日本の周辺国が装備する兵器のデータベース


▼HQ-7


▼中国空軍で使用されるHQ-7牽引型

▼改良型FM-90の射撃ユニット車両

▼FM-90の兵装ターレット。

▼FM-90の改良型。上はプラットホームを6×6装輪装甲車に変更。下はミサイル搭載数を6基に増加、捜索用レーダーなどの追尾システムを新型に換装したもの。


▼2009年10月1日に開催された中国建国60周年記念軍事パレードに登場したHQ-7B。


HQ-7(FM-80)性能緒元
全長3.00m
直径0.156m
翼長0.55m
重量84.5kg
弾頭破片効果榴弾(HE-FRAG )
推進装置一段固体推進薬ロケットモーター
最大速度マッハ2.3
射程500〜12,000m
射高30〜5,000m
誘導方式無線指令+光学/赤外線誘導

HQ-7はフランスのクロタール対空ミサイル・システムをベースに開発された地対空/艦隊空用の中・低空域用対空ミサイル・システムである。HQ-7(紅旗7)は中国軍での制式名称であり、輸出名としてはFM-80(飛meng虫+蒙)が使用されている。1998年には改良型のFM-90(FM-80M)が兵器ショーで公開されている。

HQ-7のベースとなったクロタールは、1964年に南アフリカ共和国の依頼を受けてフランスのトムソンCSF社(現タレス社)が開発した自走式の中・低高度用対空ミサイル・システムで、1971年にカクタスの名称で南アフリカ軍に就役。その後改良型がクロタールと命名されてフランス空軍でも用地防空用として採用、さらにフランス海軍向けの艦載型も開発された。

クロタールは、高度50〜3,000mをマッハ1.2程度で飛行する目標を迎撃することを想定して開発された。クロタールシステムは、ミサイルと追跡用レーダーを搭載する射撃ユニット車と、捜索用レーダーと管制装置を搭載する捜索ユニット車から構成され、通常は2〜3両の射撃ユニットと1両の捜索ユニットで一個小隊を構成する。初期型では各車両間の連絡は有線式であったが、後期型では無線式になり利便性を向上させている。射撃・捜索の両ユニットともP4R4×4装輪装甲車に搭載されており、各車両には乗員2名が登場している。ミサイル発射時には車体に3基搭載された油圧式ジャッキにより車体を持ち上げて安定させる。P4Rの駆動方式はディーゼル・エレクトリック式で、230馬力のディーゼルエンジンで発動機を回す電動システムを採用しており、航続距離は500km、最高速度は60km/h。ディーゼル・エレクトリック式は、変速機を省略でき走行時の騒音減少、安定性・加速性の向上に効果があるとされる。車体は3〜5mmの均質鋼板で製作されている。

捜索ユニット車には、最大捜索距離18kmのEバンド・パルスドップラーレーダーが搭載されており、最大30目標の情報処理が可能。レーダーが目標を探知するとIFF(敵味方識別)装置が働き、敵機と判断した場合は目標を追尾して情報を射撃ユニットに送る。射撃ユニット車には、ミサイル発射筒4基と、追尾用のJバンド・モノパルスレーダー(有効射程17km)、ミサイル誘導用のIバンド誘導派発生装置、バックアップ用の赤外線追随装置、光学追随装置、システム統制用のデジタルコンピュータなどが搭載されている。ミサイルの誘導は、無線指令誘導方式であり、追尾用レーダーで目標とミサイルの双方を追跡して自動的にミサイルに誘導指示を行うが、電子妨害などによりレーダーが使用できない状況に備えて赤外線/光学追跡モードも用意されている。クロタールシステムの主兵装であるマトラR440ミサイルは、重量85kg、全長2.89m、直径0.15mで、弾頭は15kgの破片効果榴弾(HE-FRAG)で、赤外線式近接信管と瞬発信管が装着されている。推進装置は固体ロケット式で、発射後2.3秒で最大速度のマッハ2.3まで加速される。有効射程は50〜10,000m、有効高度は15〜4,000m。

