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SH-8 52口径155mm自走榴弾砲(PLZ-52)は、中国北方工業集団公司(NORINCO)が開発した輸出向け自走榴弾砲[1]。2012年9月19日から23日に南アフリカ共和国の首都プレトリアで開催されたAAD2012(Africa Aerospace & Defence Exhibition)で模型が初公開された[1]。

SH-8は、NORINCOの輸出向け自走榴弾砲88式155mm自走榴弾砲(PLZ-45)をベースとして、05式155mm自走榴弾砲(PLZ-05)などの開発で得られた各種新技術を盛り込んだ発展型という位置付け[2][3]。SH-8はかなりのコンポーネントがPLZ-45と共有化されており[2]、これは開発コストの低減や、既にPLZ-45を導入しているサウジアラビアやクウェートに対して導入を容易にするアピールとなる。

SH-8の設計技師によると、同車は中国軍で配備が進められているPLZ-05よりも高レベルのデジタル技術が導入されているとのこと[2]。

【シャーシ性能】
SH-8のサイズは、重量42t、全長11.6m、車幅3.38m、車高2.76m[2]。車体は圧延防弾鋼板を溶接して製造されており[1]、車内配置は、車体前方左部に動力系統、右部に操縦席を配置、砲塔が搭載された車体後部が戦闘室となっている。この車体は「第二世代履帯式共通シャーシ(第二代履帯式通用底盤)」と呼ばれるシャーシであり、各種自走砲の共通プラットフォームとして開発された。SH-8では、車体の大型化や重量増加に対処するためエンジン出力の強化など所定の改造が施されている。PLZ-05の技術も利用されており、足回りの形状や転輪の間隔は同自走砲と類似している[2]。

高い機動力と優れた操縦性を発揮するため、動力系統は1,000馬力のエンジンに自動変速装置を組み合わせたものが採用された[2]。出力重量比は23.8hp/tで、これは中国の155mm級装軌式自走榴弾砲としては最も高い数値で、路上最高速度65km/hを発揮する[2]。航続距離は450km[2]。停車時にエンジンを作動させずに各種装置に必要な電力を確保するため、補助電源装置(Auxiliary Power Unit:APU)を搭載しているが[3]、これはPLZ-45と同じ。車体の大型化に伴い砲の反動を十分吸収できるようになり、PLZ-45では装備されていた車体後部の駐鋤が廃止された。これにより、停車から射撃までの時間が短縮され射撃後の迅速な陣地転換が可能となった。

SH-8は、システムの自動化が進められた結果、乗員はPLZ-45やPLZ-05よりも1名少ない4名に抑えることに成功した[2]。車体前方左側の操縦席に乗る操縦手以外の3名は砲塔内部に搭乗する。乗員の保護機能として、対NBC防御装置や自動消火システム(火災検知装置と自動消火装置の組み合わせ)が標準装備されている[3]。

【砲システム】
SH-8は、PLZ-45よりも射程を延伸するため砲身長を7口径伸ばした52口径155mm砲を採用した。FRFB-BB-RAP(Rocket Assisted Projectiles:ロケット補助推進弾)を使用した場合最大52〜53kmの射程を発揮する[1][2]。155mm砲の俯仰角度は-3〜+68度[2]。砲塔内部には自動装填装置が搭載されており、毎分8発の最大発射能力を有している[2]。砲弾の装填は完全自動化されているが、装薬については装填手が装填補助装置を使用して装填作業を行う[2]。SH-8の装填装置は、砲の俯仰角の変化に関わりなく装填を行うことが出来る[1]。SH-8の搭載弾数は30発[2]。

SH-8は、NORINCOが開発した各種155mm砲弾の発射が可能であるが、誘導砲弾については新型のGP-6レーザー誘導砲弾がラインナップに加わっている。GP-6はGP-1レーザー誘導砲弾(ロシアから導入した「クラスノポール」のライセンス生産型)の改良型で、最大射程が20kmから25kmに延伸されている。GP-6は、中間誘導は慣性航法式で終末誘導は前線観測員によるレーザー照射を利用したセミアクティブ・レーザー誘導方式を採用しており、時速36km/hまでの移動目標に対する打撃能力を有している[2]。

