日本の周辺国が装備する兵器のデータベース


Mi-17(NATOコード名「Hip-H」)はソ連(現ロシア)のミル設計局が開発した輸送ヘリコプターで、前身のMi-8と共に世界各国で広く採用された傑作ヘリコプター。中国では1990年代にMi-17の導入を開始し、派生型のMi-171シリーズと合わせて中国陸軍航空隊の主力輸送ヘリコプターの地位を占める重要な機体となっている。

【導入に至る経緯】
中国では、1980年代に入ると陸軍独自の航空部隊の創設を決定。これは「4つの現代化」政策の1つである軍近代化の一環で、各国の軍隊で重要な役割を果たすようになったヘリコプター部隊の導入を目指したものであった。1986年に総参謀部の兵種部に指導組織として陸軍航空兵局が設立され、1988年には最初の陸軍ヘリコプター大隊が北京軍区の第38集団軍と済南軍区の第54集団軍において編制された[1]。上記部隊の50機のヘリコプターと要員は、空軍の輸送ヘリコプター団(連隊に相当)から移管されたものであった[2]。当初、重要装備であったヘリコプター部隊は大軍区のみの配備であったが、部隊の編制と兵員の訓練の進展に伴い、いくつかの重点集団軍にも配備されるようになり、各集団軍でも次第にヘリコプターという空中機動戦力を使用した訓練を実施する事が可能になっていく[2]。

ヘリコプター部隊の建設で問題になったのが肝心のヘリコプターの調達であった。当時の中国軍の主力汎用ヘリコプターはソ連のMi-4をリバースエンジニアリングして量産化したZ-5(直昇5)であったが、Mi-4は1958年初飛行のレシプロエンジンを動力とする機体で、その性能は1980年代では完全に旧式に属するものであった[1]。中国では、1960年代末から1970年代にかけてZ-6/Z-7といった国産ヘリコプターの開発を行っているが、国際的に孤立した状況において十分な技術基盤のない中で実施された開発はいずれも失敗に終わっている[1]。

1970年代末に中国と西側諸国との関係が改善すると、フランスやアメリカからヘリコプターの導入が図られ、S-70C-2(米)やシュペルフルロン(仏)、ドーファンII(仏)などの機体を購入、陸軍航空隊の装備近代化を図った[1]。しかし、1989年の第二次天安門事件によってこの流れは大きなダメージを受けることになった。陸軍航空隊では、S-70C-2の性能を高く評価しており100機の購入を希望していたが、アメリカの対中兵器輸出禁止に伴ってこれは不可能となった[1]。この段階で、シュペルフルロンのコピーであるZ-8輸送ヘリコプターとドーファンのライセンス生産型であるZ-9輸送ヘリコプターが国産化されていたが、Z-8は機体が大きすぎエンジンの信頼性も十分に得られていない状態が長く続き[3]、Z-9は小型のため搭載能力に限界があるなど、どちらの機体も一長一短があった。既にZ-5は老朽化から退役が進んでおり(1992年には全ての機体が軍を退く事になる[1])、陸軍航空隊は設立早々に部隊戦力の大幅減少という難題に直面する事になった。

この問題を解決したのは1989年に関係を正常化したソ連からのヘリコプター輸入であった[1][2]。1990年、中国とソ連はMi-17輸送ヘリコプターの輸出に関する契約に調印、1995年までに全ての機体の供給が完了した。ソ連(1992年からはロシア)からのMi-17の供給は陸軍航空隊にとって、輸送ヘリコプターの供給問題を解消するもので、これ以降ヘリコプター部隊の拡充に伴ってロシアから合計300機近いMi-17(と派生型であるMi-171)の調達を行い陸軍航空隊の主力装備として運用する事になる[2]。

【各型紹介】
中国陸軍航空隊は約20年間に渡り、合計8タイプのMi-17/171シリーズをロシアから調達している。ここでは中国が導入した8種類のMi-17/171について記述する。なお、空軍も少数のMi-8/Mi-17/Mi-171/Mi-172を保有しているが、こちらについては空軍の項で紹介する(作成中)。

【Mi-17シリーズ】

Mi-17(Mi-8MT/Hip-H)




