサイルは砲手の指示した目標に対して自律式に誘導されるので、砲手は目標指示以降の操作の必要性は無い[1]。飛翔中に別の優先すべき目標が見つかった場合は、ミサイルに指示を出して目標を変更するという柔軟な運用も可能[1]。

誘導システムに光ファイバーを採用するメリットは四点あるとされる[3][5]。一つは、光ファイバー自体がきわめて軽量なことである。光ファイバーは曲げや損傷に強い上に、1000mの光ファイバーが150gに満たないので、10kmを超えるファイバーケーブルを内蔵しても重量負担は軽いもので済ませる事が出来、AFT-10の長射程を実現する鍵となっている[3][5]。二つ目は、レーザー誘導や無線指令誘導に比べて相手側の妨害への抗湛性に優れている点が挙げられる[3][5]。三つ目は、10km以上離れた場所から発射することで、相手側にミサイルの発射を察知されない利点がある。さらに目標への誘導に無線やレーザーを使用せず光ファイバーからの画像を利用することで、レーザー警告装置などによる事前探知も困難となることも見逃せない。四つ目は、目標指示後は砲手による誘導の必要がない「打ちっ放し」が可能な上に、発射後の目標変更もできる柔軟な運用を実現している点である[3][5]。一方で、同誘導方式には、システムが複雑になる。長い光ファイバーの強度を確保しつつ、出来るだけ細く軽くするため技術程難易度が高い。光ファイバーを展開しながら飛翔するためミサイルの飛翔速度が遅くなるなどのデメリットも存在する。光ファイバー誘導ミサイルの理論上の飛翔速度は300〜320m/秒で、実際には125〜220m/秒程度になるとされ、(発見され難い誘導システムとはいえ)一旦飛翔中のミサイルが確認された場合、敵の防空兵器による反撃を受けて撃墜される危険性は無視できない[3][5]。

AFT-10は、発射後に展開される四枚二組の翼を内蔵している。それぞれX字型の配置で、前方の比較的長い翼弦を有する翼と、後方の長方形の翼で構成されている[5]。発射後、翼を展開し、ブースターを切り離して、本体のロケットモーターに点火。ロケットモーターは3つの燃焼口が用意されており、段階的に燃焼を行うことで10kmを超える射程を確保している[3][5]。敵のレーダー探知を回避し、命中地点の予測をさせないために、巡航飛行中に軌道を変える事が出来る[3]。弾頭部分に内蔵された光学/赤外線センサーがとらえた画像は光ファイバーケーブルを介してリアルタイムで射手の下に伝達され、射手は解像度の高い画像をもとにして正確に目標の指示を行う事が出来る。AFT-10は、目標にまっすぐ直撃する飛翔コースと、目標直前で急上昇して装甲の弱い上部を打撃するトップアタックの二つが用意されている[1]。複合装甲や爆発反応装甲に対抗するためHEAT弾頭はタンデム式に配置されている。AFT-10は、タンデム弾頭に加えミサイルのサイズが大きいことも相まって、きわめて強力な装甲貫徹力を備えており、その能力はRHA値換算で1600mm超に達するとのこと[5]。

【部隊編制】
AFT-10を装備する対戦車ミサイル中隊は、自走ミサイル車輛9輌、装甲偵察指揮車、ミサイル再装填車などで編成される[1][3][4][5]。装甲偵察指揮車は、89式装甲兵員輸送車の発展型(通称「89G式装甲兵員輸送車」。正式な型式名は不明。)をベースにした装軌式装甲車[4]。良好な不整地走破能力と装甲を生かして前線に進出して偵察を実施。発見した目標情報を、データリンクを介して自走ミサイル車輛に伝達するという、AFT-10の長射程を実現するための重要な役割を果たしている。自衛用火器として車体中央の銃塔に12.7mm重機関銃一門を装備している。

