日本の周辺国が装備する兵器のデータベース


▼SY400地対地ミサイルの自走発射機。

▼自走発射機の模型。走行状態では写真のようにミサイルランチャーは水平にされる。

▼ミサイルランチャーを後方から撮影した写真

▼ミサイル本体。

▼ミサイル発射試験の写真。


性能緒元(自走ミサイル発射機)
重量全備重量40トン/19トン(シャーシのみの重量)
全長11.43m
全幅3.05m
全高3.05m
エンジンディーゼルエンジン(700馬力)
最高速度80km/h
航続距離 
渡渉深度1m
武装SY400地対地ミサイル搭載4連装発射機×2、もしくはBP-12A短距離弾道ミサイル搭載単装発射機×1+SY400 4連装発射機×1という組み合わせも可
乗員3名

性能緒元(SY400ミサイル)
重量
直径400mm(ミサイル本体のみ。固定翼は含まず)
全長
全幅
推進装置固体燃料ロケットモーター
誘導システム慣性航法+衛星位置測定システム
射程30〜120km(200km説もある)
弾頭榴弾、クラスター弾頭(対人/対装甲)、サーモバリックなど

【開発経緯】
SY400(神鷹400)地対地ミサイル・システム(中国語では制導火箭弾武器系統)は、2008年に開催された珠海航空ショーに出展されてその存在が明らかになった輸出向けの地対地ミサイル・システム[1]。SY400の400とはミサイルの直径(400mm)をあらわしている[1]。

開発は中国国家航天局(China National Space Administration:CNSA)の下部機関である中国航天科工集団公司(China Aerspace Science & Industry Corp.:CASIC)により行われた。

【性能】
SY400のシャーシには万山特殊車輌製造廠製WS-2400八輪重機動トラックが使用される。WS-2400八輪重機動トラックは、万山特殊車輌製造廠がソ連のMAZ-543Mをリバースエンジニアリングして開発した大形野戦トラックで、シャーシのサイズは、全長11.43m、全幅3.05m、全高3.05m、車体重量19トン、最大積載量22トン[1][2]。全備重量は、自走ロケット発射機の場合40トンに達するが、大出力のドイツ製ディーゼルエンジン(700馬力)とスウェーデン製変速装置を搭載、地形に合わせて空気圧を調整できる中央タイヤ圧制御システムなどを装備することにより比較的良好な野外機動性を有しており、路上最高速度80km、野外走行時も40〜50km/hの最高速度を発揮する[1]。最大登攀角度は35度、超壕能力は2.5m、水深0.8mまでの河川の徒渉が可能[1]。

車体前方には乗員4名の乗員室が配置されており、後部に荷台が配置されている。乗員登場区画はNBCエアコンや防護システムが標準装備[2]。発射に際しては、第3、第4車輪の間に装備されたジャッキを接地させて車体を安定化させる方式を採用している[2]。

SY400は、車体後部に箱型キャニスター4基を方形に配置して組み合わせた4連装発射機2基を搭載している[1]。ミサイルは出荷段階で箱型キャニスターに収納されており、部隊での整備は必要ないメンテナンスフリーを実現している[3]。発射の際には、発射機を垂直にしてミサイルを打ち上げ、一定の高度に達したところでミサイルの姿勢を変更して目標に向けて飛翔する。ミサイルの打ち上げ方法は発射機内部でモーターに点火するホット・ローンチ式を採用している。CASICでは、この4連装発射機と同サイズの単装キャニスターも開発しており、このキャニスターにはSY400ミサイルよりも大口径のBP-12A短距離弾道弾(最大射程300km)1発を搭載する[4]。任務に応じて、SY400用の4連装キャニスターとBP−12A用単装キャニスターを積み替えることが想定されている[4][5]。

SY400の設計技師によると、垂直発射方式は2つの利点があるとのこと[1]。発射機を傾斜させてミサイルを打ち上げる方式の場合は、周辺に建物や樹木などがある地形では打ち上げ直後にミサイルがそれらの障害物に接触してしまう危険性があるが、垂直発射方式であれば、発射機周辺の障害物を気にすることなく打ち上げが可能[1]。2つ目の利点としては、発射機を傾斜させて打ち上げる場合には、停車後にジャッキを展開して車体を安定化した上で、車体の傾斜や方向などのデータを入力した上で、発射機を規定の角度にして打ち上げるという一連の過程が必要である。これに対してミサイルが発射後に自ら姿勢制御を行って目標に飛翔するSY400の場合は、発射機の角度調整は不必要であり、停車後、ジャッキを展開して車体を安定化したのち、発射機を垂直に立てて直ちに打ち上げることが出来、傾斜式に比べてミサイル発射に要する時間を短縮できるとしている[1]。ミサイル自体が空中で姿勢制御を行い目標に向うため、一々発射機を目標に旋回させることなく、360度いずれの方向に存在する目標に対する攻撃が可能となっている[1]。

