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▼動画「走出国门的“中国神器”:新一代步兵战车VN-12 作战性能达世界先进水平」。付加装甲のレベルの異なる二人用砲塔型と、一人用砲塔型の三種類のVN-12が登場している


VN-12歩兵戦闘車(中国語ではVN12履帯式歩兵戦車)は、89式装甲兵員輸送車をベースとして開発された輸出向け歩兵戦闘車である[1][2]。

【開発経緯】
VN-12の開発は2012年下半期に開始され、2015年には輸出向け車両としての型式証明を得ることに成功している[1]。開発方針としては、すでに中国軍での運用実績のある89式装甲兵員輸送車の設計やコンポーネントを十分に生かしつつ、近年の研究開発により得られた新たな技術やコンセプトを盛り込んで、火力、防御力、機動力、そして近年重要度が増している情報化のバランスの取れた歩兵戦闘車を実用化するというものであった[1]。VN-12自体が多様な戦場に対応可能なポテンシャルを有するだけでなく、容易に各種派生型を開発できるようにするという近年各国のAFV開発でよくみられるファミリー化概念も導入されている[1]。

運用に当たっては、特に高温地域や高原での適合性に配慮した設計が取り入れられた。これはVN-12の輸出先として想定されている中東、アフリカ、東南アジア諸国での採用を狙った取り組みとされている[1]。

2014年の珠海航空ショーで初公開されたVN-12は、2016年の珠海航空ショーでは展示に加えて走行デモを披露している[1]。一般展示されたのは二人用砲塔型で2014年の車両よりも付加装甲が防御力の高いものに換装されていた。走行デモを行ったのは一人用砲塔型と、同じVN-12でも異なるタイプが公開されている[1]。

【性能】
VN-12の車内配置は、車体前部左側に操縦手席と車長席、前部右側に機関室、後部に兵員室と、ベースとなった89式を踏襲している[1]。歩兵戦闘車化するため転輪は89式の5つから一つ多い6つになり、車体中央部を砲塔搭載スペースとして確保している。VN-12の定員は乗員3名と搭乗歩兵7名で構成されている。操縦手は車体前方左側に、2名用砲塔では砲塔に車長と砲手、その後方が兵員室で最前列に1つ、その後方に対面式に6つの座席が用意されている[1][2]。2014年に公開された車両では、車体側面に複数のペリスコープが設置されていたが、2016年に公開された車両では窓は廃止されていた[1]。これは防御力改善のための措置とみられる。以前の歩兵戦闘車では標準装備だった乗車戦闘用のガンポートも、車体後部ハッチに一ケ所設けられているのみで、車体側面には存在しない。車内にはNBC防護システムと自動消火装置が備えられている[1]。

VN-12の主機は600馬力の水冷式ディーゼル・エンジンを搭載している[1]。変速機は油圧機械式トランスミッションを採用しており、エンジンと変速機が一体化したパワーパックとしている[1]。変速機の操作は手動/自動の切り替えが可能で、総合電子システムにより走行時の状態をリアルタイムチェックしており、必要に応じて操縦手が利用する事が出来る。これは、動力部系統の信頼性向上と整備の省力化を狙ったシステムである[1]。VN-12の重量は付加装甲のレベルや、派生型によって異なるが、エンジン出力は20〜30トン台の重量での良好な機動性の発揮を可能とすることを基準として設定されたとのこと[1]。最高速度は路上で65〜70km/h、野外の場合は40-50km/h、最大航続距離は500kmとされる[2]。VN-12は、水上浮遊能力は有していない[7]。

VN-12の装甲板については、資料[7]では圧延均質鋼製、資料[8]ではアルミ合金製と異なる情報が存在する。VN-12は近年の歩兵戦闘車で流行している、想定される脅威度に応じて異なる防御レベルの付加装甲を装着して防御力を確保する手法が採用されている[1]。2014年に公開されたVN-12は、セラミック製付加装甲を車体にボルト止めで装着していたが、2016年に公開された車輛はより厚みを増した付加装甲に変更されており、防御能力を高めていることが窺える。付加装甲は、上記のセラミック装甲に加えて、スラットアーマー、爆発反応装甲などが用意されており、最も防御レベルの高い付加装甲を装着した状態では、NATOが定めたAEP-55 STANAG 4569規格のレベル5に相当する防御能力を発揮するとされる[1]。付加装甲なしでの防御力については最大でも12.7mm重機関銃に抗湛する程度[8]だが、最高レベルの付加装甲を装着すると25mm機関砲の直撃に抗湛する能力を確保できるとのこと[7]。

