日本周辺国の軍事兵器 - 機関銃(中国)

14.5mm3銃身ガトリング機関銃



性能緒元
口径14.5mmx114
全長
銃身長
重量
銃身数3門
有効射程2,000m(対空)、1,000m(水平射撃)

最近その存在が明らかになった新型重機関銃。強力な面制圧能力を有する車載用重機関銃として開発された。中国軍への配備状況については不明。

7.62mm6銃身ガトリング機関銃

▼JS-400 ATVに搭載された7.62mm6銃身ガトリング機関銃


性能緒元
口径7.62mm×54R
弾種53式7.62mm弾
全長
銃身長
重量18kg
銃身数6門
銃身寿命10万発
弾倉1,000発入り×2
最大発射速度6,000発
有効射程1,000m

空挺部隊や特殊部隊向けに開発されたガトリング式機関銃。強力な面制圧能力を有する車載用重機関銃として開発された。単射、バースト射撃(3発/5発/10発)、連射(2,000発・4,000発/6,000発)を選択可能。1,000発入りの弾倉2基を標準装備する。空挺部隊での運用においては、JS-400 ATV(All Terrain Vehicle:全地形対応車)やLYT-2021戦闘バギーに搭載される。また、汎用ヘリコプターや艦艇への搭載も可能[1]。

【参考資料】
「中国”加特林”-訪国産新型6管7.62毫米転管機槍系統設計者楊臻教授」(楊康/『兵工科技 2008年増刊-2008中国新兵器』/兵工科技雑誌社)

80式7.62mm汎用機関銃(PKM)



性能緒元
口径7.62mm×54R
全長1,192mm
重量12.6kg(銃本体7.9kg+三脚4.7kg)
ライフルリング4条/右回り
弾種53式7.62mm通常弾、曵光弾、焼夷弾、焼夷徹甲弾
給弾方式ベルト給弾式
弾倉200発入り/100発入り
砲口初速825m/秒
有効射程1,000m(三脚)、800m(二脚)
発射速度750発/分(理論上)、250発/分(通常)

80式7.62mm汎用機関銃(制式名称は1980年式通用機槍)は、中越紛争で鹵獲したヴェトナム軍のPKM機関銃をコピーして開発された機関銃である。

PMK機関銃は、M・T・カラシニコフにより設計されたPK汎用機関銃の発展型であり、PK機関銃の基本構造を継承しつつ、レシーバーやデッキなどを削り出しからプレス加工に置き換え、軽量化と近代化を図ったものである。PMK機関銃は東側諸国の標準的分隊支援機関銃の地位を占めており、現在でもロシアを初めとする世界各国で運用が続いている評価の高い機関銃である。

中国では、鹵獲したPKM機関銃の信頼性や性能を評価して、1979年からリバースエンジニアリングによる国産化作業を開始し、翌1980年には「1980年式通用機槍」として制式化、1983年には生産認可を取得している。

80式は、AKアサルトライフルの構造を受け継いでおり、取り扱いが容易で高い信頼性を有していた。評価試験では、その使いやすさや過酷な環境下でも問題なく作動する事が極めて高く評価された。80式の生産成功を受けて、成都軍区の歩兵学校において現用の67式汎用機関銃との比較試験が行われる事が決定された。試験の結果、80式は射撃制度、銃身寿命の面で要求を完全に満たし、67式を上回った。さらに67式の改良型である67-I式汎用機関銃との比較試験が実施されたが、この試験でも80式の方が高い評価を受けた。

しかし、67式シリーズはすでに広く配備されており、生産ラインも整っている状況を考慮して、80式を67式の後継とはしない事が決定された。これにより、80式の大量配備は実現せずに終わった。ただし、その性能が評価され、空軍空降兵と海軍陸戦隊において限定的な配備が行われると共に、輸出向け装備として海外への売り込みを図る事が決まった。同時に、67式については更なる改良が必要であるとされ、軽量化を進めた67-II式汎用機関銃が配備される事となった。

80式は、中国軍での大量配備は行われなかったものの、その低価格とPKM譲りの信頼性により各国への輸出に成功している。

派生型としては、長風公司が開発したCS/LM4が存在する[3]。これは西側規格の弾薬使用国への売り込みを意図して、80式をベースに使用弾薬を7.62×51mmNATO弾に変更したものである。もう一種類の派生型としては、80式をベースに戦車の同軸機関銃とした86式7.62mm同軸機関銃(中国語だと86式并列机枪)が開発された[3]。これは80式の構造を基に、銃身の増厚、電気式トリガーの採用、各部の構造強化など車載機関銃に必要な改良を施したもの。86式は96式戦車以降の中国戦車の標準的な同軸機関銃として採用され今に至る。

