日本の周辺国が装備する兵器のデータベース


▼最初の生産型であるZ-9W



▼夜間戦闘能力を付与されたZ-9WA試作型。量産型では廃止される後部ドアがまだ存在している


▼後部ドアが廃止されたZ-9WA量産型

▼武装搭載用パイロンが上方に湾曲した「海鴎(カモメ)翼型パイロン」に変更されている

▼Z-9WAとナイトビジョン・ゴーグル付のヘルメットを持つパイロット


Z-9W性能緒元
重量3,800kg(最大離陸重量4,100kg)
全長13.46m
全幅11.94m(ローター直径)
全高3.47m
エンジン渦軸WZ-8A(734hp) ×2
最大速度315km/h
巡航速度255km/h
航続距離660km
上昇限度4,220m
ホバリング上昇限度2,590m(海面効果なしの場合は1,775m)
武装HJ-8対戦車ミサイル(紅箭8)
 TY-90赤外線誘導空対空ミサイル(天燕90)
 57〜90mmロケット弾ポッド
 12.7〜23mm機関砲ポッドなど
乗員3名

Z-9W武装ヘリコプター(直9武。Wは「武wǔ=武装」の頭文字)は、Z-9汎用ヘリコプター(アエロスパシアルAS-365N1ドーファンのライセンス生産版)をベースに開発された中国初の武装ヘリコプターであり、現在も陸軍航空兵部隊の武装直昇機部隊の主力の地位を占めている。当初はWZ-9(武直9)の名称で紹介されたが、中国軍の制式名称はZ-9Wとのこと[1]。

【開発経緯】
1980年代にはハルピン飛機工業集団有限公司でZ-9の名称でAS-365N1ドーファンIIのライセンス生産が開始された。中国は、ドーファンIIのライセンス生産によって初めて近代的なヘリコプターの製造能力を保有することに成功した。ただし、最初の段階では、多くの部品をフランスからの供給に頼っており実質的にノックダウン生産に近い生産形態であった。最初の機体は1982年に初飛行し、1992年1月までに50機が生産され陸・海・空軍に配備された。中国ではライセンス生産と並行してコンポーネントの国産化に努力し、その結果部品の国産化率は1992年に初飛行したZ-9A-100で70パーセント、1995年に初飛行したZ-9Bでは90パーセントにまで向上することになる。

Z-9汎用ヘリコプターによってようやく近代的なヘリコプターの運用が可能となった陸軍航空兵部隊では、Z-9の配備と並行して地上部隊の近接支援に当る攻撃ヘリコプターの開発に着手した。それまで陸軍航空兵部隊は本格的な武装/攻撃ヘリコプターは保有せず、ロシア(旧ソ連)製のMi-4を国産化したZ-5汎用ヘリコプターにロケット弾ポッドと12.7mm重機関銃を搭載したガンシップ型や少数機を輸入したSA-342Mガゼルなどの機体があるだけであった。航空工業部は、1986年に景徳鎮直昇機研究所を中心としてZ-9武装型の研究を実施することを決定した。実際の改修作業はZ-9の生産を行っているハルピン飛機工業集団有限公司が担当することとされた。1986年11月から本格的な開発が開始され、1987年3月23日には国防科学工業委員会によってZ-9武装型の開発案が正式に承認され、2機の試作機が製作されることが決定された。試作機はZ-9を原型としてハルピンで製作し、景徳鎮で攻撃ヘリに必要な各種擬装を施す第二次改装を実施することとされた。1987年11月には試製一号機がハルピンで改修作業を終了し、景徳鎮に送られた。景徳鎮では、10項目の電子装備が搭載されると共に運用試験と各部改修が行われ、火器管制システムの安定性の確保・要求性能の達成が図られた。試製一号機の初飛行は1988年1月に行われた。