中国は、1970年代後半に西側との関係が改善すると、各国から兵器を輸入してそれをベースにリバース・エンジニアリングを行って国産化する手法をしばしば取った。HQ-7も同様の方法によって、少数輸入されたクロタールを元にして国産化された。トムソン社やフランス政府は、中国の行為に抗議することなく、その後も1987年に艦載型クロタールを輸出して中国がHHQ-7(海紅旗7)短SAM開発のベースとすることを繰り返している。これは、おそらく冷戦時代に西側に中国が協力する見返りとして、クロタールのコピーを黙認・暗黙の了解を与えたのでは無いかと推測されている。また、後にクロタールの技術移転に関して両国の間で合意が成立したとも伝えられている。

HQ-7の開発は、1979年3月に総参謀部が提出した、開発が難航していたHQ-61A中距離地対空ミサイル(紅旗61A/SD-1/PL-9)に代わる低高度向け地対空ミサイルの開発要求であった。同年6月には国務院と中央軍事委員会が正式に総参謀部の要求を承認しこの新型ミサイルには「HQ-7号導弾」と命名された。クロタールのリバース・エンジニアリングとHQ-7の開発は、ミサイル・システム全般が航天機電集団二院(長峰機電技術研究設計院。現中国航天科工集団)、レーダーと射撃完成システムが第23研究所、装甲車など地上用装備が第206研究所等によって担当された。試作ミサイルは1983年に完成。ミサイルの発射試験は1986年に実施され、1988年6月には生産認可が交付され、師団防空用装備として配備が開始された。中国空軍でも基地防空用として、装甲シェルターに搭載された牽引式HQ-7の配備を行っている。1989年のドバイ航空宇宙ショーでは、HQ-7の輸出型であるFM-80が公開された。FM-80は、パキスタンやイランへ輸出されたという情報もある。

HQ-7の基本的な諸元は、原型のクロタールと同じ。有効射程は速度400m/sの目標に対し8,600m、速度300m/sの目標に対して1,0000m、ヘリコプターに対して12,000m、有効高度は30〜5,000m。最大30目標を探知し、そのうち12目標を追尾して、同時に4目標にミサイルの誘導を行うことが可能。HQ-7の防空大隊は、通常3個作戦中隊と技術支援中隊(10両の支援車両)、補給整備部隊から編制される。各作戦中隊は一個捜索小隊と3個射撃小隊から構成され、一個射撃小隊には3両の射撃ユニット車が配備される。部隊での運用ではHQ-61地対空ミサイル小隊との混成運用も確認されているが、これは誘導方式の異なるミサイル(HQ-7は無線指令誘導、HQ-61はセミ・アクティブレーダー誘導方式)を同時に運用することで、敵の電子妨害に対して抗堪性を向上させる目的があるものと推測される。

1998年には、FM-80の輸出向け事業を担当している中国国営精密機械進出口総公司(CNPMIEC)が、HQ-7の改良型であるFM-90を公開している。FM-90の開発は1995年に開始された。開発のきっかけは湾岸戦争の戦訓から、より低高度の目標や巡航ミサイル・空対地ミサイル・対レーダーミサイルに対する迎撃能力の向上、電子妨害に対する抗堪性強化などが求められたことによる。FM-90の改良点は以下の通り。

射撃統制用コンピュータの換装HQ-7はLSI(大規模集積回路)を使用したS-9コンピュータを使用していたが、FM-90ではVLSI(超大規模集積回路)を使用したものに換装
システムのデジタル化HQ-7の電子回路は1970年代のアナログ方式だったのを、デジタル式に変更
追尾用レーダーの換装探知距離17kmのモノパルスレーダーから、探知距離25kmのSバンド・パルスドップラーレーダに換装し、探知距離と精度を向上。
赤外線暗視装置の追加光学追跡装置に赤外線暗視装置を組み込み、夜間のミサイル誘導を可能とした。
データリンク機能の採用HQ-7の車両間の情報伝達が有線式だったのを無線式データリンク機能に変更。
光学追跡装置の能力向上探知距離を17kmから20kmに延伸。
ミサイルの能力向上最大射程が15,000mに延伸、射撃限界高度が15mとより低空の目標に対する攻撃が可能となった。ミサイルの最高速度はマッハ2.3からマッハ3に上昇。ただし、最小射程は500mから700mとなっている。
命中精度の向上ミサイルシーカー、誘導装置の改善により、命中精度と電子妨害に対する抗堪性を向上。

