日本の周辺国が装備する兵器のデータベース


▼2012年11月に開催された珠海航空ショーで展示飛行を行うZ-19

▼習近平国家主席の視察時に地上展示されたZ-19。搭載可能な各種兵装が並べられている。


Z-19性能緒元[2][4][5][7]
重量2,350kg/4,250kg(空虚/全備)
全長12m
全幅
全高5.08m
ローター直径約12m
エンジンWZ-8Aターボシャフトエンジン(848hp/632kW)×2、もしくはWZ-8Zターボシャフトエンジン(1046hp/780kW)×2(資料によって記述が異なる)
最高巡航速度244〜245km/h
海面上昇率540m/分
航続距離700km
ホバリング高度限界2,400m(地面効果無し)
飛行時間3時間
武装AKD-9空対地ミサイル
 TY-90赤外線誘導空対空ミサイル(天燕90)
 ロケット弾ポッド、機関砲ポッドなど
乗員2名

Z-19(直-9)は、ハルピン飛機工業集団有限公司で開発された比較的小型の攻撃ヘリコプター[1]。武装ヘリコプター(中国語では武装直昇機)を表すWZ-19(武直-19)の名で呼ばれる事も多い[2]。2012年11月に開催された珠海航空ショーでは、中国航空工業集团公司によりZ-19には「黒旋風」という公式ニックネームがあることも明らかにされた[3](黒旋風は、小説『水滸伝』の登場人物である李逵の渾名)。

【開発経緯】
ハルピン飛機工業集団有限公司では、フランスのアエロスパシアル(現ユーロコプター)AS-365N1ドーファン2をZ-9汎用ヘリコプターとしてライセンス生産を担当。その後、景徳鎮直昇機研究所と共にZ-9をベースとして武装ヘリコプターに発展させたZ-9W、その改良型であるZ-9WAの開発・生産を実施していた[1][2]。

1990年代、中国陸軍航空隊の次世代攻撃ヘリコプターに関するスタディにおいて、ハルピン飛機工業集団有限公司はZ-9の技術をベースとして、コクピットをタンデム複座式に変更するなどの大幅な改修を施して本格的な攻撃ヘリコプターとして発展させるプランを提示[4]。汎用ヘリコプターの技術を基にして攻撃ヘリコプターを開発するというのは、アメリカやソ連など各国で行われている方法で開発・生産コストの低減や、汎用ヘリと攻撃ヘリの間で部品共通性を確保できるなどのメリットが存在する。次期攻撃ヘリコプターとしてはより大型のZ-10攻撃ヘリコプターが選定されたが、ハルビンのZ-9発展型についても研究作業が継続される事になった[4]。既存機を発展させて攻撃ヘリコプターにするという方法は、新規開発であるZ-10に対してリスクが少なく、研究作業継続はその点が評価されたものと思われる。

Z-19の開発作業は2008年に開始[5]。開発主任はZ-10攻撃ヘリコプターの開発でも開発主任を努めた呉希明技師[6]。その頃から新型軽攻撃ヘリコプターの存在は外部でも語られるようになってきたが、この時点ではZ-10と混同される事も多く、その実像は不明確だった[5]。開発が難航したZ-10とは異なり、既に生産体制が整っているZ-9の技術を基礎としている事から開発作業は順調に進み、Z-19の試製初号機は2009年中頃に完成[4]。同機は2010年5月[4]、もしくは7月[7]に初飛行に成功したと伝えられている。同年9月18日に試作機1機が墜落したとの情報もある[7]。

その1年後、インターネット上にZ-19の写真が投稿された事で、Z-19の具体的な姿が次第に明らかになってきた[4]。その後、試作機の飛行がしばしば撮影されるようになり、2012年11月に開催された珠海航空ショーではZ-19の存在が公にされて初の展示飛行が実施された[4]。それと前後して陸軍航空隊の武装直昇機団(連隊に相当)にZ-10と共に配備・運用されている写真が公開されるようになり、部隊配備が開始されている事が裏付けられた[8]。

