日本の周辺国が装備する兵器のデータベース


▼Z-10初期試作機(機体番号Z10-03A)

▼エンジンを中国製WZ-9に変更した後期試作機。この機体の場合は機首の光学/電子センサーは初期型と同じ

▼広州軍区の陸軍航空隊部隊に配備されたZ-10量産型。機首センサーが小型のものに変更された

▼2012年11月に開催された珠海航空ショーで展示飛行を行うZ-10量産型。初期試作型と比べると細部にかなりの相違が見られる



Z-10性能緒元
空虚重量5,100〜5,500kg
最大離陸重量7,000kg(クリーン)/8,000kg(機外装備時)
全長14.10〜14.15m
全高3.84〜3.85m
ローター直径13m
エンジン(初期試作機)プラット&ホイットニー・カナダ社製 PT6C-67Cターボシャフトエンジン(1,268kW/1,679shp)×2
エンジン(後期試作機〜量産型)渦軸9(WZ-9)ターボシャフトエンジン(957kW/1,283shp)×2
最大速度300km/h
最大巡航速度270km/h
巡航速度230km/h
航続距離588km
フェリー航続距離800km+
上昇限度6,400m
ペイロード1,500kg(機内燃料搭載80%の状態)/1,200kg(燃料満載時)
武装23mm機関砲×1(30mm機関砲説もあり)
 AKD-10空対地ミサイル
 HJ-8E対戦車ミサイル
 TY-90赤外線誘導空対空ミサイル(天燕90)
 ロケット弾ポッド、機関砲、200L入り増加燃料タンク、物資輸送用ポッドなど
乗員2名
注:性能については[1][3][5][7][13][16][20]を参照。推測を含むのであくまで1つの参考例として見てください。

Z-10(直10/直昇10)は中国陸軍航空隊向けに開発された攻撃ヘリコプター。「武装ヘリコプター(中国語では武装直昇機)」を表すWZ-10(武直10)という名称も使用されることが多い。2012年の珠海航空ショーでは、「霹靂火」という公式ニックネームが与えられている事が判明した [1]。なお、「霹靂火」は稲妻を意味し、小説『水滸伝』の登場人物の一人、秦明の渾名。

Z-10の開発は、江西省景徳鎮にある昌和航空機工業(Changhe Aircraft Industries Group:CAIG)と哈爾濱飛機公司が設計作業を担当、中国直昇機設計研究所(China Helicopter Research and Development Institute:CHRDI)が開発プログラムの管理に当たるという、中国のヘリコプター関連企業・研究所の総力を挙げた体制が採られている[2][3][4][5]。開発主任は呉希明技師で、後にZ-19攻撃ヘリコプターの開発でも主任を務めることになる中国攻撃ヘリコプター開発の中心人物[6]。


【開発決定までの経緯】
1980年代、中国では最大の脅威と認識されていたソ連戦車部隊への対抗策の1つとして武装ヘリコプターの導入を計画。1980年代末から1990年代初めにかけて、フランスから少数のガゼル武装ヘリコプターを調達すると共に、自国での武装ヘリの開発に関する検討作業を進めていた[1]。

中国陸軍航空隊では将来的には対戦車戦闘専任の攻撃ヘリコプターを装備するのが望ましいと認識しており、1990年には「武装直昇機開発和研製工作小組」を設立、武装ヘリコプターの新規開発に関する検討作業を開始している[4]。当時の中国はヘリコプターの開発経験が乏しかったため、まず国外から武装ヘリコプターの購入を行うと共に、ライセンス生産などの手法で海外から先進的なヘリコプター技術の習得に努める。そして、その技術と経験を基にして国産武装ヘリコプターを実用化するという段階的な手法が採用された[4]。

