日本の周辺国が装備する兵器のデータベース




MBT-3000/VT-4は、中国兵器工業集団公司(中国北方工業公司/NORINCO)傘下の内蒙古第一機械集団有限公司が開発した新型輸出向け戦車[1]。その存在は、2011年末のCCTVの報道番組の中で明らかにされた。開発主任は馮益柏技師[1]。

名称から推測される通り、MBT-3000は1990年代に中国とパキスタンが共同開発したMBT-2000/アル・ハーリド戦車をベースとして全面的な能力向上を図った発展型[1]。MBT-2000/アル・ハーリドは、元々の共同開発国であるパキスタンのみならず、ミャンマー、モロッコ、バングラデシュへの輸出に成功し、一定の成功を収めたものと評価された。MBT-3000は今後も国際市場での競争力を強化するためには、さらなる戦車の能力向上が必要であるとの認識の下で開発が行われた[1]。MBT-2000ではウクライナ製エンジンやフランス製暗視装置など各国から調達された装備が使用されていたが、MBT-3000では中国国内の戦車関連技術の発展を前提として各コンポーネントを出来るだけ中国製のものに置き換えることも目標とされた[1]。

試作車両は2010年末〜2011年初め頃に完成[1][2]。同年11月までに延べ5,700kmにおよぶ走行試験を実施して、重大なトラブルは発生せず良好な成果を収めたとされる[1]。

【構造】
MBT-3000の基本的な車体構造は前身のMBT-2000を踏襲しており、前から操縦区画、戦闘区画、機関区画の三つに区分されている。防御力の強化に伴い、重量はMBT-2000(付加装甲つき)の48tより重い51〜52tとなっているが[2]、車体の大型化は抑えられており、そのサイズはMBT-2000とほぼ変わりない。人間工学に基づいた車内の装備配置の見直しが行われており、限られた空間において乗員の活動に出来るだけ支障をきたさない配慮がなされている[1]。同じく、いかなる気象条件においても乗員の戦闘力を維持するための装置として空調装置が導入されている[1]。乗員は、車長、砲手、操縦手の3名であり、車体前方中央部に操縦席が、砲塔部には125mm砲を挟んで、右側に車長席が、左側に砲手席が配置されている。

【防御力】
車体・砲塔ともに圧延鋼板を溶接して製造され、車体前部と砲塔前部にはモジュール式の複合装甲ブロックが取り付けられている。さらに、車体前面と砲塔前部には爆発反応装甲が装着されている。特に砲塔前面の付加装甲は99式戦車96A式戦車のように楔形となっており、防護空間を出来るだけ取った装着方法が採用された[1]。HEAT弾対策として、砲塔の側・後面は装具ラックを兼ねたスラットアーマー、足回りには非金属複合材製のサイドスカートが装着されている[2]。この他、車内にはNBC防護装置と、新型の自動消火装置が装備されている[1]。

近年、各国で導入や研究が行われているアクティブ防御システムについては、レーザー波警告装置と発煙弾発射機を連動させ、レーザー波照射を受けると発煙弾を発射して照準を妨害するいわゆる「ソフトキル」タイプのものが採用されている[1]。馮益柏技師は、飛翔するミサイルや砲弾を直接打撃する「ハードキル」タイプのアクティブ防御システムについては、現時点では歩兵携行兵器や対戦車ミサイルの迎撃は可能でも、速度の速い戦車砲弾などの迎撃は現実的でないとしており、MBT-3000では搭載を見送ったと発言している[1]。

【機動力】
MBT-3000の最高速度は路上で69〜71km/h(注:参照元によりデータが異なる)。巡航速度は路上40〜45km/h、野外35〜40km/hとされる[1][2][3]。車重はMBT-2000よりも2、3トン増加しているが、エンジン出力の向上により走行性能の低下を防いでいる。航続距離は500kmで、車体後部に航続距離延伸用の燃料タンク2基を搭載可能。渡渉深度は1.2mだが、スノーケルを使用した水中走行能力も備えており、深さ4〜5mまでの潜水走行が可能[3]。

