日本周辺国の軍事兵器 - FN-16携帯対空ミサイル(飛弩16)

▼FN-16の発射機とミサイル本体。後方に見えるのはHN-6(紅纓6/FN-6/飛弩6)携行SAM。

▼正面から見たFN-16の発射機とミサイル本体。


FN-16性能緒元
ミサイル全長1,600mm
直径72cm
全備重量18kg
弾頭
推進装置
最大速度500m/s
限界機動荷重18G
射程500〜5,500m
高度15〜3,800m
誘導方式全方位赤外線+紫外線誘導

FN-16(飛弩16)は2008年の珠海航空ショーで初めて公開された新型携帯地対空ミサイルである[1]。主に、低空域のヘリコプターや軽攻撃機などの経空脅威に対抗する事を目標としている。2009年に開催されたIDEX2009兵器博覧会では、解放軍系の兵器輸出企業である中国保利(Poli)集団公司のブースにFN-16が展示された[2]。

【性能】
FN-16はHN-6携帯対空ミサイル(紅纓6/FN-6/飛弩6)をベースにして開発されたが、誘導システムを中心として大幅な改良が施されている。

FN-16は、ミサイル本体、ミサイルランチャー、光学照準サイト、敵味方識別装置、バッテリー、赤外線シーカー冷却用ガスボンベ等から構成される。HN-6は赤外線シーカーを採用していたが、FN-16ではこれを赤外線+紫外線誘導方式に変更、これにあわせてシーカーの形状もHN-6の多角錐型からドーム型に変更。システムの制御は完全デジタル化が施されている。信管はレーザー近接信管が導入[1]。

ミサイルのサイズもHN-6より大型化されている。ミサイル全長1,600mm(参考:HN-6/1,496mm。*以下同)、直径72cm(71cm)、全備重量18kg(17kg)、最大速度500m/s(600m/s)、限界機動荷重18G、射程500〜5,500m(500〜6,000m)、高度15〜3,800m(30〜3,800m)[1]。ロケットモーターの推力向上が行われているが、ミサイルが大形化したためか最大射程や速度はHN-6よりやや低いスペックとなっている。

ミサイルは、赤外線+紫外線シーカーと目標シグナルを飛行制御装置に伝える電子回路、飛行制御装置、弾頭部、レーザー近接信管、アシスト用ブースターと固体ロケットモーター、ミサイル先端のカナード翼4枚と尾部の切り落としデルタ翼4枚などのコンポーネントから構成される。夜間運用に際しては赤外線暗視装置の装着も可能。

シーカーの改良により、低空域での迎撃能力が改善されており低空域の巡航ミサイルやUAV(Unmanned Aerial Vehicle:無人飛行機)に対して有効打を与える事が可能。設計者は2009年のインタビューでFN-16はヘリコプターに対しては95%の命中精度を有するとしている[1]。固定翼機に対しては5,000mの射程内で70%の命中精度を有するとの事[2]。

FN-16は、携行SAM部隊単独での使用、防空システムの一環に組み込まれた統合運用のいずれも選択する事が可能。保利集団公司は、携行式SAMの指揮管制システムとしてTH-S311「猟影/Smart Hunter」防空ミサイル指揮管制システムを開発している[3]。これは捜索用レーザーや指揮管制システムを搭載したBJ-2022多用途車「勇士」を中心として、各FN-16ミサイルを有線で結合してデータリンクを行い指揮管制情報を伝達するシステムであり、10km範囲の12個携行SAM防空小/分隊(射手+補助員)や3個対空砲大隊を指揮する事が出来る。レーダーの捜索範囲は正面面積2平方メートルの目標に対して距離20kmで探知可能で、22目標を同時に追尾できる[3]。TH-S311はFN-16以外の各種携行SAMをシステムに統合して運用する事も可能[3]。



FN-16の派生型としては、05式装輪装甲車の車体後部にFN-16の四連装発射機二基を搭載したTD-2000B防空ミサイルシステムが2009年の珠海航空ショーに出典されている。この他に、四輪駆動車にTD-2000Bとは形状の異なる四連装発射機二基を搭載したFB-6A自走対空ミサイルシステム(この車両はHN-6も搭載可能)が確認されている[2]。

【配備状況】
FN-16(飛弩16)は輸出用名称だが、2009年段階では中国政府からの輸出許可は下りていなかった[1]。漢和防務評論2013年3月号の記事によると、FN-16は既に中国陸軍への配備が開始されており(中国軍の制式名はHN-16/HY-16?)、さらにバングラデシュ陸軍がFN-16の採用を計画しているとの事[4]。

【参考資料】
[1]「中国公開更多FN16肩扛式地対空導弾技術細節」(『漢和防務評論』2009年6月号)
[2]Jane's Information Group「IDEX2009 Exhibition News Day4 - Poly SAMs attack local market」
[3]「馬来西亜排除出口FN6短程地対空導弾計画」(『漢和防務評論』2008年9月号)
[4]Zafar Hassan「中国陸軍接収FN-16肩打式地対空導弾」(『漢和防務評論』2013年3月号)43ページ

HN-6携帯対空ミサイル(紅纓6/FN-6/飛弩6)
中国陸軍