【機体について】
Z-19のベースとなった機体フレームは、Z-9の最大離陸重量を4.25トンに引き上げたH425やZ-9WEのものを基本としている[2]。ローター・システム、駆動系統やエンジンなどはZ-9WEを踏襲しているが、胴体については攻撃ヘリコプター化に当たって大きな設計変更が行われ、胴体は正面投影面積の少ない細身のものが採用され、座席はZ-9の並列複座からタンデム複座に変更された[2]。乗員配置は、前席が射撃手、後席が操縦手[5]。ただし、Z-19は機体規模の問題から前後の座席の段差を十分につけられず、後席の操縦手視界はZ-9よりも良くないと指摘されている[5]。

胴体の設計変更による正面投影面積の減少は、空気抵抗を減らして速度向上に有利になるだけでなく、攻撃ヘリコプターにとって脅威となる地上からの対空砲火に対する命中率を低減する上でも見逃せないポイント。ハルビンの前作Z-9W武装ヘリでは並列複座のままであったが、胴体の全面的な設計変更を行ったZ-19によりこの懸案を解消する事ができたといえる。ある試算では、Z-19の正面投影面積はZ-9Wに比べて60%以上減少しており、その分だけ被弾確率が減っているとされる[5]。胴体小型化に加えて機体構造では軽量化のため複合材の使用範囲を増やして、浮いた重量を機体下部やコクピット周辺の防弾装甲強化に回している[4]。Z-19の防弾装甲は、近距離からの7.62mm機関銃弾、遠距離からの12.7mm機関銃弾の直撃に抗堪するとされている[5]。

全面的な設計変更が施された胴体とは異なり、駆動系統については基本的にはZ-9WEを踏襲しており、4枚ローターや尾部のフェネストロンなどもZ-9WEと共通[2]。搭載エンジンは資料によって異動があり、WZ-8Aターボシャフトエンジン(848hp/632kW)2基[2]、もしくはWZ-8Z(1046hp/780kW)2基[5]という2つの説が存在する。

降着装置については、原型が前脚式3脚で引き込み脚を採用していたのに対して、Z-19では尾輪式の固定式3脚に変更されている[2]。固定脚は引き込み脚に比べて飛行時の抵抗が増し速度発揮では不利になるが、引き込み脚に比べて機構を簡略化、システム重量を軽減することが可能となる[4]。降着装置には衝撃吸収機構が内蔵されており、ハードランディングの際に衝撃を緩和して、機体構造を保護し乗員の安全性を確保するようになっている[5]。


【兵装・センサーについて】
Z-19の胴体両側面の小翼には、兵装搭載用に合計4つのパイロンが装着されている。エンジン出力の強化はされていないため、ペイロードについては最大1,200kgとZ-9Wと大きな差は無いものの、パイロン数が倍になっているのでその分だけ兵器搭載の柔軟性が増している[5]。

主兵装である対戦車ミサイルは、新開発のAKD-9空対地ミサイル[5][7]。AKD-9は、Z-10攻撃ヘリコプターが搭載するAKD-10空対地ミサイルの派生型の1つで、小型のZ-19での運用に合わせてコンパクト化が行われているのが特徴。AKD-9のサイズは重量30kg、直径140mmで、これはAKD-10と比較すると、重量で16kg、直径で30mm小型軽量化されていることになる。最大射程は5,000m(AKD-10は7,000m)、最高飛翔速度はマッハ1。誘導システムはセミアクティブ・レーザー誘導方式で、これはAKD-10と共通している。弾頭はAKD-10が自己鍛造弾頭だったのに対して、タンデム式成型炸薬弾に変更されている。最大貫通能力は1,200mmとされる(AKD-10は1,400mm)[5]。通常では、二箇所のパイロンに合計8発のAKD-9を搭載するが、必要な際には4箇所のパイロン全てにAKD-9を搭載(合計16発)する事もできる[5]。

この他に、ヘリ専用空対空ミサイルであるTY-90赤外線誘導空対空ミサイル(天燕90)、ロケット弾ポッド、機関銃ポッドの搭載が想定されている[4][5]。パイロンには増加燃料タンクを搭載して航続距離を延伸する事も可能。攻撃ヘリコプターでは固定装備として機関砲を備えたものが多いが、Z-19の場合は機体サイズの問題から固定装備としての機関砲の搭載は行われておらず、前述の通り必要に応じて機関砲ポッドをパイロンに搭載する事になる[5]。

