この温もりをただ抱きしめたくて-4
前:この温もりをただ抱きしめたくて-3
757 :アクエリアス [sage] :2008/02/19(火) 00:08:38 ID:7mz5aY5R
ではそろそろ行きます。
フェイなのパラレル小説です。
なんかバレンタインの時は小説ラッシュでしたね。
オレは…頑張りましたよorz
758 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/19(火) 00:09:53 ID:7mz5aY5R
目を覚ますと、白い部屋の中だった。
起き上がろうとするが、身体に力が入らず、頭だけを動かす。
「あら、起きたの?」
「……シャマル…」
彼女は私をのぞき込んで、良かった、と安堵の息を漏らした。
「何で…ここに運んだ?」
ここは第六教会の医務室だ。ほとんど私が怪我をすることはなかったが、付き添いでなら何度も来たことがある。
「あなたは…フォワード達やなのはちゃんを助けてくれたでしょう?」
無事だったんだ…。
私は心の中で安堵した。
「何故…そう思う?」
「見たまま、聞いたままにそう思ったのよ?」
私が身体を起こそうとすると、慌てて止められた。
「まだ動いちゃ駄目よ!酷い怪我なんだから…」
759 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/19(火) 00:11:56 ID:7mz5aY5R
そういえば…私は……。
靄がかかっていたように思い出せなかった事が、一気に頭を駆けめぐる。
「そう…か……」
私は、捨てられたのか……。
今までの母さんの言動を思い出すたびに、悲しみが胸を締め付けて、目頭が熱くなった。
「ソ…フェイトちゃん?何処か痛いの!?」
胸を押さえて横になったままうずくまる私を見て、シャマルが包帯を解き始める。
胸にあったはずの風穴は、針で縫われ閉じられていた。
これ…母さんが……
傷の確認をして、包帯を巻き直している彼女の手を振り払う。
純血のバンパイアなら、こんな傷くらい既に治っているはずだ。自分の傷の治りが遅い理由が、今になってやっと分かった。
気力で立ち上がり、壁に背を預ける。
「フェイト!?」
ドアが開き、誰かが入ってきた。
「なのは……?」
中途半端に巻かれた包帯から、大きな傷が見えている。彼女は私に駆け寄った。
760 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/19(火) 00:13:06 ID:7mz5aY5R
「駄目だよ!!動いちゃ!!!」
私はその手も振り払おうとした。
でも……
「なのは……ごめん……」
泣きそうな顔で私に抱きつく彼女を、また振り払うなんて出来なかった。
自分のしたことは…何て浅はかだったんだろう。
私は彼女を強く抱きしめた。身体のあちこちが軋んで痛みを発するが、些細なことだった。
「謝らないで…」
上目遣いに見上げてくる桔梗色の彼女の瞳から、涙がこぼれ落ちた。
私は彼女を抱く腕の力を更に強くした。
「ごめん……」
私の背をさする手のひらから、彼女の優しさが直接伝わってきた。
いつの間にか
こんなにも
私は腕の中の彼女の温もりをずっと感じていた。しかし、
「どうや〜?フェイトの様子は?」
761 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/19(火) 00:13:51 ID:7mz5aY5R
ドアが再び開いて、垢抜けた第一声。
なのはは驚いてフェイトの腕の中から抜け出した。
「駄目じゃないですか〜。はやてちゃん、今良いところだったのに…」
シャマルが面白そうに言った。そういえば、途中から存在を忘れていた。
なのはの顔が更に赤くなる。
そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに…。
フェイトはなのはの様子に苦笑した。
「えっ!?何しとったん?」
面白そうに聞いてくる。
何て順応性が高いんだ。今まで敵だったはずなのに…。
「フェイト…さん?」
その声に、私はまた入り口の方を見た。そこにいたのはフォワード四人と、アルフだった。
「……」
何て答えたらいいか分からなくて、私は次の言葉を待った。
「…フェイトが眠っている間、私が色々皆に話したよ…」
アルフが口を開いた。
762 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/19(火) 00:14:50 ID:7mz5aY5R
「……そう」
フェイトはそう返した。
重たい沈黙が続く。
「フェイト・テスタロッサさん」
堅苦しく呼ばれて、フェイトははやてに眼を向けた。
「あなたはフォワードメンバーや、なのはちゃん、そして私の命も救ってくれました。
それに、元々あなたは私達第六教会のフォワードです。
そちらが我々に全面的に協力、援助してくださるのなら、始めは色々と窮屈な思いをすることもあるかもしれませんが、
我々、第六教会及び聖王教会は喜んであなた達を迎えたいと思っています」
「……随分懐が広いんだね」
どう考えても、殺されて当然のはずの事をしたのだ。
「ま、普通ならこんな処置ありえへんやろうけど…そこは色々あってな。特になのはちゃんが頑張ってくれて」
今度はなのはの方に視線をうつした。
「…私、もっとフェイトのこと知りたい。一緒に…いたい」
いつも素直に気持ちをぶつけてくれた彼女。
「なのは…」
だから、私は
763 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/19(火) 00:15:53 ID:7mz5aY5R
「君が望むなら…私は一緒にいるよ」
「フェイトが、自分がいいと思った方を取らなきゃ…駄目だよ」
否というところを想像したのか、段々声が小さくなって行った。私は笑って彼女を抱きしめた。
「君の望むことが…私の望むことだよ。私は…なのはを愛しているから」
なのはの顔は、もう真っ赤だった。
「フェ、フェイト!!そんな恥ずかしいこと…!!」
やっぱりからかうと彼女は可愛かった。
横目で周りをみると顔を赤くしているのが数人。
「本当のことなんだけど…」
面白くてまだからかおうとする私に、はやてが一つ大げさに咳払いをした。
「つまり…それは了解してもらえたっちゅうことやな?」
「うん。そうだね」
はやてが笑ったので、私は曖昧に微笑み返した。
だが、すぐにまたキリッとした顔立ちに戻る。
「今日も来るんやろね……」
その言葉を聞いて、思い出した。
764 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/19(火) 00:16:50 ID:7mz5aY5R
「…日没まで…あとどれくらい?」
「あと一時間ってとこや…。第四、八、十一教会のメンバーがもう聖王教会を固めとるよ。
アースラのバンパイア達もや。私達もそろそろ行かんと」
アースラ……。聖戦で人間側についたバンパイア達の船か。私も…。
そう思い、自分の手元にあれがないことに気づく。
「バルディッシュは…?」
「…?ここにあるけど……」
シャマルが、バルディッシュを取り出した。私はそれを受け取る。
もう身体は動くようだ。
「フェイトちゃん、まさか…」
「…なのは達も行くんでしょう?だったら私も…」
「駄目よ!!まだ怪我治ってないし…」
「でも、母さんは……私を狙ってくる…」
バルディッシュをギュッと握った。
母の行ったことは理解できた。でも、納得できている訳ではない。
悲しさも、苦しさも、まだ胸で燻っている。
「分かった、でも無茶はあかんよ?」
「うん……分かってる。なのは達もね」
フェイトの表情を見て何か察したのか、なのはが口を開いた。
「…皆、少し…二人にしてくれないかな?」
「…ええよ。出発の用意が出来たら呼ぶな?」
「…うん」
765 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/19(火) 00:18:02 ID:7mz5aY5R
はやてに促されて、皆外に出て行った。
それを見送った後、なのははもう一度私の前に向き直った。
そして、無意識に強く握り過ぎて白くなった私の手を、慈しむかのように彼女は両手で包み込んだ。
「フェイト…大丈夫だよ…。あなたは欠陥品でもオモチャでもない。たった一人の掛け替えのない人。
私にとっては一番大切な…」
不意に、自分の頬に何か温かい流れを感じた。
「フェイト…大好き……」
「なのは…」
嗚咽が漏れそうになる。今度は彼女が、私を抱きしめた。
「辛かったら、泣いても…いいんだよ?」
いつもと逆の立場に、違和感はなかった。
ただ、そこには温もりがあった。
私は初めて、声をあげて、誰かに抱きしめられて泣いた。
今までの苦しさも悲しさも、全部流しされるように。
「……落ち着いた?」
彼女が頃合いを見計らって聞いてきた。
「うん…大丈夫。ありがとう」
766 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/19(火) 00:18:25 ID:7mz5aY5R
「じゃあ…行こうか?あ、無理しちゃ駄目だよ?」
「大丈夫だよ……なのはがいてくれるから」
フェイトはそう言って笑うと、バリアジャケットを纏った。
黒いマントが靡く様は、まるでナイトの様だ。その様子に見とれて止まってしまった私に、彼女は手を差し出してくれた。
私は照れながらもその手を取った。
やっと分かり合えた心
だけど
まだ始まっても、終わってもいない
物語は、最後の戦いへ
Fin.