性能緒元
重量7,149〜7,200kg(空虚重量)/1,3000kg(最大離陸重量)
ローター直径21.3m
全長18.4m
全幅2.50m(ローターなし)
全高4.86m
エンジンイソトフTV3-117ターボシャフト(通常1,700shp/緊急2,200shp)×2
最大速度250km/h
巡航速度230km/h
航続距離500〜570km(増槽搭載で985km)
上昇限度5,000〜5,700m
ホバリング上昇限度1,760m(地面効果無し)/1,900〜3,980m(地面効果有り)
ペイロード4,000kg(機内)/4,000kg(機外吊り下げ)
乗員3名(操縦士、航法士、飛行整備士)+兵員32名搭乗可能(武装兵だと24名)

Mi-17は、Mi-8輸送ヘリコプターの改良型で、1977年にソ連軍での運用が開始され、1981年のパリ航空ショーで民間型が初展示された[4]。開発はミル設計局で、製造はカザンヘリコプター工場で行われた[4][5]。ソ連/ロシアでの型式名はMi-8MTであり、Mi-17は輸出用名称。なお、NATOコード名はいずれも「Hip-H」[4]。

Mi-17の基本的な機体構造はMi-8を踏襲している。主な改良点は以下の通り。
エンジンの換装エンジンをTV2-117A(1,500shp)から出力を強化したTV3-117(1,700shp)に変更[5]。TV2-1117Aは片発停止時には出力を2,200shpにまで高めて飛行を維持する機能を備えている[8]
補助動力装置の搭載キャビン上部のメインギア後方にAI-9V補助動力装置を装備[5][6]。エンジン始動時などに使用[4]
エンジン出力同調装置の採用2つのエンジンの出力を同調させる事でローターの回転数を安定化させる[4]
エンジン・カウリングの短縮[6]
空気取り入れ口前面に防塵フィルターを装着砂漠などでの運用を前提としてエンジントラブルを減少させるための措置[4]
ローター・ハブの材質変更チタニウム合金製に変更[7]
ギアボックスの改良[7]
テイルローターの位置変更テイルローターを右舷に配置した牽引式を採用[6]
エンジン排気口の位置変更Mi-8は主ローターマスト前にあったものを、マスト後方に移動させた[6]

最大ペイロードや飛行速度については大きな変化は無いが、エンジン出力が向上したことでMi-8の課題であった高温地帯や高地での性能低下が押さえられる様になり、ホバリング高度は倍以上に高まるなど実用性の向上に寄与している[7]。

中国は1990年に24機のMi-17の購入契約を締結[9]。翌1991年までに機体の引渡しが行われた。陸軍航空隊では既にMi-8の運用経験を積んでいたことから、その発展型であるMi-17の導入は順調に進展した[9]。Mi-17は技術的に成熟しており、運用コストが安く、広い機内スペースを利用した高い搭載能力が陸軍航空隊から高く評価された[10]。一方で、主要部品の寿命が短い事、チベット高原など高地での運用ではアメリカから輸入したS-70C-2に比べて遜色があることが難点として指摘されている[10]。

中国はMi-17の輸入に際して、軍用タイプではなく民生タイプの機体としてヘリコプター製造工場との間で直接輸入契約を結んでいる[11]。これは導入コストを抑えるための方法であるが、民生タイプのため軍用タイプに搭載されているチャフ・フレア発射装置、赤外線妨害装置、外部兵装搭載用の架台、コクピット周辺の防弾装甲などの装備は取り付けられていない[11]。この調達方式は、これ以降の中国のMi-17/Mi-171の調達でも踏襲される事になる[11]。

陸軍航空隊では、Mi-17の作戦能力を向上させるため一部の機体に外部兵装搭載用架台を取り付ける改修工事を行っている[10]。外部兵装搭載用のアウトリガー式架台は金属製フレームを組み合わせて製造されているが、翼状にはなっておらず揚力発生には寄与しない。合計6箇所のパイロンがあり、各種ロケット弾発射機や通常爆弾、機関砲ポッド等の搭載が可能。この改修により、Mi-17はヘリボーン作戦において地上制圧任務や効果部隊の火力支援を行う事が可能となった[10]。このアウトリガー式架台は後に導入されるMi-17/171にも搭載される事になる。ただし、防弾装甲の欠如は被弾時のリスクを高める危険性があり、有事の際に問題になる可能性が指摘されている[11]。一部の機体では、後付でチャフ・フレア発射装置、赤外線妨害装置などを装備して自己防御能力の改善を行っている[12]。

