日本周辺国の軍事兵器 - 100mm装輪自走対戦車砲(WZ系列装輪装甲車派生型)



性能緒元
重量20トン台後半?
車体長7.80m(砲身含まず)
全幅3.00m
車体高1.50m(砲塔含まず)
エンジン液冷ディーゼル
最高速度  
航続距離
武装100mm滑腔砲×1
 砲発射型対戦車ミサイル
 12.7mm重機関銃×1
 7.62mm機関銃×1
 84式76.2mm発煙弾発射機×8
装甲 
乗員4名(車長、操縦手、砲手、装填手)

本車は、2002年にその存在が明らかになった装輪対戦車自走砲である。開発は北方工業公司(NORINCO)傘下の重慶鉄馬工業集団有限公司によって行われた。同社は、1990年代後半から中国軍の次世代装輪装甲車ファミリーの競争試作に参加しており、この車両は同社が製作したテストベット車両の1つである。しかし、次世代装輪装甲車ファミリーの開発は、内蒙古第一機械製造集団有限公司(こちらもNORINCO傘下の企業)が落札した事により、この車両のこれ以上の開発は行われなかった[8]。開発経緯の詳細については08式装輪歩兵戦闘車「雪豹」(ZBL-08)の項を参照されたし。

【性能】
本車は、「WZ系列輪式底盤」と呼ばれる新開発の装輪装甲車シャーシに02式100mm装輪自走対戦車砲(PTL-02)の砲塔を搭載して製作された。当初、この車両が公開された際には、砲塔が大型であることや砲身がカバーで覆われており細部が不明だったこと等から、120mmクラスの戦車砲を搭載していると推測されたが、『火力戦神-THERMODYNAMIC POWER 陸戦編【2】』誌の記事により同車の砲塔は02式100mm装輪自走対戦車砲(PTL-02)(原文では97式輪式対戦車突撃炮)と同じ物であることが明らかになった。

この新型装輪車体は90式/92式装輪装甲車(WZ-551/WZ-551A)をベースに開発されたため「WZ系列輪式底盤」と呼ばれている。WZ-551と6割のコンポーネントが共通であるが、これは新規開発のリスクを軽減し、既存のWZ-551用の整備インフラを生かすことが目的とされる。エンジン部、駆動部、操行部等各部分がモジュール化されており、それらを仕様によって組み合わせることにより、様々な任務に適合する車輌を製作する事が出来る。

本自走対戦車砲の車体配置は、車体右前部に動力部、前部左側が操縦席、車体中央のやや後ろよりに砲塔が搭載されている。操縦席上方は3つの外部視認窓に囲まれており、走行時に良好な視界を得ることが出来る。車体後部は弾薬の搭載や歩兵の乗車に利用される区画と推測される。この配置は、同系列の30mm装輪自走機関砲の前部に操縦手と車長の搭乗席と変速装置、中央が動力部、後部が兵装スペースという配置とは異なっている。

車体中央底部に動力伝達機構が配置されているので車高は比較的高いものになる。車体後部の広い区画を利用できるので、各種兵装を搭載することが可能。また、車体後部には乗降用の大型ハッチが設けられており、弾薬や補給物資を迅速安全に搭載することが出来る。空気圧集中制御装置により車高を自在に変化させる事が出来るため、鉄道や航空機での輸送に適している。航法装置としてGPSを搭載しており正確な航法が可能。「WZ系列輪式底盤」の車体前面は15mm、側面は8mmの圧延防弾鋼板で作られており、正面は1000mから撃たれた25mm徹甲弾を防御でき、側面は100mから撃たれた7.62mm徹甲弾を防御する事が出来るが、本車の装甲は車体重量が増加していることもあって強化されている可能性もある。タイヤは全て防弾タイヤになっている。本自走対戦車砲では「WZ系列輪式底盤」にはあった車体後部のスクリューが撤去されているため、水上航行能力は無くなっているものと思われる。

「WZ系列輪式底盤」の派生型としては、本車のほかには105mm装輪自走対戦車砲30mm装輪自走機関砲122mm自走榴弾砲 が存在しており、このほか各種の対戦車ミサイル、対空ミサイル等を搭載する事が可能。装甲兵員輸送車として使う場合は完全武装の14人の兵士を乗せることが出来る。

本車の砲塔は前述したように02式100mm装輪自走対戦車砲(PTL-02)の砲塔を流用したものである。この溶接砲塔は88式戦車(ZTZ-88)の砲塔をベースに設計されており、砲塔内には車長、砲手、装填手が配置される。この砲塔に装備されている100mm滑腔砲は86式100mm対戦車砲をベースに開発された低反動タイプで、APFSDS弾、HEAT弾、HE弾、砲発射式対戦車ミサイルを発射することが出来る。車体が大型化したことから、プラットホームとしての安定性は02式100mm装輪自走対戦車砲(PTL-02)に比べてかなり向上したものと思われる。補助武装としては、車長用キューポラに対地・対空用の12.7mm機関砲が、主砲同軸機銃として7.62mm機関銃が搭載されている。そのほか砲塔側面に84式76.2mm発煙弾発射機が8基搭載されている。

【参考資料】
[1]軍事研究(株ジャパン・ミリタリー・レビュー)
[2]「坦克打撃者−中国新型輪式装甲突撃炮」 『火力戦神-THERMODYNAMIC POWER 陸戦編【2】』(彭援朝編集/中国文聨出版社)
[3]Jane's Defence Weekly
[4]Chinese Defence Today
[5]中華網-武器装備庫 「新研制的105毫米8×8輪式自行突撃炮」
[6]捜狐軍事頻道-軍情站「我軍新式輪式装甲車探秘」
[7]roomx的博客 「解放軍装備的幾種輪式突撃炮」
[8]「鉄甲飛騎踏燕来--我国新型8×8輪式歩兵戦車発展全記録」

08式装輪歩兵戦闘車「雪豹」(ZBL-08)
105mm装輪自走対戦車砲 【試作のみ】
30mm装輪自走機関砲 【試作のみ】
122mm自走榴弾砲 【試作のみ】
中国陸軍