768 :アクエリアス [sage] :2008/02/19(火) 00:25:38 ID:38lzx7kZ
後書きで規制くらいましたorz
一行後書き
王子フェイトの辞書に恥ずかしいセリフ禁止という文字はない。
癖でFinって書いちゃったけど続くですorz
ではこれの都築は一時間後に。
書き込めなかったら避難所にいます
79 :アクエリアス:2008/02/19(火) 01:10:47 ID:LAZT6Jv2
すみません、こちらに投下させていただきます。
フェイなのパラレル小説です。
前書き
なのはの中で好きな男キャラはバルディッシュとザフィーラ
80 :この温もりをただ抱きしめたくて:2008/02/19(火) 01:12:29 ID:LAZT6Jv2
「洒落にならん量やな…」
はやては空の向こうの無数の黒い粒を見て、ため息をついた。
このままでは、10年前と同じ事の繰り返しだ。
「大丈夫だよ…この戦いの元凶は一人だから…」
スカリエッティ。あいつを倒せば、統率は一気になくなる。
あのホムンクルス達――ナンバーズ――も…きっと戦いをやめるはずだ。
「本当に無理しないでね…」
「……うん。なのはもね」
三人はそれぞれバリアジャケットを展開し、前線で待ちかまえた。
ヴィータとシグナム達は別の場所ですでに戦い始めている。
こちらにも沢山のスレイブやガジェットがやってきた。
「ディバイン、バスター!!!」
なのはが大部分を蹴散らす。
81 :この温もりをただ抱きしめたくて:2008/02/19(火) 01:13:35 ID:LAZT6Jv2
《Zamber Form》
当たりきらなかった部分を私が突っ込んで切っていく。
その間に、
「来よ、白銀の風、天よりそそぐ矢羽となれ…フレースヴェルグ!!」
はやてがチャージし、砲撃を放つ。
これが初めての連携とは思えないほど凄まじい。
だが、それでも数は減るどころか増える一方だった。
「ガジェットの数が…多すぎるね……」
スレイブだけなら、増えることはない。
「せやな…どうにかしてもとを断たへんと…」
少し息を切らし気味になっている二人。
それはそうだ。もう何発砲撃を撃ったか分からない。しかもなのははエクシードモード。消耗が早い。
これ以上の長期戦は…。
私は一度バルディッシュをアサルトモードに戻した。
「フェイト…?」
「私が…群れの中に突っ込んで、ガジェットの出元を潰してスカリエッティを探す。だから、二人はなるべく体力温存して」
「そ、そんなのあかんやろ!危険過ぎや!!」
私は振り返って笑った。
「私を信じて…?」
82 :この温もりをただ抱きしめたくて:2008/02/19(火) 01:14:44 ID:LAZT6Jv2
はやてはそれを見てため息をつき、なのはは苦笑した。
「このままやったらいつまでも終わらへんやろしな…しゃあないか…。無茶せえへんといてな」
「…絶対無事で帰ってきてよね…!!」
「…うん!!」
私は力強く返事をすると、教会に張られた結界の外の敵の本陣へ向かっていった。
***********
「ぐぁぁあああああああ!!!!」
「ハーケンセイバー!!」
スレイブもろとも無数のガジェット達も破壊していく。
意志のないスレイブ達は、吸血鬼の血に自我を食われているのだろう。
思い切って突っ込んだのは良いが、数が多すぎて一行に前に進めそうにない状態だ。
「ソニックムーブで突っ込んだ方が早いかな?」
でもそれでは、スカリエッティを探すことが出来ない。
《Is used W.A.S?》
バルディッシュが珍しく提案してくる。
「バルディッシュは大丈夫?」
二つのことを制御するのは大変だろう。
83 :この温もりをただ抱きしめたくて:2008/02/19(火) 01:15:31 ID:LAZT6Jv2
《No problem》
「分かった…。それじゃあ、行くよ……」
《Yes sir. W.A.S. Full Driving》
魔力で出来た百以上の球体を、四方八方に飛ばした。
そして自分は、
《Sonic move》
一筋の光となって、更に奥へと進んだ。
数分もかからずに、ガジェットの出口と思われる洞窟を見つけた。どうやら、出ているのはここだけらしい。
私は周りの敵を打ち落とし、無数のフォトンスフィアを形成した。
「フォトンランサー・ファランクスシフト……」
ガジェットが再び入り口から出てくる。これ以上増やすわけにはいかない…。
「打ち砕け!!ファイア!!!」
奥まで到達させると、機械が爆発した衝撃で連鎖的に壊れたのか、激しい地響きと共に洞窟ごと崩れた。
「よし…!!」
これで、もう敵が増えることはない。
「フェイトお嬢様……」
警戒して距離を取りながら振り向く。
84 :この温もりをただ抱きしめたくて:2008/02/19(火) 01:16:20 ID:LAZT6Jv2
「誰だ!?」
そこには見慣れた顔が二人。
「トーレ…、セッテ……」
《W.A.S. successful》
丁度バルディッシュがスカリエッティを見つけたらしい。
「…良い子だ」
場所は分かった。でも、この場を乗り切らなければ…。
「あなたは、私達を裏切ったと思ってよろしいでしょうか?」
「……君たちも…スカリエッティの命令がなければ、こんな風に動いてなかったんじゃないか?」
話し合う。
彼女が教えてくれたことだ。
「こんな戦いは不毛だ!!…人間と、バンパイアと、スレイブだって。対等に生きていくことは可能だ!!」
「…そんなことはどうでもいいことです」
トーレがISを構えながら答える。
「私達はドクターの夢をかなえたいだけですから」
「それじゃ…そのドクターがいなくなったとしたら…?」
85 :この温もりをただ抱きしめたくて:2008/02/19(火) 01:17:04 ID:LAZT6Jv2
フェイトの魔力が飛躍的に高まった。
二人が怯んで後ずさる。それを見て、私は空へ飛び上がった。
「に、逃がすか…!!」
すぐに彼女たちは追いかけてくる。
フェイトはスカリエッティの方へと向かう。その場所からはそれほど遠くない高台に、彼は立っていた。
「おや、フェイトくん。どうしたんだい?こんなところで」
スカリエッティはフェイトに向かって、いつもの嫌悪感しか抱けないような笑みを浮かべた。
「今すぐこんなことをやめさせろ…って言っても無駄なんだろうな…」
《Zamber Form》
フェイトはスカリエッティを睨みながら、バルディッシュを構えた。
「ああ、それはそうだよ。人間は邪魔なんだ。まあ、我々の良いなりになってくれるというのなら話は別だが」
スカリエッティの右手に組み込まれているデバイスをいやらしくくねらせた。
それに反応して、地面から赤い魔力糸が何本も突き出てきた。
「くっ…!!」
その糸から飛んで逃れる。そのうちに、先程の二人も私に追いついてしまっていた。
「三対一か…」
でも、ここに逃げるという戦法はない。
86 :この温もりをただ抱きしめたくて:2008/02/19(火) 01:17:59 ID:LAZT6Jv2
「フェイトお嬢様でも、ドクターの夢を妨害するなら…容赦しません!!」
「する必要ないよ…。されたらつまんなくなるからね。…バルデュッシュ、ライオット」
《Riot Blade》
バルディッシュが変形し、細身の片刃になる。
「おいで…遊んであげるよ」
「うおおおお!!」
セッテが手に持っていたブーメランブレードの片方をフェイトに向かって投げた。
フェイトはそれをバルディッシュではじき飛ばし、
《Sonic move》
一気に距離を詰める。その早さに対処できず、もう一方のブーメランブレードでフェイトが振り下ろしたバルディッシュを受け止める。
