日本の周辺国が装備する兵器のデータベース


▼中国国内で試験走行を行うVT-1A

▼2009年12月8日にペルーの首都リマで挙行された軍事パレードに登場したTPC-2010/MBT-2000/VT-1A。


▼動画:TPC-2010/MBT-2000/VT-1A動画


性能緒元
重量49トン
全長10.33m
全幅3.5m(サイドスカート含む)
全高2.4m
エンジン(ペルー向け輸出型)6TD-II 2ストローク水平対向6気筒多燃料液冷ターボチャージド・ディーゼル(1,200hp)
最高速度69km/h
航続距離450km
武装125mm滑腔砲×1
 砲発射式対戦車ミサイルシステム
 12.7mm重機関銃×1
 7.62mm機関銃×1
 発煙弾発射機×12
装甲溶接鋼板+モジュールセラミック複合装甲+爆発反応装甲
乗員3名(車長、砲手、操縦手)

2009年にその存在が明らかにされたVT-1A戦車は、輸出向け戦車であるMBT-2000をベースにして、全般的な能力向上を図った戦車であり、MBT-2000に比べて火力、機動力、防御力、人間工学的配慮などの面において改善が図られているとされる。VT-1Aは輸出向けの名称であるが、従来のMBT-2000の名称も継続して使用されている。同様の構想で開発された戦車としては90-IIWM式戦車(90-III式戦車)が存在するが、VT-1Aと90-IIWM式戦車の間に如何なる関係があるのかは、現時点では不明。

VT-1A戦車の基本的な車体構造はMBT-2000を踏襲しており、前から操縦区画、戦闘区画、機関区画の三つに区分されている。乗員は、車長、砲手、操縦手の3名であり、車体前方中央部に操縦席が、砲塔部には125mm砲を挟んで、右側に車長席が、左側に砲手席が配置されている。操縦席近くには通気用のベンチレーターが配置されておりMBT-2000に比べて車内の通気状態が改善しており、長時間の戦闘において有利となっている。

VT-1Aの武装は、MBT-2000と同じく、125mm滑空砲、12.7mm重機関銃、7.62mm車載機関銃が搭載されている。ただし、125mm滑腔砲については、製造方式に見直しが行われており、砲身寿命や弾道性能の面で改善が施されている。125mm滑腔砲は分離装薬方式を採用しており、APFSDS弾、HEAT弾、HE-FRAG弾の射撃が可能である。VT-1Aの標準型では、砲発射式対戦車ミサイルの運用能力は備えられていないが、ユーザーの要望に応じて運用能力を盛り込むことも可能でありペルー向けの輸出型では同システムが採用されている(後述)。砲塔直下には弾頭+分離装薬を収納した自動装填装置(T-72のカセトカ自動装填装置をベースに開発。)が配置されている。自動装填装置は改良が加えられており、装填速度の改善、信頼性の向上が実現しているとされる。搭載砲弾の種類と装填数に関するデータを管理するためのコンピュータが装備されており、これまでのコンピュータよりもコンパクト化と信頼性改善がなされている。射撃統制装置については詳しい情報はまだ公開されていないが、MBT-2000と同等以上の水準を確保していると見られ、車長が砲手をオーバーライドして主砲を発射することが可能とされる[1]。

原型と変化しているのは防御面であり、砲塔正面と車体正面のモジュール式複合装甲は改良型に換装されており、防御能力を向上させている[1]。さらに、砲塔正面と車体前面に爆発反応装甲が装着されているのは、近年開発された中国戦車と共通している。砲塔側面から後部にかけて、物資搭載用のラックが設置されているが、これはHEAT弾に対する防御対策を兼ねている。被弾時の二次爆発対策として自動消火装置が設置されており、火災検知センサーによる自動モード、もしくは乗員による手動モードのいずれかの方法により戦闘室と機関部の火災を消火する。NBC兵器対策としては統合型NBC防護システムが用意されており、NBC兵器の使用を探知した場合、自動的に車内の気圧を上げて有害な空気の流入を防ぐ様になっている。

