日本の周辺国が装備する兵器のデータベース


▼SD-10


J-10戦闘機に搭載されるPL-12(一番内側のパイロン)。真中はPL-11セミアクティブ・レーダー誘導ミサイル、左端はPL-8赤外線誘導短射程空対空ミサイル。


J-8F戦闘機に搭載されたPL-12。


▼並列パイロンに搭載されたSD-10Aの模型


性能緒元(SD-10/SD-10A)
全長3.85m/3.934m
直径20.3cm/20.3cm
重量180kg/199kg
推進装置射程固体式ロケットモーター/同左
最大速度マッハ4/マッハ5
射程1〜70km/70km以上
運用高度射程0〜21km/同左
誘導方式中間誘導:無線指令+慣性誘導、終末誘導:アクティブ・レーダー誘導orパッシブ・レーダー誘導/SD-10Aでは中間誘導にデジタル・データリンクが加わる
装備機種J-11戦闘機(殲撃11/Su-27SK/Su-27UBK)
 J-10戦闘機(殲撃10/F-10)
 FC-1戦闘機(殲撃9/JF-17/スーパー7)
 J-8II戦闘機(殲撃8B/F-8II/フィンバックB)
 J-11B/BS戦闘機(殲撃11B/殲撃11BS/Su-27)

PL-12(霹靂12)アクティブ/パッシブ・レーダー誘導中距離空対空ミサイルは中国航空工業集団公司傘下の第613研究所(洛陽光電技術開発センター/LOECもしくはCAAAM)を中心に開発された中距離空対空ミサイル[1][2]。中航技術進出口有限責任公司(China National Aero Technology Import & Export Corooration:CATIC)が輸出事業を担当しておりSD-10(閃電10)の輸出向け名称が付与されている[3]。

中国空軍では、長らく見越し外の距離にいる目標を攻撃可能な中距離空対空ミサイルの実戦配備が適わない状態が続いており、アビオニクス技術の立ち遅れなどと共に中国戦闘機の弱点の1つであった。1980年代に少数輸入されたアスピーデを除くと、本格的に配備が行われた最初の中距離空対空ミサイルは1990年代にロシアから輸入されたR-27空対空ミサイルが初となる。21世紀にはいると、イタリアのアスピーデの技術をベースとして開発されたPL-11セミアクティブ・レーダー誘導空対空ミサイルの国内生産が開始されると共に、アメリカのAIM-120 AMRAAMに対抗しうるR-77アクティブ・レーダー誘導空対空ミサイルをロシアから輸入・配備を開始。これらに続いて登場したのが本稿で取り上げるPL-12となる。

PL-12の開発は1993〜94年に開始されたことから当初は「X-93」として知られていた[3](開発開始は1997年という説もある[1]。)ただし中国語資料によるとPL-12の開発計画は1980年代中頃にまで遡り、必要とされる各種技術の要素研究作業が1990年まで行われ、1990年からは各種サブシステムを統合する作業に移行しているとのこと[3]。1993年や1997年という数字は上記の基礎研究段階に続く本格的な開発作業の開始時期を表しているものと思われる。

第613研究所にとってアクティブ/パッシブ・レーダー誘導式の中距離空対空ミサイルの開発はこれが初めてであり、技術的な課題も多かったが、これを補ったのがロシアからの技術支援であった。複数のロシア企業がPL-12の開発に協力しており、同国のR-77アクティブ・レーダー誘導中距離空対空ミサイル(AA-12 Adder)のプログラムとコンポーネントを多く利用している(シーカー設計とコンポーネント提供はAGAT、方向舵制御システムはヴィンペル、慣性航法装置はNIIPモスクワ)[3][4]。中国側は当初、レーダー・シーカーのライセンス生産を望んだが、ロシア側が拒否したため、この装備はロシアからの輸入に依存しているとのこと[5]。ただし、PL-12はR-77の完全なコピーというわけではなく、空力設計についてはR-77ではなくアメリカのAMRAAMに似た形状を採用している[4]。

2001年にはPL-12とされるミサイルの写真が公開され、翌2002年からは地上発射試験や空中発射試験(この時点では誘導装置未搭載)に着手しており、この年には中国の当局者がSD-10という輸出名とともにその存在を認めている[1][3]。2005年8月16日に実施された実用化を前にした空中発射試験では合計11発のPL-12が発射され、その全てが標的に命中、同年後半に実施された多様な目標への攻撃試験でも成功を収めており、同年中に全ての開発作業を完了させている[1][3]。それから2年を経た2007年からPL-12の部隊配備・運用が開始され[6]、中国空軍と海軍航空隊のJ-10戦闘機(殲撃10/F-10)J-8II戦闘機(殲撃8B/F-8II/フィンバックB)などに搭載されているほか、JF-17/FC-1戦闘機の空対空装としてパキスタンに対して輸出が行われている。