だが、力を受け止めきれず、刀身が折れ、バランスを崩した。
「ライドインパルス!!」
後ろを振り向くと、自分と互角くらいのスピードでトーレが迫ってきた。
フェイトは咄嗟にライオットブレードの片方を切り離し、左から右へ背中に回した。
そのまま回した片方を右手で持つ。振り返りざまに、左の刀を追撃しようとするセッテの腹部に峰打ちで当てて吹き飛ばした。
そして、向かってきたトーレのインパルスブレードを右で受け止める。
だが、無理な体勢のため、フェイトははじき飛ばされてしまった。
地面を転がり、大木に身体をぶつけた。
「ぐあっ…!!」
一瞬胃液が食道を逆流しそうになるが、耐えて立ち上がる。
87 :この温もりをただ抱きしめたくて:2008/02/19(火) 01:19:03 ID:LAZT6Jv2
「セッテ!大丈夫か!?」
二人を見ると、セッテは完全に気絶しているらしい。
「これで…一人か……」
フェイトはその木にもたれ掛かる。
「この…!!」
頭に血が上ったのか攻撃が直線的になる。フェイトは両手を構えた。だが、
「さっき…三対一と自分で言わなかったかな?」
左足に痛みが走る。見ると、数本の魔力糸が太ももとふくらはぎを突き刺していた、
痛みを堪えて急いで切り離し、横に跳ぶ。
それでも一つテンポが遅れて、腹部を思い切り深く切られた。赤い血飛沫があがる。再び地面に転がった。
だが、今度は立つことが出来ず、近くの木に寄りかかる。
傷の焼かれたような痛みが身体の機能を貪っている。
「銀…?」
銀でしか見られない反応だ。
「私の娘達はね、対バンパイアようにも出来ているのさ…」
彼が楽しそうに私に近づき、見下ろした。
再び手がうねり、私は抵抗も出来ずに木に縛り付けられた。
88 :この温もりをただ抱きしめたくて:2008/02/19(火) 01:20:00 ID:LAZT6Jv2
残念だ…。非常に残念だよ。君のようなすばらしい完成体を失うのは…」
彼の手には、ホワイトアッシュの杭。
でも…あの娘の前からいなくなるわけには…
…死ぬわけにはいかない
私は魔力を振り絞って、油断して動きを止めたトーレの足にバインドをかけた。
「…プラズマランサー!!」
四方から計四発のプラズマランサーを撃った。
トーレは叫び声を上げて倒れる。
「これで…一対一だな……」
スカリエッティの顔には恐怖が浮かんでいた。
「う、うわああああ!!」
彼は急いで私の胸に杭を打とうとするが、スピードを極めた私にとってはハエが留まるスピードだ。
《Riot Zamber》
私はライオットザンバーを両手で持ち、自分を拘束している糸ごと、左下から右上へ薙ぐように彼を切り裂いた。
血をまき散らしながら真っ二つになって倒れ、砂と化して崩れていく彼を見て、私はやっと息をついた。
バルディッシュをアサルトモードに戻し、省魔力状態にするため、マントを切り離す。
89 :この温もりをただ抱きしめたくて:2008/02/19(火) 01:20:38 ID:LAZT6Jv2
『なのは…こっちは終わったから…今戻るね…』
『う…ん……。…大丈夫?フェイト』
『うん…なのはこそ…大丈夫?』
念話の調子が悪い。それほど自分は力を消耗しているだろうか?
『にゃはは、大丈夫だよ?ゆっくり戻ってきて良いから』
『うん……』
違和感を覚えながら念話を切り、立ち上がる。
銀の所為で傷口の治りが遅く、血が滴った。周りを見回すと、敵のスレイブ達は全く見えなかった。
見て取れるのは気絶した二人だけだ。
私はエクソシスト達にそこを頼んで、なのは達の下へと飛んだ。
続く
90 :アクエリアス:2008/02/19(火) 01:23:38 ID:LAZT6Jv2
後書き
好きなキャラいじめは大好きです。StS24話の戦闘がダサかったので変えましたが…あんまり変わらない?orz
都築はまた明日。
お目汚し失礼しました。
ではノシ
92 :アクエリアス:2008/02/20(水) 01:30:42 ID:LAZT6Jv2
またこっちにフェイなのパラレル小説投下いたします。
前書き
プレシア母さんかっこいい!!
93 :この温もりをただ抱きしめたくて:2008/02/20(水) 01:32:49 ID:LAZT6Jv2
フェイトが、スカリエッティを倒しに行ってから数分後、私達にまたあの強大な魔力が近づいてきた。
無数の蝙蝠がどこからともなく現れ、人の形になっていく。
「……あれは…いないようね」
第一声はそれだった。本当にそれが目的で来たようだ。
「プレシア・テスタロッサ…!!」
はやてが呟く。プレシアはなのはとはやてに視線を移した。
「まあ、ここで待っていれば戻ってくるのでしょう?でも…その前にあなた達を倒さなければならないわね」
彼女の周りに、フェイトと同じ電気質のスフィアが幾つも出来る。それが纏まり、真っ直ぐ私達に向かってきた。
「エクセリオンバスター!!」
魔力と聖力がぶつかり合い、拮抗する。そしてそのまま爆発した。
「……少しは…楽しませてくれそうね…」
この人…やっぱり相当強い。
「なのはちゃん、大丈夫か!?」
「大丈夫。でも、気をつけて…!」
「分かっとる」
94 :この温もりをただ抱きしめたくて:2008/02/20(水) 01:33:30 ID:LAZT6Jv2
相手の様子を見ていると、今度は自分たちの周りにスフィアが形成された。
避けられない。
《Oval Protection》
「ファイア」
攻撃が当たると同時に聖力を削られるように消費する。
…やばい、保たないかも…。
連打攻撃が終わり、やっと防御を解く。
はやてはなのはが肩で息をするのを見て焦った。
生憎、ここに高速機動型はいない。一旦相手から離れて、長距離戦に持ち込むしかないが相手はそんな暇は与えてくれないだろう。
どちらかが囮になるしか…。
『なのはちゃん…』
『分かってる……』
この二人でどちらの方が白兵戦に向いているかと言えば、なのはの方だ。
しかし、こんなに消耗している今、相手がどんな手で来るかも分からずに突っ込むことは無謀とも言える。
『はやてちゃん…早く離れて一気に墜として』
『でも…!!』
『私は大丈夫だから…』
《A. C. S., standby》
「アクセルチャージャー機動!!」
95 :この温もりをただ抱きしめたくて:2008/02/20(水) 01:34:18 ID:LAZT6Jv2
《Strike Flame》
レイジングハートがエクシードモードA.C.Sに変型した。
「A.C.Sドライバー!!」
《Charge》
それを見て、はやては急いで距離を取る。
『無茶したらあかんよ…!!』
『うん!!』
なのははそのままプレシアに突っ込んだ。
「…私に正面からぶつかって来るなんて、良い度胸ね」
そう笑いながら、シールドを展開した。
なのはは突っ込みながらも、レイジングハートを振り上げて、斬りかかるようにシールドを破る。
だが、そのシールドは破られることを前提に作られたようにあっさりと割れた。
「なっ…!?」
ふと、フェイトの戦い方を思い出す。
「機動力重視…!?」
なのはは周りを見る暇もなしにバリアを展開する。
「ファイア…」
96 :この温もりをただ抱きしめたくて:2008/02/20(水) 01:35:09 ID:LAZT6Jv2
丁度死角になるようなところから、フォトンバレットが襲ってきた。
強力な魔力が煙となり、なのはの視界を奪う。だからと言って、バリアを解除して飛び出すのも危険すぎる。
煙が晴れるまで待っていると、そこにプレシアの姿は無かった。
まさか…!?
『はやてちゃん…!?』
『なのは…ちゃ…!!』
苦しそうな念話に、急いで彼女の姿を探すと遠くでデバイスを交えている二人が見えた。
あっちが狙い…!?