その結果、1980年代後半にフランスからの技術導入によりライセンス生産が開始されたAS-365N1ドーファンII(中国軍の制式名はZ-9輸送ヘリコプター)をベースとした武装ヘリコプターを開発する事が決定[1]。1990年代後半にはZ-9W/WZ-9(直9W/武直9武装ヘリコプターとして部隊配備に漕ぎ着けることに成功した[1][2]。Z-9Wは、汎用ヘリであるZ-9の機体構造を基本として武装を強化したものであるが、アメリカのAH-1やAH-64といった対戦車戦闘専任の攻撃ヘリコプターに比べると、運動性能、被弾時の生存性、暴露面積、兵装の搭載能力、航続距離、上昇性能など多くの点で劣るのは否めない所であった[1]。ただし、中国軍では性能の不十分さは当初から認識しており、むしろZ-9Wシリーズは従来空白であった武装ヘリコプターという新装備を中国陸軍航空隊が入手できたという点が大きかったといえる

しかし、外国からの武装ヘリコプターの調達についてはフランスからのガゼル武装ヘリコプターの導入には成功したものの、1989年の天安門事件により西側諸国からの武装ヘリコプター調達は困難となった。冷戦終了後には、ロシアやブルガリア、ルーマニアなどの旧東側諸国との間でMi-24攻撃ヘリコプターの輸入が模索されたが、どの国とも成約を得ることは出来なかった[3][4]。これを受けて、中国政府は自力で6tクラスの攻撃ヘリコプターを開発する事を決定した[4]。

冷戦の終結により、極東ソ連軍の戦車部隊の脅威は大幅に縮小。中国軍では海軍や空軍の装備調達が優先されるようになり、ソ連戦車に対抗するため開発された89式120mm対戦車自走砲の大量配備が中止されるなどの措置が取られていたが、攻撃ヘリコプターの開発は継続される事になった[7]。この背景には、1991年に発生した湾岸戦争でアメリカ軍所属のAH-64やAH-1Wといった戦闘ヘリコプターが活躍した事が中国軍に強い印象を与え、この種の装備の実用化が必要であるとの認識を抱かせたためとされる[7]。

新型攻撃ヘリコプターの研究・開発作業は1990年代前半に着手された[7]。当初、次期攻撃ヘリコプターの開発計画は専任の攻撃ヘリコプターである事を表す「専武-10」と呼ばれており、開発がある程度進んだ段階で、「直10(Z-10)」に開発名称が変更されている[7]。これは同時期に進められていた汎用ヘリコプターの方のZ-10開発計画(後述)が消えた時期と近く、名称の混同がなくなったので開発名称を「Z-10」に変更したのではないかと推測される。


【外国企業の技術支援について】
Z-10の開発では、複数の外国企業からの技術提供や支援が行われている。これは当時の中国がヘリコプターの開発経験に乏しく、自国だけでは開発に必要な各種技術や装備などを確保するのが困難だった状況を反映したものであった。

1989年以降、西側では中国への兵器輸出に関する国際規制を設けるようになったが、これは主に兵器自体の輸出に関する規制で、各種コンポーネントや技術移転に関しては兵器の輸出より規制がゆるかった事もあり、中国にとっては貴重な技術移転の機会となり続けた。

これはZ-10の開発においても例外ではなかった。

当初Z-10は、ベル412やシコルスキーS-76クラスの5〜6トン級の汎用ヘリコプターとして開発されると伝えられており[5][8][9]、CMH(Chinese Medium Helicopter)計画という名称も伝えられていた[8]。攻撃ヘリコプターとしてのZ-10は、この汎用ヘリコプターの派生型として開発を行う事になったと推測される。

汎用ヘリコプターとしてのZ-10計画は実用化に至ることはなかったが、CMH計画は後にユーロコプター社と中国航空工業第二集団公司(AVICII。のち中国航空工業集団公司に改組)が共同開発を行う6トン級の汎用ヘリコプター(ユーロコプターではEC175、中国ではZ-15の名称)に発展する事になる[7]。1997年5月17日には、ユーロコプターがローター・システムの開発支援について、1999年3月22日にはアグスタ(現アグスタ・ウエストランド)がトランスミッション・システムと振動解析で、それぞれ作業協力を行う契約を結んでいる[5]。攻撃ヘリコプターとしてのZ-10用として供給された西側装備は、民間ヘリコプターのZ-10やCMH計画、Z-15用という建前で売却されてきたので、特別な輸出ライセンスは必要とされなかった[7][8]。