AFT-10は一輌が同時に二発のミサイル発射、目標指示が可能であり、連続発射の際には15秒間隔での連射を行う[5]。理論上、AFT-10一個中隊は、4分間で10km圏内の60〜70輌の敵AFVを撃破することが可能という強力な打撃能力を備えている[5]。戦車以外にも、高い命中精度を生かしてバンカーや建物などへの精密攻撃を行い、砲兵部隊の支援射撃任務の一部を肩代わりすることも想定されている[1]。これは砲兵の弾薬消耗量を抑え、砲兵火力をより脅威度の高い目標に振り向けることを可能とする戦術的意義の高い効果を有すると評価されている[1]。

目標から認知されない遠距離からミサイルを発射し、高い不整地走破力を生かして迅速な移動を行うAFT-10部隊に対して反撃を行うのは極めて困難である[4]。仮に居場所を捉える事が出来ても、歩兵戦闘車なみの防御力が施されたAFT-10を制圧するには榴弾砲などでの間接射撃では不十分であり、各車輛への直接打撃が必要になるため、反撃は容易なことではないのは変わりない。

【派生型】
中国北方工業公司(NORINCO)ではAFT-10/HJ-10の外国ユーザーへの採用を目指して国際兵器ショーへの出展を行っている。輸出版にはHJ-10Aの輸出名称が付与されている。2016年珠海航空ショーで展示されたHJ-10Aは本国版と同一の車輛であったが[5]、2018年にイラクで開催された兵器ショーでは、中東諸国への売り込みを想定してVN-1装輪歩兵戦闘車に8連装発射機を搭載したHJ-10Aが展示されている[8][9]。イラクで公開されたHJ-10Aは、ミサイルの射程は原形より短い5,000〜7,000mとされる[8]。

AFT-10を構成する各システムはモジュール化されているので、04A歩兵戦闘車以外にもさまざまな車輛への搭載が可能[1]。また、AFT-10をベースとした短射程の艦対艦ミサイル、空対地ミサイルへの転用についても構想されており[1]、ユーザーが確保できればこちらも開発に着手されるものと推測される。

【参考資料】
[1]「地面突击模块第五方队-AFT10反坦克导弹」『兵工科技2015年甦典藏版 1945-2015纪念中国人民抗日战争暨世界反法西斯战争胜利70周年大阅兵』(兵工科技杂志社)36-39ページ
[2]熊文博「“红箭”来袭 – 珠海航展上的“红箭”10反坦克导弹」『坦克装甲车辆』2016年第12期(《坦克装甲车辆》杂志社)31-35ページ
[3]宗赫「“红箭”展示沙场雄风一亮相“装甲与反装甲日”活动的“红箭”系列反坦克导弹」『兵工科技』2017.18(兵工科技杂志社)51-57ページ
[4]「红箭10反坦克导弹」『兵器』2015年甦B(《兵器》杂志社/2015年9月8日)20-21ページ
[5]伊呜「“红箭”10A反坦克导弹首次亮相珠海航展」『兵工科技2016年甦 2016珠海航展专辑』(兵工科技杂志社)86-90ページ
[6]王洪奎「点穴利器―浅析国产“红箭”-10多用途反坦克导弹系统」『现代兵器』2015.10(中国兵器工业集团公司)54-57ページ
[7]新浪网-军事「中国军工在伊拉克展出大八轮版红箭10战车,土豪特供版」(2018年03月13日/作者 军事小情报家)http://k.sina.com.cn/article_6405496327_p17dcc1e07... (2018年5月29日閲覧)
[8]Defence Blog「China promotes new anti-tank missile carrier for Iraqi Armed Forces」(2018年3月22日/Dylan Malyasov)http://defence-blog.com/news/china-promotes-new-an...(2018年5月29日閲覧)
[9]中国军网(英語版)「China's "Red Arrow-10A" anti-tank missile unveiled in Iraq」 (2018年3月23日/Huang Panyue)http://eng.chinamil.com.cn/view/2018-03/23/content...(2018年5月29日閲覧)
[10] 新浪网-军事「一个连能打残装甲旅!解放军红箭10反坦克导弹」(2017年8月2日)http://slide.mil.news.sina.com.cn/slide_8_199_5561...(2018年5月29日閲覧)

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