▼重機関銃型(三脚に装備)
▼軽機関銃型(二脚を装着)
▼分解状態。
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性能緒元口径 | 5.8mm×42(DVP88/DBP10) |
全長 | 1,151mm(二脚)、1321mm(三脚) |
銃身長 | 600mm |
重量 | 7.6kg(本体+二脚)、11.8kg(二脚状態+三脚4.2kg) |
ライフルリング | |
弾種 | 87式5.8mm機関銃弾、87式5.8mm小銃弾(非常時のみ)など |
給弾方式 | ベルト給弾式 |
弾倉 | 200発入り |
砲口初速 | 895m/s |
有効射程 | 1,000m(三脚) |
発射速度 | 300発/分(持続射撃) |
銃身命数 | 25,000発 |
88式5.8mm汎用機関銃(制式名称はQJY-88式5.8mm通用機槍)は、NORINCOにより開発された口径5.8mmの機関銃である。
1980年代、中国軍では歩兵用小火器の弾薬を、従来の7.62mm×39や7.62mm×54Rの二系統で構成されていた体制から、独自開発の87式5.8mm×42弾(DBP-87)に改編する事を決定した。1990年代末には自動小銃として
95式アサルトライフル(QBZ-95自動歩槍)、分隊支援火器として95式軽機関銃(QBB-95班用機槍)を開発し、本格的な装備改編に着手した。中国軍では分隊火器の5.8mm化と並行して、歩兵分隊の支援火器として使用されていた67-II式汎用機関銃についても5.8mm口径の機関銃で代替する事を決定、1988年5月から新型汎用機関銃の開発が開始された。汎用機関銃を7.62mmから5.8mm口径にする事で、7.62mm機関銃に比べて重量を軽減でき、同一重量で携行できる弾数が大幅に増加(銃弾1000発あたりの重量は7.62mm×54Rが22.8kgに対して、5.8mm×42機関銃弾が13.5kg)、従来は7.62mm×54Rと7.62mm×39の二系統の弾薬を供給しなければいけなかったのを、同一の5.8mm口径にする事で、歩兵小隊の銃弾を共通化し、兵站面での負担を軽減できる、等のメリットがあるとされた。
しかし、小口径化は上記のような利点がある半面で、有効射程や殺傷・貫通力等では7.62mm機関銃に比べ、どうしても劣らざるを得なかった。中国軍では、汎用機関銃は分隊支援火器である軽機関銃よりも遠距離・脅威度の高い目標の制圧に使用される事とされており、小口径化して射程や威力が低下する事は受け入れがたかった。開発陣では、小口径・軽量化を図る一方で、射程や威力については67-II式汎用機関銃の水準から極力低下させないという矛盾した要求を解決せねばならず、新型汎用機関銃の開発は困難に直面する事になった。中国軍の要求では、射程1,000m前後の歩兵や軽車両の制圧という67-II式と同じ能力が求められていたが、軽量小型の5.8mm×42弾薬で上記の目標を解決する事は非常に難しかった。
最終的に開発陣が選択した方法は、小銃と共通の5.8mm×42弾薬(DBP95 步槍普通弹)の使用を諦めて、遠距離射撃でも極力威力や命中精度の落ちない機関銃専用の5.8mm×42機関銃弾(DVP88 5.8mm機槍普通弾)を設計するという方法であった。小銃や分隊支援火器との弾薬の共通性は失われるが、そもそも5.8mm×42で7.62mm×54R並みの性能を発揮するという要求自体に無理があったといえ、要求を達成するには他に手段がなかったといえる。
5.8mm弾で7.62mm×54R並みの威力を確保するという要求の達成に手間取ったこともあり、5.8mm汎用機関銃の開発はかなりの時間を要し、「QJY-88式5.8mm通用機槍」として制式化に漕ぎ着けたのは開発開始から10年を経た1998年7月であった。翌2000年から量産と部隊への試験配備が開始された。
【構造】
QJY-88は、2脚を使用すれば軽機関銃として、3脚を使用すれば重機関銃として使用が可能で、外に対空射撃用の3脚も用意されている。軽機関銃状態の重量は7.6kg、重機関銃状態の重量は11.8kg。この重量は、西側のMINIMI等の5.56mm汎用機関銃に比べるとやや重いが、これは軽量化よりも遠距離射撃能力を重視した設計によるところが大きい。しかし、代替装備の67-II式の15kg(重機関銃状態)に比べると3.2kgの軽量化に成功している。
QJY-88の作動方式はガス圧利用式、閉鎖装置としてはターン・ボルト・ロッキングシステムが採用されている。銃身長は600mmで、銃身内部および機関部にはクロームメッキが施されており、銃身命数は25,000発を確保している。軽量化のため、機関部カバー、二脚、機関部の一部部品等にアルミ合金を採用。また、銃床、ハンドガード、グリップ、搬送/銃身交換用ハンドル等には強化プラスチックを採用しているのも新機軸である。遠距離射撃時の命中精度を高めるため、光学もしくは赤外線スコープの装着が可能。QJY-88が使用する5.8mm弾は、7.62mm×54R弾に比べて発射時の反動が低減しているため、命中精度が向上している。重機関銃状態では、射程100mで高度14cm×方向12cmの区画に70%の弾薬を集中させる事が可能で、射程1,000mでも180cm×138cmの区画に7割の弾薬を集中させる事が出来る。給弾方式はベルト式で、必要に応じて200発入りの弾倉を装着する。