副武装として、車長用キューポラに12.7mm重機関銃1挺、砲塔前面に4連装発煙弾発射機2基を備えている[3]。

SH-8は、迅速な反応と戦場での生存性を保証する高度なデジタル射撃統制システムを装備している[1]。ネットワーク中心戦概念に基づき、戦闘管理システムの搭載やC4ISRシステム(Command Control Communication Computer Intelligence Surveillance Reconnaissance system)へのシームレスな接続を前提とした設計を採用しているのも特徴[1][2][3]。レーザー/光ファイバージャイロの航法システムにより、外部のサポートなしに正確な走行を可能としている[1]。

【支援車両】
SH-8の派生型としては、同一のシャーシを利用した弾薬補給車が開発されている。弾薬補給車は、車体後部の天井を嵩上げして弾薬庫を置くスペースを確保。伸縮式の砲弾移送装置を備えており、給弾時にはSH-8の砲塔後部ハッチと連結して自動的に砲弾を補給する。

SH-8自走砲部隊は、自走砲と弾薬補給車以外にも、装甲観測車、装甲コマンドポスト、気象測定車、対砲レーダー車、装甲回収車など各種車両で構成される[4]。

【総評】
SH-8の原型ともいえるPLZ-45は、クウェートとサウジアラビアへの輸出を実現しているが、その設計は1980年代に行われたもので、今後も国際兵器市場での競争力を維持するためには各国の新型自走榴弾砲に匹敵する性能を備えた自走榴弾砲を実用化する必要性があった。SH-8はその要望にこたえるためにNORINCOが開発した自走榴弾砲であり、中国軍の新型自走砲PLZ-05よりも機動力や自動化レベルなど各種性能で優位に立っている。

SH-8で導入された52口径155mm榴弾砲、自動装填システム、誘導砲弾、戦闘管理システムや各部隊との相互データリンクなどは、各国の新型155mm級自走榴弾砲でも積極的に導入を図っているものであり、国際市場でこれらの車両と伍していくために装備が求められたものといえる。

ただし、これらの高度な装備を備えた各国の新型155mm級自走榴弾砲はいずれも価格高騰は避けられず、必ずしも既存の自走榴弾砲に代わって広く採用される存在にはなっていない[5]。SH-8についても同様で、同車を必要としてそれを購入できる国はそれほど多くないと思われる。NORINCOとしては、既にPLZ-45の輸出実績があり、オイルマネーによる積極的な兵器調達を進めている中東産油国に対してSH-8の売込みを図るのではないかと推測される。

性能緒元
重量42トン
全長11.6m
全幅3.38m
全高2.76m
エンジンディーゼル(1,000馬力)
最高速度65km/h
航続距離450km
武装52口径155mm榴弾砲×1(30発)
 12.7mm重機関銃×1
 4連装発煙弾発射機×2
俯仰角-3〜+68度
旋回角度全周射撃が可能
装甲圧延防弾鋼板
乗員4名

【参考資料】
[1]Army Recognition「Chinese Company Norinco unveils the PLZ 52 a new tracked self-propelled howitzer 155mm」(2012年9月22日)
[2]平可夫「52倍口徑自走榴彈砲出口國際市場」(『漢和防務評論』2012年10月号)30ページ
[3]Army Recognition「PLZ52 155mm 52 Caliber Self-propelled armoured tracked howitzer」
[4]NORINCO宣伝写真
[5]山下一郎「技術解説 世界の155mm自走榴弾砲の全貌」(軍事研究 2011年6月号別冊『10式戦車と次世代大型戦闘車』/ジャパン・ミリタリー・レビュー)55〜70ページ
[6]中国武器大全「中国新型双35毫米自行高射炮」

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