動力部については、MBT-2000/アル・ハーリドが外国製コンポーネントで構成されたパワーパックを搭載しているのに対して、MBT-3000では新開発の中国製FX0011パワーパックに変更された[2]。FX0011は、FW150電子制御式ターボチャージド液冷ディーゼルエンジンとCh1000B自動変速装置から構成されている[2][3]。エンジンは車体長を抑えるために、横置きにされている[1]。FW150の最高出力は1,300馬力だが、エンジン出力については、輸出先のユーザーの要望に応じて最高1,500馬力まで向上させることが可能[1]。FW150は、MBT-2000の6TD-IIエンジン(1,200馬力)と比較すると出力が向上しているだけでなく、高温下での信頼性や燃費も改善されているとのこと[2]。

戦車用自動変速装置は中国戦車の長年の技術的懸案であったが、Ch1000Bの実用化はその欠を補う画期的なものであった。MBT-3000の操縦は、MBT-2000/アル・ハーリドと同じくハンドル操作だが、これは中国製変速装置を搭載した主力戦車で確認されたものとしては初の事例。ハンドル式の採用により、レバー式よりも操縦手の体力消耗を抑えることが可能となり、長時間の戦闘における体力維持に効果があるとしている[1]。FX0011パワーパックの交換は、取り出しに25分、取り付けに35分を要するとしているが、実地試験中には18分で取り出しに成功した事例が報告されている[1]。

懸架装置はMBT-2000と同じトーションバー方式を踏襲している模様。履帯は着脱可能なゴムパッド付きのダブルピン・ダブルブロック型履帯を採用している。

【武装】
主兵装である125mm滑腔砲はMBT-2000のものを基本としているが、製造技術の見直しにより砲身寿命が延伸されている[1]。搭載砲弾は、APFSDS-T弾、HEAT弾、HEAT-FRAG弾、GP-7砲発射対戦車ミサイルの4種類が搭載される[2]。GP-7は、2012年に運用が開始された新型の砲発射対戦車ミサイルで、誘導方式はセミアクティブ・レーザー誘導式で、最大有効射程は5,000m[2]。

砲塔直下には弾頭+分離装薬を収納した自動装填装置が配置されている。砲弾搭載数は38発で、このうち22発が自動装填装置に搭載されている[2]。MBT-3000の自動装填装置は毎分8発の発射速度を備えている[2]。なお、中国の戦車設計者は、西側第三世代戦車の様に砲塔後部バスルに砲弾を搭載しないことについて、砲塔後部が被弾した際の二次爆発による損害を懸念していること、砲弾を車内に配置することで戦車のサイズをできるだけ小型化したい意図があるとしている[2]。

副武装は対空用として車長用キューポラに88式(QJC-88)12.7mm重機関銃、主砲同軸に7.62mm機関銃を装備する[2]。12.7mm重機関銃は車内からの遠隔操作式で、命中精度は60%としている[1]。ただし試験の際には、停車時の固定目標に対する命中率は80%、時速25km/hで走行時の動目標に対する命中率は66%という成果を挙げた事例も報告されている[1]。砲塔側面に合計8基、砲塔上面に合計4〜8基の76mm発煙弾発射機を装備しているが、この内4基は対歩兵用に対人グレネードが装填されており[4]、都市での近接戦闘などで使用される。砲塔側面の発射機は車両の前方に向けて取り付けられているが、砲塔上面の発射機は、連装発射機4基で車両の全周をカバーするように配置している。

【射撃統制装置とネットワーク中心戦への対応】
MBT-3000は、射撃統制装置の改良に力を入れているのが特徴の1つ。MBT-3000の射撃統制装置は、弾道計算機、砲手用サイト、車長用旋回式独立サイト、砲安定装置、車長/砲手用情報端末、レーザー測遠機、暗視装置、環境センサーなどで構成される。MBT-3000の射撃統制装置は完全にデジタル化され、中国戦車として初めてCANデジタルデータパスが採用された[2]。車長用サイトには、第二世代の赤外線暗視装置とレーザー測遠距機が内蔵されており、車長が目標を見つけ、砲手に指示して射撃を行わせ、その間に車長は別の目標を捜索するというハンター・キラー方式が可能[2]。

