日本の周辺国が装備する兵器のデータベース




▼武装警察で運用されるZ-9F

▼詳細不明のZ-9派生型。機首の大形レドームが特徴的。

▼アフリカのマリ共和国に輸出されたZ-9A(Z-9EA)


Z-9性能緒元
空虚重量1,975kg
最大離陸重量3,850kg
全長13.46m
全幅11.93m(ローター直径)
全高4.01m
エンジンチュルボメカArriel C1(710hp) ×2
最大速度305km/h
巡航速度250〜260km/h
航続距離1,000km(増倉付き)
最大飛行時間5時間
上昇限度4,500m
ホバリング上昇限度1,950m(海面効果なしの場合は1,020m)
ペイロード1,900kg(機内搭載)/1,600kg(吊下げ)
燃料搭載量1,000L(機内)/400L(増倉)
乗員操縦手1名+乗員10名/操縦手・副操縦手+乗員9名

Z-9汎用ヘリコプター(直9/直昇9)は、アエロスパシアルAS-365N1ドーファンIIのライセンス生産版であり、中国陸軍航空兵部隊の主力汎用ヘリコプターの地位を占めている。

中国軍では、1950年代にソ連からMi-4汎用ヘリコプターを導入しZ-5としてライセンス生産を行っていたが、中ソの路線対立によりソ連からの技術提供は中断してしまった。文化大革命中には国産ヘリコプターZ-6の開発が行われたが、技術的な立ち遅れなどの要因で実用化には至らなかった[6]。

1970年代末の改革開放政策への転換により、技術的が立ち遅れを解消するために西側諸国からの技術導入が本格的に開始される事になったが、ヘリコプターの分野に関しても例外ではなかった。中国は外国製ヘリコプターのライセンス生産を行う事で、ヘリコプター戦力の近代化を行うと共に西側のヘリコプター生産技術を導入することを図った。アメリカとフランスの企業との間で交渉が行われた結果、仏アエロスパシエル社との間で交渉が成立し、同社のAS-365N1ドーファンII汎用ヘリコプターの導入が決定された[1]。1980年に締結された協定により、哈爾浜飛機工業集団有限公司(以下哈爾浜と略す。)で50機のAS-365N1をライセンス生産する事が決定された。第一段階では、フランスから供給されたコンポーネントを中国で組み立てるノックダウン生産を行ない、第2段階では国内で生産された部品を加えて本格的なライセンス生産に移行するという計画であった[5]。最初の機体は1982年に完成し、Z-9と命名され合計28機が生産された。後期生産型の22機については生産タイプをAS-365N2に変更するとされ、Z-9Aと命名されて1993年までに22機の生産を完了。これらの機体は、フランスから輸入したものとあわせて陸・海・空軍に配備された。哈爾浜では、このほかに民間用機としても8機のZ-9を生産している。1993年には哈爾浜はユーロコプター(アエロスパシエルなどが合併して設立)との間で、さらに多くのAS-365N2をライセンス生産するための契約に調印した[5]。

中国は、ドーファンIIのライセンス生産によって初めて近代的なヘリコプターの製造能力を保有することに成功した。ただし、最初の段階では、多くの部品をフランスからの供給に頼っており実質的にノックダウン生産に近い生産形態であった。

中国では、コンポーネント国産化に向けた作業を進め、1988年からは国産コンポーネントの使用範囲を更に拡大したZ-9A-100の開発を開始した[7]。Z-9A-100は、エンジンを中国製渦軸8A(WZ-8A)に変更しており、機体の72,2%、エンジンの91%の部品を国産化することに成功した[1]。Z-9A-100は1992年1月16日に初飛行し、同年12月26日に制式採用されている。さらに、1995年に初飛行を行ったZ-9B(Z-9A-100の発展型)ではコンポーネント国産化率は90%にまで向上することになる。Z-9Bの生産は1997年に開始され、1997年に25機、翌1998年に7機が中国軍向けに生産され、本格的な量産が開始された。Z-9シリーズは、陸軍航空隊では、2003年段階で61機のZ-9/Z-9A汎用ヘリと31機のWZ-9攻撃ヘリが配備されていた。2009年までに軍用合わせて200機以上が生産されており、中国軍全体で合計すると、150機以上のZ-9各種派生型が配備されたと推測されている[5]。