Mi-17は、陸軍航空隊の第一航空団(済南軍区の第54集団軍所属)、第2航空団(成都軍区の第13集団軍所属)に配備されている[14]。陸軍航空隊での任務のほかに、災害発生時には捜索救難や支援物資搬送任務に投入される事も多い。一部の機体は、様々な改修を受けて特殊任務機として運用されている[12]。2011年には機首にZ-10攻撃ヘリコプター試作型と同じ光学/電子センサーを搭載したターレットを装備してAKD-10空対地ミサイルTY-90空対空ミサイルの運用能力を備えたMi-17の写真がインターネット上に出回った[13]。この機体はZ-10開発のテストベッド機と考えられている。

Mi-17-1V(Mi-8MTV/Hip-H)

Mi-17-1Vは、Mi-17のエンジン出力強化型。ソ連軍向けの名称はMi-8MTV[15]。製造はカザンヘリコプター工場が担当[15]。

Mi-17-1Vの開発では特に高温・高地での運用能力を改善する事が目的とされ、機体重量の軽減とエンジン出力の向上が施された[4]。Mi-17-1Vの空虚重量は6,913kgで、Mi-17よりも200kg以上軽量化されている[16]。Mi-17-1Vが搭載するTV3-117MTターボシャフトエンジンは、1,900shpの出力を有するが緊急時には最高2,200shpの出力を発揮する能力を備えている。これらの改修によりMi-17-1Vは、海抜4,000mでの離陸が可能となり、実用上昇限度は6,000mに向上している[14]。キャビンには兵員30名、もしくは担架12床の搭載が可能[15]。

Mi-17-1Vは、蘭州軍区の第21集団軍所属の陸軍航空隊第5航空団に配備されている[14]。Mi-17と同じく民生型として調達されたため、アウトリガー式架台や機首の7,62mm機関銃PKT搭載用マウントはオミットされている[15]。一部の機体は、導入後の改装でMi-17と同じくアウトリガー式外部兵装搭載架台を搭載する改修を受けている。

Mi-17-V5輸送ヘリコプター(Mi-8MTV-5)


▼後方から見たMi-17-V5。Mi-17-V5で採用された胴体後部のローディング・ランプの形状が良く分かる


性能緒元
重量7,580kg(空虚重量)/1,3000kg(最大離陸重量)
ローター直径21.3m
全長19m
全幅2.5m(ローターなし)
全高4.7m
エンジンイソトフTV3-117VMターボシャフト(1,950〜2,000shp)×2
最大速度250km/h
巡航速度230km/h
航続距離715km
上昇限度6,000m
ホバリング上昇限度3980m(地面効果無し)
ペイロード4,000kg(機内)/4,000kg(機外吊り下げ)
乗員3名(操縦士、航法士、飛行整備士)+兵員36名搭乗可能

1999年に生産を開始した機体で、ロシア国内での型式名はMi-8MTV-5[4]。生産はカザンヘリコプター工場が担当[4]。

Mi-17-V5は、Mi-8MT/Mi-17の運用や実戦経験からの戦訓を踏まえて性能と実用性の向上を意図した発展型であり[17]、機体形状自体に変更を加える大規模な設計変更が施されたのが特徴。外観上の変更点としては、機首先端部がコクピット前方に飛び出す形に変更。この部分にはレーダーが内蔵されている[18]。胴体後部は従来のクラムシェル型かららローディング・ランプ方式に変更されたことにより、斜めに切り落とした様な形状になっている[10]。これは、物資や車輌の搭載が従来型よりも容易にするための改良。ローディング・ランプの開閉は動力式で従来のクラムシェル式より開閉時間が早まっている[10]。

