日本周辺国の軍事兵器 - 86式100mm対戦車砲

▼86式100mm滑腔対戦車砲



▼86式100mmAPFSDS弾


性能緒元
口径100mm(54.5口径)
砲身長5,450mm
牽引時重量3,630kg
牽引時全長9,520mm
牽引時全幅2,120mm
牽引時全高1,838mm
後座長1,050mm
砲身高1,088mm
初速1,610m/秒
最大射程13,705m(間接射撃)、1,800m(直射)
発射速度8〜10発/分
俯仰角度-4〜+38度
方向射界左右26度
砲弾APFSDS、HEAT-FS(翼安定成型炸薬弾)、HE-FS(翼安定榴弾)
要員8名

86式100mm滑腔対戦車砲は、73式100mm滑腔対戦車砲の改良型で中国軍最後の牽引式対戦車砲である。86式の開発は、1981年に73式を原型とした100mm滑腔対戦車砲と特殊合金製APFSDS弾の開発が国家重点目標に指定されたことによる。これが後の86式と86式APFSDS弾になる。73式との差異は、貫通力を強化するために砲弾重量・炸薬量を増加したこと、特殊合金製APFSDS弾(86式APFSDS弾)の採用、それに対応した砲身強度の向上や各部の改修を実施した程度であり、両者の外見上の区別は困難である。

86式は、高初速を得るために73式よりも装薬量を増加し、それに耐えうる様に砲身強度を向上させている。砲身の製造工程では砲身強度を増すため自緊処理が施された。これらの製造過程では、西側から導入した冶金技術が大幅に導入されている。砲口には砲の反動を抑制するための多孔式マズルブレーキが装着されている。閉鎖器は発射速度向上に有利な垂直式鎖栓式を採用。砲架の車輪は手動と自動(気圧式)の固定装置があり、緊急時には駐鋤を地面に打ち込まず車輪をロックするだけで射撃を行うことが可能。砲架には防弾とブラストデフレクターを兼ねた防盾が装備されている。砲の俯仰ハンドル、水平方向ハンドルは照準器と共に砲の左側に設置されている。これは砲手が照準作業を行いつつ砲の操作を実施するための配置である。

使用可能な砲弾は86式APFSDS(砲弾重量19kg)、HEAT-FS(翼安定成型炸薬弾)、HE-FS(翼安定榴弾。砲弾重量30kg)である。砲弾は一体装薬型であり半燃焼式薬莢式を採用している。砲弾の発射速度毎分8〜10発に達する。製作メーカーのNORINCOによると、86式APFSDS弾は西側の105mmライフル砲用APFSDS弾よりも貫通力に優れており、T-72の正面装甲を貫通可能としている。ただし、正面装甲が強化されたT-72M1以降では105mmAPFSDS弾での貫通も困難になっているので、ここで挙げられているT-72は初期型、輸出型であると思われる。命中精度の向上も86式の特徴であり、射程1,000mでの射撃では0.3m×0.3mの範囲の目標に命中させることが可能。直射の場合は高度2mの目標に対して、1,800mから命中させる性能を有する。間接射撃の場合は、仰角38度で最大射程13,705mを得る。後に、86式の砲身を改良した砲が87式100mm装輪自走対戦車砲(PTL-87)02式100mm装輪自走対戦車砲(PTL-02)の主砲として採用されている。

86式は機械化歩兵師団の対戦車営(大隊相当。1個師団につき1〜2個が配置)に配備され、対戦車営は三個連(中隊)から構成され86式を合計18門保有する。砲一門当りの操作要員は8名。1980年代以降、86式は機械化歩兵師団の主要な対戦車火器として運用されてきたが、緊急展開部隊等では02式100mm自走対戦車砲(PTL-02)への更新が進んでいる。86式とPTL-02は共通の砲弾を使用しており相互運用性の確保に有利、操作要員は8名から5名に減少するため部隊の人員削減が可能、牽引式から自走化になることで陣地転換の迅速化が可能となり戦術的機動性が向上・牽引車両が不要になる等の点が評価されているとのこと。

【参考資料】
Chinese Defence Today
中国武器大全論壇「中国高(月+堂)圧火炮的発展」
中華網「中国坦克炮和弾薬的発展(上)」
中華網「武器装備庫」
新浪網「中国陸軍列装新型100毫米輪式突撃砲(組図)」
中国武器大全

【関連項目】
87式100mm装輪自走対戦車砲(PTL-87)
02式100mm装輪自走対戦車砲(PTL-02)
73式100mm対戦車砲

中国陸軍