SY400のミサイルの構造は、前方から制御装置、弾頭部、ロケットモーター+燃料区画、尾部となっている[1]。ミサイルの中央部には弦長が長く幅の短い固定翼を装備。尾部には全遊動式操縦翼があり、ミサイル尾部の推力偏向装置と共に飛翔制御を担当する。ロケットモーターは固体燃料式。発射の際は、キャニスター内部でロケットモーターに点火、垂直に打ち上げられた後、一定の高度に達すると姿勢制御を行い目標に向けてコースを変える。ロケットモーターの燃焼が終了すると、ミサイルの固定翼による揚力を利用した滑空しながら目標に向うことで射程の延伸を実現している[5]。SY400の射程は30〜120km[5](200km説もある[3][4])。

ミサイルの制御は慣性航法装置と衛星航法装置の併用方式を採用している[5]。慣性航法装置は外部からの干渉を受けずに自律的な誘導が可能であるが、飛翔時間が長くなるにつれて誤差が大きくなるデメリットがある。SY400では、衛星位置測定システムから得られた位置情報を元にして、慣性航法装置の誤差を随時修正しながら正確な飛行を行うことで、慣性航法装置のデメリットに対処している[1][5]。

衛星航法装置は、GPS(民生用)/GLONASS誘導システムの併用で、中国の衛星航法システムである「北斗」の使用も可能[5]。ただし、民生用GPSの精度は米軍が使用している軍事用GPSに比べて精度が低くなっており、SY400の半数必中率(CEP: Circular Error Probability)は30〜50mと、点目標へのピンポイント攻撃を行うには不十分な精度に留まっている[5]。これに対してSY400は、クラスター弾やサーモバリック弾といった面制圧が可能な弾頭を使用することで命中精度の問題に対処している[5]。GPSジャマーなどによりGPS誘導が不可能な場合は慣性航法装置のみでの誘導も可能であるが、その際にはCEPは100〜数百mのレベルに留まってしまう[5]。

SY400は、発射前に目標の位置情報を入力、打ち上げ後にはその情報を元にミサイルが自律的に目標に向けて飛翔するので、発射後は地上からの誘導の必要はなく直ちに退避行動に移ることが可能。ミサイルごとに異なる目標情報を入力して、同時に発射したミサイルが別々の目標に対して攻撃を行うことも出来る[3]。

SY400は、その長射程を生かして、敵後方の戦域〜戦術級の各種目標に対する打撃を行う。SY400を装備した地対地ミサイル部隊は集団軍に配属され、連隊級の部隊での運用が想定されている[3]。SY400部隊の最小単位は、自走ミサイル発射機、予備のキャニスター2基と再装填作業用のクレーンを装備した弾薬輸送車、指揮車両各1輌により構成される[4]。

【今後の展開】
CASICでは、SY400、BP-12A、そしてSY400と同じシャーシを使用したSY300 300mm12連装自走ロケット砲(中国語ではSY400と同じく「SY300制導火箭弾武器系統」)といった一連の地対地ロケット/ミサイル・システムを開発しており、各国への売込みを図っている。

現時点ではSY400は命中精度に限界があり、移動目標への攻撃能力も有していないが、CASICでは更なる命中精度の向上と移動目標への攻撃を可能とする改良を行うことを明らかにしている[5]。命中精度の向上や移動目標攻撃を可能とするには何らかの終末誘導システムを搭載することが必要であり、赤外線シーカーやミリ波レーダー・シーカーの使用が考えられている[5]。また、SY400の発展型として、艦対地/艦対艦ミサイル、空対地ミサイルを開発することも検討されている[5]。

【参考資料】
[1]姜浩・驼铃「跨界神兵—访首次公开露面的“神鹰”400制导火箭系统设计专家」(『兵工科技』甦 2008珠海航展专辑/兵工科技杂志社/65-68頁)
[2]「遠火呼嘯、万鈞雷霆-我国遠程火箭炮発展全掲秘」(『全球防務叢書』第四巻 輔国号/内蒙古人民出版社/6〜17頁)
[3]Military-Today.com「SY-400 Short-Range Ballistic Missile」
[4]远林「珠海航展中国对地打击体系」(『兵器知识2011 1A』/《兵器知识》杂志社/36-37頁)
[5]姜浩・驼铃「“神鹰”400制导火箭最新改进动态—访中国航天科工集团公司高级工程朱安东」(『兵工科技』甦 2010/23-24合刊、2010珠海航展专辑/兵工科技杂志社/91-95頁)

BP-12A短距離弾道ミサイル
SY300 300mm12連装自走ロケット砲(神鷹300)
中国陸軍

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