日本周辺国の軍事兵器 - VN-3装輪装甲車

▼F1型試作車。一人用砲塔には同軸でQJG-91式14.5mmmm重機関銃と7.62mmを装備。

▼同じくF1型。14.5mm機関銃にカバーが装着された。

▼F2型試作車。


▼F2型試作車の派生型?。車体を延長し、30mm機関砲とHJ-73対戦車ミサイルを装備したGCTWM砲塔を搭載。

▼VN-3量産型。赤外線対策のため排気マフラーに蓋が追加された。前照灯も変化している。

▼ベラルーシ向けのCS/VN3 JYの動画


性能緒元(偵察型)
重量6トン
全長4.45m
全幅2.2m
全高2.2m
エンジンターボチャージドディーゼル 170馬力
最高速度110km/h
浮航速度8km/h
航続距離600km
武装QJG-91式14.5mmmm重機関銃×1(12.7mm機関銃に換装可能)
 7.62mm機関銃×1
 発煙弾発射機×6
装甲防弾鋼板
搭乗員4名
最大搭乗量1.4t

【開発経緯】
VN-3(正式な輸出用名所はCS/VN3)は、中国北方工業公司(NORINCO)が開発した4×4の装輪装甲車。主要な任務は偵察やスカウト活動が想定されている。1997年から基礎研究が開始され、本格的な開発は2000年から着手された。設計主任は呂建国技師。当初はイタリア企業との合弁会社である南京イヴェコ社製のNJ2045 4輪駆動車をシャーシに使用する計画であったが性能面で不満があったため、2002年にはベース車体をより能力の高い第二汽車製造廠(東風自動車)製「猛士」4輪駆動車に変更した。ただし、重量増加に備えてエンジンは「猛士」の140馬力から170馬力に強化された。2003年には「装甲ジープ」タイプのF1型と、車体前面を避弾経始を考慮した楔型としたF2型の2両の試作車が完成した。NORINCOは最終的にF1型の開発にリソースを集中させることを決定し、F2型の開発は打ち切られた。F1型は2006年には開発が完了し、「VN-3型軽型4×4輪式装甲車」の名称が与えられた。

【性能】
VN-3の重量は6トン、全長4.45m、全幅2.2m、全高2.2m。中国国産の170馬力のディーゼルエンジンを搭載しており、最高時速は110km/h、航続距離は600km。最大32度の傾斜を登坂し、0.7mまでの壕や0.4mまでの壁を越えることができる。エンジンは-43度から46度までの気温での作動が保障されており、高度4,000mでの戦闘任務も可能。エンジンマフラーや排気管は車体のフロント内部に設けられているが、これは赤外線放出量の削減と騒音の低減が目的である。動力部には、被弾時に備えて自動消火装置が設置してある。

車体後部にはスクリューが設けられており、水上航行が可能。車体は防弾鋼板で車体正面は12.7mm機関銃の直撃に対する防御力を有しており、全周からの7.62mm弾や榴弾の破片、地雷に対する防御能力を有する。車輪が被弾しても100km/時で走行することが可能。車輪の空気圧は車内から調整することが可能で、地形に合わせた最適の状態を選択するようになっている。標準装備で、ABS (Antilock Brake System)装置とNBC防護能力を有している。車体後部中央にはスクリューが設置されており、時速8kmで水上航行が可能。乗員は4名で、車体の両側面と後部に乗車用ハッチが装備されており、迅速な乗り降りが可能。VN-3は、輸送機での空輸や空中投下が可能であり、緊急展開部隊や空挺部隊での運用にも適している。

VN-3は各種の兵装の搭載が可能であるが、偵察型では車体後部上面に一人用武装ターレットが設けられており、QJG-91式14.5mm重機関銃と7.62mm機関銃を搭載している。ターレットには昼/夜用ペリスコープが搭載されており、全天候性能を有する。また、ターレットには発煙弾発射機×6が搭載されている。これらの兵装は簡易式射撃統制装置によって制御され、夜間射撃や一時停止/射撃や行進間射撃が可能。この種の小型車量に射撃統制装置を搭載することにより、その戦闘力を大幅に向上できると見られている。車体側面にはガンポートが左右1基ずつ設けられている。そのほか必要に応じて、対戦車ミサイルや対空ミサイルの発射機を搭載することも可能。

操縦手席上部には、微光式暗視装置の映像を写す液晶パネルが設置されているが、これは中国の装甲車としては始めて装備された装置である。

情報化に対応した装備もVN-3の特徴である。VN-3は先進的な統合電子情報システムを装備しており、副操縦席には指揮通信システム操作用端末が装備されており、車両の位置や戦場の状況、他部隊からのデータ交換などの各種機能が付与されている。VN-3は偵察車両であるが、試作車両ではレーダや光学モニター等の特別な偵察用機材は有さない模様。ただし、車内には各種観測装置や操作パネルを設置することが設計時から考慮されており、ユーザーの要求に応じた多様な装備を施すことが可能。オプション装備として、微光増幅式暗視装置やGPS装置の搭載が可能。NORINCOでは、装備を換装して治安車両として運用することも可能としている。