Z-9武装型の開発で、大きな問題となったのは対戦車ミサイルの搭載であった。Z-9武装型には、対戦車兵器としてHJ-8対戦車ミサイル(紅箭8)を搭載する事が決定されていたが、HJ-8は元来ヘリコプターへの搭載は考慮されておらず各種問題を発生させることとなった。特に問題となったのが、ミサイル発射時の衝撃とロケットモーターが発する高熱の火炎であった。ミサイル発射時の衝撃は機体に激しい振動となって伝わり、機体表面を覆う複合材はモーターの火炎に耐え得る素材ではなかった。問題を解決するためにHJ-8の改修が重ねられ、100回以上の試験を経てようやくこの問題は解決された。Z-9武装型は1996年5月に設計承認を受け、Z-9W武装ヘリコプターとして制式化された。最初に配備されたのは北京軍区の第38軍、第39軍の直昇機大隊であった。両部隊は中国軍のなかでも近代化のモデル部隊として新式装備の配備が優先的に行われる部隊である。1999年の中華人民共和国建国五十周年式典の軍事パレードではZ-9W部隊の編隊飛行が行われ、その存在が広く知られる所となった。

Z-9Wは、中国軍では多用途武装ヘリコプターと位置づけられており主要な任務は戦車や地上部隊、地上火力の攻撃・制圧であるが、そのほか偵察、輸送、連絡、救護などの任務も想定されている。通常の離陸重量は3,800kg(最大離陸重量4,100kg)、最高速度は315km/h、最高巡航速度は255km/h。航続距離は660km、4時間20分の飛行が可能であり、作戦行動半径は100kmとなっている。Z-9Wの機体構造は原型のZ-9汎用ヘリコプターと大きな差はない。ただし被弾の可能性の高い近接支援任務に対応して、機体の重要部分には7.62mm機銃弾に対応し得る装甲が、ギアボックスは被弾時のオイル漏れを防ぐために密閉構造とされた。生存性強化の対策としては、操縦系統を2つ用意して非常時には副操縦士による操縦が可能となる。機体の強度も強化され、垂直落下速度7m/sにおいても90%の搭乗員生存率を確保した(参照:AH-1 コブラの場合は落下速度13m/sで95%の生存率)。
Z-9Wの搭乗員は前方の並列座席に操縦士と副操縦士/銃手が、その後方に電子系統の操作/管理手が搭乗する。Z-9にあった後部座席は廃止されたが、その部分には兵装搭載用のパイロンが機体を貫通するように搭載された。後部ドアはそのまま残されておりパイロンを撤去すれば輸送ヘリとしての使用も可能。搭載可能な兵装の組み合わせは以下の様になる。各パイロンの最大搭載重量は200kg。
HJ-8対戦車ミサイル(紅箭8)4発
23mm機関砲2基(弾薬240発搭載)
12.7mm重機関銃ポッド2基
HF-7D 90mmロケット弾ポッド(7連装)2基
HF-25 57mmロケット弾ポッド(25連装)2基

このほか、1990年代末期にはヘリ専用空対空ミサイルであるTY-90赤外線誘導空対空ミサイル(天燕90)の運用能力を付与する改修が行われ、最大4発の搭載が可能となった。これらの兵装を運用するため新たに火器管制システムが搭載され、コクピット左上部にはHJ-8誘導用にも使用される光学照準センサーが設置された。この位置に照準センサーを置いたことで、機体全体を暴露することなく索敵/照準を行うことが可能となった。エンジンは渦軸-8A(734hp)ターボシャフトエンジン2基が搭載された。このエンジンは中国で生産されたものであるが、フランス製エンジンに比べてエンジン寿命が極めて短くなるという問題点があった。改良型の渦軸-8Eでも400時間で整備を行う必要があり、ドーファン2のエンジンの整備間隔が1500時間であるのと比べると3分の1以下である。

