日本の周辺国が装備する兵器のデータベース





▼T-300動画(YouTube、2分32秒)。


■''F-302T自走ロケット発射機性能諸元(MAN 26.372型6×6トラック使用)”
重量23トン
全長9.2m
全幅2.50m
全高3.10m
エンジンディーゼル
最高速度70km/h
渉川深度
兵装302mm4連装ロケット発射機×1
 12.7mm重機関銃×1
乗員3名

■''TR-300「Kasirga」302mmロケット弾性能諸元”
重量524kg
全長4,737mm
直径302mm
弾頭重量約150kg(炸薬90kg)
運用弾頭榴弾、燃焼榴弾、サーモバリック弾、対人クラスター弾、汎用クラスター弾など
発動機固体ロケットモーター
初速50.7m/s
最高飛行速度マッハ4.2
射程40〜100km

T-300「Kasirga」302mm4連装自走ロケット砲は、中国のWS-1 302mm4連装自走ロケット砲(衛士1)をベースにして開発された大口径多連装ロケットであり、トルコのロケットサン(ROKETSAN)社で現地生産が行われている。

【トルコへの輸出・ライセンス生産の経緯】
トルコでは1980年代に長距離多連装ロケット・システムの導入を計画、1988年にはアメリカとの間で180両のMLRS多連装ロケット・システムをトルコでライセンス生産することに合意していた[1]。しかし、その後アメリカとの間で技術移転に関する見解の相違やトルコの防衛産業にとって十分な波及効果が見込めない等の問題が生じたことにより、この契約はキャンセルされた[1]。トルコは喫緊の需要を満たすため、1989年から92年にかけてアメリカから15両のMLRSを輸入[2]、さらに24両を追加購入することも検討されたが、これは実現しなかった[1]。

トルコでは自力での長距離多連装ロケット砲の開発を開始(TROSO 230mm/260mm多連装ロケット・システム)、これと並行してアメリカに代わってフランス、イスラエル、中国などとの間で長距離多連装ロケット・システムの共同開発や技術移転に関する交渉を進めた[1]。各国の提示の中でも、資金面や技術開示の天で最も有利な条件を出したのが中国であった[1]。1991年には中国に視察団が派遣され、WS-1 302mm4連装自走ロケット砲とWM-80 273mm8連装自走ロケット砲の実弾射撃試験を視察するなど情報収集に当たっている。その結果、WS-1は命中精度では劣るが最大射程の面ではWM-80よりも優位に立っている点が決め手となり、四川航天工業総公司との間でWS-1の共同開発に関する交渉を開始することになった[3]。

1996年には、トルコの隣国ギリシャがロシアから長射程の多連装ロケット・システム9K58「スメルチ」を導入するとの観測がなされたことも有り(実際には輸出は実現せず)、トルコは早々に大口径多連装ロケットを入手する必要性に迫られていた[3]。

1996年、トルコはSCAICとの間でWS-1の技術移転とライセンス生産に関する交渉を再開[3]。トルコとSCAICの交渉は二年近くに及んだが、1997年には交渉が妥結[1]。SCAICはWS-1多連装ロケット・システム一個砲兵中隊分のロケット弾や各種車両の現物を提供、及びその生産技術をトルコのロケットサン社に技術移転し、ロケットサン社ではSCAICやドイツの某企業と協力してトルコ国内にWS-1の生産ラインを構築することが定められた[1][3]。契約総額は2億5000万ドル。同時にトルコでライセンス生産されるWS-1にはT-300「Kasirga(トルコ語でハリケーンの意)」という制式名称が付与されることも決められた[1]。

当初、T-300についてはWS-1の改良型WS-1Bのライセンス生産型であるとされていたが、その後この説は否定されている[1]。実際、ロケットサン社が明らかにしたT-300のスペックはWS-1BではなくWS-1と同じものであることもそれを証明している[4]。

ロケットサン社でのT-300の生産は1997年末に始まり、1998年から軍への供給が開始された[1]。これまでに多連装ロケット砲部隊6個大隊分に相当する54両の自走ロケット発射機が生産され、量産は既に終了しているものと見られている[1]。T-300が一般に公開されるのは2006年8月30日にトルコの首都アンカラで開催された軍事パレードが初となる。

【性能】
T-300(とその元になったWS-1)は、戦術弾道ミサイルと野砲との間のギャップを埋める装備として開発された兵器システムである[3]。T-30/WS-1は、集団軍の砲兵旅(師)、もしくは重師団の砲兵連隊に配備され、集団軍や重師団の直轄支援火力部隊として、その長射程を生かして敵機甲部隊や砲兵の集結地、後方の司令部や補給地点への攻撃を主任務とする[5]。

なお、T-300「Kasirga」を兵器システムとしてみると、大きく分けて射撃統制装置や自走ロケット発射機などを含むロケット発射システム(T-300)とロケット弾自体(TR-300)の2つに大別できる。これとは別に、自走ロケット発射機自体の名称はF-302Tと規定されている。