「長距離砲撃モード!!急いで!!」
《All right》
レイジングハートを元の形に戻し、砲撃準備に入る。
「間に合って!!」
《Divine buster. Extension》
カートリッジを消費して、砲撃を放つ。それと同時に、空から雷が落ちるのが見えた。
なのははすぐさまその砲撃を追いかけるようにはやてのところへ急いだ。
爆発の中から、誰か人が落ちてくる。
「…!!はやてちゃん!!」
呼びかけるも意識はなく、そのまま墜落していく。
97 :この温もりをただ抱きしめたくて:2008/02/20(水) 01:36:00 ID:LAZT6Jv2
《Axel Fin》
両手をいっぱいに伸ばし、落ちていくはやてに向かっていく。
地面から約数メートルというところでキャッチし、なのはが安堵の息を漏らすが、
「…サンダーレイジ」
真上から雷が落ちてくる。シールドを張るが、落下のスピードと合わさって、なのはは地面に直撃しそうになった。
だが、何かに支えられたようにスピードが弱まった。
「なのは…ちゃん…。ごめ…」
抱えられた彼女が、下にフローターフィールドを形成していてくれたらしい。
「はやてちゃん……大丈夫!?」
木に寄りかかれるように彼女を下ろした。
「ごめんな……右腕に力が入らへん」
腕を調べるが、骨は折れていない。だが、腕に黒い痣のようなものが出来ていた。きっと魔力に当てられたのだろう。
「はやてちゃんはここにいて」
「でも…!!」
はやてが次を言う前に、なのはは空へ飛び上がった。
「…皆……自分勝手やな…」
はやては俯いて左手で拳を握って、地面を一度叩いて空を見上げると、二人が対峙していた。
98 :この温もりをただ抱きしめたくて:2008/02/20(水) 01:37:44 ID:LAZT6Jv2
************
「一人はもう駄目になったの?」
つまらなそうにプレシアは言った。なのはは唇を噛んでプレシアを見つめた。
「何故…そんなに人を嫌うんですか?」
プレシアはそれをただ見ている。
「人とバンパイアだって…対等に仲良く暮らしていくことは出来るはずです!!
それは…いきなり自分の娘を殺されそうになって…憎むのは分かります!人間にも改善するべきとことは沢山あります!
でも…あなた達も歩み寄ってくれなきゃ、距離は全然縮まらないんです…!!」
話を出来るんだから、きっと通じ合えるはずなんだ。
でも、
「…言いたい事は……それだけ?」
こんなに一生懸命に話してるのに、
なんで伝わらないのだろう?
99 :この温もりをただ抱きしめたくて:2008/02/20(水) 01:38:32 ID:LAZT6Jv2
「あなたは…食物の気持ちを考えたりするの?」
彼女は無表情にそう言った。
「食べ物と対等なんて…反吐が出るわ。
あなたはいつも話し合いで解決できると思っているようだけど、万人にそれが通用するとは思わない事ね」
何かが心の奥にドシンと落ちた。
今までの自分を、全部否定されたようで。
呆けていると、プレシアの周りに巨大なスフィアが展開された。
《Master!!》
レイジングハートに呼びかけられて、それに気がつき、シールドを張る。
「同じ手が通用すると思っているの?」
凄い早さでプレシアが目の前に来て、デバイスを振り上げていた。
「くっ…!!」
バリアブレイクも付加されているのか簡単にシールドが破れた。
「ファイア」
《ProtectionEX》
ギリギリで再びバリアを張る。これじゃあいつまでも防戦一方だ。なんとか攻めないと…。
100 :この温もりをただ抱きしめたくて:2008/02/20(水) 01:39:40 ID:LAZT6Jv2
その時、フェイトからの念話がきた。
『なのは…こっちは終わったから…今戻るね…』
『う…ん……。…大丈夫?フェイト』
『うん…なのはこそ…大丈夫?』
何でもないように答えたが、完全に念話にも疲れが出てしまっている。
『にゃはは、大丈夫だよ?ゆっくり戻ってきて良いから』
それでも今、彼女をこの人に会わせたくない。だからわざと平気なふりをした。
『うん……』
訝しげだったが、彼女は納得してくれた。念話が切れて、冷静になるために一つ息を吐く。
基本的に私のようなセンターガードは動かずに視野を広く持って正確に相手に攻撃を入れなければならない。
でも、すでに近距離戦に持ち込まれている。一度離さなければならない。
二人で出来なかったことを一人で出来るだろうか…。
「来ないのなら…こちらから行くわよ」
プレシアが何かを詠唱すると、デバイスが光った。だが、その光は一度消える。
そして、再び光り、魔法陣が広がった。
「サンダースマッシャー」
デバイスから砲撃が発射される。
「ディバインバスター!!」
攻撃を撃ち返すと同時に威力を弱めて押されるままに後ろに下がる。そうすれば…。
長距離とは行かないが、近距離では確実に当てられない距離まで下がれた。
101 :この温もりをただ抱きしめたくて:2008/02/20(水) 01:40:26 ID:LAZT6Jv2
「ここからなら…!!」
《Load cartridge》
薬莢が落ちる。
「スターライトォ…ブレイカァアアー!!!」
確実にこれは避けられないはず。
太い一本柱にも見える大威力砲撃が、プレシアの身体を直撃したのが見えた。
「これ…で……」
もう自分の聖力はほぼゼロに近い。これで終わらなかったら…。
「う、そ…」
煙が晴れたとき、なのはは自分の目を疑った。服がボロボロになりながらも、その人はまだそこに飛んでいた。
「少し…甘く見すぎていたようね……」
プレシアはそう笑った。まだ余裕がある顔だ。なのははこれ以上聖力消費を避けるために一度地上に降りるようと降下した。
しかし、身体が何かによって抑えられた。
「バインド…!?」
「……いい暇つぶしになったわ」
ゆっくりとプレシアが近づいてくるのを、なのはは見ていることしかできない。
「さっきの…」
102 :この温もりをただ抱きしめたくて:2008/02/20(水) 01:41:09 ID:LAZT6Jv2
デバイスが光ったとき。あの時に既にバインドを設置しておいたということか。
どこに降りるか分からないのに、バインドを設置するなんて、そうとう魔力が残っていなければ出来ない。
やはり…敵わないのか……。
「それじゃあ、死になさい」
複数の環状魔法陣の張り付いた剣のようなものがプレシアを取り巻く。
なのははカートリッジを二発ロードして、無理矢理自分に聖力を溜めた。
「サンダー…ブレイド」
《ProtectionEX》
お願い…保って!!
「…ブレイク」
次の瞬間、刺すような痛みが体中に突き抜けた。
「ああぁっっ…!!」
意識が落ちそうになるのを何とか持ちこたえさせる。
でも、身体はもう浮力を失っていた。
流石にこの高さ…死んじゃうかな?
なのはは落ちながら、朧気な意識でそんなことを考える。
103 :この温もりをただ抱きしめたくて:2008/02/20(水) 01:41:58 ID:LAZT6Jv2
もう一度…彼女に……
目を閉じる。涙が溢れそうだった。
だが、固い地面はいつまで待っても来ない。代わりに誰かに包まれているような優しい感覚があった。
目をゆっくり開けると、恋い焦がれていた紅い瞳が、私を優しく包んでくれていた。
「なのは……ごめんね、待たせちゃって」
彼女がゆっくり地上に降りる。
「フェイ、ト……」
「大丈夫…後は任せて…」
彼女は私をそっと地面に寝かせると、プレシアを見上げ、向かっていった。
私はその背を、もう見ていることしかできなかった。
Fin.
後書き
今回ははやてを精神的にいじめてみました。
862 :アクエリアス [sage] :2008/02/21(木) 01:04:03 ID:0ZIGwUNz
今日はこっちに投下できそうです。
フェイなのパラレル小説第二十一章投下いたします。
ギリギリかもしれないので途中で止まったら誰か支援してくれると嬉しいです。
863 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/21(木) 01:05:11 ID:0ZIGwUNz
「やっと来たのね…。随分と遅かったじゃない」
やっと楽しみが来たというようにプレシアは笑った。
「母さん……」
「あなたに…母さんなんて呼んで欲しくないわ」
心底憎々しそうにフェイトを睨み付けた。
「私は…あなたと戦いたくないです」
「そう…じゃあ、無抵抗で死んでくれるということね」
プレシアの手から砲撃が放たれる。
フェイトはそれを最小限の動きで躱した。さっき受けた傷が痛み出す。
でも、それに構っていられるほどの余裕はない。
「ほんの少し前だったら、母さんに死ねと言われたら死んでいたかもしれない。
でも!!たとえ母さんが私をいらないとしても、今は私を必要としてくれる人がいるんです!!」
叫ぶたびに、痛みが駆け上がってくる。
「だから…私は、母さんが分かってくれるまで説得するつもりです!!」
それでも私は叫び続けた。母さんが驚いたように一度目を瞬かせると、蔑んだように私を見た。
「不良品のくせに…私に逆らうなんて良い度胸ね」
プレシアがデバイスを振り上げる。空に暗雲がたちこめ、雷が轟く。
864 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/21(木) 01:06:02 ID:0ZIGwUNz
やっぱり…駄目なんだろうか?