【性能】
PL-12はミサイル中央部に4枚の固定式デルタの安定翼、ミサイル尾部に4枚の操舵翼を配置している[1][3][4]。なお、形状が類似しているPL-11は中央切り落としデルタ翼が操舵翼、尾部デルタ翼が安定翼とPL-12とは逆の配置となっている[12]。PL-11の中翼が切り落としデルタ翼なのに対してPL-12は純デルタ翼、尾翼がPL-11が純デルタ翼なのに対してPL-12では翼端を斜め切り落とし形状として付け根に大きなノッチを付けており、PL-11との識別点となっている[4][12]。操舵翼の形状変更は空力学的措置であり、これによりミサイルの重心をわずかながら前方に移動させているとのこと[7]。

ミサイル先端にはレーダー・シーカーを内蔵している。当初はロシアのAGAT がR-27A用に開発した9B-1103M多機能モノパルス・ドップラー・レーダーが搭載される予定であったが、後にR-77に使用されているAGAT製9B-1348アクティブ・レーダー・シーカーの改良型に変更されている[3][8]。ミサイルの中間誘導には無線指令/慣性航法誘導を採用しているが、中国の情報ではこのシステムと信号処理電子機器はR-77よりも進んだものが搭載されているとされる[1][3][4]。

PL-12は複数目標への同時発射が可能であり、(詳細な条件は不明だが)4目標に対して同時に交戦する能力を有しているとされる[4]。

PL-12には4つの交戦モードが用意されている[1][3][4]。ミサイルの最大射程を発揮する場合には、無線指令誘導と内蔵の慣性航法装置による中間誘導を行い、終末段階でアクティブ・レーダー・シーカーを作動させる。この際、シーカーを作動させるタイミングは発射前に設定、もしくは飛翔中に作動を指令することも可能[3]。上記の誘導方式では、中間制御段階では発射母機による誘導が必要であり完全な「撃ちっ放し」にはならないが、発射時に慣性航法装置とレーダー・シーカーを作動させた場合には(射程は短くなるものの)完全な撃ちっ放し能力を得ることになる[4]。4つ目の誘導方式は、目標が発するレーダー波や電波を辿って目標への誘導が可能なパッシブ・レーダー誘導方式である[3][9]。アクティブ・レーダー誘導方式がミサイルのレーダー・シーカーを作動させて目標に誘導されるのに対して、パッシブ・レーダー誘導方式は、ミサイル自体は電波を発生させることがないため、目標が攻撃に気付き難いという利点を有している。ただし、ジェーン誌の取材に対してLOEC社員は、パッシブ・レーダー誘導方式はSD-10/PL-12の主要な誘導方式ではないとしており、パッシブモードのみを使用した場合、レーダー波を発生させている友軍機に指向されてしまう危険性があると述べている[9]。PL-12が、ミサイル発射後にアクティブ・レーダー誘導モードとパッシブ・レーダー誘導モードを連続使用・交互切り替えが可能なのか、それとも一旦作動させた誘導モードの切り替えは不可なのかは現時点では不明[9]。

PL-12の推進装置は固体式ロケットモーターで、最高速度はマッハ4。ミサイルの最大射程は対進行交戦時に70km、最小射程は1,000m、最大荷重限度38〜40G[3][10]。目標に接近した段階で弾頭部に装着されたレーダー近接信管を作動させて目標を撃墜する。弾頭部にはHE/弾片弾頭が収納されている[1][3][4]。

【改良型と派生型】
中国ではPL-12の部隊配備を進めると同時に、改良型や各種派生型の開発を進めている。

SD-10Aは2008年の珠海航空ショーでその存在が明らかにされたPL-12/SD-10の改良型[7]。いわゆる「ネットワーク中心の戦い(Network-Centric Warfare:NCW)」を前提として新たにデータリンク機能が付与され、飛翔中のコース変更や攻撃目標の変更を行うことが可能となった[7][10]。最高速度はPL-12よりも速いマッハ5[11]。弾頭部の信管についても改良が加えられており、従来の触発信管、レーザー近接信管に加えて、時限信管も採用されている。時限信管は目標に命中後、一定の時間を置いて爆発するタイプの信管であり、目標内部に弾頭が突入して爆発することでより強力な破壊力を得ている[7]。これは地上目標への攻撃も踏まえたものとされており[7]、SD-10Aにはレーダーサイトなどの施設をパッシブ・レーダー誘導モードで攻撃する能力が付与されている可能性がある。SD-10Aはこれらの設計変更に伴い、全長・重量がPL-12よりもやや大型化している[7]。