【参考資料】
[1]床井雅美『オールカラー軍用銃事典[改訂版]』(並木書房/2007年)
[2]新浪網「中国80式7.62毫米通用機槍至今仍大量出口」
[3]网易「我国的80式通用机枪,国内仅少量装备,当前99式坦克的并列机枪」(2022年1月13日/来源: 红外铲史官 )https://www.163.com/dy/article/GTJ3HRUD0535AF0T.ht... (2022年1月17日閲覧)

67式汎用機関銃

▼67式汎用機関銃

▼67-I式汎用機関銃

▼67-II式汎用機関銃



性能緒元(67式)
口径7.62mm×54R
全長1,650mm
銃身長605mm(フラッシュ・ハイダー含まず)
重量24kg(銃本体11kg+三脚13kg)
ライフルリング4条/右回り
弾種53式7.62mm通常弾、曵光弾、焼夷弾、焼夷徹甲弾
砲口初速840m/秒
発射速度750発/分
有効射程1,000m(三脚)、800m(二脚)、500m(対空)

性能緒元(67-I式)
口径7.62mm×54R
全長1,345mm
銃身長606mm(フラッシュ・ハイダー含まず)
重量25kg(銃本体11.5kg+三脚13.5kg)
ライフルリング4条/右回り
弾種53式7.62mm通常弾、曵光弾、焼夷弾、焼夷徹甲弾
砲口初速840m/秒
発射速度650発/分
有効射程1,000m(三脚)、800m(二脚)、500m(対空)

性能緒元(67-II式)
口径7.62mm×54R
全長1,350mm
銃身長606mm(フラッシュ・ハイダー含まず)
重量15kg(銃本体10kg+三脚5.5kg)
ライフルリング4条/右回り
弾種53式7.62mm通常弾、曵光弾、焼夷弾、焼夷徹甲弾
砲口初速840m/秒
発射速度650発/分
有効射程1,000m(三脚)、800m(二脚)、500m(対空)

67式汎用機関銃(制式名称は1967年式軽重両用機槍)は、中国が独自で開発した第一世代の汎用機関銃である。開発は1959年に開始され、1967年に型式証明が交付され、1970年から部隊配備が開始された。

67式は、ソ連系の53式7.62mm軽機関銃(ソ連DPM軽機関銃)や56式7.62mm機関銃(ソ連RP-46機関銃)などの各種機関銃を一種類で更新する事が意図された。各国の汎用機関銃と同じく、三脚に搭載すれば安定した火力支援が可能な重機となり、二脚に付け替えれば分隊に直協する軽機関銃として使用でき、三脚を変形させれば対空攻撃が可能となる事が目指された。

67式の作動方式はガス圧利用式を採用している。ボルトの後端部を上下動させて、レシーバーとロックするティルト・ボルト・ロッキング・システムが組み込まれている。弾薬は、ソ連系の7.62mm×54R弾薬を使用しており、金属連結式の弾薬ベルトに装着して給弾を行う。

三脚に搭載した重機関銃型では、250発ベルトリンクを使用、歩兵分隊に直協する軽機関銃型では50発入りの弾倉を装着して運用が行われる。有効射程は、それぞれ1,000m(三脚)、800m(二脚)、500m(対空)となっている。

67式は、歩兵中隊所属の火器小隊、もしくは必要に応じて歩兵小〜分隊に一挺が配備され、軽機関銃と共に歩兵分隊の主力支援火器として運用が行われる。87式は、小銃や軽機関銃の使用する7.62mm×39弾よりも射程や威力に優れた7.62mm×54R弾を使って、より脅威度の高い目標に対して制圧射撃を実施する。これはソ連軍の歩兵戦術に習った運用である。ただし、67式は7.62mm×54R弾薬を使用するが、これは軽機関銃や自動小銃などで使用されていた7.62mm×39弾薬とは互換性が無く、1つの分隊のなかで二系統の弾薬を用意する必要が生じるが、これもソ連と同じ状況であった。67式一挺について250発ベルトリンク×6+箱型弾倉×6、50発ベルトリンク×2+円形弾倉×2、換装用銃身×2が用意されている。

67式の開発では、構造の簡素化と重量軽減、多目的運用などが目標として掲げられていた。ただし、部隊配備後の反響としては、支援射撃の際に射高を変更し難い、銃身が過熱し、銃身内部が磨耗しやすく、命中精度が次第に低下する、連続射撃時に故障が頻発する、銃身が過熱するとしばしば弾薬が暴発するなど多くの問題点が指摘される事になった。