【派生型】
近年開発される装輪装甲車の例に漏れず、VN-3も当初から各種派生型への発展を前提として開発が成されている。VN-3の戦闘室はモジュール式になっており、任務に合わせてさまざまなタイプに換装することが可能。偵察車型は乗員4名だが、兵員輸送車型ではキャビン容積を拡大して操縦手と副操縦手のほか8名が搭乗する。また現行の4×4だけでなく車体を延長した6×6、8×8型も提案されている。また、F2型試作車の派生型と推測される、車体を延長しエンジンの位置を車体前右部に変更、30mm機関砲とHJ-73対戦車ミサイルを装備したGCTWM砲塔を搭載した車両も確認されている。これはのちにCS/VN3Cへと発展したと推測される。

CS/VN3-JYは、2018年の珠海航空ショーで走行デモを行ったVN-3の新しい派生型[9]。兵員輸送型であり、兵員室側面に外部視認用の防弾ガラス窓を二箇所設置。兵装は車内からの操作が可能なRWS(Remote Weapon System)に12.7mm重機関銃一丁を装備している[9]。兵装はユーザーの要望に応じて変更可能。

CS/VN3Cは、保利科技有限公司が輸出事業を担当しているVN-3の派生型の一つ[10]。CS/VN3は空中投下可能な緊急展開部隊向けの装輪装甲車として開発された。偵察車型や兵員輸送車型のようなフロントガラスは無く、シャーシ前面には強い傾斜がついている。操縦手と車長席のハッチは引き込み式で、視界を確保する際は競り上がって、脅威度が高い場面ではハッチを車内に収納してペリスコープで視界を確保する。車体中央に30mm機関砲とHJ-73C対戦車ミサイルを搭載したGCTWM(ZPT-99)砲塔を配置している。固有の乗員は3人で、ほかに4名の歩兵が搭乗する。

【輸出動向】
VN-3は、国際市場での競争力を高めるため、情報化に即した装備を施した上でユーザーの様々な要求に対応することが可能な設計を当初から施しているのが大きな特徴である。現在中国軍向けに少数が生産されているほか、各国で開催される兵器ショーで輸出向け装備としての宣伝が行われている。

VN-3の最初の海外運用国となったのは南部アフリカのモザンビークで2015年に12輌が調達された[5]。その後、VN-3は中国の一帯一路政策で関係を深めている旧ソ連諸国への輸出や供与が積極的に行われており、2016年にはベラルーシがCS/VN3-J×10輌を調達決定し、2017年から18年にかけて供給された[5][6]。これは中国による軍事援助の一環とされる[6]。2018年にはタジキスタンが10輌の調達を決定し、2020年の軍事パレードでその存在が公開された[7]。2022年にはカザフスタンに派遣されたキルギスタン特殊部隊がCS/VN3-JYを装備しているのが確認されている[8]。

【参考資料】
[1]「陸地新軍車-国産VN3輪式装甲車」 (陳婷・袁楊/『兵器知識』2008年第1期)
[2]"Research IDEX 2007 Showcases Chinas Productive Weapons Sector" (Richard Fisher, Jr./International Assessment and Strategy Center)
[3]JDW
[4]大旗網-「総士:中国VN-3装輪装甲車世界一流」
[5]SIPRI公式サイト「Trade Registers」https://armstrade.sipri.org/armstrade/page/trade_r... (2022年1月21日閲覧)
[6]Army Guide「Belarus received a new batch of Chinese CS/VN3 armored vehicles」(2018年1月19日/Sergyi Way)http://www.army-guide.com/eng/article/article.php?...(2022年1月21日閲覧)
[7]Polygon Military Magazine「Army demonstrated Chinese-made CS/VN3 Dajiang armored vehicles」(2020年2月27日/Zaur Babashov)https://polygonjournal.com/2020/02/27/tajik-army-d... (2022年1月21日閲覧)
[8]MilitaryPorn[Members of 29th brigade of special forces "Scorpion" of Kyrgyzstan army with their LAV "Norinco CS/VN3 Dajiang " sent into Kazakhstan as peacekeeping force - ( 1280x709 ) 」(2022年1月11日 u/yomibuto) https://www.reddit.com/r/MilitaryPorn/comments/s1c...年1月21日閲覧)
[9]Army Recognition「Analysis: NORINCO light armored vehicles displayed at Zhuhai Airshow 2018」(2018年11月29日)https://www.armyrecognition.com/airshow_china_2018... (2022年1月24日閲覧)
[10]Army Guide「CS / VN3C」http://www.army-guide.com/eng/product5720.html(2022年1月24日閲覧)

中国陸軍