日本の周辺国が装備する兵器のデータベース


▼L-15AJT(Advanced Jet Trainer)型の試作機




▼工場で製作中のL-15(AJT型)。



▼L-15(AJT型)のコクピット。


▼LIFT(lead-in fighter trainer)型の試作機であるL-15試作6号機。機首にはPESAレーダーが搭載されている。


性能緒元
重量6,800kg(最大離陸重量9,800kg)
全長12.27m
全幅9.480m
全高4.810m
エンジン試作1号機:DV-2Fターボファンエンジン(推力 ドライ2,200kg)×2
 試作3、4、5号機/AJT型:AI-222K-25ターボファンエンジン(推力 ドライ2,500kg)×2
 試作6号機/LIFT型:AI-222K-25Fターボファンエンジン(推力 A/B 4,200kg)×2
 JL-10(予定):「岷山」ターボファンエンジン(推力 A/B 4,000〜5,000kgクラス)×2
最大速度マッハ0.95(AJT型)/マッハ1.4(LIFT型)
航続距離2,800km
上昇限度16,000m
最大搭載重量2t(AJT型)/3.5t(LIFT型)
武装PL-9赤外線誘導空対空ミサイル(霹靂9)
 PL-8赤外線誘導空対空ミサイル(霹靂8/Python-3)
 爆弾/ロケット弾ポッドなど
乗員2名

L-15(練-15/JL-10/教練10)は洪都航空工業集団(HAIG)により開発された高等練習機で、HAIGによると各国で開発されているMAKO(欧)、T-50(韓)、Yak-130(露)などに相当する機体であるとしている[1]。設計主任はHAIGの張弘技師。

