日本周辺国の軍事兵器 - CS/SM-1型81mm装輪自走速射迫撃砲

▼2004年10月に開催された珠海航空ショーに出展されたCS/SM-1


【開発経緯】
CS/SM-1型81mm装輪自走速射迫撃砲(中国語では「CS/SM1型81毫米速射迫撃炮」)は、NORINCO(中国北方工業集団公司)が輸出向けに開発した装輪式自走迫撃砲[1]。開発は中国の第十次五カ年計画(2001〜2005年)期間中に行われた。初期の頃は「SM-4」と呼称されていたが[2]、その後SM-4は90式/92式装輪装甲車(WZ-551/WZ-551A)ベースの120mm装輪自走迫撃砲の型式名になっているので、NORINCO内部で名称変更が行われたものと想定される。

CS/SM-1と同じコンセプトで開発された車両に中国軍向けのPCP-001型82mm装輪自走速射迫撃砲「戦獒」が存在する。PCP-001は、中国軍の特殊部隊や快速反応部隊などが装備している自走迫撃砲で、こちらは82mm口径の速射迫撃砲をEQ2050A「猛士」に搭載している。この82mm速射迫撃砲は、旧ソ連の2B9M「ワシリョーク」82mm自動迫撃砲の中国版である99式82mm速射迫撃砲(W-99)の改良型で、車載化に当たって砲身長の延伸などの設計変更が施されている。PCP-001とCS/SM-1は、口径の違いのほかには、外見上の相違点はほとんど見られない。CS/SM1が、中国軍では使用していない81mmという西側式口径を採用しているのは、同自走砲が主に国外市場向けに開発されたことを表している。

【性能】
CS/SM-1は、東風汽車公司製のEQ2050汎用4輪駆動車「猛士」の荷台部分に81mm速射迫撃砲を搭載したオープントップ式砲塔を配置している。中国軍向けPCP-001ではシャーシ愛称が「戦獒」に変更されているが、CS/SM-1では「猛士」のまま。フロントウインドは走行時にのみ展開して射撃の際は全周射撃の妨げにならないように前に倒される。操縦席部分は、長距離移動の際には脱着式ルーフを装着することも可能。

CS/SM-1の81mm迫撃砲システムは、砲、砲架、駐退復座装置、電気モーター、弾道計算機、光学照準器、レーザー測遠器、微光式暗視装置などで構成される[1][2]。砲の動作はモーターを使用した電気駆動式を採用。弾道計算機により迅速に目標の諸元を算出し、砲の操作が行われる。CS/SM-1は、通常の迫撃砲が砲口から砲弾を装填・発射する前装式なのに対して、機関部右側に装着した弾薬クリップの砲弾を装填する後装式を採用している。4発入りの弾薬クリップを2秒で打ち尽くす高い発射速度を有しており、実用上の最大発射速度は毎分40発[1]。87式81mm長射程迫撃砲弾を使用した場合の最大射程は6,000m以上[1]。81mm砲は全周射撃が可能なだけでなく、迫撃砲としては珍しい水平射撃能力を備えており、直接射撃により目標を打撃することもできる。直射の場合は、レーザー測遠器で目標の距離を測定して目標を射撃する[2]。直射時の最大有効射程は400m[1]。

CS/SM-1は、「猛士」譲りの高い路上/野外走行能力を備えており、速射迫撃砲の性能と相まって迅速に陣地展開を行い、集中射撃を行った後、速やかに撤収を行う[1][2]。間接射撃・直接射撃のいずれも可能なことから、戦場のさまざまな状況に対応して柔軟な運用ができる[1]。機動性に優れ輸送機による空中輸送・パラシュート降下も可能なCS/SM-1は緊急展開部隊や空挺部隊、特殊部隊、水陸両用部隊などでの運用に適しているとされる[5]。

NORINCOではCS/SM-1の輸出を目指して国際兵器ショーなどの場で宣伝活動を行っており、これまでにベネズエラがCS/SM-1型81mm装輪自走速射迫撃砲(資料[5]では以前の型式名である「SM-4」を使用)18両を購入[5]し、ラオスでの採用も確認されている[6]。

性能緒元[3][4]
【車両】
重量4.8t
全長-
全幅-
全高-
エンジン-
最高速度100km/h(路上)
航続距離550km
装甲なし
乗員4名

【兵装】
武装(自走迫撃砲型)81.4mm速射迫撃砲×1
搭載弾数64発
射程(曲射)800〜6200m、(直射)400m
発射速度40発/分
俯仰角度-1〜+85度
旋回角度360度

【参考資料】
[1]熊佳「中国兵器館之火炮篇」(『兵器知識』2015.1/《兵器知識》雑誌社)35〜42頁
[2]新浪網-軍事「中国将向国际市场推销SM-4型车载速射迫击炮」(2008年12月8日)
[3]Военный паритет「КИТАЙСКИЙ САМОХОДНЫЙ 81-ММ МИНОМЕТ CS-SM1」(2012年7月3日)
[4]Военный паритет「КИТАЙСКИЙ 81-ММ САМОХОДНЫЙ МИНОМЕТ CS/SM-1 – ФОТО」(2014年11月13日)
[5]World Defense News「Venezuela would like to purchase more military equipment and weapons from Russia and China」(2015年4月6日)
[6]World Military and Police Forces「Laos」http://worldmilitaryintel.blogspot.com/2013/05/blo... (2022年1月21にち閲覧)

【関連項目】
PCP-001型82mm装輪自走速射迫撃砲「戦獒」