上記の問題の解消を目指して、67式の改良型が開発される事になった。改良型は1978年に67-I式汎用機関銃(1967年-I式軽重両用機槍)として制式化され、1980年から生産が開始された。

67-I式では、銃身と機関部の装着部分の設計を変更し、銃身交換がより容易になった。信頼性を向上させるため、各部の構造を見直して、強度を高め、構造を簡素化し、各部の隙間を減少させるなどの設計変更が施された。銃身の加熱問題については、特に加熱する部分の肉厚を増やして対処した。また、三脚の設計も変更され、射撃時の反動吸収性の改善と高射射撃時の射撃制度の向上が図られた。

67-I式一挺につき250発ベルトリンク×4+箱型弾倉×4、50発ベルトリンク×2+円形弾倉×2、換装用銃身×2が用意されている。

67-I式では、上記の改良により、銃身加熱時の暴発や銃身内部の磨耗の問題については改善が図られたが、全備重量が増加する事態を招いた。信頼性の更なる向上と重量軽減を図るために、67式の改良作業が継続される事となり、1979年12月から開発が開始され、1982年1月に67-II式汎用機関銃(1967年-II式軽重両用機槍)制式化された。

67-II式の主な改善点は、素材金属の変更、機関部の改良により運用性を改善、搬送用の取手を滑りにくい物に変更、三脚の設計変更により重量を大幅に軽減(13.3kg→5.5kg)、弾薬のベルトリンクの設計変更、銃身内部の磨耗防止措置など。これにより、信頼性の向上と、搬送時の負担軽減が達成された。

67-II式の派生型としては、輸出向けに軽量型三脚に換装した67-IIA式、二脚式の67-IIB式などが開発されている[1]。

初期に生産された67式は、信頼性や取り扱いの難しさといった問題があったため、67-I式や67-II式の生産が軌道に乗ると、次第に第一線から引き上げられて、第三国への輸出用に回される事になった。改良型の67-II式は現在も運用が続いているが、小銃の5.8mm化に伴って汎用機関銃でも88式5.8mm汎用機関銃(QJY-88)への代替が進んでいる。

【参考資料】
床井雅美『オールカラー軍用銃事典[改訂版]』(並木書房/2007年)
「1967年式機槍系列」(黄俊/『軽兵器』2008年8月下/軽兵器雑誌社)
Jane's Infantry Weapons「Type 67 7.62 mm light machine gun (China)」[1]
中国武器大全「中国67式機槍全透視」「67-1式重機槍」「67-2式重機槍」

88式5.8mm汎用機関銃(QJY-88)

▼重機関銃型(三脚に装備)

▼軽機関銃型(二脚を装着)

▼分解状態。


性能緒元
口径5.8mm×42(DVP88/DBP10)
全長1,151mm(二脚)、1321mm(三脚)
銃身長600mm
重量7.6kg(本体+二脚)、11.8kg(二脚状態+三脚4.2kg)
ライフルリング 
弾種87式5.8mm機関銃弾、87式5.8mm小銃弾(非常時のみ)など
給弾方式ベルト給弾式
弾倉200発入り
砲口初速895m/s
有効射程1,000m(三脚)
発射速度300発/分(持続射撃)
銃身命数25,000発

88式5.8mm汎用機関銃(制式名称はQJY-88式5.8mm通用機槍)は、NORINCOにより開発された口径5.8mmの機関銃である。

1980年代、中国軍では歩兵用小火器の弾薬を、従来の7.62mm×39や7.62mm×54Rの二系統で構成されていた体制から、独自開発の87式5.8mm×42弾(DBP-87)に改編する事を決定した。1990年代末には自動小銃として95式アサルトライフル(QBZ-95自動歩槍)、分隊支援火器として95式軽機関銃(QBB-95班用機槍)を開発し、本格的な装備改編に着手した。中国軍では分隊火器の5.8mm化と並行して、歩兵分隊の支援火器として使用されていた67-II式汎用機関銃についても5.8mm口径の機関銃で代替する事を決定、1988年5月から新型汎用機関銃の開発が開始された。汎用機関銃を7.62mmから5.8mm口径にする事で、7.62mm機関銃に比べて重量を軽減でき、同一重量で携行できる弾数が大幅に増加(銃弾1000発あたりの重量は7.62mm×54Rが22.8kgに対して、5.8mm×42機関銃弾が13.5kg)、従来は7.62mm×54Rと7.62mm×39の二系統の弾薬を供給しなければいけなかったのを、同一の5.8mm口径にする事で、歩兵小隊の銃弾を共通化し、兵站面での負担を軽減できる、等のメリットがあるとされた。