【武装】
VN-12歩兵戦闘車型は、二人用砲塔と一人用砲塔が開発されており、ユーザーの需要に応じて選択が可能。

二人用砲塔は、その形状から05式水陸両用歩兵戦闘車08式装輪歩兵戦闘車に使用されているのと共通のものを搭載していると推測される。砲塔は均質圧延鋼装甲製で、砲塔周囲にはセラミック付加装甲が装着されている。砲塔右部には車長席が、左部には砲手席が用意されている。車長用ペリスコープには夜間暗視装置が内蔵されている。砲手用ペリスコープには、暗視装置に加えて光学/レーザー測遠装置が組み込まれており、搭載された簡易式射撃統制装置を利用することで命中精度の高い射撃が実現できる[3]。暗視装置は操縦席に微光増幅式を標準装備し、砲手サイトにパッシブ赤外線暗視装置の搭載が可能[1]。後者はユーザーの要望に応じて変更が出来るとみられる。

二人用砲塔の主武装は2種併用給弾型の30mm機関砲で、同軸で7.62mm機関銃が装備されている。30mm徹甲弾を発射した場合の砲口初速は1000m/秒、発射速度は毎分300発。砲手は単射、3〜5発連射、5〜7発連射を選択できる。地上目標に対する最大有効射程は4,000m、空中目標に対する最大有効射程は2,500mである[4]。この30mm機関砲はロシアのBMP-3歩兵戦闘車に採用されている30mm機関砲2A72を元にして開発された物で、03式空挺戦闘車86式歩兵戦闘車(WZ-501/BMP-1)90式/92式装輪装甲車(WZ-551/WZ-551A)の改良型などでも採用されている。30mm機関砲には銃身を支える枠が付いているが、これは射撃時の銃身の動揺を抑えて命中精度を向上させるための装置と推測されている[5]。

砲塔の両側面にはHJ-73対戦車ミサイル搭載用のランチャーが各1基ずつ用意されている。HJ-73対戦車ミサイルはソ連の9M14Mマリュートカ(NATOコード:AT-3 サガー/Sagger)のコピーであるが、貫通力の強化や誘導方式の改良(手動式指令照準線式から半自動指令照準線式に変更)など持続的な改良がされている。HJ-73の販売を担当している中国北方工業公司(NORINCO)の発表したスペックによると最大射程3,000m、命中率90%を達成しているとのこと。NORINCOでは、最新のHJ-73はタンデム式HEAT弾頭を装着しているので、ERA(Explosive Reactive Armor:爆発反応装甲)をつけた800mm厚の装甲を撃ち抜く事が出来ると主張している[4]。

一人用砲塔型は、NORINCOが開発したモジュール砲塔で、03式空挺戦闘車86式歩兵戦闘車(WZ-501/BMP-1)90式/92式装輪装甲車(WZ-551/WZ-551A)の改良型にも採用されているGCTWM型1人用砲塔を搭載。砲塔周囲には付加装甲を装着して防御力を強化している。その武装は30mm機関砲と同軸の7.62mm機関銃、砲塔上面に一基搭載される HJ-73対戦車ミサイル[6]。どちらも二人用砲塔と共通した兵装なので詳細は省略。砲塔は360度全周旋回、砲の俯仰角度は-6〜+60度で、高い仰角がとれるためにヘリコプターや高層ビル内の目標とも交戦できる。砲塔旋回は電動式(補助で手動式作動も可能)。FCSは二人用砲塔よりも簡素で、昼夜間照準器が砲塔頂部左側に装備されているが、安定化されていないため行進間射撃は困難[6]。砲塔両脇に3連装発煙弾発射機が各一基装備されている。一人用砲塔型は、低コストを望むユーザー向けのバリエーションであるとみられる。

VN-12は、近年の流行であるネットワーク化を重視した設計が施されているのも特徴であり、戦場情報システムと部隊間で情報を共有するデータリンクシステムを標準装備している[1]。これにより、陸、海、空の各部隊を統合化、一体化した戦闘を可能としている[1]。各車輛の走行状態やエンジンの状態なども情報端末で確認することが可能[1]。