Mi-8/17シリーズでは搭乗歩兵は胴体左側の後方スライド式ドアから乗降していたが、Mi-17-V5では胴体右側にも後方スライド式ドアを設置したことで、搭乗歩兵28名の展開に要する時間を半分に短縮する事に成功した[10]。15名の場合であれば展開に必要な時間は36秒とされる[17]。低空での歩兵展開時に攻撃を受けることは防御力の脆弱なヘリコプターにとっては極力回避すべき状況であり、搭乗歩兵の展開時間を半減させた事は大きな意義を有する改良であると言える。

このほかの外観上の変化としては、胴体左右の外部燃料タンクが同一の形状になったことが挙げられる[10]。以前のタイプでは右部タンクの前部に機内温度維持装置が内蔵されていたが、これを胴体右部ドアの上部に移動させて、左右のタンクを同じ形のものにした。これにより右部燃料タンクに搭載可能な燃料を増やす事ができた。燃料タンクは被弾時の安全性改善のためセルフシーリングタンクを採用している[17]。

エンジンはTV3-117VM型ターボシャフトエンジン(1,950〜2,000shp)の双発で、実用上昇限度6,000m、ホバリング限度3,980m(地面効果なし)[7][10][17]。最高速度やペイロードは以前のタイプと変更ないが、エンジン出力の向上により、高地や高温地域の運用でも性能低下が抑えられており、実際の運用能力が高まっている[17]。

陸軍航空隊は2003年に35〜40機のMi-17-V5を導入しており、蘭州軍区の第21集団軍所属の陸軍航空隊第3航空団、成都軍区の第13集団軍所属の陸軍航空隊第2航空団、済南軍区の第54集団軍所属の陸軍航空隊第一航空団への配備が行われている[9][14]。Mi-17-V5の中には導入後の改装により、機首下部に赤外線暗視装置を内蔵したターレットを装備したものや、テイルブーム上部に衛星位置測定システム用のフェアリングを増設したものが確認されている[18][19]。

Mi-17-V7輸送ヘリコプター



性能緒元(判明している物のみ記載)
重量1,3000kg(最大離陸重量)
ローター直径
全長
全幅
全高
エンジンVK-2500-02ターボシャフトエンジン(2,400shp)×2
最大速度250km/h
巡航速度
航続距離715km(機内燃料のみ)/1,085km(増加燃料タンク2基搭載)/1,535km(増加燃料タンク4基搭載)
上昇限度6,200m
ホバリング上昇限度4,600m(地面効果無し)/5,150m(地面効果有り)
ペイロード
乗員

中国西部にはチベット高原やパミール高原を初めとする世界有数の高地が広がっており、沿岸部に比べて交通網の整備が十分でなく急峻な山岳地帯が多い事から、ヘリコプターの果たす役割には大きなものがある。しかし、高地での運用はヘリコプターの負担が大きく、チベット高原で運用可能なヘリコプターとしては長らくアメリカから調達した少数のS-70C-2に依存せざるを得ない状況が続いていた[10]。

陸軍航空隊では、この状況を踏まえてチベット高原での運用を可能とする高地運用能力を高めたMi-17改良型の導入を計画、ロシア側に高地対応型Mi-17開発についての打診を行い中露共同でMi-17の高地対応型開発を行う事になった[10]。改修作業はカザンヘリコプター工場が担当し、Mi-17をベースとして大規模な改造を施した試作機が製造され、エンジンの換装や高地運用に対応した各種変更が施された[10]。改修では、Mi-17-V5の技術も各部に生かされており、高地対応型改修を受けたMi-17の新しい型式名はMi-17-V7とされた[10][17]。

Mi-17-V7は、エンジンをVK-2500-02ターボシャフトエンジン(2,400shp)に換装[19]。VK-2500-02はコミュータによるエンジン制御を採用しており、高温や高地での運用においても自動的に燃料供給量の調整を行う機能を備えている[10]。Mi-17-V7はエンジン換装により原型のMi-17に比べて20%の出力向上を達成している[10]。さらに高原の薄い空気と低温の気象条件においてエンジン始動に問題が生じないように、新型の補助動力装置が搭載された[10]。上記の改修により、Mi-17-V7の実用上昇限度は6,200mに達しており、ホバリング高度についても4,600m(地面効果無し)、5,150m(地面効果有り)とMi-17-V5よりも高い数値を達成している[10]。航続距離は、飛行高度500mで残燃料5%になるまで巡航速度で飛行した場合が715km、増加燃料タンク2基を搭載して同じ条件で飛行した場合が1,085km、増加燃料タンク4基の場合が1,535kmとなっている[10]。

