日本周辺国の軍事兵器 - WM-120 273mm8連装自走ロケット砲

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WM-120は、WM-80 273mm8連装自走ロケット砲の発展型として開発された大口径多連装ロケット・システム。開発元は中国北方工業集団公司(NORINCO)傘下の東北127廠によって行われた[1][2]。WM-120は当初から外国の軍隊に対する輸出向け装備として開発され、2008年にはヨルダン軍に一個大隊分のWM-120を輸出することに成功した[2]。

【開発経緯】
1990年代、東北127廠ではクウェート軍に採用されたPLZ-45 155mm自走榴弾砲の生産を担当することになり、PLZ-45に盛り込まれた先進的な射撃統制システムや各種装備に関するノウハウを蓄積することに成功した[1]。東北127廠では、この技術を元にしてWM-80の能力向上型「WM-120」の開発を行うことを決定した。これは国際兵器市場におけるWMシリーズの「商品」として付加価値を向上させるための措置であった。

WM-120は主に射撃統制システムの高度化や各種装置の自動化を中心に改修が実施されており、システム全体の基本的な構成はWM-80を踏襲、ロケットの射程や弾頭の種類についても変更はされていない[2]。シャーシについてはWM-80のTAS-5380SQと同系列の8×8重野戦トラックが使用されているが、キャビンの形状に一部変更が加えられておりWM-80との識別点となっている[1]。

WM-120を採用したヨルダン陸軍では、中国側に対してWM-120のさらなる能力向上を要求することになる[2]。その要求は、最大射程を80kmから120kmに延伸、誘導システムにGPSシステムもしくは慣性航法システムなどを追加することで命中精度を向上させるというものであった[2]。WM-120の最大射程80kmという性能はヨルダン陸軍にとって重要な意味を有している。ヨルダンの首都アンマンから隣国イスラエルの首都エルサレムまでの直線距離は72kmであり、WM-120はヨルダンにとってはイスラエルの重要拠点に対する打撃が可能な一種の戦略兵器としての意義を有しているとされる[2]。ヨルダン陸軍がさらなる射程の延伸と命中精度の向上を求めたのは、WM-120の戦略兵器としての有効性を高める目的があった。

ヨルダンの要求に応じたWM-120の射程延伸作業は既に完了しており、命中精度の向上についてはGPS誘導システムを組み入れることにより平均誤差半径(CEP)を50m以下にすることができるとされている[2]。

現在、ヨルダンと中国の間ではWM-120の能力向上に要する経費確定に関する交渉が行われており、最大射程200kmを超えるAR-3 300mm/370mm 10/8連装自走ロケット砲の輸出についても議題に上っているとされる[2]。

【参考資料】
[1]「遠火呼嘯、万鈞雷霆-我国遠程火箭炮発展全掲秘」(『全球防務叢書』第四巻 輔国号/内蒙古人民出版社)6〜17頁
[2]Zafar Hassan「約旦希望改良中國火箭炮」(『漢和防務評論』2011年6月号/No.80)44頁

WM-80 273mm8連装自走ロケット砲
中国陸軍