任せてとは言ったが、はっきり言って魔力も気力もほぼゼロに近い。
どうすれば…。
だが、攻撃の直前に、下から白い砲撃が上がってきた。
予測していなかったのか、プレシアはそれをまともにうけた。
『少しは貢献せんとな…』
『はやて…!?』
遠目にはやてが空を見上げているのが見えた。
『…大丈夫。非殺傷設定やし、威力もそんなにあらへん』
『…ありがとう』
正直、いまのを受けきる自信はなかった。
「くっ…あの小娘!!」
プレシアは逆上して、はやてに向かって急降下し始めた。
やばい…!!
フェイトが追いかける。間に合いそうにない。
「はやて!!」
消耗しきっているのか、はやての反応が鈍い。プレシアの誘導弾がはやてに直進した。
865 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/21(木) 01:06:36 ID:0ZIGwUNz
「はやてちゃん!!」
そこになのはが現れ、はやてを抱えて横に跳んだ。
はやてのいた場所は、地面が抉れて煙を出していた。
降りてきたプレシアが今度は砲撃を放とうとする。なのはが防御するためにシールドを張る。
だが、ほとんど聖力を使い切ってしまったなのはでは防ぎきることは不可能だ。
《Sonic Move》
ソニックムーブで無理矢理二人の間に割り込み、咄嗟に背に庇う。痛みに耐えるため私は歯を食いしばった。
だが、いつまで経ってもそれはやって来ない。
恐る恐る後ろを振り返ると、そこには、
「……アリシア?」
プレシアが呟く。
「母さん…もう、やめようよ?」
アリシアが悲しそうにそう言った。
「…アリシア、どいて?母さんは…やらなきゃいけないことがあるの」
「フェイトを殺すの?」
その口調は、まるで純粋な子供そのものだった。
「…そうよ。だからどいて?ね?」
866 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/21(木) 01:07:26 ID:0ZIGwUNz
聞いたことのないような優しい声に、フェイトは顔を歪めた。
プレシアの言葉を振り切り、アリシアはフェイトの方を向いた。
「…初めまして、フェイト。こんな出会いになっちゃったけど…」
自分とそっくりだが、笑った顔は彼女の方が似合う気がした。
「フェイトは…人と一緒に仲良く暮らしていきたいんだよね?」
「…うん」
幼い子供のようにそう答えた。
彼女は再びプレシアの方を向き、はっきりした声で再び話しかけた。
「母さん…私もフェイトと一緒で、人間と仲良く暮らしていきたい!」
プレシアが、驚きを隠せずに笑った。
「アリシアもそんな事を言って……私達は人の血を吸わなければ活動できないのよ?」
フェイトはアリシアと並ぶように立った。
「それでも…!!人とは自分の意志を話し合える!!だから、絶対気持ちを通じ合わせることは出来ます!!」
フェイトがもう一度叫んだ。
どうか
伝わって
867 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/21(木) 01:08:07 ID:0ZIGwUNz
「フェイト……」
プレシアが振り上げていたデバイスを下ろした。
「それに…母さんも…私があんな風にならなかったら…きっと、こんなことしなかった。だって母さん、あんなに優しかったもん…」
ね?と、確かめるようにアリシアはプレシアを見上げた。
フェイトも懇願するようにプレシアを見つめる。
だが、下ろされたデバイスはもう一度振り上げられた。雷が空から降ってくる。
「母さん!!」
フェイトはそれを避ける。だが、
「きゃああ!!」
叫び声を聞いてその声の主を探す。
「アリシア!?」
何年も眠っていて、急に身体が動くはずがない。そんなこと、少し考えれば分かることだった。
その魔力に当てられて、彼女の身体は木の葉のように吹き飛ばされた。
木にぶつかってすぐに止まったが、意識がなくなったらしい。
「母さん!何で!?」
フェイトが振り返ると同時に、再び雷撃。それをギリギリでまた避けた。
「人と共には…生きていけないのよ…」
俯いた顔から、そんな悲しみの籠もった呟きがフェイトの耳に届いた。
869 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/21(木) 01:09:12 ID:0ZIGwUNz
「母さん!!」
「私を倒さなければ…あなたの大切な人が死ぬわよ?」
フェイトを見つめる表情からは、何も読み取れない。
「かあさっ…!!」
呼びかける前に、何かが脇を通り過ぎた。
それがプレシア自身だと気づく前に、叫び声が聞こえた。
すぐさま身を翻すと、そこにあったのは、デバイスを折られ、腕から血を流して地面に倒れているなのはだった。
プレシアのデバイスは再び攻撃を与えようと、振り上げられていた。
《Haken Form》
「うおぉぉおおおお!!」
バルディッシュの声と同時にフェイトはプレシアに斬りかかった。
彼女のデバイスごと、右腕が飛ぶ。
プレシアは痛みに声もあげずに、フェイトから距離を取った。
「うわぁぁぁあああ!!!」
フェイトはそれを追いかけ、バルディッシュを振り上げる。
869 :アクエリアス [sage] :2008/02/21(木) 12:36:00 ID:0ZIGwUNz
頭に血が上って、何も考えられなかった
直線的で単純な攻撃
簡単に避けるどころか、反撃だって出来るはずなのに
プレシアは動かなかった
金色の魔法刃がプレシアの胸を貫いた。
「…!!」
血飛沫が顔に飛んで、フェイトは理性を取り戻した。
「かあ、さん…?」
訳が分からない。
でも、うっすらと笑いながら、灰と化していった母親を見て、何故なのかを理解した。
理解できてしまった。
870 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/21(木) 01:10:16 ID:0ZIGwUNz
「あ、ああ…」
叫びそうになった口を閉じて、懸命に耐える。
そうだ
まだ終わっていない
否
終わったのだから
続く
871 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/21(木) 01:11:58 ID:0ZIGwUNz
後書き
プレシアを止められるのは彼女だけだと思いました(結局止まってないけど
支援ありがとうございます。
あと残すところ三章…かな?長いようで結構短いです。
あともう少しだけお付き合いお願いします。
ではノシ
前:この温もりをただ抱きしめたくて-3
次:この温もりをただ抱きしめたくて-5
757 :アクエリアス [sage] :2008/02/19(火) 00:08:38 ID:7mz5aY5R
ではそろそろ行きます。
フェイなのパラレル小説です。
なんかバレンタインの時は小説ラッシュでしたね。
オレは…頑張りましたよorz
758 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/19(火) 00:09:53 ID:7mz5aY5R
第十八章 想い
目を覚ますと、白い部屋の中だった。
起き上がろうとするが、身体に力が入らず、頭だけを動かす。
「あら、起きたの?」
「……シャマル…」
彼女は私をのぞき込んで、良かった、と安堵の息を漏らした。
「何で…ここに運んだ?」
ここは第六教会の医務室だ。ほとんど私が怪我をすることはなかったが、付き添いでなら何度も来たことがある。
「あなたは…フォワード達やなのはちゃんを助けてくれたでしょう?」
無事だったんだ…。
私は心の中で安堵した。
「何故…そう思う?」
「見たまま、聞いたままにそう思ったのよ?」
私が身体を起こそうとすると、慌てて止められた。
「まだ動いちゃ駄目よ!酷い怪我なんだから…」
759 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/19(火) 00:11:56 ID:7mz5aY5R
そういえば…私は……。