【開発経緯】
 中国空軍では、1990年代にロシアからSu-27戦闘機を導入したが、その高い機動性能や先進的な電子装備は従来の中国の戦闘機とは大きな格差があり、既存の高等練習機であるJJ-7 練習機では性能格差が大きいため、十分な機種転換訓練を施す事ができなかった[2]。Su-27の複座型Su-27UBKの購入数が限られていたこともあり、Su-27の導入後に事故が頻発することになった。空軍ではこの事態を受けて、Su-27UBKの追加購入を行うと共にパイロットの訓練体系の再検討を行った。その結果、第4世代戦闘機の空中機動能力や電子装備を再現することが可能な高等練習機の導入が不可欠であるとの結論に至った[2]。空軍の高等練習機の需要に答えて、練習機の開発経験の豊富なHAIGと貴州航空機工業(GAIC)の2社が、次世代高等練習機の開発に名乗りをあげる事になった。ただし、財政問題から政府からの資金提供は行われず、両社の自社資金による開発とされた。
 GAICが、同社が生産しているJJ-7 練習機の発展型ともいえるJL-9練習機「山鷹」(教練9/CY-1/FTC-2000)を提案・開発したのに対して、HAIGは、より大型で新技術を多数盛り込んだ能力の高い機体の開発に着手した。これがL-15練習機である。HAIGでは1990年代中期から高等練習機の開発可能性に関するスタディを行っており、2001年から正式にL-15の開発が開始された[3]。HAIGは、L-15の開発に当たってロシアのヤコブレフOKBから技術援助を受けており、L-15の機体形状はヤコブレフ社のYak-130の影響を受けた外見となっている[4]。ヤコブレフではL-15とYak-130は機体規模や能力において異なるレベルの機体であり、国際市場において競合はしないと述べている[4]。
 L-15は、2001年の北京航空展覧会で模型が展示され、その存在が公にされた[4]。2004年の珠海航空ショーでは全規模金属模型が公開、合わせて「飛獅(FLYLION)」という名称が与えられたことも明らかにされた[5]。その後、HAIGが自社の練習機に鷹に由来する名称をつけることを決定したためL-15の名称も「猟鷹」に変更された。
 HAIGはL-15の開発において、主に高等練習機として運用を行うAJT(Advanced Jet Trainer)型と、レーダーを搭載し兵器システムの訓練も可能なLIFT(lead-in fighter trainer)型の二種類の機体を開発する方針を採用した。AJT型の試作1号機は2005年末の初飛行を予定していたが、試作機が搭載したスロバキア製DV-2Fターボファンエンジン(推力2,200kg)の不調から翌年に延期。2006年3月13日に初飛行に成功した[6]。試製2号機は、静強度試験用に製造。試製3号機は、AJT量産型に準じた各種装備を搭載しエンジンをウクライナ製のAI-222K-25ターボファンエンジン(推力2,500kg)に換装した機体で、2007年に完成し各種地上試験を経た後、2008年5月10日に初飛行に成功した[7]。試作4、5号機は試作3号機をベースとしたAJT型。試作6号機はLIFT型として製造され、2010年の珠海航空ショーで展示飛行を行っている[8]。試作6号機では、アフターバーナー付きのAI-222K-25Fターボファンエンジン(推力A/B 4,200kg)を搭載している。
 中国空軍では、これまでSu-27UBKやSu-30MKKによってSu-27やSu-30の搭乗員の訓練を実施してきたが、機体寿命が長く(Su-27の機体寿命は3000時間)運用コストがはるかに安いL-15が実用化されれば、経費の節約と訓練系統の効率化が実現できるとされる。HAIGの試算では、複座戦闘機を訓練に使用した場合の1/8〜1/10の経費に抑えられるとしている[11]
 漢和防務評論2013年3月号の報道によると、中国空軍はL-15を「JL-10(教練10)」の制式名で採用する事を決定したとのこと[17]。空軍の採用に当たっては中国製エンジンへの換装が条件とされた。搭載エンジンとしては最大推力4,000〜5.000kgクラスの「岷山」ターボファンエンジンが挙げられているが、同エンジンは現在開発中で、実用化にはなお4〜5年を要する状態[17]。そのため2016年段階では、ウクライナ製AI-222K-25エンジンの搭載が継続されている[20]。
 HAIGは国内外で開催される兵器博覧会にL-15の実機を参加させL-15の海外輸出を目指して積極的に活動しており、ザンビア空軍での採用を獲得している[20]。L-15の一機あたりの単価は2008年段階で1,500万ドルと見積もられている[15]。

