日本の周辺国が装備する兵器のデータベース


▼PLL-01(補助移動車付き)の射撃の瞬間。

▼PLL-01(補助移動車付き)

▼牽引中のPLL-01(補助移動車なし)

▼PLL-01の原型となったベルギー製GC-45 155mm榴弾砲(上:牽引状態、下:射撃状態)

▼PLL-01の155mm砲弾(最も射程の長いFRFB-BB-RAP弾)


性能緒元
口径155(45口径)
全長9.068m(牽引状態)
全幅2.67m(牽引状態)
全高2.23m(牽引状態)
牽引時重量9,500kg(補助走行車なし、12,000kg(補助走行車あり)
初速897m/秒(FRFB弾でM11-10号装薬)、903m/s(FRFB-BB)、302m/s(FRFB弾でM3A1-4号装薬)
最大射程24km(通常弾)、30km(FRFB)、39.000km(FRFB-BB)、50km(FRFB-BB-RAP)
運用砲弾HE、FRFB-HE、FRFB-BB-HE、FRFB-BB-WP、FRFB-照明弾、FRFB-smoke、子爆弾搭載型(FRFB/FRFB-BB型)、レーザー誘導砲弾、FRFB-BB-RAP等
砲弾重量48kg(FRFB-BB)
発射速度通常2発/分、最大4〜5発/分
俯仰角度-5〜+72度
方向射界左30度、右50度
要員9名
牽引速度90km/h(路上)、15km/h(不整地)

【開発経緯】
PLL-01(WA-021/W-1988/W-1989)155mm牽引式榴弾砲は、中国が西側技術を導入して1980年代に開発した長射程のカノン榴弾砲(中国語では加榴炮)である。開発を担当した中国北方工業公司(NORINCO)での開発名称は、当初はW-1988だったが、1990年代に入るとWA-021と改称された。軍での制式名はPLL-01。このほか、W-1989、W-88/89、88/89式などの名称で呼ばれることもある。

中国軍の砲兵では永らくソ連式の152mm榴弾砲を運用してきたが、PLL-01では152mmに換えて新たに西側式の155mm口径を採用した。本砲の開発の背景には、砲兵戦力の旧式化に対する中国軍の危機感が背景にあった。1980年代の中国軍が最大の仮想敵と認識していたのは、長大な国境を接する陸軍大国のソ連軍であり、その中でも機甲部隊と砲兵部隊を特に脅威としていた。伝統的に砲兵戦力を重視してきたソ連軍に対して、当時の中国軍砲兵部隊は、装備する砲・ロケットの門数、投射弾量、射撃精度、射程など殆どの点で劣位にあった。中国軍が運用していた各種野砲・ロケットは、いずれも1950〜60年代に導入されたソ連由来の装備であり、1980年代の時点では旧式化は否めなかった。さらに、当時の中国の技術水準では、ソ連砲兵に対向しうる性能を有する野砲を独力で開発するのは困難であった。

この状況を解決するために中国が選択したのが、1970年代後半以降、関係が改善された西側からの技術導入であった。各国に調査団が派遣され検討が行われた結果、中国が新型野砲開発に協力を要請することになったのがベルギーのブリュッセルに本社を置くSpace Research Corporation (以下SRC社と表記)であった。SRC社は、世界的な弾道学の権威であったジェラルド・ブル(Gerald Vincent Bull)博士が創設した兵器設計コンサルタント会社であり、最長射程の野砲と革新的な長射程用砲弾の技術で知られていた。SRC社は、1970年代に当時の常識を覆す最大射程30kmというGC-45 155mm榴弾砲を開発、射程を延伸しつつ高い命中精度を確保したFRFB(Extend Range Full Bore)弾・ベースブリード弾などの技術と共に世界各国に売込みを行い、オーストリア、南アフリカ共和国(G-5)、スペイン(155/45ST-012)、オーストリア(GNH-45)、ユーゴスラビア、イラクなどの国々がSRC社の技術の導入を行っていた。

中国はSRC社の技術協力を受けて、まず155mmカノン榴弾砲(後のW-88 155mm榴弾砲(WA-021)を開発し、その技術をベースにより大口径・長射程の203mmカノン榴弾砲を開発することを決定した。1982年に、中国はSRC社からGC-45榴弾砲と155mm砲弾の技術提供を受ける契約に調印、SRC社の技術協力を得る形でNORINCOが長射程155mm榴弾砲を開発することとなった。