QJY-88が使用する5.8mm機槍弾は、5.8mm小銃弾(5.8mm普通弾)よりも弾長が4mm長く、小銃弾では弾体後部に内蔵されているスチール弾芯の位置が弾体前半に変更されている。これは遠距離射撃において少しでも威力を落とさないための工夫である。重量も小銃弾に比べて重くなっており、命中時の貫通力が向上している。射撃試験では射程1,000mで、25mmの松板2枚と2mmの鋼板を95%の確立で貫通する事に成功し、射程1,000mでの威力において7.62mm×54R実包に引けを取らない事を証明したとされる。
QJY-88は、5.8mm機槍弾DVP88を標準弾薬にしているが、一応小銃用の5.8mm×42弾薬DBP95を発射する事も可能。ただし、その場合には遠距離射撃では十分な命中精度や威力を発揮することはできない。逆に5.8mm機槍弾を95式アサルトライフルや95式軽機関銃で発射する事も可能だが、こちらの場合は銃身内部の磨耗率が高くなるというデメリットが発生する。そのため、機関銃弾が不足して早急な補給が望めない場合等の非常時以外には、相互の弾薬を共用することは行われない。
【新型5.8mm弾DBP10の登場】
中国軍は小銃と機関銃用に2種類の5.8mm弾を採用したが、弾薬の共用が出来ないのはやはり問題であり、二系統の弾薬を補給しなければならないので後方支援体制にも負担をかけてしまうことが問題視された。そのため、2004年から改めて小銃と機関銃で共用が可能な新型5.8nn弾の開発が開始された[5]。中国軍の全ての5.8mm×42弾薬を使用する小火器での運用が可能な新型5.8mm弾は「DBP10 5.8毫米通用步槍弹」として制式化された。
DBP10 5.8毫米通用步槍弹はDVP88 5.8mm機槍弾をベースとして開発され、これに合わせた新型小銃である95-I式アサルトライフルも同時に開発された。95-I式アサルトライフルは遠距離での貫通性能向上を目的に、ライフルリングを従来の4条右回りから6条右回りに変更した[5]。DBP10は、異なるライフルリングの銃身から銃弾を発射する際の問題を軽減するため、柔軟性に富む真鍮被覆を採用する事で対応している。弾頭の設計変更により空気抵抗を減らして重量を増加しているので、射程1,000mにおける運動エネルギーはDVP88よりも向上しており、貫通性能の改善に成功している[5]。ただし、DBP10がDVP88と全く同じ発射特性が発揮できるという訳ではないため、QJY-88汎用機関銃から発射する際にはどちらの弾薬を使用しているのかを確認する必要が生じる[5]。
【総括】
QJY-88は、1970年代から西側諸国で進められていた汎用機関銃の小口径化の流れに応じた存在であった。小口径化は、携行弾量の増加(QJY-88の場合、同一重量で67-II式の倍の数の弾薬を搬送可能となった)や兵員の負担軽減などさまざまなメリットがあるが、大口径機関銃に比べると射程や威力の面で難があった。これは小口径化が抱えている根本的な問題であり、抜本的な解決は困難であった。中国軍が歩兵の小火器体系のモデルとしたソ連/ロシア軍では、小銃と分隊支援火器の小口径化(7.62mm×39→5.45mm×39)は実施したものの、汎用機関銃については7.62mm×54Rを使用するPKM機関銃の使用を継続している。
中国軍では、小口径化と威力・射程の両立という課題に対して、汎用機関銃用の弾薬の小銃/分隊支援火器用の銃弾を別にするという解決方法を採った。これは弾薬の共通化という大きなメリットを実質的に捨てることであったが、歩兵中隊の火力低下を避けたい軍にとっては外に選択肢のない苦肉の策であったといえる。この問題はDBP10の開発によって解消に向かっているが、相応の在庫が有る従来の5.8mm機槍弾DVP88の使用も継続されるので、中国軍ではDBP95、DVP88、DBP10という3種類の5.8mm×42弾薬が並存する事になり、兵站や運用面での注意が求められる状況が当面続く[5]。
既存の汎用機関銃である67-II式は、歩兵中隊の火力支援小隊、もしくは必要に応じて分隊に1挺が配備されていたが、QJY-88は重量軽減に伴って歩兵1名での搬送が容易になったこともあり、各歩兵分隊に1挺が配備され実質的には分隊支援火器として使用されているといえる。従来の歩兵分隊では、分隊支援火器1挺を使用していたが、5.8mm口径化後は、分隊支援火器の95式軽機関銃(QBB-95)と汎用機関銃のQJY-88を各1挺装備する事になり、分隊火力は強化されたと見なすことが出来る。QJY-88は、射撃手と装弾補助員(兼弾薬搬送)の2名のチームで運用される。
QJY-88は、5,8mmアサルトライフル/軽機関銃への改編が行われた部隊への装備が進められている。ただし、多くの部隊ではまだ7.62mm口径の小火器体系が継続しており、改編にはなお時間を要する物と思われる。またQJY-88は、中国軍のほかに武装警察にも配備が行われている。
QJY-88の派生型としては、車載機関銃化した「QJT5.8mm車装並列機槍」、遠隔操作式の無人銃架にQJY-88を搭載した「88式5.8mm通用机枪遥控武器站(遥控武器站はremote weapon platformの中国語訳)」が開発されている。
【参考資料】
[1]「5.8mm小口径機槍系列」(劉双雁/『軽兵器』2008年8月下/軽兵器雑誌社)
[2]Chinese Defence Today
[3]槍炮世界「QJY88通用機槍」
[4]「88式5.8mm通用机枪遥控式武器站」『轻兵器』2011年6月下
[5]网易博客 三土的日志「是新的飞跃还是续打补丁——评国产5.8毫米小口径新弹」(2012年2月7日)
中国陸軍