靄がかかっていたように思い出せなかった事が、一気に頭を駆けめぐる。
「そう…か……」
私は、捨てられたのか……。
今までの母さんの言動を思い出すたびに、悲しみが胸を締め付けて、目頭が熱くなった。
「ソ…フェイトちゃん?何処か痛いの!?」
胸を押さえて横になったままうずくまる私を見て、シャマルが包帯を解き始める。
胸にあったはずの風穴は、針で縫われ閉じられていた。
これ…母さんが……
傷の確認をして、包帯を巻き直している彼女の手を振り払う。
純血のバンパイアなら、こんな傷くらい既に治っているはずだ。自分の傷の治りが遅い理由が、今になってやっと分かった。
気力で立ち上がり、壁に背を預ける。
「フェイト!?」
ドアが開き、誰かが入ってきた。
「なのは……?」
中途半端に巻かれた包帯から、大きな傷が見えている。彼女は私に駆け寄った。
760 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/19(火) 00:13:06 ID:7mz5aY5R
「駄目だよ!!動いちゃ!!!」
私はその手も振り払おうとした。
でも……
「なのは……ごめん……」
泣きそうな顔で私に抱きつく彼女を、また振り払うなんて出来なかった。
自分のしたことは…何て浅はかだったんだろう。
私は彼女を強く抱きしめた。身体のあちこちが軋んで痛みを発するが、些細なことだった。
「謝らないで…」
上目遣いに見上げてくる桔梗色の彼女の瞳から、涙がこぼれ落ちた。
私は彼女を抱く腕の力を更に強くした。
「ごめん……」
私の背をさする手のひらから、彼女の優しさが直接伝わってきた。
いつの間にか
こんなにも
私は腕の中の彼女の温もりをずっと感じていた。しかし、
「どうや〜?フェイトの様子は?」
761 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/19(火) 00:13:51 ID:7mz5aY5R
ドアが再び開いて、垢抜けた第一声。
なのはは驚いてフェイトの腕の中から抜け出した。
「駄目じゃないですか〜。はやてちゃん、今良いところだったのに…」
シャマルが面白そうに言った。そういえば、途中から存在を忘れていた。
なのはの顔が更に赤くなる。
そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに…。
フェイトはなのはの様子に苦笑した。
「えっ!?何しとったん?」
面白そうに聞いてくる。
何て順応性が高いんだ。今まで敵だったはずなのに…。
「フェイト…さん?」
その声に、私はまた入り口の方を見た。そこにいたのはフォワード四人と、アルフだった。
「……」
何て答えたらいいか分からなくて、私は次の言葉を待った。
「…フェイトが眠っている間、私が色々皆に話したよ…」
アルフが口を開いた。
762 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/19(火) 00:14:50 ID:7mz5aY5R
「……そう」
フェイトはそう返した。
重たい沈黙が続く。
「フェイト・テスタロッサさん」
堅苦しく呼ばれて、フェイトははやてに眼を向けた。
「あなたはフォワードメンバーや、なのはちゃん、そして私の命も救ってくれました。
それに、元々あなたは私達第六教会のフォワードです。
そちらが我々に全面的に協力、援助してくださるのなら、始めは色々と窮屈な思いをすることもあるかもしれませんが、
我々、第六教会及び聖王教会は喜んであなた達を迎えたいと思っています」
「……随分懐が広いんだね」
どう考えても、殺されて当然のはずの事をしたのだ。
「ま、普通ならこんな処置ありえへんやろうけど…そこは色々あってな。特になのはちゃんが頑張ってくれて」
今度はなのはの方に視線をうつした。
「…私、もっとフェイトのこと知りたい。一緒に…いたい」
いつも素直に気持ちをぶつけてくれた彼女。
「なのは…」
だから、私は
763 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/19(火) 00:15:53 ID:7mz5aY5R
「君が望むなら…私は一緒にいるよ」
「フェイトが、自分がいいと思った方を取らなきゃ…駄目だよ」
否というところを想像したのか、段々声が小さくなって行った。私は笑って彼女を抱きしめた。
「君の望むことが…私の望むことだよ。私は…なのはを愛しているから」
なのはの顔は、もう真っ赤だった。
「フェ、フェイト!!そんな恥ずかしいこと…!!」
やっぱりからかうと彼女は可愛かった。
横目で周りをみると顔を赤くしているのが数人。
「本当のことなんだけど…」
面白くてまだからかおうとする私に、はやてが一つ大げさに咳払いをした。
「つまり…それは了解してもらえたっちゅうことやな?」
「うん。そうだね」
はやてが笑ったので、私は曖昧に微笑み返した。
だが、すぐにまたキリッとした顔立ちに戻る。
「今日も来るんやろね……」
その言葉を聞いて、思い出した。
764 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/19(火) 00:16:50 ID:7mz5aY5R
「…日没まで…あとどれくらい?」
「あと一時間ってとこや…。第四、八、十一教会のメンバーがもう聖王教会を固めとるよ。
アースラのバンパイア達もや。私達もそろそろ行かんと」
アースラ……。聖戦で人間側についたバンパイア達の船か。私も…。
そう思い、自分の手元にあれがないことに気づく。
「バルディッシュは…?」
「…?ここにあるけど……」
シャマルが、バルディッシュを取り出した。私はそれを受け取る。
もう身体は動くようだ。
「フェイトちゃん、まさか…」
「…なのは達も行くんでしょう?だったら私も…」
「駄目よ!!まだ怪我治ってないし…」
「でも、母さんは……私を狙ってくる…」
バルディッシュをギュッと握った。
母の行ったことは理解できた。でも、納得できている訳ではない。
悲しさも、苦しさも、まだ胸で燻っている。
「分かった、でも無茶はあかんよ?」
「うん……分かってる。なのは達もね」
フェイトの表情を見て何か察したのか、なのはが口を開いた。
「…皆、少し…二人にしてくれないかな?」
「…ええよ。出発の用意が出来たら呼ぶな?」
「…うん」
765 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/19(火) 00:18:02 ID:7mz5aY5R
はやてに促されて、皆外に出て行った。
それを見送った後、なのははもう一度私の前に向き直った。
そして、無意識に強く握り過ぎて白くなった私の手を、慈しむかのように彼女は両手で包み込んだ。
「フェイト…大丈夫だよ…。あなたは欠陥品でもオモチャでもない。たった一人の掛け替えのない人。
私にとっては一番大切な…」
不意に、自分の頬に何か温かい流れを感じた。
「フェイト…大好き……」
「なのは…」
嗚咽が漏れそうになる。今度は彼女が、私を抱きしめた。
「辛かったら、泣いても…いいんだよ?」
いつもと逆の立場に、違和感はなかった。
ただ、そこには温もりがあった。
私は初めて、声をあげて、誰かに抱きしめられて泣いた。
今までの苦しさも悲しさも、全部流しされるように。
「……落ち着いた?」
彼女が頃合いを見計らって聞いてきた。
「うん…大丈夫。ありがとう」
766 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/19(火) 00:18:25 ID:7mz5aY5R
「じゃあ…行こうか?あ、無理しちゃ駄目だよ?」
「大丈夫だよ……なのはがいてくれるから」
フェイトはそう言って笑うと、バリアジャケットを纏った。
黒いマントが靡く様は、まるでナイトの様だ。その様子に見とれて止まってしまった私に、彼女は手を差し出してくれた。
私は照れながらもその手を取った。
やっと分かり合えた心
だけど
まだ始まっても、終わってもいない
物語は、最後の戦いへ
Fin.