Z-10試作機のエンジンには、民間貿易ベースで輸入したプラット&ホイットニー・カナダ社製のPT6C-67Cターボシャフトエンジンが搭載された[5]。しかし、民生用の名目で輸入したエンジンが攻撃ヘリコプターに搭載された事はアメリカで問題となり、アメリカ政府の圧力もあってプラット&ホイットニー・カナダ社はZ-10用のPT6C-67Cのこれ以上の輸出を行わないことを決定[3][7]。Z-10が開発途上で搭載エンジンの変更を余儀なくされる事態を引き起こしている(詳しくは後述)。

上記は、Z-10の開発における西側企業による関与と技術支援の一部事例であるが、2013年3月にはロシアのカモフ設計局のセルゲイ・ミハイエフ(Sergey Mikheev)主任設計士が、Z-10開発に関してカモフの協力があった事を明らかにした[10]。

1996年、カモフは中国政府との間で6トン級の攻撃ヘリコプターの予備設計を行う契約に調印。プロジェクト941と命名されたこの設計案は、ソ連/ロシアの既存の機体には基づいておらず、中国側から提示された性能や機体重量などの要望を反映して設計された[10]。カモフの設計案はロシアの設計局の検証を経た上で、中国に引き渡された。ミハイエフ設計士によると、カモフはプロジェクト941設計案を引渡し後はZ-10の開発には関与しておらず、それ以降の開発作業やZ-10の性能については把握していないとしている[10]。設計案の引渡し後の推移は明らかにされていないが、ヘリコプター開発経験の乏しい中国にとっては設計作業の叩き台となるプロジェクト941設計案の存在はZ-10の開発を進める上で貴重な存在になったもの推測される。

ただし、これらの外国企業はZ-10の開発に欠かせない各種技術や設計を中国側に提供したが、直接Z-10の開発に携わることは無かったとされている[2]。外国企業から入手した設計案や、各種コンポーネントなどを纏め上げて形にする作業については中国国内の開発チームが主導し、技術的に困難な部分で個別に作業協力を仰ぐという形式になる。


【試作機を巡る紆余曲折】
Z-10の開発は、上記のような外国企業の技術支援を受けた上で進められたが、中国にとって初の攻撃ヘリコプター開発であった事から、その道程は必ずしも順調なものとはならなかった。

最も大きな問題となったのは、前述した搭載エンジンの変更を余儀なくされる事態であった。攻撃ヘリコプターのみならず軍用機にとって搭載エンジンは、その性能を左右する重要な要素の1つである。しかし、1990年代当時の中国では空虚重量5〜6トン級の攻撃ヘリコプターが必要とする出力を発揮するターボシャフトエンジンは存在せず、次世代のターボシャフトエンジンとして開発が行われていたWZ-9(渦軸9型)も実用化にはかなりの時間を要することは確実であった[1]。この状況に対処するため、Z-10開発チームは当面の措置としてZ-10試作機ではプラット&ホイットニー・カナダ社製のPT6C-67Cターボシャフトエンジンを搭載して必要な各種試験を実施して量産化に漕ぎ着ける。その後、開発中のWZ-9の熟成を待って、WZ-9搭載型Z-10の開発・製造に着手するという二段構えの開発方針を採用する事になった[1][3]。

Z-10の開発チームは1998年には試作機の製造に着手[7]。中国は2001年から2002年にかけて民間貿易の形で10基のPT6C-67Cを入手する事に成功(参考資料[11][12]。ただし[11]では入手したのはPT6C-67Bとなっている。)。二基のPT6C-67Cターボシャフトエンジンを搭載した試作機初号機は2002年に完成、地上試験を経た後、2003年4月29日に初飛行に成功[3][5]。(初飛行は2003年12月27日という説もある[3])。PT6C-6Cを搭載したZ-10試作機は、この初号機を含めて2〜3機が製造されているとされる[7](6機以上製造されたとの情報も[13])。PT6C-67Cは出力1,268kW/1,679shpのターボシャフトエンジンで、先進的なデジタル制御システムを備え、低燃費で信頼性の高いエンジンであった[1]。このエンジンを搭載したZ-10試作機は2006年までに各種飛行試験で累計400時間以上の飛行を行ったが、その能力は各国の同クラスの攻撃ヘリコプターと遜色ないもので、一部の性能ではより大型のAH-64やMi-28などの10トン級攻撃ヘリコプターにも迫るものがあると高い評価を受けた[1][5]。2007年には一部の試作機が中国軍に引き渡され、性能評価試験に供されている[13]。

