日本の周辺国が装備する兵器のデータベース


▼M110/M107自走砲のシャーシを流用したテストベッド車両


■"性能緒元(M107のシャーシを流用したテストベッド車両)"
重量28.5トン
最高速度55km/h
航続距離720km
武装45口径203.2mm榴弾砲×1

■"性能緒元(実用車両要求値)"
重量45t
最高速度56km/時(路上)
航続距離450km
武装45口径203.2mm榴弾砲×1
搭載砲弾40発
最大射程FRFB弾40km、FRFB-BB弾50km
最小射程12km
俯仰角0〜65度
射界左右各30度
乗員5名
発射速度1.5〜3発/分

■"203mm砲性能緒元"
口径203.2mm(45口径)
重量16.396トン 
初速933m/秒(ERFB弾)、336m/秒(ERFB-BB(ベースブリード)弾)
最大射程40km(ERFB弾)、50km(ERFB-BB弾)
俯仰角度-5〜+55度
方向射界左右各30度

W-90式203mm自走榴弾砲は、1980年代に開発され1993年に公開された輸出向け自走榴弾砲である。本砲の開発の背景には、砲兵戦力の旧式化に対する中国軍の危機感が背景にあった。1980年代の中国軍が最大の仮想敵と認識していたのは、長大な国境を接する陸軍大国のソ連軍であり、その中でも機甲部隊と砲兵部隊を特に脅威としていた。伝統的に砲兵戦力を重視してきたソ連軍に対して、当時の中国軍砲兵部隊は、装備する砲・ロケットの門数、投射弾量、射撃精度、射程など殆どの点で劣位にあった。中国軍が運用していた各種野砲・ロケットは、いずれも1950〜60年代に導入されたソ連由来の装備であり、1980年代の時点では旧式化は否めなかった。さらに、当時の中国の技術水準では、ソ連砲兵に対向しうる性能を有する野砲を独力で開発するのは困難であることが予測された。

この状況を解決するために中国が選択したのが、1970年代後半以降、関係が改善された西側からの技術導入であった。各国に調査団が派遣され検討が行われた結果、中国が新型野砲開発に協力を要請することになったのがベルギーのブリュッセルに本社を置くSpace Research Corporation (以下SRC社と表記)であった。SRC社は、世界的な弾道学の権威であったジェラルド・ブル(Gerald Vincent Bull)博士が創設した兵器設計コンサルタント会社であり、最長射程の野砲と革新的な長射程用砲弾の技術で知られていた。SRC社は、1970年代に当時の常識を覆す最大射程30kmというGC-45 155mm榴弾砲を開発、射程を延伸しつつ高い命中精度を確保したFRFB(Extend Range Full Bore)弾・ベースブリード弾などの技術と共に世界各国に売込みを行い、オーストリア、南アフリカ共和国、スペイン、タイ、ユーゴスラビア、イラクなどの国々がSRC社の技術の導入を行っていた。

中国はSRC社の技術協力を受けて、まず155mmカノン榴弾砲(後のPLL-01 155mm榴弾砲(WA-021))を開発し、その技術をベースにより大口径・長射程の203mmカノン榴弾砲を開発することを決定した。1986年8月、中国北方工業公司(NORINCO)とSRC社、そしてスペインのERT/EDBの3社は「火砲兵器システムの研究と発展の協議」に調印し、3社の共同作業の範囲、方式、財政負担などの内容を確定した。9月には中国共産党中央軍事委員会は正式に203mmカノン榴弾砲の開発を承認。SRC社は、203mmカノン榴弾砲の設計を、ERT/EDB社は最初の試作砲2門の製造と試験(SRCはコンサルティング会社で、自前での製造能力を有していないためERT/EDBが代行する。)、NORINCOは試作砲2門の製造と、更に広い分野での試験を担当することになった。契約の付帯条件として、SRC社は中国に研究開発の参考資料としてとして、FGH-155 牽引砲、FGT-203 203mm牽引砲、VSP-203 203mm自走榴弾砲の設計資料を提供することも含まれていた。

203mm砲システムは共同開発が行われることから、設計の主要段階において中国とSRC、ERT/EDBそれぞれの技術者が参与して、研究開発や相互の意見交換を行いながら共同開発を推進していった。

NORINCOはSRC社が製作した203mm砲の設計図を元に開発を行ったが、砲の製造段階に入って、中国側は自国の状況を踏まえて設計の一部変更を行い、また独自に203mm砲の弾道試験、ベースブリード弾の設計開発、ソフト技術の研究を行う必要があった。これらの原因により、1989年初めに研究開発は一時中断された。