【機体特徴】
 L-15はタンデム複座・双発エンジンの機体で、主翼が機体に溶け込むようになっているブレンデッド・ウイング・ボディを採用している[3][9]。設計においては、第四世代戦闘機への移行を容易にするため、大迎え角での高度な機動性を確保することが求められており、最大で30度の迎え角でも飛行が行えるとされる[9] [10]。主翼はテーパー翼を採用しており、主翼の内翼部と外翼部の中間にはドッグツースが付けられている。主翼前縁部はLEXを形成しており、その下部にインテークを配置している[9]。設計段階では短垂直尾翼と双垂直尾翼の双方が検討されていたが、最終的な設計案では単尾翼に決定している[10]。水平尾翼は全動式[10]。L-15は上記のような設計によって第4世代戦闘機に似た空力特性を持ち、J-10やJ-11戦闘機の機動を模擬しての訓練が可能[9]。
 主翼には合計6つのハードポイントが設置されており、必要であれば改修を行って最大2tの対地・対空・対艦兵装を装備することも可能[9]。LIFT型では、ハードポイントが合計9箇所に増加されており、最大搭載重量は3.5tに増加している[11]。兵器訓練に使用するほかに、若干の改修を加えることで軽攻撃機としても運用することが可能で、2016年にはL-15 AFT(Attacker/Fighter/Trainer)型としてその存在が明らかにされた。AFT型は、BVR-AAMや精密誘導兵器の運用能力が付与され、作戦機としての運用を可能とする設計が施されている[20]。
 視界確保のため、前部座席に比べて後部座席はかなり高い位置に配置され、前席は16度、後席は6度の下方視界を確保している[10]。座席は何れもゼロ・ゼロ式射出座席[9]。二分割型キャノピーは横開き式。操縦席はグラスコクピット化されており、前後座席ともに多目的表示装置が装備されている(AJT型では各座席に2基、LIFT型では3基[11])。ただし、ヘッドアップディスプレイは前席のみ装備[10]。各種操作にはHOTAS概念が取り入れられている[9]。L-15のアビオニクスは高度に統合化されており、設計においては良好な信頼性と整備性を実現することが重視されている。搭載されている戦術訓練シミュレーターを利用することで、各種の飛行状態を再現してその状態での訓練が可能であり、空対空戦闘、空対地任務、電子戦任務などの訓模擬練を実施することが出来る[10]。AJT型の搭載するレーダーはXバンドパルスドップラーレーダーで探知距離30km以上[21]。機体制御はコンピュータによる4重フライ・バイ・ワイヤシステムを採用しているが、中国の練習機で同システムを採用したのはL-15が初となる[10]。
LIFT型では、アビオニクスをさらに高度化すると共に、機首を延長してPESA(passive electronically scanned array)レーダーを搭載しており、各種兵器システムの運用訓練も可能となっている[11][12]。LIFT型のPESAレーダーの探知距離は75km以上とされている[21]。
 L-15は、長期間の運用を可能とする高い耐久性を有した機体構造が特徴。機体各部には広く複合材が採用されており、中国の練習機としては始めて水平尾翼にはハニカム構造の複合材が使われている[10]。機体寿命は10,000時間で30年間の運用に耐えうるが、これは中国の軍用機では最も長い機体寿命[10]。機体の荷重制限は+8G〜−3G[9]。
 L-15の試作1号機はスロバキアで開発されたDV-2Fターボファンエンジンを搭載しているが、量産型ではウクライナ製のAI-222K-25/AI-222K-25Fターボファンエンジン2基を搭載して[5]、将来的には中国製エンジンに置き換えていく予定。AJT型がアフターバーナーなしのAI-222K-25を、LIFT型がアフターバーナー付きのAI-222K-25Fを搭載することになる。
 AI-222K-25/AI-222K-25Fは、ウクライナのイフチェンコ社とロシアのサリュート社が共同開発したAI-222-25ターボファンエンジンをベースにして開発された。AI-222-25はロシアのYak-130にも搭載されているが、AI-222K-25F(EAI-222の別名も)はAI-222-25にはないアフターバーナーを装備して最大推力は原型の2,500kgから4,200kgに向上しており、エンジン制御はデジタル式で、オーバーホール間隔は2000時間。L-15の試作3〜5号機ではアフターバーナー未搭載のAI-222K-25を搭載している。当初の計画では、アフターバーナー付きのAI-222K-25Fは試作4、5号機に搭載される予定であったが、同エンジンの開発が遅れたこともあり実際に搭載されたのは試作6号機からとなった[11]。L-15は、AI-222K-25Fの搭載により漸く設計当初の目標であった超音速飛行が可能となった。双発エンジンのL-15は単発エンジンのJL-9(FTC-2000)に比べて余剰推力が大きいため、運動性が高くより多くの装備を搭載することが出来る。最高速力は、AJT型がマッハ0.98、アフターバーナー付きのLIFT型がマッハ1.4と発表されている[19]。ウクライナのザポロージェにあるMotor Sich engine company は、中国へのAI-222K-25Fターボファンエンジンの供給を開始したことを、同社のVyacheslav Boguslayev社長がインターファクス通信に明らかにした[13]。2010年6月までに合計20基のエンジンが中国に送られたとの事[14]。2011年7月19日の報道によると、ウクライナのMotor Sich社は、3年間で合計250台のAI-222エンジン(正確な型番は不明)を中国に供給する契約を締結したことを明らかにした[16]。これはMotor Sich社とロシアのサリュート社の合弁事業であるとのこと。AI-222K-25Fはウクライナから供給されているが、中国は将来的にはライセンス権を獲得した上での国産化を目指していた。しかし、イフチェンコ社では、同エンジンの生産にロシアのサリュート社も携わっていることから、中国への技術移転は出来ないとの意向を示している[14]。