キャビンの窓は丸型から四角形のものに変更[10]。機首先端部を尖らせた形状、胴体左右の外部燃料タンクも同一形状のものに変更(未変更の機体も存在する)、右部燃料タンク前方に搭載されていた機内温度維持装置をキャビン右側上方の位置に移設するなどの改修は、Mi-17-V5に準じたものとなっている[10]。ただし胴体後部のドアが既存のMi-17と同じクラムシェル型ドアである点はMi-17-V5とは異なる[10]。

ロシアで改修を受けたMi-17-V7試作機はチベット高原での試験運用を行い、想定通りの性能を発揮する事に成功、高原地帯での高い運用能力を有している事を証明した[10]。この結果を受けて、2003年から2004年の間に合計25機のMi-17-V7が中国側へ引き渡された[9]。購入後に、光学/電子センサーを内蔵したターレットを胴体下部に追加装備した機体も確認されている。

Mi-17-V7は2003年から陸軍航空隊での運用を開始しており、蘭州軍区の第21集団軍所属の陸軍航空隊第3航空団への配備が行われている[14]。

【Mi-171シリーズ】

Mi-171(Mi-8AMT/Hip-H)


▼物資を投下するMi-171。胴体後部のクラムシェル型ドアは取り外した状態。

▼Mi-171の胴体内部の写真


性能緒元
重量6,913kg(空虚重量)/1,3000kg(最大離陸重量)
ローター直径21.3m
全長18.65m
全幅2.5m(ローターなし)
全高4.76m
エンジンイソトフTV3-117VMターボシャフト(1,950〜2,000shp)×2
最大速度250km/h
巡航速度230km/h
航続距離650km
上昇限度5,000m
ホバリング上昇限度3980m(地面効果無し)
ペイロード4,000kg(機内)/4,000kg(機外吊り下げ)
乗員3名(操縦士、航法士、飛行整備士)+定員26名(旅客型)/兵員32名搭乗可能

Mi-171は、1991年から生産が開始されたMi-17の発展型の1つ[16]。ソ連/ロシア軍向けの型式名はMi-8AMT[4]。生産を担当したのはシベリア東部のブリヤート共和国にあるウラン・ウデ航空機工場。ウラン・ウデ工場ではスホーイSu-25UB/UTGの製造を行った技術的経験をMi-171の開発に生かしているとされる[10]。

Mi-171の設計上の基本目標は、全天候性能の獲得と高高度性能の向上におかれた[7]。上昇性能と飛行高度性能向上のため、エンジンは出力強化型のTV3-117VMターボシャフト(1,950〜2,000shp)が搭載された[7]。片発停止時には、自動燃料制御装置が作動し残りのエンジン出力を増加させる機能が備わっており、2,100shpの緊急出力を30分間維持できる[7]。TV3-117VMは高度3,000mまで定格最高出力の発揮が可能で、これによりMi-171の機外吊り下げ時の最大ペイロードもそれまでの高度3,000mまでではなく高度4,000mまで維持できるようになった[7]。地表効果外でのホバリング高度限界も、通常の全備重量1,1000kgの状態で3,980mまで向上している[7]。

Mi-171はローターの振動低減装置を採用する事で、エンジンの故障率を減らす事に成功している[10]。機内電源は全て交流式に変更され、電気供給能力を高めている[10]。機首下部に気象レーダーを内蔵する小型のレドームを設置しているのが外観上の識別点の1つ[7][10]。これは悪天候時の飛行能力改善策の一つ。

中国は1992年からMi-171の導入を開始。調達機数は資料によって異動があるが[9][12][13][24][25]の記述を総合すると、1992年から2007年までに3〜4度にわたる発注を行い合計96〜108機程度をロシアから輸入したと見られる。(この中には、下記のMi-171PやMi-171Shが入っている可能性が高い。)