203mm砲には、輸出向けにW-90の名称が与えられた。1993年に公開されたW-90 203mm自走榴弾砲の試作車両は、シャーシにアメリカ製M107 175mm自走榴弾砲の車体を使用していた。このシャーシの入手先は不明であるが、中国はアメリカがヴェトナムに残していったM110、M107自走砲を入手しており、それを流用したのではないかと思われる。製作から数年間にわたり一連の射撃実験が実施された。これによって、203mm砲の自走砲化の可能性が証明されたが、シャーシと砲の性能には尚問題があり、完成した火砲システムとして運用するのは困難であることも明らかになった。このシャーシは米国製であることから、より時間をかけてアメリカの自走砲を模倣する必要があると認められた。この期間に得られた開発成果は以下の通りになる。
1,203mm砲システムの研究開発。
2,大口径砲弾の製造と新型発射装薬、燃焼薬筴の研究開発の完成。
3,試作203mm自走榴弾砲の製造(シャーシは米国製M110/M107の物を使用)。
4,203mm牽引式カノン榴弾砲の製造。

W-90 203mm砲の最大射程は、FRFB弾で40km、FRFB-BB弾で50kmに達する。砲口初速は933m/秒、発射速度は毎分1〜2発。砲弾の重量は、FRFB弾で95.5kg、FRFB-BB弾で100kg。砲弾重量が大きいことから、W-90の火力制圧可能な面積は1090平方キロメートルであり、これはM110A1(37口径203佶ぁー幼29.1km)の5倍、ソ連の2S7 203仄走榴弾砲(56.2口径203mm 37.5km《通常砲弾の場合。ロケットアシスト弾での最大射程は55kmに達する》)の2.7倍であり、砲弾炸薬量も増加しており、殺傷能力は米国M106 203俑愧討1.2〜2倍であるとしている。

砲システムの重量は16,396kg。砲の射界は左右25度、俯仰角度は−5〜+65度。エレクトロスラグ溶接法で製造された砲身は砲身長9235(45口径)、64条のライフルリングを有し、砲身寿命は1000発以上となっている。砲身先端にはダブルバッフル式マズルブレーキが装着され、砲尾には独特の、ソケット式砲閂と油圧式鎖栓が採用されている。大重量の砲弾の装填を補助する目的で気圧式砲弾装填装置が設置され、各種砲弾、装薬をあらゆる射角でも装填することが可能である。

203mm砲は、点目標、面目標双方の制圧に有効な兵器であり、長射程を生かした対砲兵射撃、各種目標の制圧や打撃、水上目標の攻撃が可能であり、核砲弾を初めとする任務に合わせた詐取多様な砲弾を運用可能であった。

1990年末、兵器工業総公司と中国兵科院は北京で203mm砲に関する項目の展示を行い、軍事委員会の指導部と関係機関の注目と支持を得ることに成功した。この席で、中断していた203mm砲の開発を復活させ、203mm自走砲システムの完成させること、発展型として艦載型203mm砲の研究を行うことが決定された。開発手順としては、まず203mm牽引砲の研究開発を完成、その後2000年前後までに203mm自走カノン榴弾砲を開発することとされた。自走砲のシャーシとしては、まず88式155mm自走榴弾砲(PLZ-45)の開発で得られた成果をベースに開発すること、将来的には開発中の第3世代戦車や新型装甲車両の技術を生かして、より性能の高い自走砲用シャーシを開発することが決定された。

資料不足により、このとき要求された自走砲の諸元の詳細については不明な点が多いが、以下のようなスペックが要求されたとされる。
戦闘重量45t
乗員5名
最高速度56km/時(路上)
航続距離450km
搭載砲弾40発
最大射程FRFB弾40km、FRFB-BB弾50km
最小射程12km
俯仰角0〜65度
射界左右各30度
発射速度1.5〜3発/分

203mm自走砲の問題点としては、砲システムが大きいため全周旋回式砲塔に搭載することが困難な点であった。M110などのように外装式にした場合は、乗員の防護に問題が生じることになり、乗員が外に出なくても砲弾の装填を可能とする自動装填装置が必要になるとされた。

最終的に203mm砲の開発は、冷戦の終了後、ソ連地上軍の脅威が消滅したことや湾岸戦争の戦訓による軍事改革により新規装備開発の見直しが行われた結果、中断されることとなった。同時期に開発されていたPZL-45 155mm自走榴弾砲が射程、投射弾量、高度なシステム化などの性能において203mm砲に匹敵する性能を獲得したこと、2種類の榴弾砲を整備することの財政的負担なども開発中断の要因とされる。W-90の名称で外国への宣伝も行われたが、輸出は実現していない。しかし、この自走砲の開発で得られた大口径砲の製造・衝撃吸収装置などのノウハウは中国にとって貴重な技術の蓄積となったとされる。なお、この203佶い鯲用した牽引式の203mm榴弾砲も開発された。


【参考資料】
世界航空航天博覧 2005年1月下半月号「中国自行火炮的発展概況」(世界航空航天博覧雑誌社)
兵器マフィア−武器秘密取引の内幕(江畑謙介/光文社)
中国武器大全
「陸地火神−我国203毫米砲的破事」

中国陸軍

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