しかし、前述の通り、アメリカ政府の圧力もありプラット&ホイットニー・カナダ社はZ-10用のPT6C-67Cはこれ以上の対中輸出を行わない事を決定[1][3]。当初の計画では、WZ-9エンジンの熟成まではPT6C-67Cに頼る予定であったが、そのPT6C-67C に頼れない事態に直面する事になり、予定よりも早くWZ-9搭載型Z-10の実用化を迫られる展開となった。

【WZ-9搭載型Z-10の開発と、Z-10の部隊配備について】
WZ-9は、1990年代中頃から開発に着手していた新型ターボシャフトエンジンであったが、エンジンのデジタル制御技術やモジュール設計概念の導入など各種の新機軸が導入されていたため、実用化には時間がかかっていた[1]。特にエンジンブレードの折損や脱落などは深刻で、これは素材技術で立ち遅れていた中国にとって大きな課題であった。最終的な問題解決には、フランスとのエンジン共同開発で得られたノウハウや技術支援が大きな役割を果たしたと推測されている[14]。

WZ-9は、開発着手から約10年を経た2005年に制式化に漕ぎ着け、翌2006年にはZ-10試作機の一機がエンジンをPT6C-67CからWZ-9に換装して各種試験を実施している[1]。しかし、試験の結果、Z-10にWZ-9を搭載するには機体設計に大幅に手を加えなければならないことが判明。WZ-9は、重量、体積、エンジン構造がPT6C-67Cとはかなり異なっており、そのままではエンジン換装は難しくかったのである。最終的にエンジンの搭載位置と動力伝達系統自体に手を加える大規模な設計変更を行う事を余儀なくされた[1][7]。設計変更の一例として、エンジン排気口の位置があり、PT6C-67C搭載型では赤外線排出削減のために上部を向いているのに対して、WZ-9搭載型では機体側面に排出する方式に変更されているが、これもエンジン換装に伴う設計変更箇所の1つである[1]。

そして、最大の問題はエンジン出力にあった。WZ-9は957Kw/1,283shpの出力を有していたが、これはPT6C-67C(1,268kW/1,679shp)の四分の三程度に留まっており、Z-10試作機への搭載試験の結果、飛行性能や機動性、ペイロードなど各種性能がPT6C-67C搭載時と比べて大きく低下する事が判明した。これは当初から分かっていた事であり、当面はPT6C-67Cに依存するとして設計作業を進めていた訳だが、PT6C-67Cに頼れなくなった事で、開発陣は否応なしに出力不足の問題を解決しなければならない事態となった。

実用化したばかりのWZ-9の出力向上はすぐには望めず代替エンジンの入手の算段も付かない状況では、解決策としてはエンジン出力の減少をカバーするために機体重量を軽減するしかなかった[1]。そのため、機体各部の構造見直しや小型化が行われると共に、装備の軽量化や防弾装甲の範囲削減などが図られた[1][3][13][14]。機首の光学/電子センサーが、新開発の大型なものから、コンパクトなドーム型に変更されたのも軽量化措置の1つ[7]。さらに、一部性能やペイロードについてはWZ-9の出力に見合った数値に引き下げる措置が取られた[7]。WZ-9搭載に関する設計変更作業は機体構造自体に手を加える大規模なものとなり、この作業に伴ってZ-10の部隊配備は当初計画から4年近く遅れる結果となった[7]。

設計変更作業や、飛行試験などで明らかになった技術的問題の解決には相応の時間が必要となり、開発期間の長期化と開発費用の予定超過を引き起こした[3]。この間、詳細は不明だが2003年と2007年には試作機が墜落事故を起こしたとの報道もあり[14]、開発陣は事故原因の究明と対策にも追われたものと推測される。