Mi-171は、北京軍区の第65集団軍所属の陸軍航空隊第4/第8航空団、成都軍区の第13集団軍所属の陸軍航空隊第2航空団、広州軍区の第42集団軍所属の陸軍航空隊第6航空団、蘭州軍区の第21集団軍所属の陸軍航空隊第3航空団、南京軍区の第1集団軍所属の陸軍航空隊第5航空団、瀋陽軍区の第39集団軍所属の陸軍航空隊第9航空団に配備されている[14]。中国軍におけるMi-17シリーズの中で、7大軍区全ての陸軍航空隊航空団に配備されているのはMi-171のみである。

2007年3月、ミルのモスクワヘリコプター工場は、中国および周辺諸国におけるMi-17/Mi-171シリーズの修理・生産センターとする合弁会社「四川藍天直昇機公司」を設立した[9]。工場が建設されたのは中国内陸の四川省。藍天直昇機公司はウラン・ウデ工場から供給される部品を使用して2008年に20機のMi-171のノックダウン生産を実施すると報じられた。藍天では、生産能力を拡大して年間80機のMi-17-V5、Mi-17-V7、Mi-171を生産することが目標とされたが[9]、その後のロシアとの交渉が長引いたため2012年になってもMi-17/171の現地生産に移行できない状態が続いていた[27]。「漢和防務評論」2013年11月号では、成都におけるMi-17のノックダウン生産は直接輸入するよりもコスト高になるため最終的に放棄され、既に組み立てられたMi-17はモンゴルに売却されたと報じており、Mi-17/171の中国での生産が頓挫した事が明らかになった[31]。

Mi-171P要人輸送ヘリコプター

Mi-171Pは、Mi-171の派生型の1つで要人輸送を任務とする機体。中国がロシアから輸入したMi-171の内ごく小数がこの仕様になっているとされる[20]。外観上の特徴としては、キャビン側面の窓が丸型から四角形のものに変更された点が挙げられる。

Mi-171Sh輸送/強襲ヘリコプター(Mi-8AMTSh)



性能緒元
重量7,580kg(空虚重量)/1,3000kg(最大離陸重量)
ローター直径21.3m
全長19m
全幅2.5m(ローターなし)
全高4.7m
エンジンイソトフTV3-117VMターボシャフト(定格1,700shp、緊急時2,100shp、片発停止時2,200shp)×2
最大速度250km/h
巡航速度230km/h
航続距離610km
上昇限度6,000m
ホバリング上昇限度3980m(地面効果無し)
最大ペイロード4,000kg(機内)/4,000kg(機外吊り下げ)
乗員3名(操縦士、航法士、飛行整備士)+兵員26名搭乗

Mi-171Sh輸送/強襲ヘリコプターは、1990年代中頃に開発されたMi-8AMTShの輸出版。夜間や悪天候下での運用能力の向上と搭載可能な兵器のバリエーションを増やしたのが特徴であり、9M39イグラV型空対空ミサイル、9M114シュトルムV型対戦車ミサイルといった誘導兵器の運用能力が付与されている[21][22]。このほか、B8V2ロケット弾ポッドや23mm機関砲ポッド等の搭載が可能。機首下部には目標の探知やミサイルの照準に使用する電子/光学/赤外線センサー内蔵ターレットが取り付けられている。

Mi-171Shは輸出を念頭に、ユーザーの要望に応じて装備や仕様変更を柔軟に行うことが想定されており、ロシア製だけでなく外国製機材の搭載にも対応している[22]。キャビン形状はMi-171を踏襲しており左側後方スライド式ドアとキャビン後部のクラムシェル型ドアを採用しているが、これもユーザーの求めに応じてMi-17-V5と同じキャビン左右の後方スライドドア、クラムシェル型ドアをローディング・ランプへ変更する事が可能[22]。Mi-17Shには、兵装を搭載しない民生型も存在しており[22]、中国が導入したのもこのタイプと考えられる。そのため中国軍向けMi-171Shでは9M39や9M114といった誘導兵器の運用能力はオミットされていると思われる[21]。

