▼中国船舶工業集団公司が発表したC-14の写真と模型。
▼イランに輸出・現地生産されたC-14M型の図。上掲の写真や模型と比べると搭載レーダーなどに相違がある。(c)Iran Defence Forum
▼イランのC-14M。本艇はミサイルは未搭載で機銃のみ装備している。
▼イランのC-14M。本艇は艦橋構造物上部に122mm多連装ロケット発射機を搭載したタイプ。
■性能緒元（原型）
| 排水量 | 19t |
| 全長 | 23m（水線長14m） |
| 全幅 | 4m |
| 喫水 | 1m |
| 主機 | ディーゼル 2軸 |
| ディーゼル 2基 | |
| 速力 | 50kts以上 |
| 航続距離 | 300nm/kts |
| 乗員 | 10名 |
| 排水量 | 17t |
| 全長 | 13.65m |
| 全幅 | 4.8m |
| 喫水 | 1.9m |
| 主機 | ディーゼル 2軸 |
| ディーゼル（1150馬力） 2基 | |
| 速力 | 55kts |
| 航続距離 | 300nm/kts |
| 乗員 | 5名 |
| 排水量 | 17t |
| 全長 | 13.75m |
| 全幅 | 4.8m |
| 喫水 | 1.9m |
| 主機 | ディーゼル 2軸 |
| ディーゼル（1150馬力） 2基 | |
| 速力 | 51kts |
| 航続距離 | 250nm/kts |
| 乗員 | 5名 |
【兵装】
（原型）
| 対艦ミサイル | C-701艦対艦ミサイル（YJ-7/鷹撃7） / 連装もしくは4連装発射筒 | 2基 |
| 近接防御 | 23mm機関砲 | 1基 |
| 対艦ミサイル | Kowsar1/3艦対艦ミサイル（C-701艦対艦ミサイル（YJ-7/鷹撃7） のイラン名）もしくはKosar艦対艦ミサイル（TL-10艦対艦ミサイルのイラン名/ 連装発射筒 | 2基 |
| 近接防御 | 機関砲 | 1〜2基 |
| 多連装ロケット発射機 | 口径不明（107mm〜122mm級） | 1基 |
| 近接防御 | 機関砲 | 1〜2基 |
【電子兵装】
（原型）
| 対空/水上捜索用レーダー | 1基 | |
| 航海用レーダー | 1基 | |
| OT-3光学センサー | 1基 | |
| 射撃統制システム（対艦ミサイル用） | 1基 |
C-14双胴型小型ミサイル艇「Chinese Cat/China Cat」は、中国船舶工業集団公司が2002年に発表した輸出用の小型ミサイル艇[1]。同年5月にはイランへの輸出が報じられている[1]。輸出数についてはSIPRI 「The SIPRI Arms Transfers Database」よると9隻とされており、内4隻は対艦ミサイル未搭載とのこと[2]。イランではC-14Mの名称でライセンス生産が実施されている[1][2]。なお、C-14/C-14Mはイラン海軍ではなくイスラーム革命防衛隊水上部隊に配備されている[3]。イランでは対艦ミサイル搭載型以外に、多連装ロケット発射機搭載型や機関銃のみを搭載したタイプのC-14を建造しており、自国向けだけでなく兵器見本市で輸出向け艦艇として宣伝している[4][5]。
C-14は、満載排水量19t、全長23m（水線長14m）、全幅4m、喫水1m（数値は原型。イラン輸出型C-14Mはサイズが異なる）とミサイル艇としては最小のクラスに属する[1][3]。C-14の特徴は、船体にカタマラン(双胴)方式を採用していることである。カタマラン方式とは2つの船体を並行に繋げて1つの船体とした形の船のことを指す。この形式は、同じ排水量の単胴式船舶に比べて水に触れる部分が少なく出来ることから速度発揮に有利である。また、安定性が高く、甲板面積を広く取ることが出来るのもメリット。反面、単胴船に比べ浸水時の復元性に問題がある、旋回性能に劣るなどの欠点も存在する。カタマラン方式は、さまざまな利点は有るものの、既存の軍用高速艇の多くが採用している単胴船体を代替するには至っていないのが現状である。C-14は、ディーゼル機関2基を搭載し、最大速力は50kts以上[1]。イラン輸出型のC-14Mは1150馬力ディーゼル機関×2基を搭載しており、シーステイト3〜4の状態で51〜55ktsの最高速力を発揮し得る[4]。