システム一式による防空範囲は60平方キロメートル。高度20m、速度500km/s、RCS(Radar Cross Section: レーダー反射断面積)1平方メートルの目標に対するシステムの反応時間は6秒(HQ-7では10秒)。FM-90は、3つ目標に対して4つの異なる誘導方式(レーダー無線指令方式、光学無線指令方式、赤外線無線指令方式、光学/赤外手動指令方式)でミサイルを指向させることが可能。連続発射間隔は3秒。システムのデジタル化・モジュール化を進めたため、整備性が向上し、電子妨害や悪天候下での目標探知能力が向上し、システムの生存性も高まっている。FM-90の故障修理に要する平均時間は約30分となっている。

FM-90とHQ-7の外観上の変更点は、垂直アンテナの増加装備と、射撃ユニット車両に赤外線暗視装置が装備された点である。FM-90の問題点としては、命中時の撃破確立がHQ-7の85〜90%から80%に低下したこと、システムの重量が重くなったため、プラットホーム車体の最高速度は60km/hから50km/hに低下した点が挙げられる。搭載能力の向上のため、新たに6×6装輪装甲車をプラットホームに使用したタイプも確認されている。

FM-90は中国軍への配備が行われているほか、各国への売込み活動が成されている。2011年にはバングラデシュ空軍での運用が行われていることが明らかになった[11]。FM-90の派生型としては、2002年の珠海航空航天展覧会で登場したFM-90の艦載型FM-90Nが知られている。また、ミサイルの搭載数を6発に増やし、レーダーや光学装置を新型に換装した改良型も兵器ショーで展示されているが、詳細については不明。

HQ-7の導入は、長らく低空域における防空を高射砲に頼ってきた中国軍にとって防空能力を大きく改善する福音となるものであった。HQ-7のベースとなったクロタールは既に各国で運用が行われている信頼性のある防空ミサイル・システムであり、その能力と信頼性は中国軍でも高く評価された。HQ-7は、開発に長期間を要していたHQ-61A対空ミサイルに代わって、中国の陸・海・空軍の低・中高度防空ミサイルの主力の地位を占めることになった。この点で、HQ-7は中国軍の防空体制構築において極めて大きな役割を果たした装備であったという事ができる。

【2009年10月3日追記】
2009年10月1日に開催された中国建国60周年記念軍事パレード(と事前に行われた予行演習)において、HQ-7の改良型であるHQ-7B対空ミサイル・システムが登場し、その存在が公にされた[8]。HQ-7Bは内蒙古第一機械製造集団有限公司が開発したとされる6×6装輪プラットフォーム[9]にミサイルランチャー4基と追跡用レーダーを搭載している。

HQ-7Bはロケットモーターを改良型に換装しており、そのためミサイルの全長・重量がHQ-7よりも増加している[10]。それに伴いミサイルランチャーもわずかに大型化している。プラットフォームを変更したのはこの重量増に対処するための措置であった。HQ-7のランチャーを支える外枠は5組だったが、重量増により構造を強化する必要が生じたためHQ-7Bの外枠は1つ多い6組になっている[10]。

【参考資料】
[1]海事大観-中国主戦兵器 2005年10月号(総第58期)「“紅旗”防空導弾家族戦力全透視」(陳肇祥/中国船舶報社)
[2]世界航空航天博覧 2005年8月(総第141期)「“飛meng”防空反導系統PK“捕鯨叉”」(編集部/《世界航空航天博覧》雑誌社)
[3]AFV94-戦車マガジン3月号別冊 1994 世界の戦車年鑑 (株式会社 戦車マガジン)
[4]中国軍事用語辞典(茅原郁生/蒼蒼社)
[5]艦載兵器ハンドブック改訂第2版(海人社)
[6]Chinese Defence Today
[7]中国武器大全
[8]新浪網「紅旗7B防空導弾方隊通過天安門広場」(2009年10月1日)
[9]「鉄甲飛騎踏燕来--我国新型8×8輪式歩兵戦車発展全記録」
[10]姜浩・叢語「国産新型防空導弾深度解析 "紅旗"-7--走系列化改進発展之路」(『兵工科技』2009年12月下号/兵工科技雑誌社)55〜59頁
[11]凤凰网-军事频道「中国向孟加拉交付FM-90防空导弹 女总理亲临检阅」(2011年12月7日)

中国陸軍
HQ-7艦対空ミサイル(紅旗7/海紅旗7/HHQ-7/FM-80/FM-90/CSA-N-4)

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