日本の周辺国が装備する兵器のデータベース






▼演習中のHQ-61部隊、HQ-7と混成配備されているのが分かる


▼追尾/イルミネーター用レーダー(牽引式)。各ミサイル発射機と有線で接続しているのが分かる。


HQ-61A性能緒元
全長3.990m
直径28.6cm
翼長1.166m
重量300〜310kg
弾頭重量40kg
最大速度マッハ3.0
射程2.5〜10km(12km説もある)
最大射高8km
誘導方式無線指令誘導+セミアクティブ・レーダー・ホーミング

HQ-61(紅旗61)は中国が独自開発した最初の中〜低高度用地対空ミサイル・システムである。地対空ミサイルがHQ-61A(HQ-61甲)、艦対空ミサイルがHQ-61Bの名称を付与されている。HQ-61のほかにもPL-9、SD-1等の複数の名称がある。艦載型(HQ-61B)は西側からCSA-N-2のコードネームが与えられた。

HQ-61は、ソ連から供与された高高度用対空ミサイルであるS-75ドヴィナ(SA-2ガイドライン)やそれを国産化したHQ-1/HQ-2 SAMを補完する中〜低高度用地対空ミサイルとして開発が行われた。開発は1965年9月から開始された。当初の開発名称は紅旗41だったが、その後陸海軍で共同開発を行うこととされ陸軍向けはHQ-6、海軍向けはRF-6と改称された。さらに1970年前後になって、HQ-61(紅旗61)に再改称され現在の名称となった[9]。

HQ-61の開発は中ソ対立後の国際的孤立の中で行われ、さらに悪いことに、当時の中国には対空ミサイルの開発に関する技術的蓄積はほとんど存在しなかった。そのため最初は、海外の公開情報を収集して、地対空ミサイルの構造や運用方法を研究することから開始された。この検討を経て、開発の手本としてアメリカのAIM-7スパローAAMをモデルとすることが決定された。開発するミサイルの形状、大きさもスパローと同じとされ、推進装置に固体ロケットモーター方式を採用、誘導方式がセミアクティブ・レーダー・ホーミング方式であることもスパローと共通している。ただし開発の進展に伴い、HQ-61はスパローより一回り大きなミサイルになった(全長3.8m→3.99m、直径203mm→286mm)。これは当時の中国のロケットモーター技術の遅れに起因するものであり、スパローと同等の射程を確保するにはスパローよりも多くの燃料を搭載する必要があったためである。ちなみにHQ-61の最大射程10〜12kmは、初期のシースパローSAMとほぼ同等である。HQ-61の開発のネックとなったのは中国の電子技術の立ち遅れであり、各種コンポーネントの開発は遅々として進まなかった。この状況を打開するきっかけとなったのは、1966〜67年に海南島近海で墜落したアメリカ軍のF-4Bを回収してスパローの現物を入手したことである。中国はこのスパローを分析することで技術的空白をある程度補うことに成功した。しかし、その後も電子装備の小型化・機器の信頼性の確保・グラウンドクラッターの中から目標を探知する技術の確立等の様々な技術的難題に直面し、文化大革命の混乱もあってこれらの問題を解決するには長い時間を要することとなった。

地対空ミサイルとして開発が開始されたHQ-61であったが、1967年からはHQ-61の艦対空ミサイル化を優先して行うことになった。当時の中国海軍には対空砲以外の防空兵器が存在せず、対空ミサイルの導入が強く求められたためである。HQ-61の開発は北京の第25研究所が担当していたが、艦対空ミサイル開発を優先するとの決定を受けて上海の上海機電第二局に担当が変更され、同局と海軍との協力の下で開発が行われることになった。開発リソースを集約するため、HQ-61の地対空ミサイル型の開発は一時中断された。艦載型はその後紆余曲折を経て1988年に制式化され、HQ-61Bと命名された。HQ-61Bの開発にあたっては、1970年代末から関係が正常化した西側諸国より各種技術の導入が可能となったことが大きく寄与している。特にイタリアから購入したアスピーデAAMの技術が重要な役割を果たしたとされる。中断されていたHQ-61の地対空ミサイルシステムの開発は1976年から再開されたが、これは艦対空ミサイルを地対空ミサイルに転用する作業であり、レーダー等の機材を小型化しトラックでの輸送を可能とする等の作業が行われた。1984年には実用試験にこぎつけ、1986年にHQ-61Aとして制式化された(制式化は1988年であるとの説もある)。