上記の設計変更を施したWZ-9搭載型Z-10の試作機は、2010年には飛行中の様子が撮影されてその存在が確認された[14][16]。2010年10月には設計案が最終的に国家承認を受けると共に、同年末には初期量産型12機が陸軍航空隊での試験運用を開始[3][14]。2011年後半からは本格的な部隊配備が開始された模様で、複数の軍区の陸軍航空隊の攻撃ヘリコプター部隊でZ-10の運用が確認されるようになった[7]。2013年4月段階では、広州軍区・北京軍区・南京軍区・瀋陽軍区の陸軍航空隊でそれぞれ6〜8機のZ-10が配備されており、各軍区の部隊において先進的なZ-10を使用した空地一体作戦に関する経験を積む事が目されているとされる[17]。ただし、Z-10は調達価格が高いため、年毎の調達機数はまだそれほど多くはないとの事[17]。


【機体性能】
Z-10の機体設計は、この種の攻撃ヘリコプターとして標準的な機体形状を採用しており、細身の胴体に前後に段差をつけたタンデム式コクピットを付けている。座席配置は、前席が副操縦手兼射撃手、後席がパイロットとなっている[3]。タンデム式コックピットの間にはワイヤー・カッターが、後部コクピット右側面にはピトー管が取り付けられている。

Z-10の胴体側面中央部には張出部が設けられており、短固定翼の付け根部分と緩やかに一体化する形状が採用されている[7]。これはカモフのプロジェクト941設計案で採用されていた形状を踏襲したものであるが[10]、この張出部により胴体側面には張出部を頂点とした山形の傾斜が付けられており機内容積の確保とレーダーシグネネチャーを低減させる2つの効果が得られるとされている[7][13]。また、短固定翼の付け根部分と緩やかに一体化した形状には、F/A-18戦闘攻撃機などに採用されているLERX(Leading edge root extensions/前縁基部延長)に似た空力的効果と構造強化の目的があるとされる[3][7]。地上からの対空砲火にさらされる危険性の高い攻撃ヘリコプターの常として、Z-10も機体の重要部分やコクピット周辺に防弾装甲を備えておりコクピットには防弾ガラスが採用されている[1][3]。Z-10の防弾装甲は、機体正面からの12.7mm重機関銃弾の直撃に抗堪し得る性能を有しているとされる[3]。

Z-10は機体軽量化のため、従来の中国のヘリコプターよりも複合材料の使用範囲を拡大しているが、機体の主要構造については従来のアルミ合金や高張力鋼、チタン合金を使用して製造されている[7]。コクピット部分については、強い衝撃を受けても押し潰れ難い構造を採用しており、墜落時の搭乗員の安全性に配慮した設計が取り入れられている[7]。機体塗装に採用された中国製塗料は、電波ステルスや赤外線ステルス性向上を目的として開発されたものとされる[21]。

メイン・ローターは5枚ブレードで西側式の時計回り回転であるが、これはZ-10のローターと動力伝達系統がユーロコプター社とアグスタ社の技術協力を受けて実用化されたという話を肯定するものといえる[3]。エンジンは、量産型では中国製WZ-9ターボシャフトエンジン(957Kw/1,283shp)双発。エンジン前方の空気取り入れ口には防塵用の金網が装着されている。エンジン排気口は、PT6C-67C搭載型では赤外線排出量削減のためローターの胴体上部に向けて配置されていたが、WZ-9搭載型では胴体側面に排気する方式に変更されている。これは前述の通りエンジン構造の違いによるものであったが、胴体側面に直接高温のエンジン排気を出すことになってしまい、排気口にエンジン排気低減装置が装備されていない事も相まって、赤外線ステルスの面では問題があることが指摘されている[1]。

降着装置は、尾輪式の固定脚三脚を採用。固定脚は引き込み脚に比べて飛行時の抵抗が増し速度発揮では不利になるが、引き込み脚に比べて機構を簡略化、システム重量を軽減することが可能となる[3][5]。降着装置には衝撃吸収機構が内蔵されており、ハードランディングの際に衝撃を緩和して、機体構造を保護し乗員の安全性を確保するようになっている。初期試作機では、尾部降着装置にフェアリングが着いていたが、機体軽量化のための設計変更で量産型ではこれが廃止されている。