155mm榴弾砲の開発は1985年に開始された。SRC社は、155mm砲弾や榴弾砲の資料、そしてFGC-155(GC-45)牽引砲の現物を中国に提供して開発を支援した。155mm砲システムは共同開発が行われることから、設計の主要段階において中国とSRC、そして中国に引き渡される砲を製造するスペインのERT/EDB社それぞれの技術者が参与して、研究開発や相互の意見交換を行いながら、共同開発を推進することが取り決められた。この協定では開発の参考としてFGH-155(GC-45の発展型)榴弾砲の現物が中国に提供されることも定められた[1]。SRC社は積極的に技術協力を行い、ジェラルド・ブル博士自身が何度も中国を訪問し技術指導を行っている。1986年末までには、試作砲2門と初期量産型10門が完成し、1987年には各システムの評価試験が実施された。1988年11月、NORINCO内部で「W-1988」の開発名称が与えられた155mm榴弾砲が、北京で開催された第二回北京国際防務博覧会に出展され、その存在が初めて公にされた。

W-1988では、当初砲の薬室の容積をCG-45と同じ23.548リットルとしていた。しかし、試験では砲身長に比較して発生する燃料ガスのエネルギーが高すぎるため、砲身寿命が短くなり安全性にも問題があること、砲口からは強烈な砲炎と衝撃波が発生し、砲手にとっても危険であることが分かった。これを受けて検討を行った結果、薬室の容積を22.94リットルにすれば、発射速度や射程、弾道性能に悪影響を与えることなく上記の問題を改善できることが判明し、W-1988の薬室容積は22.94リットルとされた。

薬室問題は解決できたものの、W-1988は命中精度やマズルブレーキの反動制御など各種の不具合が発生し、これらの問題を完全には解消できなかった。これは1990年にジェラルド・ブル博士が暗殺され、天安門事件による制裁措置も相まってSRC社との技術協力が断絶し、中国側だけで開発を行わなければならなくなったことが影響しているものと思われる。冷戦が終結し、ソ連の脅威が減少したため、砲兵戦力を速やかに近代化する必要性も無くなったこともあり、W-1988の大量生産は見送られることが決定された。

1990年代に入ると、W-1988はWA-021と改称され、NORINCOにおいて各種不具合の改善を目的とした開発が続行されることになった。これは技術蓄積と輸出向け榴弾砲の開発を目的とした研究開発であったが、中国軍自身もWA-021を一部の部隊で採用することを決定し「PLL-01式155mm加榴炮」として制式化されることとなった。PLL-01は、北京軍区の独立砲兵連隊で試験運用されることとなる、3個大隊分の54門が配備された。同砲兵連隊は現在まで、中国軍で唯一PLL-01を運用する部隊となっている。1999年の中華人民共和国建国50周年記念の軍事パレードでは同部隊も参加して、PLL-01が実戦配備されていることを内外に明らかにした。なお、この時点ではPLL-01の名称は知られておらず、88式155mm榴弾砲という名で呼ばれていた。

PLL-01は、従来の中国軍の砲体系とは異なる口径を採用しただけでなく、各種装備や戦闘システムも西側砲兵に即したものを採用している。中国軍にとっては、PLL-01で従来の榴弾砲を更新した場合、旧式化した砲兵システムを全面的に改める必要が生じることとなり、そのためには巨額の新規投資と人員の再訓練が必要となる。さらに、155mm砲弾を採用するとなると、これまで大量に生産してきた152mm砲弾のストックが無駄になることも懸念材料であった。1990年代以降、空軍・海軍の装備調達が優先される状況においては、このような巨額の費用を必要とする装備調達は行い得ないのが現実であり、PLL-01の配備は限定的なものに留めざるを得なかった。

また、PLL-01の品質自体にも問題があったのも事実である。PLL-01は、部隊運用されている54門以外にも製造が行われているが、それらは部隊運用に堪えず保管処置が行われているとされる[2]。この事例からは、W-1988の開発時に発生した技術的問題が、その後も完全には解消できていないことを推測しうる。

現在の中国軍の牽引式榴弾砲の主力は66式152mm榴弾砲(D-20)が占めており、現状では66式を更新する動きは確認できていない。砲兵部隊を現代の情報戦に対応しうるレベルに近代化するには、砲システムだけでなく軍全体の情報化の推進が不可欠であり、これは一朝一夕には行いえない。空軍・海軍向けの装備優先が続く現状では、砲兵部隊全体の近代化は困難であり、一部の部隊に限って装備の近代化を推進し、新型システムの運用ノウハウの蓄積を行う方法を採らざるを得ないであろう。中国軍では、残る大量の旧式砲についても、レーザー誘導砲弾の採用や、指揮統制システムの近代化、ネットワーク化に対応させることで、出来るだけ戦力的価値を維持することを目指している。