VT-1Aの全備重量はMBT-2000(爆発反応装甲装着時)よりも1トン重い49トンになっているが、最高速度はMBT-2000と同じ69km/hとされている。搭載されているエンジンは、出力1,200hpのターボチャージド液冷ディーゼル。エンジンの具体的なデータは不明であるが、車体後部の排気口の構造はウクライナ製の6TD-IIエンジンを搭載しているアル・ハーリド戦車と類似している事から、VT-1Aも6TD-IIを搭載している可能性が高いと思われる。トランスミッションに関しての情報は無いが、超信地旋回が可能であるとされている[1]。操縦は、従来の中国戦車と同じく操縦席前方に配置された二本のレバーによって左右の履帯の制御を行う方式が取られている。

【ペルーでのVT-1A/MBT-2000の採用について】
2009年12月8日にペルーの首都リマで開催された軍事パレードにおいて、中国製VT-1A/MBT-2000戦車(ペルーの報道ではMBT-2000の名称が使われることが多い。)五輌が行進に参加してアラン・ガルシア大統領による観閲を受けた[2]。この五輌のMBT-2000は、ペルー軍での評価試験用に中国から現地に送られていた車輌であった。

ペルーでは、ソ連製のT-55戦車やフランス製AMX-13軽戦車などを運用しているが、隣国のチリが第三世代戦車であるレオパルト2A4を採用したことを受けて数年前から次期主力戦車の導入に関する検討を開始していた。ドイツのレオパルト2A6、ロシアのT-90S、ウクライナのオプロート、ポーランドのPT-91Pなどと並んで中国のMBT-2000も検討候補として挙げられていたが、軍事パレードにMBT-2000が登場したことにより、ペルー軍の次期主力戦車にはMBT-2000が採用される可能性が極めて強くなったことを内外に示した。12月10日には、ガルシア大統領が、中国からMBT-2000を導入する事を正式に認めた[3]。ラファエル・レイ国防相によると、中国が提示したMBT-2000一輌辺りの単価は500万ドルであり、これはドイツが提示したレオパルト2A6の単価1300万ドルの半額以下の価格であったとの事[3]。

MBT-2000の評価試験に当たったペルー陸軍のJulio Cassareto大佐によると、ペルーでは2009年の4月と7月に中国に調査団を派遣してMBT-2000に関する調査を実施したとの事。中国側の窓口である中国北方工業公司(NORINCO)が最初に提示したのは、パキスタンの「アル・ハーリド」と同じ仕様のMBT-2000であったが、これはペルー陸軍の要求内容とは適合しないと判断された。二度目の訪問では、ペルー側の要求に対して、それを満たしうる車輌としてMBT-2000の改良型であるVT-1Aが提示された。ペルー側ではVT-1Aについて、チリのレオパルト2A4に対抗するための能力向上に関する技術改善箇所を中国側に伝えた。その内容は下記の通り。
砲発射式対戦車ミサイルシステムをMBT-2000/VT-1Aに組み込む。
12.7mm対空機関砲を暗視装置と連動させる
モジュール式複合装甲の上に爆発反応装甲を装着する

これに対して、NORINCOではペルー側の要求する仕様を完全に満たすには二年の期間が必要になると伝えた。調査団はこの結果を2009年7月24日に報告書に纏めて提出していた。

しかし、報告書の提出から程なくして、中国はペルー側の能力向上に関する技術的要求を解決することに成功したと伝えてきた。Cassareto大佐によると、ペルーが要求した改善点について二点はほぼ満足されたとの事。大佐は、MBT-2000/VT-1Aに採用される砲発射式対戦車ミサイルはレオパルト2A4をアウトレンジ攻撃可能な5,000mの最大射程を有しており、この種の装備は、チリのレオパルト2A4を含む南米諸国の戦車には採用されていない兵装であるとした[4]。