【派生型】
前述の通り、VN-12は当初から各種派生型の開発を前提とした設計が施されており、ユーザーの要望に応じた様々なバリエーションが想定されている。主なものとして、突撃砲型(100mm/105mmライフル砲搭載)、自走榴弾砲型(122mm榴弾砲搭載)、自走迫撃砲型(120mm迫撃砲搭載)、コマンドポスト型、装甲偵察車、装甲救護車などの派生型が考えられている[1][2]。

NORINCOはVN-12の輸出を目指して国際兵器ショーに出展するなど売り込みを進めているが、現状では採用国は表れていない。履帯式歩兵戦闘車というジャンルはすでに各国で多種多様な車両が開発されており、VN-12が採用したファミリー化も各国の標準的な設計思想として採用されていることを考えると、ライバルに比べてはっきりした優位性は無く、すでに04式/04A式歩兵戦闘車を配備中の中国軍への採用も期待できないことから、まずキックオフカスタマーを確保するのが最初の大きな課題となろう。

VN-12単独で見るとその市場開拓は容易ではないが、戦車から歩兵戦闘車、装輪装甲車などユーザーの多様な要望に応じるAFVラインナップを揃え、国際水準の歩兵戦闘車を開発できることを示したという点ではVN-12の開発は、NORINCOにとっては意味のあるものだったと評価することもできるだろう。89式APCをベースとして、実績のあるコンポーネントを纏めて開発することで、開発期間と開発コストを抑える事が出来たのも評価すべき点であろう。

性能緒元
重量23t
全長7.5m
全幅3.3m
全高2.95m
エンジンターボチャージド水冷ディーゼル 600hp
最高速度路上:65-70km/h、野外40-50km/h
航続距離500km
装甲均質圧延鋼板+付加装甲(セラミック/爆発反応装甲/スラットアーマーなど)
乗員3+歩兵7名

【武装:IFV(二人用砲塔型)】
武装30mm機関砲2A72×1(500発)
 7.62mm機関砲×1(2,000発)
 HJ-73対戦車ミサイル発射機×2(予備ミサイル4発)
 6連装発煙弾発射機×2
【武装:IFV(一人用砲塔型)】
武装30mm機関砲2A72×1
 7.62mm機関砲×1
 HJ-73対戦車ミサイル発射機×1
 3連装発煙弾発射機×2
◇このほか、100mm/105mm戦車砲、120mm迫撃砲、122mm榴弾砲などの搭載も想定されている

【参考資料】
[1]张璐、曹励云「访VN12履带式步兵战车总计划师叶明」『现代兵器 2016甦 – 2016中国航展专辑』(中国兵器工业集团公司、2016年11月20日)42-45ページ
[2]姜浩、杨康「国产新型VN-12履带式步兵战车 – 访北方公司研发部副总经理刘松」『兵工科技2014年甦 – 2014珍珠海航展专辑』(兵工科技杂志社)108-112ページ
[3]Chinese Defence Today「ZBD2000 Amphibious Fighting Vehicle」
http://www.sinodefence.com/army/armour/zbd2000.asp
[4]古是三春「各国陸軍現用の最新タイプ装輪装甲車-中国の大形8輪装甲車VN-1」『軍事研究2008年11月号別冊-新兵器最前線シリーズ7 陸戦の新主役 ハイパー装輪装甲車』(ジャパン・ミリタリー・レビュー/2008年11月1日発行)
[5]bigblue「蹈海軽騎 踏浪而行-漫話"国産AAAV"與高速両棲戦車技術的発展」『現代兵器』2008年12月号/総第360期(中国兵器工業集団公司)10-19頁
[6]「猎豹出击-从VN1看我国新型8×8轮式装甲车的发展」『现代兵器』2008年6月(总第354期)「(李成轩・郭嘉楠/中国兵器工业集团公司)
[7]Military-Today.Com「VN12 Infantry fighting vehicle」 http://www.military-today.com/apc/vn12.htm (2018年5月16日閲覧)
[8]予阳「2014珠海航展国产地面武器装备」『坦克装甲车辆・新军事』2014年第12期(坦克装甲车辆杂志社)4-11ページ

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