Z-9は輸出も行われており、これまでに7カ国への輸出に成功している[4][9][10]。
マリ空軍Z-9A2機2000年
モーリタニア空軍Z-9A2機2003年
ラオスZ-9/H4254機2007年2機調達、2008年2機を追加調達
ナミビア空軍 2機以上2012年初めに引渡し
ザンビア空軍7機2012年6月から受領開始
ボリビア6機2012年から受領開始
カンボジア12機2013年4月に4機、8月に10機を受領

上記以外に、Z-9の武装ヘリコプター型対潜哨戒型(Z-9EC)も輸出に成功しているが、詳細についてはそれぞれの項を参照されたし。

哈爾浜では、Z-9の民間型の開発も行っており、エンジンを仏製Arriel 2C(840馬力)に換装したH410A、H410Aの発展型で搭載量を増加させたH425、H450の3種類の民間型が実用化されている。将来これらの機体が中国軍で運用される可能性もある。哈爾浜が傘下に入っている中国航空工業第二集団公司は2005年にH425用に200基のArriel 2エンジンの供給と一部コンポーネントの国産化に関する協定をフランス企業との間で締結している[1]。

【機体性能】
Z-9は、前述の通りフランスのAS-365N1ドーファンIIのライセンス生産型である。多用途汎用ヘリコプターと位置づけられており、主要な任務は兵員輸送であるが、そのほか偵察、物資輸送、連絡、救護、地上攻撃などの任務も想定されている。

ドーファンIIは、軽量化のため機体構造の多くに複合材を使用しており、その使用範囲は58%に達する(アルミ合金28%)[3]。メインローターは複合材製の4枚ブレード。テイルローターを尾部垂直安定版に埋め込んだダグデットファンとした「フェネストロン」と称する機構を採用しているのが特徴の1つ。フェネストロンは、通常形式のテイルローターに比べて、低騒音でテイルローターの接触事故も防止できるメリットがある。Z-9のフェネストロンは13枚の金属製ブレードだったが、Z-9A-100からは11枚の複合材製ブレードに変更されている[2]。操縦座席は並列式で操縦手と副操縦手、もしくは操縦手と同乗者が登場する。その後方が乗員/貨物搭載区画であり、最大9名、もしくは1,900kgの貨物を搭載できる。機外吊下げの場合は、最大1,600kgの輸送能力を有する[1]。一部のZ-9Bでは座席の一部を撤去して通信装置や電子戦用装備などを搭載している。ドアは左右各3枚で、いずれも前方に向かって開く。捜索救助用に、右部のドア上方に人員降下用ウインチ(引き上げ力250kg)と前方観測用サーチライトを装備する事もできる[5]。降着装置は前輪式の引き込み脚となっている。

コクピットの装備としては、BG-06無線高度計、150式短波無線機、KJ-13自動操縦装置が標準装備されており、オプションでKDF-806無線コンパス、KTR-908通信機、TB-31機内インターホンなどが用意されている。電子戦装備としては、警告装置・ジャミング機能・チャフ/フレア発射装置などから構成されるECMシステムを装備している[5]。

エンジンはZ-9/Z-9Aがフランス製Arriel C1(710hp)ターボシャフトエンジン2基で、Z-9A-100/Z-9Bから国産のWZ-8A(734〜740hp)に換装された。ただしWZ-8Aは、フランス製エンジンに比べてエンジン寿命が極めて短くなるという問題点があった。改良型の渦軸-8Eでも400時間で整備を行う必要があり、Arriel C1のエンジンの整備間隔が1500時間であるのと比べると3分の1以下に留まっている。このあたりは、エンジン生産に関する技術蓄積や素材加工技術の差が表れた物と言えよう。そのため、哈爾浜ではZ-9の改良型についてはフランス製Arriel 2C(840hp)を使用している。燃料搭載量は、機内1,000Lで、容量400Lの増倉を搭載可能[5]。