【派生型】
Z-9Wは、陸軍航空兵部隊が待ち望んでいた武装ヘリコプターであり、この種の機体の不在を解消するものであった。ただし、汎用ヘリコプターのZ-9を原型として開発されたため武装/攻撃ヘリコプターとしては問題点のある事も事実であった。1つは被弾に対する脆弱性である。そして他国の攻撃ヘリコプターの多くが敵に対する暴露面積を局限するためにタンデム座席を採用しているのに対して、Z-9Wは正面投影面積が増える並列座席であることも不利な要素であった。また、赤外線暗視装置が未搭載のため、夜間攻撃能力がないことも問題とされた。陸軍航空兵部隊ではこれらの問題のうち、夜間攻撃能力の付与を中心とした能力向上型の開発を行うことを決定した。この能力向上型の存在は2004年11月の珠海航空ショーで模型が展示されたことで明らかになった。能力向上型は当初WZ-9G(武直9改進型。Z-9G)の名称と紹介されたが、中国軍ではZ-9Wの改良型を表すZ-9WAと命名された[1]。Z-9WAは、2005年には部隊での運用が確認された。同機の価格は約4000万元とされている。

Z-9WAの外見上の変化は、照準センサーが機首に移されたことと兵装搭載用パイロンが上部に湾曲した形状に変更された点である。搭乗員はZ-9WAと同様に、操縦士と副操縦士/銃手、電子系統の操作/管理手の3名である。従来のコクピット左上部の光学照準センサーは撤去され、替わりに機首下部にYY-1観測/照準センサーが搭載された。YY-1観測/照準センサーは洛陽光電子技術開発センター(EOTDC:Electro-Optics Technology Development Centre)が中心となって開発されたもので、赤外線暗視装置、TVカメラ、レーザー照準装置など攻撃ヘリに必要なセンサー類を搭載している。Z-9WAは、YY-1観測/照準センサーの搭載によって夜間攻撃能力を有する様になった。センサーの変更を合わせてコクピットのレイアウトの大幅な変更も行われた。左側の操縦士席には2基の多機能ディスプレイ(MFD:Multi Function Display)が配置され、右側の副操縦士/銃手席にはYY-1観測/照準センサーの画像を映す電子ディスプレイが装備されている。これと合わせて、電子機器系統の向上化とモジュール化が行われ、能力の向上と搭乗員の負担の大幅な軽減に繋がった。

Z-9WAのもう1つの変更点は、兵装搭載用パイロンの変更である。Z-9Wが兵装パイロンを胴体を貫通する形で搭載したのは開発の簡素化のためであったが、この方法は機体後部のスペースを占有し機体強度においても不利に働いた。またこのパイロンは地上との間隔が狭く、兵装を縦に並べて搭載することは不可能であった。この点を改善するために胴体を貫通しない形式の新型パイロンの開発が行われたが、必要な強度を維持しつつ搭載量を増加することが求められたために開発は難航した。最終的にはユーロコプターAS-565パンサー(Z-9の原型、AS-365N1ドーファンの対地攻撃・汎用型)の上方湾曲型パイロンを参考にしてこの問題を解決した。このパイロンはその形状から「海鴎(カモメ)翼型パイロン」と呼ばれている。兵装取り付け部が原型より高位置になったことで、地上との間隔を充分に取れる様になり兵装を縦に並べて搭載することが可能となった。 これにより、一基のパイロンに搭載可能なミサイル数は2基から4基に倍増し、複数のミサイルを同時に搭載することも可能となり戦術的柔軟性が向上することとなった。搭載可能な兵装にはHJ-8の射程延長型であるHJ-8Eも加わった。パイロンの変更と合わせて後部ドアも廃止された。この区画は、新たな燃料タンクが搭載されているのではないかと推測されている。新型のアビオニクスの搭載や燃料の増加などでZ-9WAの機体重量はZ-9Wに比べてかなり増加した。重量増加による飛行性能の低下を防ぐためエンジンはより強力なチュルボメカ Arriel-IIターボシャフトエンジン(851hp)×2に換装された。上記の改良によってZ-9WAは全天候性能の付与、搭載兵装の増加、航続距離の延伸を達成することに成功した。

Z-9WAは要求された性能向上を達成したと評価され、現在陸軍航空兵部隊への配備が進んでいる。さらに、ベース機体をユーロコプターSA-565パンサーに変更したZ-9Gも開発されている[2]。Z-9Gの装備や外観はZ-9WAを踏襲しているため区別は難しい。