ペルーが購入するMBT-2000/VT-1Aは、ウクライナ製6TD-IIディーゼルエンジン(1,200hp)等で構成されるウクライナ製パワーパックを採用すると伝えられている[5]。ウクライナはペルーの次期主力戦車入札に参加していた国の1つであるが、MBT-2000に自国製パワーパックを採用するのと引き換えに競争入札から離脱したと見られている[5]。

ペルーは80〜120輌のMBT-2000/VT-1Aを導入することを検討しており、中国側と最終的な価格や支払い時期に関する交渉を実施している[6]。交渉では、ペルーの企業が戦車のコンポーネントの一部の生産を担当する事やそれに必要な戦車の技術移転に関する要求も行っているとの事。

【2010年2月27日追記】
ペルーのLa Republica紙電子版の報道によると、ウクライナはペルーへのMBT-2000の輸出に際してはウクライナによる輸出承認が必要であると宣言したとの事[8][9]。

12月8日にMBT-2000がペルーの軍事パレードで登場した事を受けて、12月12日にウクライナの戦車メーカーKMDBのMikhail Borisiuk所長は国営兵器輸出企業Ukrobornservisに対して、中国はMBT-2000に使用されているウクライナ製コンポーネントを第三国に再輸出する権利は有しておらず、ウクライナ製パワーパックをペルーに輸出するのはウクライナの国益に合致しないとの抗議を通告した。この抗議を受けて、2010年1月13日にはウクライナの国営対外貿易投資企業PromoboroneksportのV. B. Kozevnikov取締役が、中国が6TD-IIエンジンとウクライナ製変速装置を搭載したMBT-2000を第三国に輸出する場合、事前にウクライナの承認が必要であるとの宣言を行った[8][9]。

[5]の報道では、ウクライナは、MBT-2000に自国製パワーパックを採用するのと引き換えに競争入札から離脱したとしていたが、[8][9]の報道は[5]とは異なる実態を紹介している。ウクライナの動向は、ペルーへのMBT-2000の輸出の成否を左右する重要なポイントであり、今後の展開が注目される。

【2010年4月10日追記】
ペルーのラファエル・レイ国防相は4月6日のインタビューで、中国から購入を計画していたMBT-2000(ペルー向け名称「TPC-2010」)の調達を延期することを発表した。中国側との交渉は既に完了しており、一輌当たりの調達価格を当初の580万ドルから470万ドルにまで値下げを認めさせるなどの良好な条件を引き出していたが、治安任務や対テロ・麻薬作戦、自然災害などに対処するための輸送機やヘリコプターなどの機材の調達を優先するとの決定が成されたため、戦車の調達は後回しにされる事となった[10][11][12]。

【参考資料】
[1]中国兵器2009年10A(総278期)24-26頁「中国VT-1A主戦坦克試験展示」(劉世剛・慮志強/2009年10月4日出版/《兵器知識》雑誌社)
[2]China Defense Blog「Peru's military is close to a deal to buy tanks from China」(2009年12月8日)
[3]El Comercio電子版「Perú ya formalizó compra de tanques a China」(2009年12月10日)
[4]LaRepublica電子版「“Factor precio influyó en elección del tanque chino MBT 2000”」(2009年12月12日)
[5]Army Guide「В Перу на параде прошли китайские танки с украинскими двигателями」(2009年12月9日)
[6]Correo電子版「Compra de tanques se concretaría en enero del 2010」(2009年12月14日)
[7]戦車研究室
[8]LaRepublica電子版「Compañía estatal de Ucrania pone trabas a la venta de tanques chinos」(2010年2月8日)
[9]鳳凰網「烏方:中方根本無権向秘魯出售烏制坦克発動機」(2010年2月10日)
[10]LaRepublica電子版「Gobierno suspende indefinidamente compra del tanque chino MBT-2000」(2010年4月7日)
[11]Correo電子版「PRIORIZARÁN COMPRA DE MATERIAL PARA COMBATIR NARCOTERRORISMO-Marcha atrás con los tanques chinos 」(2010年4月7日)
[12]Univision.com「Perú posterga compra de tanques a China (ministro de Defensa)」(2010年4月6日)

【関連項目】
MBT-2000
中国陸軍

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