中国船舶工業集団公司が発表したC-14の写真や兵器ショーで展示された模型では、艦尾にC-701艦対艦ミサイル（YJ-7/鷹撃7）の連装もしくは4連装発射機2基が搭載されている[1]。C-701はYJ-8（C-801）対艦ミサイルの半分程の大きさのコンパクトな対艦ミサイルで、小型艇などへの搭載に適している[6]。C-701には、光学（TV）誘導型(C-701T)やミリ波レーダー誘導型(C-701R)など各種派生型があるが、C-14はユーザーの要望に応じて各タイプの運用が可能。C-701の最大射程はタイプにより異なるが15〜25km。これに対して、イランへの輸出型C-14Mでは、Kosar1/3(Kowsarの表記もある)艦対艦ミサイル（C-701のイラン名）、もしくはKosar艦対艦ミサイル（TL-10艦対艦ミサイルのイラン名）の連装発射筒2基が搭載されている[4]。TL-10艦対艦ミサイルは、洪都航空工業集団公司が開発したC-701と同クラスの小型対艦ミサイルであり、天龍-10(TL-10)や艦艦-10(JJ-10)の名称が与えられている[7]。誘導形式は光学（TV）誘導型(TL-10A)と、アクティブレーダー誘導型(TL-10B)の2種類が存在する。TL-10の諸元は、射程4〜15km、最大飛行速度マッハ0.85。全長2.5m、直径180cm、重量105kg、弾頭重量30kg、命中率85%となっている。
C-14は、船体が小型のため搭載できる兵装には限界が有り、対艦ミサイル以外には23mm機関砲1挺を艦橋直前にピントルマウント式に装備する程度[3]。イランでは対艦ミサイル搭載型だけでなく、機関砲（20mm級？）のみ搭載のタイプや多連装ロケット発射機搭載型などの派生型が開発されている。多連装ロケットについては、イランの他の高速艇にも搭載されているHaseb 107mmロケット（中国の63式107mm12連装ロケット砲のイラン生産版）やソ連/中国系の122mmロケット砲などが搭載されているものと考えられる[4][8]。
電子装備としては、ラティスマストに対空/水上捜索用レーダーと航海用レーダー、マスト直前にはOT-3光学センサーが装備されている。OT-3は、艦艇だけでなく陸上車両やヘリコプターなどに搭載することも可能なコンパクトなセンサーであり、赤外線暗視装置やレーザー照準装置が内蔵されており、目標の捜索・照準やミサイルの誘導などに使用される[9]。イランで建造されたC-14Mではこれらの電子装備は搭載されておらず、それに替わって形式不明のレドーム（航海用レーダーか）が搭載されている[4]。
C-14は、ミサイル艇としては最小のクラスに属する。小型の船体は被発見率やレーダー反射面積の上で有利であり、55ノットの最高速力も相まって、沿岸防衛用の戦力としては無視できない能力を有している。しかし、小型の船体は、荒天下での航洋性能の不足や航続距離の短さといった問題点も有しており、搭載できる電子装備にも限界があり自力での探知能力は十分なものではない。そして経空脅威に対する自己防衛力については事実上皆無といわざるを得ない。
ただし、これらの問題はミサイル艇という艦種にとってはおおむね共通した課題であるのも事実である。その能力的な限界をふまえた上で有効に運用することができれば、大型艦艇にとっても侮りがたい戦力になるものと思われる。
【参考資料】
[1]Global Security「C-14 China Cat Class Fast Attack Craft, Missile」
[2]SIPRI「The SIPRI Arms Transfers Database」
[3]Eric Wertheim (Author)『Naval Institute Guide to Combat Fleets of the World: Their Ships, Aircraft, and Systems (Naval Institute Guide to Combat Fleets of the World)』（US Naval Institute Press; 15 edition/ 2007年5月30日)326頁
[4]Iran Defence Forum 「Iranian Naval Power-2007」
[5]Modlex Main page「C14 M Fast Patrol Craft」
[6]Chinese Defence Today「YJ-7 (C-701) Anti-Ship Missile」
[7]ミリタリー選書8 軍用機ウエポン・ハンドブック（/青木謙知/イカロス出版/2005年）102〜103頁。
[8]Modlex Main page「Haseb 107 mm Rocket」
[9]独沐秋风·驭风飞翔的旅程「外媒·《伊朗：我们是“中国猫”的第一个客户》」(2006年12月17日)
中国海軍