【2013年4月14日追記】
 2013年2月にはL-15をベースとしたUAV(Unmanned Aerial Vehicle:無人航空機)技術デモンストレーター機(「無人機作戦験証機」)の写真が撮影された[18]。同機は、前部座席は原型のままだが、後部座席に遠隔操作もしくは観測機器を搭載、胴体下部に詳細不明の装置(データリンクアンテナ?)を装備している[18]。HAIGでは2012年11月に開催された珠海航空ショーにL-15の空力設計を応用して設計された「ブルーフォックス(藍狐)」無人標的機を出展[17]するなどUAV開発を進めており、L-15改造「無人機作戦験証機」はUAV開発の技術的蓄積を行うために開発されたものと考えられる。

【参考資料】
[1]崔绿、世红、黄国志「“飞狮”天降」(『兵工科技2004増刊-第五届珠海国际航展专辑』/兵工科技杂志社)10-14頁
[2]恒岳、红云「铸翼—中国空军训练作战系统探讨」(『航空档案』2006年10月号・Vol.187/航空档案杂志社)26-37頁
[3]姜浩、姜沁「秋高“猎鹰”飞」(『兵工科技2008増刊-2008珠海航展专辑』/兵工科技杂志社)21-25頁
[4]「五十年后又牵手」『兵工科技2008増刊-2008珠海航展专辑』/兵工科技杂志社)21-25頁
[5]空军世界「高教-9“山鹰” VS L-15高级教练机 高教谁主沉浮?」
[6]中国証券報「洪都航空猟鷹首飛成功」(2008年5月13日)
[7]中国公众科技网「“猎鹰”高级教练机」
[8]听剑「“猎鹰”06架飞行表演观感」(『兵工科技2010 23-24合刊2010珠海航展专辑』/兵工科技杂志社)41-48頁
[9]「L-15ファルコン(猎鹰)」(青木謙知『戦闘機年鑑 2011-2012』/イカロス出版/2011年)207頁
[10]熊伟「“猎鹰”探秘—访洪都集团设计所所长、L-15高教机总设计师张弘」(『航空知识』2006年4月号/航空知识杂志社)41-44頁
[11]伊鸣「“猎鹰”向“战鹰“的转变」(『兵工科技2010 23-24合刊2010珠海航展专辑』/兵工科技杂志社)29-31頁
[12]中華網「战斗型“猎鹰”:配相控阵雷达 超三代半图」(2010年11月18日)
[13]China Defense Blog (2008年1月30日付け報道)
[14]平可夫「L15教練機的出口難産預測」(『漢和防務評論 2011年3月号』)30-31頁
[15]「L15教練機在杜拝航展」(『漢和防務評論 2010年3月号』(No.77/35-37頁)
[16]ВПК.name「"Мотор сич" поставит Китаю 250 двигателей АИ-222」(2011年7月19日)
[17]Gordon Arthur「中国的教練機技術細節」(『漢和防務評論』2013年3月号)28頁
[18]Chinese Military Aviation「JL-10/L-15 Falcon」
[19]青木謙知『戦闘機年鑑2013-2014』(イカロス出版/2013年)205頁
[20]平可夫「L15整合更多武器系統」(『漢和防務評論』2016年6月号)44頁
[21] 銭佰華「鋳造空天利剣−記2015長春航空開放日活動(下)」(『航空世界』2016年1月号(総第199期)/中航出版伝媒有限責任公司)14頁

中国空軍

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