【派生型】
Z-9は、中国軍で最も多く運用されているヘリコプターであり、陸・海・空各軍、武装警察、および公安や海警などの治安機関などで多種多様な派生型が運用されている。主な派生型については以下の通り。WZ-9攻撃ヘリコプター(武直9)Z-9C対潜ヘリコプター(直昇9C/AS-565パンサー)は別項にて取り扱っているので、詳しくはそちらを参照されたし。

Z-9AS-365N1ドーファンIIのライセンス生産版。
Z-9AAS-365N2のライセンス生産版。
Z-9EAZ-9Aの輸出型。
Z-9-100Z-9Aをベースに国産コンポーネントの使用範囲を拡大。
Z-9BZ-9A-100をベースにしてさらに国産化率を向上。
Z-9C海軍で運用される対潜哨戒型。
Z-9D対艦攻撃型。TL-10B空対艦ミサイルを搭載。
Z-9ECZ-9Cの輸出型。パキスタン海軍で採用。
Z-9F武装警察で運用されるタイプ。
Z-9指揮・通信型Z-9Aをベースに製作された空中コマンドポスト型。
Z-9砲兵観測型砲兵部隊の将官が搭乗して運用される砲兵観測型。
Z-9W(WZ-9)Z-9をベースに開発された武装ヘリコプター型。
Z-9WAZ-9Wの改良型。搭載兵器が増加され、夜間戦闘能力が付与されている。
Z-9WEZ-9WZの輸出型。
Z-9G武装ヘリコプター型。ベース機体をSA-565に変更したタイプ。装備や外観はZ-9WAに類似している。
Z-9WZH450をベースに開発された多用途型。2004年12月29日に初飛行。火器管制システムの改良で運用可能兵器の種類が増加。攻撃・偵察・治安任務等の任務を想定。
Z-9ZHZ-9WZに似た機体。中国軍の香港駐留部隊に配備。
DZ-9(Z-9EW)電子戦任務を行う機体。
制式名不明機首に大形レドームを装備した機体。詳細は不明。
制式名不明主ローターマスト上部にレドームを搭載した機体。ミリ波レーダーの試験機か?
H410AZ-9民間型。エンジンを仏製Arriel 2C(840hp)に換装。中国の公安や海警部隊でも運用が行われている。
H425Z-9民間型。Z-9H410Aをベースに開発。最大離陸重量が4,250kgに増加。
H450哈爾浜が開発中のZ-9民間型。最大離陸重量が4,500kgに増加。

【参考資料】
[1]Chinese Aircraft: China's Aviation Industry Since 1951(Yefim Gordon・Dmitriy Komissarov/Hikoki Pubns/2008年12月)
[2]戦闘機年鑑2009-2010「哈爾浜 直昇9型(Z-9)」(青木謙知/イカロス出版/2009年2月26日)
[3]別冊航空情報-世界航空機年鑑 2006〜2007年版「ユーロコプターAS365/366ドーファン/AS565パンサー」(酣燈社/2006年7月)

[4]Chinese Military Aviation「Z-9A/B/H425 (AS-365N) Dauphin」
[5]Chinese Defence Today「Zhi-9 Utility Helicopter」
[6]helis.com- helicopter history site「Chinese Helicopters」
[7]中国武器大全「直-9軽型多用途直昇機」
[8]航空档案2008年第9期A(総第218期)「想像力與自身的桎梏-通過直-9的改進看中国直昇機工業的不足」(離子魚/《航空档案》雑誌社)
[9]環球網「中国最先進武装直昇機将批量出口肯尼亜」(2010年1月14日)
[10]Defense News「Bolivian Army Buys 6 Chinese Helicopters」(2011年12月22日)

【関連項目】
WZ-9攻撃ヘリコプター(武直9)
Z-9C対潜ヘリコプター(直昇9C/AS-565パンサー)

中国空軍

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