中国航空工業集団公司では、SD-10Aは中国製戦闘機だけでなくユーザーの要請に応じて各種の戦闘機へのインテグレートが可能であるとしている[7]。

PL-12/SD-10をベースとした地対空ミサイルシステムの開発も進められており、珠海航空ショー2008では、SD-10AとPL-9C赤外線誘導AAMを野戦用4輪駆動車に搭載した LS-2対空ミサイルシステム(猟手-2/SD-10A/PL-9C)が公開されている[7]。LS-2のほかにも、PL-12ミサイルを垂直発射装置に搭載した地対空ミサイル型が開発中との情報がある[1]。

【派生型一覧】
型式名漢字表記タイプ
PL-12霹靂12空対空型基本型。2007年から配備が開始。
PL-12A霹靂12A空対空型PL-12の能力向上版(型式名がPL-12のままの可能性も有る)
PL-12B霹靂12B空対空型PL-12の能力向上型。誘導システムを改良。
PL-12C霹靂12C空対空型次世代戦闘機用に開発。ウエポンベイへの搭載を想定して尾翼が折畳み式になっている。
PL-12D霹靂12D空対空型次世代戦闘機用に開発。射程延長のためラムジェットを採用。胴体中央部にインテークを備えている。
PL-15霹靂15空対空型PL-12Cの発展型?
SD-10閃電10空対空型PL-12の輸出版。パキスタンが調達
SD-10A閃電10A空対空型/地対空型SD-10の能力向上型。SD-10AとPL-9Cを車載化したLS-2対空ミサイルシステム(猟手-2/SD-10A/PL-9C)も開発されている。
LD-10雷電10対レーダーミサイル輸出向けの航空機搭載型対レーダーミサイル。2012年11月に開催された珠海航空ショーに出展。
DK-10地空10地対空型SD-10をベースとした輸出向け地対空ミサイル。SD-10Aの名称もある(上の空対空型とは別)。ミサイルのサイズが大型化され、胴体中央の安定翼は弦長が長く幅の短いものに変更されている。2012年11月に開催された珠海航空ショーに出展。

【参考資料】
[1]Chinese Defence Today「PiLi-12 Medium-Range Air-to-Air Missile」
[2]光电行业名录「洛阳光电技术发展中心」
[3]Air-Launched Weapons ISSUE 47- 2006(Jane's Information Group)51〜53頁
[4]ミリタリー選書8-軍用機ウエポン・ハンドブック(青木 謙知/イカロス出版/2005年)52〜53頁
[5]中華武器大全「猛!中国新歼11B疊隐身能力为四代重歼作技术储备」
[6]軍事研究2008年9月号「発展する中国のミサイル産業-生産分野別の組織・構成、開発状況、技術移転・弱点の分析」(宮園道明/ジャパン・ミリタリー・レビュー)93〜107頁
[7]姜浩「注意“閃電”—SD-10A新型中距離弾訪談」(『兵工科技』2008年増刊—2008珠海航展専輯/兵工科技雑誌社)46〜50頁
[8]平可夫・Yuri Baskov・A・Buistlov「総合大型報告 十九年来中国仿製許可生産俄羅斯武器的現状」(『漢和防務評論』2011年2月号/No.76)60〜67頁
[9]Jane's Information Group「China discloses new SD-10 combat capabilities」(2010年12月1日)
[10]叢語・沈原「洛陽武庫--空空導弾研究院産品擷英」(『兵工科技』2009年08月上号/兵工科技雑誌社)31〜34頁
[11]CATIC公式サイト「SD-10A AMRAAM」
[12]叢語「霹靂-11:首次公開亮相的国産新型中距攔射弾」(『兵工科技』2009年12月下号/兵工科技雑誌社)49〜52頁
[13]Chinese Military Aviation「PL-12/SD-10 (courtesy of FK, hxqy)」

【関連事項】
LS-2対空ミサイルシステム(猟手-2/SD-10A/PL-9C)

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