車長席、砲手席、操縦手席にはそれぞれ液晶パネル付き情報端末が用意されている[1]。車長用の情報端末は2基用意されており、一つは照準映像などを映し出す照準ディスプレイ、もう一つは複数の戦車の間で情報のやり取りを行う車両間情報システムの端末[1]。砲手席の情報端末は、照準ディスプレイのみで目標の観測や射撃データなどが表示され砲の操作入力に使用される[1]。操縦席の情報端末2基用意されており、1つは戦車の速度やエンジンの回転数、車両位置情報などを表示するもの、もう1つは操縦手サイトに内蔵された暗視装置の映像を表示するもので主に夜間走行の際に使用される[1]。従来は、視認装置のアイピースを覗き込んで外部視認や照準・捜索を行うことが多かったが、走行中にアイピースを覗き込み続けるとひどい車酔いを起こすことがあった。それに対して、MBT-3000は、多くの情報や映像を情報端末の液晶パネルに表示できるのでアイピースを覗き込む回数が大幅に減り、長時間の戦闘においても乗員の負担が軽減される効果が得られたとされる[1]。

MBT-3000の開発では、近年の戦車では必須の能力となっている情報化やデータリンク機能についても重視された[1]。車両間情報システムを標準装備して、音声・画像データ、各種情報などを互いに共有できる能力が確保されている[1]。ただし、軍の情報化の進展やその規格は国によって異なるケースが多いので、MBT-3000の輸出に際してはユーザーの求めに応じて様々な対応が可能であることが謳われている[1]。航法装置については、GPSと慣性航法システムが装備されており、いずれかを使用もしくは両方合わせて使用する事を選択できる[2]。

【今後の展望】
2012年以降、NORINCOは各国で開催される兵器博覧会においてMBT-3000の模型を展示して各国への売込みを図っている。NORINCOは、自社の輸出向け戦車に「VT」の統一名称を付けている。VT-1AはMBT-2000の発展型、VT-2は96A式戦車の輸出型(85-MII式のアップグレード型との情報も[7])、VT-3(59式戦車の大規模アップグレード型[5])。VT-4/MBT-3000は、それに続く最上位クラスの戦車という位置付けになる(注:VT-4の発展型がMBT-3000という情報もある[6])。ユーザーの懐具合や要望に応じて、様々なオプションを提供可能な体制を構築することで国際市場での競争力を増す狙いがあるものと思われる。

NORINCOはMBT-2000の成功を基礎として更なる能力向上を図ったMBT-3000を投入することで、ロシアのT-90シリーズやウクライナのオプロートM、西側の第3世代戦車などと伍して国際市場での競争が可能になることを目指していると見られている[1]。

▼CCTV13で紹介されたMBT-3000(YouTube)


性能緒元
重量51〜52トン
全長10.10m
全幅3.5m(サイドスカート含む)
全高2.4m
エンジンFW150型ターボチャージド液冷ディーゼル 1,200hp
最高速度69〜71km/h(路上)/35〜40km/h(路外)
航続距離500km
渡渉深度1.2m
潜水深度4〜5m
武装125mm滑腔砲×1(砲弾38発搭載)
 88式12.7mm重機関銃×1
 7.62mm機関銃×1
 76mm発煙弾発射機×10〜16(内4基が対人グレネード)
使用砲弾APFSDS-T弾、HEAT弾、HEAT-FRAG弾、GP-7砲発射対戦車ミサイル
装甲溶接鋼板+モジュールセラミック複合装甲+爆発反応装甲
乗員3名(車長、砲手、操縦手)

【参考資料】
[1]袁風「新型外貿主戦坦克採訪記」(『兵器』総153号・2012.2/《兵器》雑誌社)6〜11ページ
[2]平可夫「MBT3000型主戦坦克的更多技術細節」(『漢和防務評論』2012年10月号)28〜29ページ
[3]Asian Defense「Norinco MBT-3000 Main Battle Tank」(2012年6月27日)
[4]清谷信一「2012年ユーロサトリ・レポート 欧州の最新戦車・装甲車両」(『軍事研究』2012年10月号)100〜107ページ
[5]MDC軍武狂人夢「59式中型坦克」
[6]MDC軍武狂人夢「MBT-2000/3000、VT-1/4、哈利坦克」
[7]MDC軍武狂人夢「85/96式主戰坦克」

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