NORINCOでは、国際市場向けにWA-021(PLL-01の製品名称)の宣伝を積極的に行っており、システムの近代化にも勤めているが、輸出された事例は少なく、タイの海兵隊に10門、イランにWA-021沿岸砲型が15セット輸出されたに留まっている。

【性能】
PLL-01の砲身は電気溶鉱炉で製造された合金スチールを鍛造整形し、さらに砲身に加工する際に自緊処理を施しており、強靭性と長い砲身寿命(2,500発)を両立させている。砲身長は45口径。砲口初速はFRFB(Extend Range Full Bore:低抵抗弾)の場合で897m/s、FRFB-BB(Base Bleed)弾の場合で903m/s。なお、PLL-01の砲架には、ジェラルド・ブル博士の技術提供を受けた他国の45口径155mm砲(オーストリアのGHN-45など)の砲身を搭載することも可能とされる[3]。

砲尾の閉鎖機は半自動式鎖栓を採用。マズルブレーキは3重式で、砲の反動を43%減少させる能力を有する。砲身の上下には駐退複座装置が配置されており、砲の俯仰角度に応じて後座長を調整する。そのため、高い仰角をとっても問題なく射撃を継続することが可能。

砲と砲架を結合し砲の位置固定を行う平衝機には気圧式を採用している。地面に打ち込んで反動を吸収する脚部は高強度の溶接鋼製で、脚部、閉鎖機、砲の俯仰角、左右旋回の各動作は全て油気圧駆動システムを採用しており、操作要員の負担を軽減している。砲架中央下部には、射撃時に地面に設置させて砲の旋回を行うターンテーブルが装着されている。砲架には4つのタイヤが装着されており、それぞれ個別に砲架に接続されている。射撃体勢では砲架を含む全長は13mであるが、移動時には砲を砲架側に180度旋回して全長を9mに短縮する。

砲の照準は、射撃統制車により一元的に行われるが、砲側照準機によって行うこともできる。一両の射撃統制車が6門のPLL-01を指揮統制する。射撃統制車には、射撃統制装置、コントロールパネル、指令伝達装置、レーザー測遠機と自動観測装置などが搭載されている。

PLL-01の通常榴弾での射程は24km、FRFB弾で30km、FRFB-BB弾を使用した際の最大射程は39,000mに達する。使用可能な砲弾としては、NORINCOが開発したHE(榴弾)、FRFB-HE、FRFB-BB-HE、FRFB-BB-WP(白燐弾)、FRFB-illuminating(照明弾)、FRFB-smoke(発煙弾)、子爆弾搭載型(FRFBとFRFB-BB型が有る)などが用意されている。子爆弾搭載型は、72発の成型炸薬弾が内包されており、装甲車両に対するトップアタック攻撃や、ソフトスキン車両や兵員に対する制圧射撃において有効であるとされる。

1990年代中頃からは、ロシアのクラスノポール152mmレーザー誘導砲弾の技術を導入して開発された155mmレーザー誘導砲弾の運用も可能となった。

NORINCOは、2004年に改良型の155mm砲弾を発表したが、その中で最大の射程を有するFRFB-BB-RAP(Rocket Assisted Projectiles:ロケット補助推進弾)を最大装薬で発射すると最大50kmの射程を確保することが出来るようになった。ただし、この砲弾は長射程と引き換えに、炸薬量の減少と命中精度の低下というデメリットを有している。

砲弾の発射速度は短時間であれば毎分4〜5発、持続射撃の場合は毎分2発。PLL-01には、気圧駆動式の装弾補助装置が搭載されており、砲手の負担軽減に寄与している。

【派生型】
WA-021補助移動車装着型
PLL-01は移動には6×6野戦トラックによる牽引が必要であるが、陣地などでの短距離移動における省力化のため、砲架にエンジン付の補助移動車(APU :Auxiliary Power Unit)を接続して陣地内での自力移動を可能とする改良が加えられた。補助移動車は493Q型4気筒空冷ディーゼル(77hp)を搭載しており、W-1988を最高速度20km/hで走行させる性能を有していた。航続距離は80km。補助移動車は1987年に開発に着手され、試作車を59-I式130mm加農砲に接続して試験を行った上で、1988年にW-1988に装着され各種試験が実施された。

補助移動車の装着により、陣地内での自走が可能となり、操作員の負担が大きく軽減された。また、展開や撤収に要する時間が従来の牽引砲に比べて僅かで済むため、対砲兵射撃に備えた陣地転換にも有利である。