Z-19のアビオニクスや各種センサーは原型となったZ-9WEやZ-9WAのものを基礎として改良を加えたもの。新たにデータリンクシステムが装備され、情報伝達能力が向上している。機首下部には光学/電子/赤外線センサーを内蔵したターレットを装備しており、目標の探知・距離測定、レーザー照射によるミサイルの誘導などに用いられる。コクピットのグラス化はZ-9WAよりも進んだものになり、設置された大型の液晶多機能表示情報端末とヘッド・アップ・ディスプレイに、飛行情報、センサー情報、戦術状況、システム状況などを必要に応じて表示させる[5]。目標の補足・照準には中国第3世代のヘルメット装着表示装置が使用される[9]。Z-19の自己防御システムとしては、レーダー波警報装置、フレア発射装置、電子戦装置などが搭載されている[5]。

一部の機体では、主ローターのマスト頂部に円筒形のドームを備えているのが撮影されており、これは目標の捜索探知やミサイル誘導に使用されるミリ波レーダーではないかと推測されている[4][7]。このタイプのZ-19が量産に移されているか否かは、現時点では不明。

【運用について】
Z-19は2011年末には小規模量産を開始して、第38集団軍の第8航空隊旅に少数機が配備されたのが確認されている[5][10]。その後、次第に生産数を増やしており、Z-10攻撃ヘリコプターと共に陸軍航空隊への配備が進められている[5]。Z-9の発展型としてZ-19を開発した事は、開発リスクを低減しただけでなく運用において見逃せない利点を生じている。多くのコンポーネントをZ-9と共用しているので、陸軍航空隊で広く用いられているZ-9の部品や各種インフラを転用でき、整備員にとってもZ-9の知識を生かせるため、新規導入に当たっての負担を大幅に減らす事が可能となったとされる[11]。

Z-19は、より大型・高性能な攻撃ヘリコプターであるZ-10と連携して、偵察、観測任務、火力支援任務に従事する[4][9]。火力支援任務においては、良好な超低空機動性能と各種精密誘導兵器の搭載能力を生かして運用が行われ、多様な気象条件化でも作戦が可能とされる[9]。

機体サイズの違いからZ-10に比べると性能は一歩譲るが、Z-19の兵器搭載量は既存のZ-9W/WAを上回っており、単独でも相応の攻撃能力を有している。それなりの性能を備え取得コストが安く、既存のZ-9W/WAの整備インフラを転用可能なZ-19は、高価なZ-10を補完する存在として中国陸軍航空隊の攻撃ヘリコプター部隊への配備が進められるものと考えられ、今後の配備状況が注目される。

【参考資料】
[1]陳培、陳押崟風精靈−従直-9武装型到直-19」(『兵器』総164期 2013.1)66〜68頁
[2]青木謙知『戦闘機年鑑 2013-2014』(イカロス出版/2013年)264ページ
[3]王広永、陳治家、李姸、陸先念「武直-10:霹雳火 武直-19:鄒风」(広州日報電子版/2012年11月13日)
[4]軍武狂人夢「武直-10攻擊直昇機」
[5]銀河「風+火 中国新一代専用武装直昇機的技術進歩」(『艦載武器』2013.08A/中国船舶重工業集団公司)20〜31ページ
[6]新浪網-軍事「総師:我軍方対武直10直19性能非常満意」(2012年11月14日)
[7]Chinese Military Aviation「Z-19 Black Cyclone」
[8]中華網「官媒曝武直-10和武直-19联合演习!」(2012年11月13日)
[9]新浪網-軍事「成都軍区第13軍列装武直19 配第3代頭盔瞄具」
[10]Gordon Arthur「Z-10・Z-19武装直昇機亮相珠海」(『漢和防務評論』2013年3月号)44〜45ページ
[11]空軍世界「武直19」

Z-9輸送ヘリコプター(直昇9/AS-365N1ドーファンII)
Z-9W/Z-9WA/Z-9G武装ヘリコプター(直9武/武直9/WZ-9)
中国陸軍

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