HQ-61はスパローをモデルとして設計されたため、外見はスパローの拡大版の様な形状になっている。ただし、スパローはミサイル中央に操縦翼、尾部に安定翼をそれぞれ十字型に装着したが、HQ-61はミサイル中央部に十字型の安定翼が、尾部にはX字型の操縦翼が装着されている[4]。操縦/安定翼はミサイルを発射機に取り付ける直前に弾体に装着される。ミサイルは発射機に素の状態で装着されるため、外気温の変化や天候の悪化等による影響を受けやすい問題を有している。推進装置は固体ロケットモーターを採用しており、最大速度はマッハ3.0、射程は2,5〜10km、最大射高は8km。ミサイルの誘導はI/Jバンド連続波レーダーを使用したセミアクティブ・レーダー・ホーミングと無線指令誘導の併用で、ミサイルの命中率は64〜80%とされる。HQ-61Aを装備する地対空ミサイル中隊は、ミサイル発射機搭載車2輌、移動式発電機、指揮統制車、追尾/イルミネーター用レーダー搭載車、捜索用の目標表示レーダー搭載車と24発の予備のミサイルから構成されている。ミサイル発射機は連装式で、延安SX250 6×6野戦用トラックの荷台に搭載される。トラックには4基のジャッキが搭載されており、発射時にはこれを地面に下ろして車体を安定させる役割を果たす。HQ-61は艦載型では1つのランチャーを1つの射撃統制システムでコントロールしていたが、地対空ミサイル化にあたって複数のミサイル発射機に指揮命令を与えることが可能なように設計変更が行われた。ただし、1基のイルミネーターで誘導可能なミサイルが1発なのは艦載型と同じである。追尾/イルミネーター用レーダーは皿型レーダーで、ECM環境下で使用するTVモニターが搭載されているとの情報もあるが、詳細については不明である。目標表示レーダーの571型低空警戒レーダーはCバンドレーダーで、1965年に華中工学院と武漢濱湖機械廠により共同開発された。571型は特に低空の目標捜索に主眼をおいたレーダーであり、目標の距離と方位を表示する。

HQ-61Aは、長期にわたる開発期間を経て1980年代後半から部隊配備が開始された。しかし、中国は同時期にフランスからクロタル自走SAMシステムを購入しHQ-7(紅旗7)として国産化し、HQ-61Aの部隊配備は限定的なものに留まっている。これはHQ-7の方が生産コストが低く性能的にも優れており運用上において取り扱いやすいことが要因とされる。防空ミサイル部隊では、HQ-61AはHQ-7やロシアから購入したHQ-17中距離地対空ミサイル(紅旗17/トールM1/SA-15ガントレット)と混成配備されるのが通常である。HQ-61の誘導方式がセミアクティブ・レーダー・ホーミング方式なのに対してHQ-7やトールM1は無線指令誘導方式を採用しており、両者を混成配備することで、敵の電子攻撃に対する防空ミサイル部隊の抵抗力を高めるのが狙いである。HQ-61が陣地展開する際には4両のミサイル発射機を扇型に配置するが、目標の進入方向が不明な状況では発射機を円状に配置して全方位への攻撃が可能な様にして布陣する。指揮車両やレーダーは陣地とは別の場所に展開して指揮統制を行うことも可能。

HQ-61Aは、政治的混乱や国際的孤立・技術的立ち遅れの中で開発に着手され、地対空ミサイル→艦隊空ミサイル→地対空ミサイルという複雑な開発過程と20年以上の時間を費やして何とか実用化に漕ぎ着けることに成功した。これは同時期に着手された兵器開発計画で立ち消えになったものが多いことを考えると、関係者の努力が実を結んだ点で幸運であったといえる。ミサイルの技術水準は1960年代の技術をベースとしており、実用化された1980年代末の水準では性能、運用面で立ち遅れた物になっていたのは致し方のないことであった。HQ-61の意義としては、対空ミサイルおよびその関連技術の開発経験の蓄積と陸海軍における対空ミサイル運用ノウハウの確立に意義があったと思われる。

【参考資料】
[1]艦載兵器ハンドブック改訂第2版(海人社)
[2]現代艦船-海上力量版 2005年4基B版「射天之箭-技術進歩対中国早期中低空地空導弾発展的影響」(現代艦船雑誌社)
[3]航空週刊増刊B 「中国"紅旗"系列導弾」(国際航空雑誌社)
[4]Chinese Defence Today「HongQi 61A Surface-to-Air Missile System」
[5]Global Security
[6]Missile.index
[7]中国武器大全
[8]武漢方志「科学志-自然科学-工業科学-」(武漢市地方志弁公室編纂)
[9]Jane's Strategic Weapon Systems「HQ-6/RF-6 (SD-1 and CSA-N-2) (China), Defensive weapons」

【関連項目】
HQ-61艦対空ミサイル(紅旗61/571型/PL-9/SD-1/RF-61/CSA-N-2)

中国海軍
中国陸軍

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