Mi-181Shは、北京軍区の第38集団軍所属の陸軍航空隊第8航空団、済南軍区の第54集団軍所属の陸軍航空隊第1航空団、瀋陽軍区の第39集団軍所属の陸軍航空隊第9航空団に配備されている[14]。

Mi-171E

Mi-171Eは、当初から中東やアジア諸国向けの輸出を視野に入れてMi-171に各種改良を加えたタイプ[23]。中国は、2010年に32機、2012年に52機のMi-171Eを発注している[25][26]。なお後者については、初期の報道では調達機数は55機と伝えられていた[23]。なお、2007年の発注は従来通り民間型を導入しているが、2012年の契約についてはロシア国営兵器輸出公社ロスボロンエクスポルトを窓口とした調達であり、初めて軍用型が輸入される事になったと伝えられている[26][27]。2012年の契約の場合、一機あたりの単価は1000〜1200万ドルになると推測されている[23]。

Mi-171Eは輸出を視野に入れて機体形状やエンジン、各種装備などについてはユーザーの要望に応じて変更が可能であり、輸出先によって性能や機体構成にかなりの違いが生じている。中国が調達するタイプの詳細なスペックについてはまだ不明な点が多いが、エンジンについてはウクライナのモーターシチ社製VK-2500-03ターボシャフトエンジンを搭載する事が判明している[26]。

2010年に発注された32機は2012年に納入を完了[27]。2012年発注の52機は2013〜14年までに納入を完了する予定[26]。

【今後の展望】
中国陸軍航空隊は設立から20年近く経過した2000年代後半、長い間の課題であった7大軍区の全てにヘリコプター部隊である陸軍航空隊航空団を編制するという目標を達成した[2]。しかし、2012年になっても合計18個の集団軍の半分近くはヘリコプター部隊を保有しておらず、ヘリコプター戦力の整備はまだ道半ばというのが現状[14]。

陸軍航空隊航空団は航空大隊3個から構成される事になっている。この内、1〜2個飛行大隊はMi-17/171を装備する輸送ヘリコプター部隊で、残りの1個飛行大隊が武装/攻撃ヘリコプター部隊[11]。輸送ヘリコプター大隊の保有するMi-17/171の機数は部隊ごとに一様ではないが、8機もしくは12機という定数が挙がっている[11]。

陸軍航空隊は部隊創設から約27年を経て500機を越える各種ヘリコプターを保有する規模に成長したが[28]、中国陸軍の規模からすると現状のヘリコプター戦力は十分なものであるとは到底言えず、今後も拡大が続くものと思われる[11]。当面の目標としては、全ての集団軍に各1個航空団を保有させる課題があるが、これについては遅くとも陸軍航空隊建設から30〜35周年となる2016〜2021年の間には達成できると見られている[11]。陸軍航空隊では、これと並行して集団軍の陸軍航空隊航空団を航空旅(旅団に相当)に格上げして部隊規模を拡大する改革も近年開始している[29]。これにより集団軍の保有するヘリコプターの機数が増加してこれまでより多様な作戦を実行する事が可能となる。既に、蘭州軍区、広州軍区、南京軍区、成都軍区などで航空旅への部隊改変が実施されている[29]。

1990年の導入決定後、Mi-17/171シリーズは、輸送ヘリコプター戦力の主力として陸軍航空隊の拡大を支えた存在であり続けている。中国では独自の輸送ヘリコプター開発も進められているが[28]、現在の所Mi-17/171に取って代わる機体は実現していない。

陸軍航空隊が保有するMi-17/171シリーズの機数については資料によって異同があるが、212機[28]、空軍保有機と合わせて250機以上[30]という数値が示されている。陸軍航空隊の部隊増加と規模拡大に伴って必要とされるヘリコプターの機数は増え続けており、輸送ヘリコプターの主力であるMi-17/171の調達数は今後ますます増加する事は確実と思われる。Mi-17/171は、2013年現在も調達が継続されており、当面の間、陸軍航空隊の主力輸送ヘリコプターの地位を占め続けるであろう。