2008年にはZ-9Wシリーズの更なる発展型であるZ-9WZが登場した([3][5]。ただし[5]ではZ-9WEとして紹介されている)。Z-9WZの機体は民生型H450をベースとしており試作機は2004年12月29日に初飛行に成功[3]。外観からはZ-9WAとの相違点は殆ど無いが、火器管制システムの改良を行い、新型のADK-9空対地ミサイルやHN-6携行対空ミサイルなどの運用能力が付与されており、暗視装置の性能もZ-9WAより向上しており、夜間においても最大で8,000m先の地上目標の探知が可能となった[5]。コクピットの機能向上が進められ、暗視装置の能力向上もあいまって、夜間戦闘能力が大きく向上したと評価されている[5]。

Z-9WZの輸出型にはZ-9WEの型式名が付与されて、国際市場への売込みが図られている[3]。最初の海外ユーザーとなったのはケニアで、2010年に4機が輸出され、2機以上の追加発注も検討中[3]。さらに、ベネズエラ海軍が海兵隊に対する火力支援用武装ヘリコプターとして、8機のZ-9WEの輸出に関する交渉を中国との間で行っているとの事[4]。

【評価】
Z-9Wは中国初の武装ヘリコプターであり、この機体によって陸軍航空兵部隊は武装ヘリコプターの運用経験を得る事が可能となった。その性能は本格的な攻撃ヘリコプターと比較すると不十分な点の多いものであったが、当時の中国ではZ-9を改良する以外に武装ヘリコプター戦力を強化する方法は無かったのも事実である。

Z-9Wシリーズはこれまでに100機以上が生産され、陸軍航空兵部隊で運用されている。ただし、改良型のZ-9WAやZ-9G、Z-9WZにしても機体の構造は原型のZ-9と大差はなく、外国の攻撃ヘリコプターと比べると運動性能、被弾時の生存性、暴露面積、兵装の搭載能力、航続距離、上昇性能などの多くの点で劣るのは否めない。これは機体形状の根本的な変更無しには解決不可能な問題であり、これらの問題点を解消しZ-9Wシリーズを代替する本格的な攻撃ヘリコプターとしてZ-10攻撃ヘリコプターZ-19攻撃ヘリコプター(直19)の二種類の機体が開発されることになった。

【参考資料】
[1]新浪網「央視巨泄大規模列装空軍部隊的新武直九細節!」[1][2]
[2]Chinese Aircraft: China's Aviation Industry Since 1951(Yefim Gordon・Dmitriy Komissarov/Hikoki Pubns/2008年12月)
[3]Chinese Military Aviation「Z-9W/WA/WZ Dauphin」
[4]Fav Club Venezola「Helicópteros de ataque chinos para la Armada venezolana」(2013年9月5日)
[5]銀河「風+火 中国新一代専用武装直昇機的技術進歩」(『艦載武器』2013.08A/中国船舶重工業集団公司)20〜31ページ

航空世界 2006年1月号「鷂鷹一撃驚天下-陸軍航空兵成立20周年系列之(一)」(航空世界雑誌社)
兵工科技 2006年7月号「直9換新顔-從外形変化看武直9的改進」(兵工科技雑誌社)
兵工科技 2006年10月号「直-11家族添新丁-直-11武装直昇機」(兵工科技雑誌社)
中国尖端軍事力量-戦略研究 2006年9月号「台評解放軍直昇飛機」(中国戦争史研究会)
航空週刊増刊B 第250号「直-9武装直昇機」(国際航空雑誌社)
Chinese Defence Today
中華網「中国直9是如何一歩歩変成専用武直的」
空軍世界

【関連項目】
Z-9輸送ヘリコプター(直昇9/AS-365N1ドーファンII)

中国陸軍

×

この広告は60日間更新がないwikiに表示されております。

amazon

▼特集:自衛隊機vs中国機▼


▼特集:中国の海軍力▼


▼特集:中国海軍▼


▼中国巡航ミサイル▼


























































メンバーのみ編集できます