しかし、小口径化は上記のような利点がある半面で、有効射程や殺傷・貫通力等では7.62mm機関銃に比べ、どうしても劣らざるを得なかった。中国軍では、汎用機関銃は分隊支援火器である軽機関銃よりも遠距離・脅威度の高い目標の制圧に使用される事とされており、小口径化して射程や威力が低下する事は受け入れがたかった。開発陣では、小口径・軽量化を図る一方で、射程や威力については67-II式汎用機関銃の水準から極力低下させないという矛盾した要求を解決せねばならず、新型汎用機関銃の開発は困難に直面する事になった。中国軍の要求では、射程1,000m前後の歩兵や軽車両の制圧という67-II式と同じ能力が求められていたが、軽量小型の5.8mm×42弾薬で上記の目標を解決する事は非常に難しかった。

最終的に開発陣が選択した方法は、小銃と共通の5.8mm×42弾薬(DBP95 步槍普通弹)の使用を諦めて、遠距離射撃でも極力威力や命中精度の落ちない機関銃専用の5.8mm×42機関銃弾(DVP88 5.8mm機槍普通弾)を設計するという方法であった。小銃や分隊支援火器との弾薬の共通性は失われるが、そもそも5.8mm×42で7.62mm×54R並みの性能を発揮するという要求自体に無理があったといえ、要求を達成するには他に手段がなかったといえる。

5.8mm弾で7.62mm×54R並みの威力を確保するという要求の達成に手間取ったこともあり、5.8mm汎用機関銃の開発はかなりの時間を要し、「QJY-88式5.8mm通用機槍」として制式化に漕ぎ着けたのは開発開始から10年を経た1998年7月であった。翌2000年から量産と部隊への試験配備が開始された。

【構造】
QJY-88は、2脚を使用すれば軽機関銃として、3脚を使用すれば重機関銃として使用が可能で、外に対空射撃用の3脚も用意されている。軽機関銃状態の重量は7.6kg、重機関銃状態の重量は11.8kg。この重量は、西側のMINIMI等の5.56mm汎用機関銃に比べるとやや重いが、これは軽量化よりも遠距離射撃能力を重視した設計によるところが大きい。しかし、代替装備の67-II式の15kg(重機関銃状態)に比べると3.2kgの軽量化に成功している。

QJY-88の作動方式はガス圧利用式、閉鎖装置としてはターン・ボルト・ロッキングシステムが採用されている。銃身長は600mmで、銃身内部および機関部にはクロームメッキが施されており、銃身命数は25,000発を確保している。軽量化のため、機関部カバー、二脚、機関部の一部部品等にアルミ合金を採用。また、銃床、ハンドガード、グリップ、搬送/銃身交換用ハンドル等には強化プラスチックを採用しているのも新機軸である。遠距離射撃時の命中精度を高めるため、光学もしくは赤外線スコープの装着が可能。QJY-88が使用する5.8mm弾は、7.62mm×54R弾に比べて発射時の反動が低減しているため、命中精度が向上している。重機関銃状態では、射程100mで高度14cm×方向12cmの区画に70%の弾薬を集中させる事が可能で、射程1,000mでも180cm×138cmの区画に7割の弾薬を集中させる事が出来る。給弾方式はベルト式で、必要に応じて200発入りの弾倉を装着する。

QJY-88が使用する5.8mm機槍弾は、5.8mm小銃弾(5.8mm普通弾)よりも弾長が4mm長く、小銃弾では弾体後部に内蔵されているスチール弾芯の位置が弾体前半に変更されている。これは遠距離射撃において少しでも威力を落とさないための工夫である。重量も小銃弾に比べて重くなっており、命中時の貫通力が向上している。射撃試験では射程1,000mで、25mmの松板2枚と2mmの鋼板を95%の確立で貫通する事に成功し、射程1,000mでの威力において7.62mm×54R実包に引けを取らない事を証明したとされる。

QJY-88は、5.8mm機槍弾DVP88を標準弾薬にしているが、一応小銃用の5.8mm×42弾薬DBP95を発射する事も可能。ただし、その場合には遠距離射撃では十分な命中精度や威力を発揮することはできない。逆に5.8mm機槍弾を95式アサルトライフルや95式軽機関銃で発射する事も可能だが、こちらの場合は銃身内部の磨耗率が高くなるというデメリットが発生する。そのため、機関銃弾が不足して早急な補給が望めない場合等の非常時以外には、相互の弾薬を共用することは行われない。