【参考資料】
[1]袁来「鷂鷹一撃 驚天下—陸軍航空兵成立20周年系列之(一)」(『航空世界』2006.1/航空世界雑誌社)24〜29ページ
[2]竹田純一『人民解放軍』(ビジネス社/2008年)280〜282ページ
[3]雲軒「風虎雲龍 中国大型直昇機之路」((『航空世界』2005.10/航空世界雑誌社)30〜39ページ
[4]ALL THE WORLD’S ROTORCRAFT「Mil Mi-17」
[5]Yefim Gordon『Chinese Air Power: Current Organisation and Aircraft of all Chinese Air Forces』(Midland Publishing/2010年6月3日)305〜306ページ
[6]青木謙知編集『エアワールド1993年12月別冊 世界軍用機年鑑1993〜94』(エアワールド社/1993年)220ページ
[7]航空の現代/Aviation Now「ミルMi-8――ロシアの大型ヘリコプター――」
[8]Издательство ВертолетГМи-8МТ/Ми-8МТВ/Ми-17 средний многоцелевой」
[9]Chinese Defence Today「Mi-17/171 Hip Multirole Helicopter」
[10]『航空知識2006年増刊 旋翼雄風—中国人民解放軍陸軍航空兵装備発展20年』(航空世界雑誌社/2006年)14〜16ページ
[11]平可夫『殲20隠形戦闘機震撼世界』(漢和出版社/2011年)263〜274ページ
[12]Chinese Military Aviation「Mi-17/17-1V/171/171E Hip」
[13]空軍世界「米-8-米-17中型多用途直升」
[14]Yefim Gordon『Chinese Air Power: Current Organisation and Aircraft of all Chinese Air Forces』(Midland Publishing/2010年6月3日)300〜301ページ
[15]Yefim Gordon『Chinese Air Power: Current Organisation and Aircraft of all Chinese Air Forces』(Midland Publishing/2010年6月3日)306〜307ページ
[16]『Jane's all the World's Aircraft 2006-2007』(Jane's Information Group /2006年)488〜491ページ
[17]Издательство ВертолетГМи-8МТВ-5/Ми-17В-5 десантно-транспортный」
[18]Yefim Gordon『Chinese Air Power: Current Organisation and Aircraft of all Chinese Air Forces』(Midland Publishing/2010年6月3日)311〜317ページ
[19]Chinese Military Aviation「Mi-17-V5/V7 Hip」
[20]Yefim Gordon『Chinese Air Power: Current Organisation and Aircraft of all Chinese Air Forces』(Midland Publishing/2010年6月3日)311ページ
[21]Yefim Gordon『Chinese Air Power: Current Organisation and Aircraft of all Chinese Air Forces』(Midland Publishing/2010年6月3日)311ページ
[22]Издательство ВертолетГМи-8АМТШ/Ми-17Ш штурмовой военно-транспортный」
[23]RIA NOVOSTI(英語版)「Russian Plant to Make Mi-171 Helicopters for China」(2012年8月21日)
[24]平可夫『殲20隠形戦闘機震撼世界』(漢和出版社/2011年)273ページ
[25]Новости Военно-Промышленного Комплекса「Новые вертолеты российского производства поставлены на авиационный рынок Китая」(2010年10月16日)
[26]AVIATIONNEWS.EU「Rosobornexport and Poly Technologies, Inc. sign contract for 52 Mi-171E helicopters」(2012年9月6日)
[27]「俄完成向中国交付Mi171」(『漢和防務評論2012年8月号』)31ページ
[28]China Defense Mashup「“Red Hawk”: PLA New 10-ton class multi-role helicopter exposed」
[29]新華網「陸軍航空兵正在成為中国陸軍新型主戦力量」(2013年8月27日)
[30]ジェームズタウン研究所「Counting Z's: The Gradual Expansion of China's Helicopter Force」(Peter Wood, Cristina Garafola/2013年4月12日)
[31]平可夫「新一批俄式尖端武器出口中国的若干問題−PART訓人機」(『漢和防務評論』2013年11月号/No.109)48〜49ページ

Mi-8輸送ヘリコプター(ヒップ)
中国陸軍
中国空軍

amazon

▼特集:自衛隊機vs中国機▼


▼特集:中国の海軍力▼


▼特集:中国海軍▼


▼中国巡航ミサイル▼


























































メンバーのみ編集できます