768 :アクエリアス [sage] :2008/02/19(火) 00:25:38 ID:38lzx7kZ
後書きで規制くらいましたorz
一行後書き
王子フェイトの辞書に恥ずかしいセリフ禁止という文字はない。
癖でFinって書いちゃったけど続くですorz
ではこれの都築は一時間後に。
書き込めなかったら避難所にいます
79 :アクエリアス:2008/02/19(火) 01:10:47 ID:LAZT6Jv2
すみません、こちらに投下させていただきます。
フェイなのパラレル小説です。
前書き
なのはの中で好きな男キャラはバルディッシュとザフィーラ
80 :この温もりをただ抱きしめたくて:2008/02/19(火) 01:12:29 ID:LAZT6Jv2
第十九章 戦い ――雷――
「洒落にならん量やな…」
はやては空の向こうの無数の黒い粒を見て、ため息をついた。
このままでは、10年前と同じ事の繰り返しだ。
「大丈夫だよ…この戦いの元凶は一人だから…」
スカリエッティ。あいつを倒せば、統率は一気になくなる。
あのホムンクルス達――ナンバーズ――も…きっと戦いをやめるはずだ。
「本当に無理しないでね…」
「……うん。なのはもね」
三人はそれぞれバリアジャケットを展開し、前線で待ちかまえた。
ヴィータとシグナム達は別の場所ですでに戦い始めている。
こちらにも沢山のスレイブやガジェットがやってきた。
「ディバイン、バスター!!!」
なのはが大部分を蹴散らす。
81 :この温もりをただ抱きしめたくて:2008/02/19(火) 01:13:35 ID:LAZT6Jv2
《Zamber Form》
当たりきらなかった部分を私が突っ込んで切っていく。
その間に、
「来よ、白銀の風、天よりそそぐ矢羽となれ…フレースヴェルグ!!」
はやてがチャージし、砲撃を放つ。
これが初めての連携とは思えないほど凄まじい。
だが、それでも数は減るどころか増える一方だった。
「ガジェットの数が…多すぎるね……」
スレイブだけなら、増えることはない。
「せやな…どうにかしてもとを断たへんと…」
少し息を切らし気味になっている二人。
それはそうだ。もう何発砲撃を撃ったか分からない。しかもなのははエクシードモード。消耗が早い。
これ以上の長期戦は…。
私は一度バルディッシュをアサルトモードに戻した。
「フェイト…?」
「私が…群れの中に突っ込んで、ガジェットの出元を潰してスカリエッティを探す。だから、二人はなるべく体力温存して」
「そ、そんなのあかんやろ!危険過ぎや!!」
私は振り返って笑った。
「私を信じて…?」
82 :この温もりをただ抱きしめたくて:2008/02/19(火) 01:14:44 ID:LAZT6Jv2
はやてはそれを見てため息をつき、なのはは苦笑した。
「このままやったらいつまでも終わらへんやろしな…しゃあないか…。無茶せえへんといてな」
「…絶対無事で帰ってきてよね…!!」
「…うん!!」
私は力強く返事をすると、教会に張られた結界の外の敵の本陣へ向かっていった。
***********
「ぐぁぁあああああああ!!!!」
「ハーケンセイバー!!」
スレイブもろとも無数のガジェット達も破壊していく。
意志のないスレイブ達は、吸血鬼の血に自我を食われているのだろう。
思い切って突っ込んだのは良いが、数が多すぎて一行に前に進めそうにない状態だ。
「ソニックムーブで突っ込んだ方が早いかな?」
でもそれでは、スカリエッティを探すことが出来ない。
《Is used W.A.S?》
バルディッシュが珍しく提案してくる。
「バルディッシュは大丈夫?」
二つのことを制御するのは大変だろう。
83 :この温もりをただ抱きしめたくて:2008/02/19(火) 01:15:31 ID:LAZT6Jv2
《No problem》
「分かった…。それじゃあ、行くよ……」
《Yes sir. W.A.S. Full Driving》
魔力で出来た百以上の球体を、四方八方に飛ばした。
そして自分は、
《Sonic move》
一筋の光となって、更に奥へと進んだ。
数分もかからずに、ガジェットの出口と思われる洞窟を見つけた。どうやら、出ているのはここだけらしい。
私は周りの敵を打ち落とし、無数のフォトンスフィアを形成した。
「フォトンランサー・ファランクスシフト……」
ガジェットが再び入り口から出てくる。これ以上増やすわけにはいかない…。
「打ち砕け!!ファイア!!!」
奥まで到達させると、機械が爆発した衝撃で連鎖的に壊れたのか、激しい地響きと共に洞窟ごと崩れた。
「よし…!!」
これで、もう敵が増えることはない。
「フェイトお嬢様……」
警戒して距離を取りながら振り向く。
84 :この温もりをただ抱きしめたくて:2008/02/19(火) 01:16:20 ID:LAZT6Jv2
「誰だ!?」
そこには見慣れた顔が二人。
「トーレ…、セッテ……」
《W.A.S. successful》
丁度バルディッシュがスカリエッティを見つけたらしい。
「…良い子だ」
場所は分かった。でも、この場を乗り切らなければ…。
「あなたは、私達を裏切ったと思ってよろしいでしょうか?」
「……君たちも…スカリエッティの命令がなければ、こんな風に動いてなかったんじゃないか?」
話し合う。
彼女が教えてくれたことだ。
「こんな戦いは不毛だ!!…人間と、バンパイアと、スレイブだって。対等に生きていくことは可能だ!!」
「…そんなことはどうでもいいことです」
トーレがISを構えながら答える。
「私達はドクターの夢をかなえたいだけですから」
「それじゃ…そのドクターがいなくなったとしたら…?」
85 :この温もりをただ抱きしめたくて:2008/02/19(火) 01:17:04 ID:LAZT6Jv2
フェイトの魔力が飛躍的に高まった。
二人が怯んで後ずさる。それを見て、私は空へ飛び上がった。
「に、逃がすか…!!」
すぐに彼女たちは追いかけてくる。
フェイトはスカリエッティの方へと向かう。その場所からはそれほど遠くない高台に、彼は立っていた。
「おや、フェイトくん。どうしたんだい?こんなところで」
スカリエッティはフェイトに向かって、いつもの嫌悪感しか抱けないような笑みを浮かべた。
「今すぐこんなことをやめさせろ…って言っても無駄なんだろうな…」
《Zamber Form》
フェイトはスカリエッティを睨みながら、バルディッシュを構えた。
「ああ、それはそうだよ。人間は邪魔なんだ。まあ、我々の良いなりになってくれるというのなら話は別だが」
スカリエッティの右手に組み込まれているデバイスをいやらしくくねらせた。
それに反応して、地面から赤い魔力糸が何本も突き出てきた。
「くっ…!!」
その糸から飛んで逃れる。そのうちに、先程の二人も私に追いついてしまっていた。
「三対一か…」
でも、ここに逃げるという戦法はない。
86 :この温もりをただ抱きしめたくて:2008/02/19(火) 01:17:59 ID:LAZT6Jv2
「フェイトお嬢様でも、ドクターの夢を妨害するなら…容赦しません!!」
「する必要ないよ…。されたらつまんなくなるからね。…バルデュッシュ、ライオット」
《Riot Blade》
バルディッシュが変形し、細身の片刃になる。
「おいで…遊んであげるよ」
「うおおおお!!」
セッテが手に持っていたブーメランブレードの片方をフェイトに向かって投げた。
フェイトはそれをバルディッシュではじき飛ばし、
《Sonic move》
一気に距離を詰める。その早さに対処できず、もう一方のブーメランブレードでフェイトが振り下ろしたバルディッシュを受け止める。
だが、力を受け止めきれず、刀身が折れ、バランスを崩した。
「ライドインパルス!!」
後ろを振り向くと、自分と互角くらいのスピードでトーレが迫ってきた。
フェイトは咄嗟にライオットブレードの片方を切り離し、左から右へ背中に回した。
そのまま回した片方を右手で持つ。振り返りざまに、左の刀を追撃しようとするセッテの腹部に峰打ちで当てて吹き飛ばした。
そして、向かってきたトーレのインパルスブレードを右で受け止める。
だが、無理な体勢のため、フェイトははじき飛ばされてしまった。
地面を転がり、大木に身体をぶつけた。
「ぐあっ…!!」
一瞬胃液が食道を逆流しそうになるが、耐えて立ち上がる。
87 :この温もりをただ抱きしめたくて:2008/02/19(火) 01:19:03 ID:LAZT6Jv2
「セッテ!大丈夫か!?」
二人を見ると、セッテは完全に気絶しているらしい。
「これで…一人か……」
フェイトはその木にもたれ掛かる。
「この…!!」
頭に血が上ったのか攻撃が直線的になる。フェイトは両手を構えた。だが、
「さっき…三対一と自分で言わなかったかな?」
左足に痛みが走る。見ると、数本の魔力糸が太ももとふくらはぎを突き刺していた、
痛みを堪えて急いで切り離し、横に跳ぶ。
それでも一つテンポが遅れて、腹部を思い切り深く切られた。赤い血飛沫があがる。再び地面に転がった。
だが、今度は立つことが出来ず、近くの木に寄りかかる。
傷の焼かれたような痛みが身体の機能を貪っている。
「銀…?」
銀でしか見られない反応だ。
「私の娘達はね、対バンパイアようにも出来ているのさ…」
彼が楽しそうに私に近づき、見下ろした。
再び手がうねり、私は抵抗も出来ずに木に縛り付けられた。
88 :この温もりをただ抱きしめたくて:2008/02/19(火) 01:20:00 ID:LAZT6Jv2
残念だ…。非常に残念だよ。君のようなすばらしい完成体を失うのは…」
彼の手には、ホワイトアッシュの杭。
でも…あの娘の前からいなくなるわけには…
…死ぬわけにはいかない
私は魔力を振り絞って、油断して動きを止めたトーレの足にバインドをかけた。
「…プラズマランサー!!」
四方から計四発のプラズマランサーを撃った。
トーレは叫び声を上げて倒れる。
「これで…一対一だな……」
スカリエッティの顔には恐怖が浮かんでいた。
「う、うわああああ!!」
彼は急いで私の胸に杭を打とうとするが、スピードを極めた私にとってはハエが留まるスピードだ。
《Riot Zamber》
私はライオットザンバーを両手で持ち、自分を拘束している糸ごと、左下から右上へ薙ぐように彼を切り裂いた。
血をまき散らしながら真っ二つになって倒れ、砂と化して崩れていく彼を見て、私はやっと息をついた。
バルディッシュをアサルトモードに戻し、省魔力状態にするため、マントを切り離す。
89 :この温もりをただ抱きしめたくて:2008/02/19(火) 01:20:38 ID:LAZT6Jv2
『なのは…こっちは終わったから…今戻るね…』
『う…ん……。…大丈夫?フェイト』
『うん…なのはこそ…大丈夫?』
念話の調子が悪い。それほど自分は力を消耗しているだろうか?
