日本周辺国の軍事兵器 - 11式105mm装輪装甲突撃車(ZTL-11/11式水陸両用突撃戦闘車)

▼動画「【4K】火力猛 跑得快!独家探秘解放军11式轮式突击车 大量内部细节完整呈现!打击能力近距离展示 新型战场利器媲美“真坦克”!「军武零距离」| 军迷天下」。11式の特集番組。車内の映像や操縦、射撃シーンなどを確認できる




性能緒元
重量20トン台後半?
車体長
全幅
車体高
エンジンBF6M1015FC型6気筒水冷ターボチャージド・ディーゼル(440馬力)出力強化の可能性あり
最高速度
航続距離
武装105mmライフル砲×1(36発)
 12.7mm重機関銃×1(500発)
 7.62mm機関銃×1(2,000発)
 砲発射型対戦車ミサイル
 84式76.2mm発煙弾発射機×12
装甲圧延溶接鋼板+付加装甲
乗員4名(車長、操縦手、砲手、装填手)

11式105mm装輪装甲突撃車(ZTL-11/中国語だと11式105毫米輪式装甲突撃車)は、08式装輪歩兵戦闘車「雪豹」(ZBL-08)の派生型の1つとして開発が行われた装甲戦闘車輌である[7]。中国語名称としては、装輪式装甲突撃車のほかに、11式両棲突撃戦車(「戦車」はTankではなく戦闘車の意味)も存在する[8]。

11式の存在が知られるようになったのは2013年頃で、この時期から11式の写真がインターネット上で散見されるようになった。この新型AFVの名称としては、「ZTL-09」、「09式8X8輪式105mm突撃車」[1]、「某新型輪式坦克」[2]などが伝わっていたが、「ZTL」とは、「Z=装甲、T=(車輌のジャンルの頭文字を表す)、L=輪式」となり、上記名称の突撃車(tūjīchē)/坦克(tǎnkè)はいずれも頭文字がTで、どちらの名称にも妥当性が存在した。最終的に同車の制式名称が「11式装輪式装甲突撃車/両棲突撃戦車(ZTL-11)」だというのが明らかになったのは2015年9月3日に開催された「抗日戦争と世界反ファシズム戦争勝利70周年記念」軍事パレードの場であった。

11式と似た様な性格のAFVとしては02式100mm装輪突撃砲が存在するが、同車の制式名称PTL-02のPとは「炮pào=砲」を意味しており、砲兵科の車輌である事を表している。これに対してZTL-09はPではなく装甲(zhuāngjiǎ)を表すZが付いている事から、PTL-02とは異なり装甲兵科に配備される車輌である事を表している。

【性能】
11式は08式装輪歩兵戦闘車(ZBL-08)の派生型であるが、シャーシには大幅な設計変更が加えられている。最も大きい変化はフロントエンジンからリアエンジンへの変更で、車体前方右部に配置されていたパワーパックを、車体後部に配置変更しており、それに伴って車体後部ドアを廃止、これに代わるものとして新たに車体中央右側に前開き式ドアを設けている[3]。エンジン配置の変更は、砲塔を車体中央部に配置する事により射撃プラットフォームとしての安定性の改善を図ったものと考えられる。

懸架装置は、写真からの推測になるが前二軸がコイルスプリング+ショックアブソーバー、後二軸がトーションバー+ショックアブソーバーと思われる。操舵は第一、第二軸の車輪で行われる[4]。11式は水上航行性能を有しており、車体後部両側には浮航時に作動させるスクリューが装備されている。装輪装甲車としては比較的大型の車体を採用しているのは、水上浮航性能を得るための措置と考えられる。鉄道輸送中の写真では、11式は車体長、車高で同じ貨車に載せられていた96式戦車よりもサイズが大きい事が確認されている[1]。

車体の材質は圧延鋼板装甲という説が一般的だったが、一部の資料ではアルミ合金装甲と記載されているのも存在する[7]。装甲防御力は、車体正面が100mの距離から発射された12.7mm徹甲弾に抗堪、車体側面は7.62mm徹甲弾に、車体後面は7.62mm通常弾に対する抗堪性能を備えている[7]。車体や砲塔には防御力を向上させるためのセラミック付加装甲がボルト止めされているが、これはベースとなった08式装輪歩兵戦闘車と共通した手法。11式は水上航行を可能とするため重量増にも限界があり、装甲防御能力については比較的軽いものに留められていると推測される。

11式の砲塔形状は05式水陸両用戦車のものと似ており、同車の砲塔技術が流用された事が想定される。砲塔の前・側面にはセラミック付加装甲が装着されており、砲塔後部にはHEAT弾対策を兼ねた籠型ラックが取り付けられている。砲塔正面には合計12基の発煙弾発射機が装着されており、必要に応じて煙幕を展開して車体を隠す様になっている。このほか、被弾時の二次被害対策としての自動消火装置やNBC防護システムが標装備されている[7]。