【アビオニクス・火器管制システム・電子戦装備】
Z-10のアビオニクスと兵器システムはアメリカのMIL-STD-1553B規格に準じたデジタルデータパスで接続されている[18]。Z-10の機体制御には3重デジタル・フライ・バイ・ワイヤ方式が採用されているが、これは中国製ヘリコプターとしては初[1]。フライ・バイ・ワイヤの採用は、攻撃ヘリコプターに必要な高い機動性と敏捷性を実現するために採用された[1]。Z-10は自動操縦装置、飛行ルートシステム、飛行管理装置、無線高度計などで構成された自動操縦システムを採用している[18]。自動操縦装置は匍匐飛行の際にパイロットの負担を軽減し、悪天候下での自動着陸機能を可能とする[18]。飛行管理装置は最適な飛行状態での経路や高度を算出し、実際の飛行状態と対照して、不適切な飛行を行った際には自動的に正常な飛行に回復させる能力を備えている[18]。攻撃ヘリコプターは生存性を高めるため地形追随飛行を行うが、それに欠かせない無線高度計が搭載されており、飛行中、常に機体の正確な高度を計測している。

前後コクピットはグラス化されておりそれぞれ3つの液晶ディスプレイが設置、操縦桿の設計にはHOTAS(Hands On Throttle and Stick)概念が取り入れられている[3][18]。機長と射手は、音声・映像・画像・各種データを相互に交換して密接に意思の疎通を図る[18]。兵器の照準にはヘルメットマウンテッドサイトが採用されており、搭乗員は外部を視認しながら光学/赤外線画像や各種データを参照することが出来る[18]。航法装置としてはデジタル地形図とGPS/GLONASS衛星航法システムが搭載されており、上記の自動操縦システムの支援を受けて、複雑な地形でも高度10〜15mでの匍匐飛行を実現する[18]。Z-10は、地上のコマンドポストとの間、もしくは僚機のZ-10との間で、情報の共有を可能とするデータリンク機能を備えていると見られているが、その詳細については現状では不明[18]、

機首の回転式ターレットには、レーザー照射装置・光学/赤外線センサーが設置されている。赤外線暗視装置を使用することで、Z-10は全天候性能を獲得することに成功した。PT6C-67C搭載型と一部の初期量産型では新開発の大型センターを搭載していたが、エンジン変更に伴う軽量化対策の一環として量産型ではコンパクトなサイズのものに変更された[7][14]。ただし、装置の容積が減った事により、試作型よりも機能や性能が限定されたものになったと見られている[7]。レーザー照射装置・光学/赤外線センサーは、最大10kmの探知能力を有しており、偵察、監視、目標追尾、対戦車ミサイルの誘導に用いられる[7]。

Z-10のYH-96電子戦装置は、レーダー波警報装置、レーザー警告装置、チャフ・フレア発射装置、赤外線妨害装置などで構成されている[1][3][22]。レーザー波警報装置は短固定翼の翼端に、チャフ・フレア発射装置は胴体下部両側面、赤外線妨害装置はコクピット上部に装備されている[1][2][3][14]。

【兵装】
Z-10は、燃料満載時に1,200kg、燃料80%搭載時に1,500kgの外部兵装搭載能力を備えているが、これは既存のZ-9WA武装ヘリコプターの最大ペイロードより500kg増加しており、パイロンの数も倍になっている事から、兵器搭載時の柔軟戦が大幅に向上している[7]。

Z-10は機首下部に23mm単装機関砲を旋回ターレットに装備している[3][7][14](口径については30mmとの説も存在する[3])。搭載弾数は200発で徹甲弾と榴弾の2種類が用意されている[7]。

