日本周辺国の軍事兵器 - 59式130mm加農砲(M-46)

▼59式130mm加農砲の改良型、59-I式130mm加農砲



▼短距離移動用の補助移動車を装着した59-I式


▼2018年の珠海航空ショーで展示されたアップグレード案「辅推型59-I式130mm加农炮」。上の写真より本格的な補助移動車を採用している。(執筆者撮影)


▼59式130mm加農砲の原型であるロシア(旧ソ連)のM-46 130mm加農砲

▼M-46の牽引時の状態


性能緒元
口径130mm(52.7口径)
戦闘重量7,700kg(59式)
 6,100kg(59-I式)
牽引時重量8,450kg(59式)
 6,300kg(59-I式)
初速930m/秒
最大射程27,150km(59式)
 37km(59-I式/ベースブリード弾使用)
発射速度7〜8発/分(59式)
 8〜10発/分(59-I式)
俯仰角度-2.5〜+45度
方向射界左右各29度
要員9名
牽引速度30〜60km(路上)
 10〜15km(路外)

59式130mm加農砲は、ロシア(旧ソ連)のM-46 130mm加農砲を中国で国産化したものである。M-46は1954年にその存在を確認されたソ連の戦後第一世代の加農砲である。M46は、海軍のM36沿岸砲を原型として開発された52口径の長砲身砲を採用し、砲口初速毎秒930m、27kmを超える最大射程を得ることに成功している。M-46のマズルフレーキは「солонкой」=「saltshaker」と呼ばれた独特の形状をしているのが特徴である。M-46を保有する砲兵部隊は、攻撃の場合は前線から5000m、防御では9000mの地点に配備される。間接射撃のほか、直射による支援射撃、対戦車砲撃任務にも使用される。発射速度は最大毎分5-6発、持続で1.7〜3発/分。AT-S装軌式牽引車またはウラル375Dトラックで牽引する。M-46はソ連やその友好諸国に広く供与されて、配備国は25カ国を超える。M-46はその長射程を生かして、ヴェトナム戦争やアンゴラ内戦などで西側野砲をアウトレンジする活躍を見せている。

中国は1950年代にソ連からM-46の現物と各種資料の提供を受け、兵器工業部127廠において一部設計変更を行った上で国産化が行われ、59式130mm加農砲と命名された。59式の長射程は中国軍でも歓迎されたが、その大重量(8,450kg)のため牽引には装軌式牽引車を必要とし、最大牽引速度は35km/時と比較的低速であり、履帯式のため道路を傷めやすい、長距離機動は困難である等の欠点が指摘された。大重量のため人力移動は困難で陣地展開に際して多くの時間を要し、陣地展開中に敵の先制射撃を受ける可能性を増す危険性を有していた。

これを受けて1970年代に入ると、軽量化を中心とした改良型の開発が行われ59-I式130mm加農砲として制式化された。59-I式は59式の130mm砲を60式122mm加農砲(D-74)/66式152mm榴弾砲(D-20)の砲架に搭載して開発されたもので、砲架換装によって原型のM-46に比べ約2.5トンの軽量化を行うことに成功した。砲架底部には回転式砲床が設置され、砲を移動せずに360度の旋回が可能となったのも60式122mm加農砲(D-74)/66式152mm榴弾砲(D-20)と同じである。砲自体にも改良が施され、閉鎖機は螺旋式閉鎖機から鎖栓式に変更され、装弾以後の工程が自動化され発射速度が向上した。またマズルブレーキは「солонкой」からダブルバッフル式に変更された。59-I式の生産は1970年代前期に開始され、1979年の中越紛争では長射程・高い命中精度により高評価を得ることに成功した。59-I式は生産が終了する1980年代中頃までに1,000門以上が生産された。輸出も積極的に行われ、アルバニア、イラン・イラク、エジプト、バングラデシュ、ザイール(現コンゴ民主共和国)、北朝鮮、パキスタン、ソマリア、スリランカ、スーダン、UAE、タイ、ザンビアなどがユーザーとなり、ルーマニアではライセンス生産も実施された[1][2]。なお、タイでは59-I式の長射程は歓迎されたものの、砲身命数が西側の砲に比べて短いことが問題とされた。

59式と59-I式の発射速度は59式が7〜8発/分、59-I式が8〜10発/分。牽引から射撃可能になるまでの時間は3分。59I式の牽引には6×6装輪8トン牽引車で行われている。また短距離の自走を可能とする補助移動車両も開発された。NORINCOは1980年代から90年代にかけて130mm用の各種砲弾の開発を行っておりその種類は下図の様に多岐にわたるものになった。
榴弾ソ連の名称はOF44。砲弾重量33.4kg。射程27.5km
射程延長型射程を30kmに延伸
ベースブリード弾射程37km
PAP(ロケット推進弾)射程37km
ベースブリード/ロケットアシスト弾射程44km
ERFB榴弾射程32km
対人榴弾射程25km。炸裂時に10,000個の鉄球と砲弾片を発生させる。A型とB型が存在
燃料気化弾 
対戦車砲弾射程25km。戦車攻撃用の35個の子弾を内蔵している
煙幕弾射程25km
照明弾 
科学弾化学兵器を内蔵

59-I式は1980年代の中国砲兵科の主力加農砲となり、砲兵師団や集団軍直属の砲兵部隊に配備され、また59式の130mm砲を流用した130mm自走加農砲(中国)も開発されている。中国陸軍では野砲の口径を155mmと122mmに集約化する方針を採用しており、59-I式も段階的に姿を消していくものと思われる[3]。

【能力向上型について】
NORINCOでは、国内外で多数が使用されている130mm砲用の新型砲弾の開発を継続しており、最近開発したベースブリード/ロケットアシスト弾では44kmの射程を達成している。解放軍系の兵器輸出商社である保利科技有限公司では、59-I式の能力向上プランとして、59-I式にエンジン付き補助移動車を取り付けて短距離の自走を可能としたプラン(中国語だと「辅推型59-I式130mm加农炮」)を提案している[4]。59-I式に短距離の自走能力を付与する補助移動車についてはすでに実地試験が行われているが、保利のプランはより本格的な移動能力を持たせたものとなる。

「辅推型59-I式130mm加农炮」は総重量8.3t。自走可能距離80km、基本は車両牽引だが短距離自走が可能となったことで運用の柔軟性が増した。砲の最大射程は38km。諸元の算出自動化、データリンク化、情報管理システム、表示装置など現代野砲に必要な諸要素も実装される。

【参考資料】
[1]网易「我军炮兵的标志,59式130mm加农炮,越南炮兵的噩梦」(2022年1月12日/来源: 红外铲史官)https://www.163.com/dy/article/GTGFT6UL0535AF0T.ht...(2022年1月17日閲覧)
[2]SIPRI公式サイト「SIPRI Arms Transfers Database-TRADE REGISTERS」https://armstrade.sipri.org/armstrade/page/trade_r... (2022年1月17日閲覧)
[3]China Military/中国军网「PCL-181 brings great improvement for PLA artillery troops」(Wang Xinjuan/2020年5月7日) http://eng.chinamil.com.cn/CHINA_209163/TopStories...
[4]執筆者による2018年珠海航空ショーでの取材情報

軍事研究(株ジャパン・ミリタリー・レビュー)
世界航空航天博覧 総第109期2004年12月号「1960年式122毫米加農炮」
Chinese Defence Today
Global Security
International Assessment and Strategy Center「Research IDEX 2007 Showcases Chinas Productive Weapons Secto」
中国武器大全
中華網「武器装備庫」

【関連項目】
130mm自走加農砲(中国)

中国陸軍