乗員は車長、砲手、装填手、操縦手の4名で構成され、操縦手が車体前方左側の操縦手席、残り三名は砲塔内に搭乗する。操縦系統は通常の自動車と同じハンドル式で、変速機は自動変速方式が採用されている[4]。砲塔配置は、砲塔左部に砲手と車長、左部が装填手という配置になっている[4]。これは88式戦車までの中国軍戦車に共通した乗員配置であり、02式100mm装輪突撃砲05式水陸両用戦車でも同じ配置を採用している。浮力確保のために車内容積を確保した事から車内は余裕があり、エアコンを装備するなど乗員の戦闘力保持のための措置が講じられている[3]。

【武装】
主兵装である105mmライフル砲は、反動低減のため砲身先端に多孔式マズルブレーキを装着しており、駐退複座機の改良と合わせて後座長を延ばす事で砲の反動を抑えているものと思われる。105mmライフル砲の搭載弾数は36発で、使用弾種には、APFSDS(装弾筒付徹甲弾)、HE(高性能榴弾)、HEAT(対戦車榴弾)、GP-2砲発射式対戦車ミサイルなどが存在する[7]。砲弾は、砲塔後部バスルと操縦手席右側にある砲弾ラックに搭載され、砲弾搬入には車体側面ハッチが使用される[4]。105mm砲の俯仰角は-6〜+18度。人力装填で、発射速度は毎分6〜8発。

副武装としては、主砲同軸に7.62mm機関銃1挺(搭載弾薬2,000発)、砲塔上部の装填手用ハッチに12.7mm重機関銃1挺(同500発)が搭載されている。

11式の射撃統制システムは、レーザー測遠機、二軸砲安定装置、砲手サイト、液晶デジタル情報表示パネル、弾道計算機などで構成されている[7]。同車の射撃統制装置は、大半の入力がボタン式になっており、必要な諸元を入力すれば直ちに射撃準備が整うとされ、高い命中精度を実現しつつ操作性が容易で習熟しやすいシステムとなっている[2]。

11式は近年の中国軍AFVと同様にネットワーク化を重視した設計が施されており、戦場情報システム、データリンク機能、衛星位置測定システムなどを標準装備している[2]。砲塔上部には、衛星通信用のアンテナが搭載されており、「北斗衛星位置測定システム」を利用して車輌の現在位置を確認する事が可能。各車輌の目標諸元は、データリンク機能を利用して車内各員、車輌と車輌の間、車輌とコマンドポスト、上級部隊の間で共有される[2]。ただし、戦術データリンク、情報共有システム、液晶デジタル情報表示パネルの操作、「北斗」衛星位置測定システムといった多用な情報機器を使いこなすには、情報化に対応した乗員の訓練が必要になる事が報じられている[2]。

【配備状況】
11式は、8輪式装輪AFVを主装備とする中型合成旅向け装備としての配備が進んでいる[9]。中型合成旅は、装輪車両を中心装備とすることで、近年建設が進む中国の道路網を利用して高い展開能力を生かして迅速に戦場に投入する事が想定されている[6]。08式装輪歩兵戦闘車(ZBL-08)は中型合成旅の新しい主力装甲戦闘車輌として位置づけられており、同部隊向けにZBL-08をベースとした各種派生型が開発されており、11式もその1つ。同系列の車輌で部隊を編制する事は、乗員や整備員の訓練や習熟を容易にし、各車輌が多くのコンポーネントを共有している事から整備面で有利に働く[7]。

11式は、装輪車輌としての高い戦略機動性を生かして緊急展開を行い、ファミリー車輌であるZBL-08歩兵戦闘車、122mm自走榴弾砲PLL-09などと共同作戦を取る事で、部隊としての総合的な打撃力を向上させる事が目されていると思われる。11式は、105mm砲により、敵陣地の破壊、戦車を含む装甲戦闘車輌との交戦、直接射撃と間接射撃による火力支援、機動力を生かした輸送車輌部隊の護衛任務などに従事するものと考えられる。ただし、装輪車輌であり装甲も限られている事から、戦車のような運用は行われず、基本的に火力支援兵器として使われる車輌であるといえる。

▼トランスポーターで輸送中のZTL-11試作車

▼済南軍区の部隊に配備されたZTL-11

▼同一縮尺のZTL-11と96A式戦車


【参考資料】
[1]ych2000「網上談兵:国産新式8X8輪式105突撃車組図」(文学城博客-胡写龍談/2013年4月19日)
[2]軍事記者「用新头脑驾驭新装备 济南军区某装甲团新装备列装带来的冲击波」(王衛東・武今鹏/2013年4月12日)
[3]CNTV「誰是終極英雄」(2013年10月13日放送)
[4]CNTV「誰是終極英雄」(2013年10月20日放送)
[5]China Defense Blog「The first ZBL-09 Assault gun equipped unit unveiled」(2013年4月13日)
[6]竹田純一『人民解放軍 党と国家戦略を支える230万人の実力』(ビジネス社/2008年)273〜277ページ
[7]「ZTL11式輪式装甲突撃車」(『兵器』2015年増刊B/北京《兵器》雑誌有限責任公司/2015年9月)24〜25ページ
[8]CCTV 2015年9月3日の軍事パレード放送
[9]『PANZER 2022年11月号臨時増刊/第756号 WAR MACHINE REPORT No.118―現代中国人民解放軍陸軍編』(アルゴノーツ社/2022年9月2日)

08式装輪歩兵戦闘車「雪豹」(ZBL-08)
中国陸軍