日本の周辺国が装備する兵器のデータベース


▼兵器博覧会で展示されているQW-3のミサイル本体。


▼QW-3を艦対空ミサイルとした「FLS-1艦載近程軽型防空導弾武器系统」の概念図と発射機の写真


QW-3性能緒元
ランチャー全長  
ミサイル全長2,100cm
ミサイル直径72cm
ミサイル重量23kg
弾頭HE+弾片
推進装置2段式固体燃料ロケットモーター
最大速度750m/s
射程800〜8,000m
高度4〜5,000m
誘導方式セミ・アクティブ・レーザー誘導方式

QW-3(前衛3号/QianWei-3/Vanguard-3)は、2002年に開催された珠海航空ショーでその存在が公にされた携帯式地対空ミサイルシステム[1]。

QW-3の開発では、従来の携帯地対空ミサイルよりも高高度を飛行する目標に対する攻撃能力の強化が重要な目標とされた[2]。これは、アメリカがアフガニスタンやイラクでの対テロ戦争において、地上からの対空砲や携帯地対空ミサイルによる被害を避けるため、近接航空支援任務においてこれらのミサイルが届き難い高度8,000m以上の高高度から対地攻撃を実施する様になり、従来の携帯対空ミサイルの有効性が減じているとの状況分析が背景にあった[2]。

従来より遠距離/高高度の目標に対する攻撃を可能とするには、.潺汽ぅ襪亮幼延伸と速度増加、遠くの目標に対してミサイルを確実に命中させる誘導方式の実用化が必要であった。

QW-3では、射程延伸と飛翔速度の増加を達成するために、ミサイル尾部に大型ブースターを装着して二段式ロケットとする手法を採用した。これにより最大速度は750m/s、迎撃可能な最大射程は8,000m、高度5,000mと、先に開発されていたQW-1、QW-2より大幅に性能を向上させている。

【QW-1、QW-2との比較】[1][3]
ミサイル重量ミサイル全長速度射程射高誘導方式
QW-110.36kg1,477cm600m/s500〜5,000m30〜4,000m赤外線シーカー全包囲攻撃・打ちっ放し可能
QW-211.32kg1,590cm600m/s500〜6,000m10〜3,500 or 4,000m2波長赤外線シーカー全包囲攻撃・打ちっ放し可能
QW-323kg2,100cm750m/s800〜8,000m4〜5,000mセミ・アクティブ・レーザー誘導方式全包囲攻撃可。打ちっ放しは不可

表には記載していないが、撃墜能力向上のため弾頭部も大型化されており、QW-1やQW-2よりも目標に対する撃墜確率を高めている[1]。しかし、長射程を得た反面で最低射程は300m短くなっているのも見逃せない。そして、性能向上の代償として、ミサイルの重量はQW-1/2の倍以上に、全長は50cm以上長くなっており、歩兵による携行・運用が困難なサイズとなっている。そのためQW-3はシステム一式を射手が着座する三脚に搭載、もしくは発射機を車両や艦艇に搭載して運用することを前提としている[1]。

射程の延長と並行して、遠距離目標に対して確実にミサイルを指向させるための誘導方式の検討も実施された。従来の中国製携帯対空ミサイルはいずれも赤外線誘導方式を採用していた。これは目標の熱源を赤外線シーカーにより探知して誘導するもので、発射後射手による制御の必要はなくセンサーのサイズをコンパクトに出来るため小型の携帯対空ミサイルでの運用に適した誘導方式であった。しかし、シーカーの感知距離が短距離に限定される、悪天候下では赤外線シーカーの探知能力が大きく低下する、相手側が散布した赤外線フレアに幻惑され易いなどの問題点も有していた。

QW-3では、従来の赤外線誘導に換わる誘導方式として新たにセミ・アクティブ・レーザー誘導方式(Semi-Active Lazer Homing:SALH)を取り入れている[1]。SALH方式は、目標に対してレーザー波を照射して、ミサイルはそのレーザー波の反射を捉えて目標に指向される[2]。SALH方式のレーザー照射による誘導が可能な距離は赤外線シーカーによる感知距離よりも長く、遠距離の目標に対する攻撃を可能としており、赤外線フレアや電子妨害などに幻惑され難いというメリットを有する[1][2]。反面、ミサイルが命中するまで目標へのレーザー照射を継続しなければならず、打ちっ放し能力は喪失している[2]。

