日本の周辺国が装備する兵器のデータベース


▼自走ロケット発射機

▼弾頭部に短魚雷を内蔵した対潜攻撃用ロケットの模型


 WS-400(衛士-400)地対潜ロケットは、「衛士」シリーズ多連装ロケット砲を開発している四川航天科技集団公司が開発した地上発射式の対潜兵器である[1][2]。システム全体の名称は「ロケットアシスト対潜対地長射程精密打撃兵器システム」(中国語だと火箭助飛対海対地遠程精確打撃武器系統)[1]。短魚雷とロケットを組み合わせた対潜兵器は、アメリカのアスロックが有名で、中国でも「CY」シリーズが存在しているが、艦載兵器ではなく地上発射式の対潜兵器として開発されたのは前例が無いとのこと[1]。主に海外への輸出を前提に開発され、中国軍系企業の保利集団公司傘下の保利技術公司が輸出・宣伝事業を担当している[1]。その存在は、2014年に開催された珠海航空ショーや南アフリカで開催されたADD 2014 (ADD:Africa Aerospace and Defence Exhibition)兵器ショーで明らかにされた[1][2]。

【性能】
 同システムは、ロケット本体(対潜用と対地用の二種類が存在)、自走ロケット発射機、指揮車両、C4システムなどで構成されている[1][3]。WS-400の一個営(大隊に相当)は三個連(中隊に相当)から構成されており、一個中隊には6両の自走ロケット発射機が配備されている[2]。
 自走ロケット発射機と指揮車両は、泰安特種車輌公司が開発したTAS-5450八輪大形トラックを利用している[4]。自走ロケット発射機は、四川航天科技集団公司が開発したWS-2型400mm多連装ロケット砲の設計をもとにしている[1]。自走ロケット発射機のキャビン直後には各種装置の操作に当たる乗員区画が設置され、車体後部には対潜ロケット弾を収納する6連装発射機が搭載されている。車体の両側面には計4つの油圧ジャッキが装備されており、ロケット弾発射時に展開して車体を安定化させる[1]。
 同システムは、対地攻撃用ロケットと対潜攻撃用ロケットを1つの発射機で発射可能という特性を備えており、任務に応じて柔軟な運用が可能。対地攻撃用ロケットについては詳細な情報は無いが、WS-2 400mm6連装自走ロケット砲と共通のものを使用していると考えられる。
 対潜攻撃用ロケットは、中国語では火箭助飛魚雷、英語だとRocket Assisted Torpedo systemと呼ばれている[1][3]。ロケットは二段式で、一段目が発射用ブースターで、二段目が飛翔用ロケットで、弾頭部には短魚雷が内蔵されている[1]。ロケットの誘導は慣性航法システムとGPS衛星位置測定システムの併用で、高いCEP(Circular Error Probability:半数命中半径)を備えている[1]。ロケットは発射後、放物線を描いて上昇。途中で一段目ブースターを切り離す。降下を始めると弾頭部から短魚雷を分離、魚雷はパラシュートで減速しつつ海面に着水し、その後、目標を追尾・攻撃する[1][3]。
 同システム自体は潜水艦の探知能力は有しておらず、海底設置式のソナー、対潜哨戒機やヘリコプター、艦艇などから得られた目標情報をデータリンクにより入手して、目標の居る海域にロケットを発射する[1]。指揮車両からの支持により、ロケット飛翔中の飛翔ルート修正が可能。着水後は、短魚雷のアクティブ/パッシブソナーにより潜水艦を探知して攻撃を行う[1]。ただし、短魚雷のソナーの性能では遠距離の目標の探知は困難であり、ロケットの飛翔時間が長いと目標の潜水艦が移動してしまい、着水後の探知・攻撃が困難になる。そのため、ロケット自体の最大射程は280kmに達するが、実用的な射程としては100km程度に抑えられている[1]。

【展望】
 WS-400は、主に輸出向けに開発された装備であり、長射程・精密打撃能力を有する地対地ロケットと、潜水艦攻撃用ロケットを1台の発射機でまとめて運用できる様にした兵器システムである。空軍や海軍を十分に揃えられない国でも同システムを導入すれば、遠距離目標に対するスタンドオフ打撃能力と対潜攻撃能力を一度に供えることができるメリットが在る。ただし、対潜作戦ではセンサー類を外部に依存していることから、一定の潜水艦探知能力が無いとその能力を生かすことが出来ない。
 現在の所、中国軍では同システム採用の動きは無いが、仮に制式化されれば、台湾海峡などの重要海域沿岸や海軍基地などに配備され近海での対潜任務に充当されると推測されている[1]。近年、中国海軍では海底ソナー網の構築を進めており、対潜ヘリ、哨戒機などと連携した潜水艦探知能力の向上が図られている。各部隊の連携運用に欠かせないデータリンク網の整備も推進されていることから、WS-400を有効に活用できる条件は整いつつあるといえる[2]。

【参考資料】
[1]遲国倉・郭翔「国産新型火箭助飛対海対地遠程精確打撃武器系統」『兵工科技』2015.01号(兵工科技雑誌社)33〜35ページ
[2]「WS400反潜火箭看中国海軍反潜設想」『漢和防務評論』2015年2月号(No.124)42〜43ページ
[3]navyrecognition.com「Chinese Company Poly Technologies unveils a "Rocket Assisted Torpedo" system at AAD 2014」
[4]太行军事网「外媒曝光中国国产独特远程反潜火箭弹WS400技术远超美俄」(2014年12月29日) 掲載写真

【関連事項】
WS-2 400mm6連装自走ロケット砲(衛士2) 

amazon

▼特集:自衛隊機vs中国機▼


▼特集:中国の海軍力▼


▼特集:中国海軍▼


▼中国巡航ミサイル▼


























































メンバーのみ編集できます