【新型5.8mm弾DBP10の登場】
中国軍は小銃と機関銃用に2種類の5.8mm弾を採用したが、弾薬の共用が出来ないのはやはり問題であり、二系統の弾薬を補給しなければならないので後方支援体制にも負担をかけてしまうことが問題視された。そのため、2004年から改めて小銃と機関銃で共用が可能な新型5.8nn弾の開発が開始された[5]。中国軍の全ての5.8mm×42弾薬を使用する小火器での運用が可能な新型5.8mm弾は「DBP10 5.8毫米通用步槍弹」として制式化された。

DBP10 5.8毫米通用步槍弹はDVP88 5.8mm機槍弾をベースとして開発され、これに合わせた新型小銃である95-I式アサルトライフルも同時に開発された。95-I式アサルトライフルは遠距離での貫通性能向上を目的に、ライフルリングを従来の4条右回りから6条右回りに変更した[5]。DBP10は、異なるライフルリングの銃身から銃弾を発射する際の問題を軽減するため、柔軟性に富む真鍮被覆を採用する事で対応している。弾頭の設計変更により空気抵抗を減らして重量を増加しているので、射程1,000mにおける運動エネルギーはDVP88よりも向上しており、貫通性能の改善に成功している[5]。ただし、DBP10がDVP88と全く同じ発射特性が発揮できるという訳ではないため、QJY-88汎用機関銃から発射する際にはどちらの弾薬を使用しているのかを確認する必要が生じる[5]。

【総括】
QJY-88は、1970年代から西側諸国で進められていた汎用機関銃の小口径化の流れに応じた存在であった。小口径化は、携行弾量の増加(QJY-88の場合、同一重量で67-II式の倍の数の弾薬を搬送可能となった)や兵員の負担軽減などさまざまなメリットがあるが、大口径機関銃に比べると射程や威力の面で難があった。これは小口径化が抱えている根本的な問題であり、抜本的な解決は困難であった。中国軍が歩兵の小火器体系のモデルとしたソ連/ロシア軍では、小銃と分隊支援火器の小口径化(7.62mm×39→5.45mm×39)は実施したものの、汎用機関銃については7.62mm×54Rを使用するPKM機関銃の使用を継続している。

中国軍では、小口径化と威力・射程の両立という課題に対して、汎用機関銃用の弾薬の小銃/分隊支援火器用の銃弾を別にするという解決方法を採った。これは弾薬の共通化という大きなメリットを実質的に捨てることであったが、歩兵中隊の火力低下を避けたい軍にとっては外に選択肢のない苦肉の策であったといえる。この問題はDBP10の開発によって解消に向かっているが、相応の在庫が有る従来の5.8mm機槍弾DVP88の使用も継続されるので、中国軍ではDBP95、DVP88、DBP10という3種類の5.8mm×42弾薬が並存する事になり、兵站や運用面での注意が求められる状況が当面続く[5]。

既存の汎用機関銃である67-II式は、歩兵中隊の火力支援小隊、もしくは必要に応じて分隊に1挺が配備されていたが、QJY-88は重量軽減に伴って歩兵1名での搬送が容易になったこともあり、各歩兵分隊に1挺が配備され実質的には分隊支援火器として使用されているといえる。従来の歩兵分隊では、分隊支援火器1挺を使用していたが、5.8mm口径化後は、分隊支援火器の95式軽機関銃(QBB-95)と汎用機関銃のQJY-88を各1挺装備する事になり、分隊火力は強化されたと見なすことが出来る。QJY-88は、射撃手と装弾補助員(兼弾薬搬送)の2名のチームで運用される。

QJY-88は、5,8mmアサルトライフル/軽機関銃への改編が行われた部隊への装備が進められている。ただし、多くの部隊ではまだ7.62mm口径の小火器体系が継続しており、改編にはなお時間を要する物と思われる。またQJY-88は、中国軍のほかに武装警察にも配備が行われている。

QJY-88の派生型としては、車載機関銃化した「QJT5.8mm車装並列機槍」、遠隔操作式の無人銃架にQJY-88を搭載した「88式5.8mm通用机枪遥控武器站(遥控武器站はremote weapon platformの中国語訳)」が開発されている。

【参考資料】
[1]「5.8mm小口径機槍系列」(劉双雁/『軽兵器』2008年8月下/軽兵器雑誌社)
[2]Chinese Defence Today
[3]槍炮世界「QJY88通用機槍」
[4]「88式5.8mm通用机枪遥控式武器站」『轻兵器』2011年6月下
[5]网易博客 三土的日志「是新的飞跃还是续打补丁——评国产5.8毫米小口径新弹」(2012年2月7日)

中国陸軍