外部兵装は、機体両側面の短固定翼に四ヵ所装備されたパイロンに搭載される。主兵装である地上攻撃用ミサイルは、Z-10への搭載を前提として開発されたAKD-10空対地ミサイル。AKD-10の射程は2,000〜7,000m、最高飛翔速度はマッハ1.2。誘導システムはセミアクティブ・レーザー誘導方式、最大貫通能力は1,400mm[19]。通常では、二箇所のパイロンに合計8発のAKD-10を搭載するが、必要な際には4箇所のパイロン全てにAKD-10を搭載(合計16発)する事もできる[5]。AKD-10は、従来の対戦車ミサイルよりも射程と威力が向上しているため、戦車だけではく、レーダーサイト、対空ミサイル発射機、砲兵陣地、強化バンカーなどの固定陣地など多様な目標に対して使用する事が想定されている[7]。Z-10は、AKD-10以外にも、Z-9W武装ヘリコプターが搭載していたHJ-8E対戦車ミサイルの搭載も可能[7]。地上攻撃用には対戦車ミサイルのほかに、面制圧用の57mm/90mm/130mmの3種類の口径の無誘導ロケットが用意されている。最近では、70mm/90mm無誘導ロケットにレーザー/赤外線誘導装置を組み込みピンポイント攻撃を可能としたタイプのロケットも開発されているとされる[7]。

空対空任務の場合には、ヘリ専用空対空ミサイルであるTY-90赤外線誘導空対空ミサイル(天燕90)を搭載する。通常の搭載数は8発だが、ADK-10の場合と同じく最大16発の搭載も可能。TY-90は、赤外線誘導方式の空対空ミサイルで最高速度マッハ2、最大射程6,000m[7]。命中率は1発の場合で80%、命中精度を高めるため1目標に対して2発を発射した場合、命中率は95%以上に達する[7]。ヘルメット装着式照準システムと併用する事で、オフ・ボアサイト交戦能力を獲得している[3]。

パイロンには武装のほかに、200L入り増加燃料タンク2基を搭載して航続距離を延伸する事も可能[7]。

【今後の見通し】
中国陸軍は、2001年に空地一体化作戦思想を提出して、地上作戦における航空支援・連携の強化を打ち出していた[7]。Z-10やZ-19といった新型攻撃ヘリコプターはこの構想に答えた機体であり、両機の実用化により中国陸軍航空隊は長年の懸案であった攻撃ヘリコプター配備という目標を叶えることに成功したといえる。

陸軍航空隊ではこれまで団(連隊に相当)規模であったヘリコプター部隊を旅(旅団に相当)規模に拡大する制度改革を実施中であり、軍の規模に比べて十分とはいえなかった各種ヘリコプターの調達数の増加に勤めている[7]。Z-10とZ-19はその中でも、打撃任務、火力支援任務、戦上偵察任務の中核となる機体であり積極的な整備が進められるものと思われる。ただし、陸軍航空隊内部ではZ-10についてエンジン出力の問題から当初の要求値よりも性能を妥協せざるを得なかった事を問題視する向きもあり、将来的には新型の渦軸16(WZ-16)ターボシャフトエンジン(出力1,500kw/2011shp)の実用化を待ってエンジンの換装を行う可能性も指摘されている[13]。

Z-10の設計者は、Z-10は将来的には陸軍航空隊だけでなく、その性能を生かして海軍陸戦隊や空軍空挺部隊にも配備されるであろうとの見通しを示している[14]

【参考資料】
[1]単晶葉「直-10“霹靂火”−専用武装直昇機的新秀」(『兵器』総164期 2013.1)46〜52頁
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[5]青木謙知『戦闘機年鑑 2013-2014』(イカロス出版/2013年)263ページ
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[8]Global Security「Chinese Medium Helicopter [CMH]」
[9]ALL THE WORLD’S ROTORCRAFT「CHRDI Z-10project」
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[12]Global Security「WZ-10 Attack Helicopter」
[13]Chinese Military Aviation「Z-10 Thunderbolt」
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[15]RtiNewsIndex2007年7月15日 「中國•新型武裝攻擊直升機試飛墜機5人傷」
[16]空軍世界「武直-10型武装直昇機」
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[19]Chinese Military Aviation「KD-9/KD-10 (courtesy of WLTK, Sharon, HF, BC)」
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[20]Global Security「WZ-10 Attack Helicopter Specifications」
[21]新華網「専家掲武直-10塗有隐形塗料」(鞏琳萌/2012年11月18日)
[22]Air Recognition「WZ-10 or Z-10 Attack helicopter」

中国陸軍

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