F-302T自走ロケット発射機のシャーシは独MAN社製26.372型6×6トラックを使用している[6]。26.372型トラックはトルコ軍で広く使用されている車輌であり、相互運用性の観点から選択されたものであるといえる[6]。乗員が搭乗するキャビン上部には自衛火器として12.7mm重機関銃一挺が装備されている。ロケット発射の際には大量の煙や炎が発生するため、折り畳み式の防護板が設置されており、ロケット発射時にはキャビン前・側面の窓を覆って爆風や炎を防ぐ。キャビン後方には乗員区画が追加されており、同じ場所には補助動力装置(APU)が搭載されている。4連装ロケット発射筒は車体後部に搭載されており、その方向射界は左右各30度、俯仰角は0度〜60度となっている[4]。自走ロケット発射機には合計4基の油圧ジャッキが取り付けられており、射撃時に展開して車体を安定させる[4]。

ロケットの発射に際しては、通常は砲兵中隊の司令部からの指揮管制に基づいて射撃を実施するが、状況に応じて、自走ロケット発射機単独で目標を照準・射撃を実施することも可能[5]。各自走ロケット発射機には射撃統制システムと位置測定装置が搭載されており、射撃に要する時間を短縮すると共に命中精度も向上させている[4]。ロケットの発射は一斉射撃もしくは単射のどちらも選択可能。

ロケット本体は、弾頭部、信管、固体ロケットモーター、安定翼、尾部から構成される。基本的な構成はWS-1を踏襲しているが下記の通り一部のサイズが変更されている。ロケットモーターの設計についてもロケットサン社により改良が施されている[7]。
WS-1TR-300
重量524kg525〜530kg
全長4,737mm4,750mm
弾頭重量約150kg(炸薬90kg)150kg(炸薬80kg)

最小射程は20〜30km、最大射程は100km[1][4]。ただし、ロケット自体には誘導装置は無いので射程が長くなると命中精度に問題が生じる可能性がある。最大射程100kmでの平均誤差半径(Circular Error Probability:CEP)は1000mとされる[7]。TR-300の弾頭には80kgの炸薬が収納されており、着弾の際には近接信管が作動して26,000個の弾片を成形し暴露目標に対して高い制圧効果を発揮する[4]。その殺傷半径は70m[4]。

交戦の際には、通常4発のロケット弾を目標に向けて発射、対砲兵射撃を受けないように直ちにその場から移動。弾薬輸送・再装填車輌に搭載されたロケット弾を再装填して、次の目標に対して攻撃を行うという手法を採る。この弾薬輸送・再装填車輌も自走ロケット発射機と同じくMAN社製26.372型6×6トラックを使用しており、装填作業省力化のために車体後部に自動装填装置が搭載されている。自動装填装置には2〜4発のロケット弾が搭載される。ロケット弾は輸送状態では破損を防ぐために個別の保管容器に収納されており、再装填の際にはこれを開封して弾薬輸送車の自動装填装置に乗せた上で再装填作業を行う。自動装填装置の作動は油圧式で、ロケットを水平に移動させて自走発射機の発射筒の中に押し込む。

【今後の展開】
現在、ロケットサン社ではT-300の能力向上を進めている。無誘導ロケットのため飛翔距離が長くなると命中精度に影響が出るのがTR-300の問題点であったが、ロケットサン社ではGPS/INS誘導システムをTR-300ロケットに組み込むことで命中精度の画期的な向上を実現しようとしている[7]。トルコはNATO加盟国であるため精度の高い軍用GPSへのアクセス権を有している。TR-300の誘導に軍用GPSを使用した場合、そのCEPは原型の1000mから10mへと、ピンポイント攻撃が可能な高い精度を得られるとのこと[7]。

トルコではT-300の輸出を目指して各国への売込みを行っているが2011年時点では成約は得られていない。

【参考資料】
[1]ASIAN DEFENCE「ROKETSAN T-300 Kasirga (Hurricane)」(2009年2月3日)
[2] SIPRI Arms Transfers Database
[3]「遠火呼嘯、万鈞雷霆-我国遠程火箭炮発展全掲秘」(『全球防務叢書』第四巻 輔国号/内蒙古人民出版社)6〜17頁
[4] Roketsan Official Web Site「Extended Range Rockets and 300 mm MBRL System」
[5]「国家”衛士”」(『兵工科技2004増刊 第五届珠海国際航展専輯』/兵工科技雑誌社/2004年)45頁
[6]「Roketsan 300 mm (4-round) Artillery Rocket」(『Jane”s Armour and Artillery 2010-2011』)1076〜1077頁
[7]「土耳其改進中國造多用途火箭彈」(『漢和防務評論』2009年8月号/No.58)57頁

【関連事項】
WS-1 302mm4連装自走ロケット砲(衛士1)
中国陸軍

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