「155mm自走炮武器系統」
「155mm自走炮武器系統」は、NORINCOが2004年に発表した155mm砲兵連隊/大隊向け装備一式をセットとした輸出向け砲兵システム。同システムは、WA-021補助移動車装着型(中国語だと「155mm自走加榴炮」)、各種砲弾と装薬、BCPV連/BCP大隊指揮車、BRV偵察車(WZ-551装輪装甲車をベースとした8×8装輪装甲車)、702-D対砲レーダー車、704-1気象レーダー搭載車、整備車両2両(一両はクレーン装備)、電子機器修理車両、シミュレーター訓練システム、兵器操作用ソフトウェアから構成される。

同システムのWA-021については、顧客の要望に応じて砲身長を39口径、45口径、52口径の3種類から選択することが出来る。国際競争力を得るため、各種システムには、最新の機材を採用し、西側の砲兵部隊と同等の能力を発揮できるようにしており、訓練や整備・維持にも配慮が行われているのが特徴。

WA-021沿岸砲型
NORINCOが輸出向けに開発したWA-021の沿岸砲型。中国軍で運用されているほか、イランに15セットのWA-021沿岸砲システムが輸出されたとのこと。

91式155mm自走榴弾砲(PLZ-91)(試作)
PLL-01と並行して開発が行われた155mm自走榴弾砲。PLL-01と同系列の45口径155mm砲を搭載している。詳細は91式155mm自走榴弾砲(PLZ-91)を参照。

88式155mm自走榴弾砲(PLZ-45)
PLL-01と91式155mm自走榴弾砲(PLZ-91)の開発によって得られた技術を応用して開発された155mm自走榴弾砲。PLL-01から発展した45口径155mm砲を搭載している。詳細については88式155mm自走榴弾砲(PLZ-45)を参照。

装輪式155mm自走榴弾砲(試作)
近年、仏GIAT(現ネクスター社)のカエサル(CAESAR)や瑞ボフォース社のFH-77Bのように、野戦用トラックに155mm榴弾砲を搭載した装輪式自走砲が各国で登場しているが、中国でもNORINCOが同様の装輪式155mm自走榴弾砲を開発しているのが確認されている。開発は2002年から始まったとの由。

万山特殊車両製造廠製のWS-250 6×6トラックをベースに、車体前部には断片防御可能な装甲を施し(一両製作された試作車両では通常のキャブのまま)、車体後部には45口径155mm榴弾砲と射撃の反動を吸収するための大型駐鋤を搭載している。車体後部に搭載された155mm砲はPLL-01の45口径155mm榴弾砲をベースに開発されたと推測されている。戦闘重量は22トンで、中国空軍のIL-76MD輸送機Y-8輸送機(運輸8/An-12)輸送機などの大型輸送機での移動が可能。路上速度は最高75km/h。摂氏50度から−40度までの環境で運用を行う事が出来る。自走状態から射撃状態になるまでの所要時間は1分。

この車両は試作に終わったが、シャーシを改良し、砲身を52口径に延長した改良型がSH-1 155mm装輪自走榴弾砲として登場することになる。

GM-45 155mm榴弾砲
GM-45 155mm榴弾砲は、PLL-01の砲身を、既存の59-I式130mm加農砲の砲架に搭載したものである。PLL-01との変更点は、原型の螺旋式閉鎖機から半自動式鎖栓式に改められ装弾以後の工程が自動化された点。砲の性能はPLL-01に順ずる。

GM-45は、既存の59-I式130mm加農砲の砲架を流用することで、PLL-01に比べて構造を簡略化し重量も軽減することに成功した。ただし155mm砲は元の130mm砲よりも発射時の反動が強いため、射撃の際の砲架の安定性には問題があったとされる。

GM-45は、国際市場向けに開発されたが、現時点では採用国は確認されておらず、中国軍での運用についても不明。

【参考資料】
Jane's Armour and Artillery 2006-2007 (Jane's Information Group)
江畑謙介『兵器マフィア』(光文社/1992年):注[3]
「1982-2007 中国155毫米圧制火炮更新」(所載)『中国尖端武器』2007-12B(吉林科学出版社):注[2]
武瑞文 徐大洋 程遠「中国新型155自走炮武器系統」(所載)『兵器知識』2006.2(中国科学技術協会)

Chinese Defence Today
中国武器大全
環球展望「中国PLL01 155毫米牽引-榴弾炮」
大旗網「就我軍203mm巨炮専訪某研究所所長」:注[1]
新浪網「武器縦横:中国外銷型自動推進牽引榴弾炮」

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