QW-3のSALH方式は追尾率が毎秒15度と赤外線シーカーに比べて比較的低いという問題がある[1]。しかし、超低空を飛行する目標の方も、回避行動が制約されるため、この問題はそれほど深刻なものでは無いとされる[1]。QW-3の発射機にはレーザー測距装置とレーザー照射装置が装備されており、射手は目標を捕らえてレーザー波を照射し続ける事でミサイルを誘導するが[2]、射手が目標を見失った場合、もしくは地形や雲などでレーザー波の照射が途絶えた場合、ミサイルは誘導を失ってしまうというデメリットを抱えている。命中までの全過程でレーザー波の照射を継続しなければならないので、射手の位置が敵に発見される可能性も生じる。1発当たりの命中率は85%とされている [2]。QW-3はレーザー近接信管と触発信管を併用しており、目標に接近したQW-3は直撃、もしくは至近距離での爆発により相手を破壊する。弾頭の有効破壊半径は3m[2]。

【派生型と配備状況】
QW-3には、標準型と軽量型の二つの派生型が開発されているとされるが、軽量型に関する情報は乏しく詳細は不明[1]。

中国航天科技集団公司ではQW-3を艦載式の近接防空ミサイルシステムとした「FLS-1艦載近程軽型防空導弾武器系统」を開発している[5][6]。FLS-1はミサイル発射機、レーザー照準・照射装置、光学センサーなどから構成されるコンパクトなシステムであり、排水量が数十トンの小型艇への搭載が可能[5]。FLS-1は輸出向けに宣伝が行われているが、今のところ同システムの採用国は現れていない。

QW-3は、従来の携行対空ミサイルよりも長射程が要求され、それに答えて携行対空ミサイルとしては比較的長い8,000mという有効射程を確保することに成功した。しかし、QW-1やQW-2を全面的に更新する装備というよりは、近距離の飛行目標は対空砲や従来型携行ミサイルが、それよりも遠方の高速・高高度の目標をQW-3が担当するという縦深的な防空コンプレックスを形成することで、地上部隊の航空攻撃に対する抗堪性を総合的に向上させる装備といえる。赤外線誘導方式とSALH方式という二つの誘導方式が存在することで、対地攻撃を行う航空機側の負担を増加させる効果も期待できる所である。

QW-3は2000年代初めに中国軍での運用が開始されたと伝えられているが、その具体的な運用については不明[4]。中国ではQW-3について、他のQWシリーズと共に積極的に各国への売込みを図っており、2006年から2007年にかけてインドネシアへ145基の輸出に成功[7]。さらに2009年にはQW-3を搭載したTD-2000Bミサイル/砲統合兵器システム3セットの輸出成約を得ている[7][8]。

【参考資料】
[1]Chinese Defence Today「QW-3 Surface-to-Air Missile」
[2]中国武器大全「前卫-3激光半主动制导防空导弹系统」
[3]Jane’s Land-Based Air Defence 2006-2007「CNPMIEC QW-1 Vanguard low-altitude surface-to-air missile system.」「Liuzhou Changhong Machinery Manufacturing QW-2 -low-altitude surface-to-air missile system.」8〜9頁
[4]Deagel.com「QW-3/QianWei-3」
[5]捜狐網「FLS-1——中国版“海拉姆”」
[6]新兵器之窗「中国公开FLS-1舰载近程轻型防空导弹武器系统」
[7]The SIPRI Arms Transfers Database
[8]DEFENSE STUDIES「Indonesia Buys New SHORADS」(2009年5月30日)

【関連事項】
QW-1携帯対空ミサイル(前衛1/ヴァンガード1)
QW-2携帯対空ミサイル(前衛2/ヴァンガード2)
QW-4携帯対空ミサイル(前衛4/ヴァンガード4)
中国陸軍

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