『にゃはは、大丈夫だよ?ゆっくり戻ってきて良いから』
『うん……』
違和感を覚えながら念話を切り、立ち上がる。
銀の所為で傷口の治りが遅く、血が滴った。周りを見回すと、敵のスレイブ達は全く見えなかった。
見て取れるのは気絶した二人だけだ。
私はエクソシスト達にそこを頼んで、なのは達の下へと飛んだ。
続く
90 :アクエリアス:2008/02/19(火) 01:23:38 ID:LAZT6Jv2
後書き
好きなキャラいじめは大好きです。StS24話の戦闘がダサかったので変えましたが…あんまり変わらない?orz
都築はまた明日。
お目汚し失礼しました。
ではノシ
92 :アクエリアス:2008/02/20(水) 01:30:42 ID:LAZT6Jv2
またこっちにフェイなのパラレル小説投下いたします。
前書き
プレシア母さんかっこいい!!
93 :この温もりをただ抱きしめたくて:2008/02/20(水) 01:32:49 ID:LAZT6Jv2
第二十章 戦い ――星――
フェイトが、スカリエッティを倒しに行ってから数分後、私達にまたあの強大な魔力が近づいてきた。
無数の蝙蝠がどこからともなく現れ、人の形になっていく。
「……あれは…いないようね」
第一声はそれだった。本当にそれが目的で来たようだ。
「プレシア・テスタロッサ…!!」
はやてが呟く。プレシアはなのはとはやてに視線を移した。
「まあ、ここで待っていれば戻ってくるのでしょう?でも…その前にあなた達を倒さなければならないわね」
彼女の周りに、フェイトと同じ電気質のスフィアが幾つも出来る。それが纏まり、真っ直ぐ私達に向かってきた。
「エクセリオンバスター!!」
魔力と聖力がぶつかり合い、拮抗する。そしてそのまま爆発した。
「……少しは…楽しませてくれそうね…」
この人…やっぱり相当強い。
「なのはちゃん、大丈夫か!?」
「大丈夫。でも、気をつけて…!」
「分かっとる」
94 :この温もりをただ抱きしめたくて:2008/02/20(水) 01:33:30 ID:LAZT6Jv2
相手の様子を見ていると、今度は自分たちの周りにスフィアが形成された。
避けられない。
《Oval Protection》
「ファイア」
攻撃が当たると同時に聖力を削られるように消費する。
…やばい、保たないかも…。
連打攻撃が終わり、やっと防御を解く。
はやてはなのはが肩で息をするのを見て焦った。
生憎、ここに高速機動型はいない。一旦相手から離れて、長距離戦に持ち込むしかないが相手はそんな暇は与えてくれないだろう。
どちらかが囮になるしか…。
『なのはちゃん…』
『分かってる……』
この二人でどちらの方が白兵戦に向いているかと言えば、なのはの方だ。
しかし、こんなに消耗している今、相手がどんな手で来るかも分からずに突っ込むことは無謀とも言える。
『はやてちゃん…早く離れて一気に墜として』
『でも…!!』
『私は大丈夫だから…』
《A. C. S., standby》
「アクセルチャージャー機動!!」
95 :この温もりをただ抱きしめたくて:2008/02/20(水) 01:34:18 ID:LAZT6Jv2
《Strike Flame》
レイジングハートがエクシードモードA.C.Sに変型した。
「A.C.Sドライバー!!」
《Charge》
それを見て、はやては急いで距離を取る。
『無茶したらあかんよ…!!』
『うん!!』
なのははそのままプレシアに突っ込んだ。
「…私に正面からぶつかって来るなんて、良い度胸ね」
そう笑いながら、シールドを展開した。
なのはは突っ込みながらも、レイジングハートを振り上げて、斬りかかるようにシールドを破る。
だが、そのシールドは破られることを前提に作られたようにあっさりと割れた。
「なっ…!?」
ふと、フェイトの戦い方を思い出す。
「機動力重視…!?」
なのはは周りを見る暇もなしにバリアを展開する。
「ファイア…」
96 :この温もりをただ抱きしめたくて:2008/02/20(水) 01:35:09 ID:LAZT6Jv2
丁度死角になるようなところから、フォトンバレットが襲ってきた。
強力な魔力が煙となり、なのはの視界を奪う。だからと言って、バリアを解除して飛び出すのも危険すぎる。
煙が晴れるまで待っていると、そこにプレシアの姿は無かった。
まさか…!?
『はやてちゃん…!?』
『なのは…ちゃ…!!』
苦しそうな念話に、急いで彼女の姿を探すと遠くでデバイスを交えている二人が見えた。
あっちが狙い…!?
「長距離砲撃モード!!急いで!!」
《All right》
レイジングハートを元の形に戻し、砲撃準備に入る。
「間に合って!!」
《Divine buster. Extension》
カートリッジを消費して、砲撃を放つ。それと同時に、空から雷が落ちるのが見えた。
なのははすぐさまその砲撃を追いかけるようにはやてのところへ急いだ。
爆発の中から、誰か人が落ちてくる。
「…!!はやてちゃん!!」
呼びかけるも意識はなく、そのまま墜落していく。
97 :この温もりをただ抱きしめたくて:2008/02/20(水) 01:36:00 ID:LAZT6Jv2
《Axel Fin》
両手をいっぱいに伸ばし、落ちていくはやてに向かっていく。
地面から約数メートルというところでキャッチし、なのはが安堵の息を漏らすが、
「…サンダーレイジ」
真上から雷が落ちてくる。シールドを張るが、落下のスピードと合わさって、なのはは地面に直撃しそうになった。
だが、何かに支えられたようにスピードが弱まった。
「なのは…ちゃん…。ごめ…」
抱えられた彼女が、下にフローターフィールドを形成していてくれたらしい。
「はやてちゃん……大丈夫!?」
木に寄りかかれるように彼女を下ろした。
「ごめんな……右腕に力が入らへん」
腕を調べるが、骨は折れていない。だが、腕に黒い痣のようなものが出来ていた。きっと魔力に当てられたのだろう。
「はやてちゃんはここにいて」
「でも…!!」
はやてが次を言う前に、なのはは空へ飛び上がった。
「…皆……自分勝手やな…」
はやては俯いて左手で拳を握って、地面を一度叩いて空を見上げると、二人が対峙していた。
98 :この温もりをただ抱きしめたくて:2008/02/20(水) 01:37:44 ID:LAZT6Jv2
************
「一人はもう駄目になったの?」
つまらなそうにプレシアは言った。なのはは唇を噛んでプレシアを見つめた。
「何故…そんなに人を嫌うんですか?」
プレシアはそれをただ見ている。
「人とバンパイアだって…対等に仲良く暮らしていくことは出来るはずです!!
それは…いきなり自分の娘を殺されそうになって…憎むのは分かります!人間にも改善するべきとことは沢山あります!
でも…あなた達も歩み寄ってくれなきゃ、距離は全然縮まらないんです…!!」
話を出来るんだから、きっと通じ合えるはずなんだ。
でも、
「…言いたい事は……それだけ?」
こんなに一生懸命に話してるのに、
なんで伝わらないのだろう?
99 :この温もりをただ抱きしめたくて:2008/02/20(水) 01:38:32 ID:LAZT6Jv2
「あなたは…食物の気持ちを考えたりするの?」
彼女は無表情にそう言った。
「食べ物と対等なんて…反吐が出るわ。
あなたはいつも話し合いで解決できると思っているようだけど、万人にそれが通用するとは思わない事ね」
何かが心の奥にドシンと落ちた。
今までの自分を、全部否定されたようで。
呆けていると、プレシアの周りに巨大なスフィアが展開された。
《Master!!》
レイジングハートに呼びかけられて、それに気がつき、シールドを張る。
「同じ手が通用すると思っているの?」
凄い早さでプレシアが目の前に来て、デバイスを振り上げていた。
「くっ…!!」
バリアブレイクも付加されているのか簡単にシールドが破れた。
「ファイア」
《ProtectionEX》
ギリギリで再びバリアを張る。これじゃあいつまでも防戦一方だ。なんとか攻めないと…。
100 :この温もりをただ抱きしめたくて:2008/02/20(水) 01:39:40 ID:LAZT6Jv2
その時、フェイトからの念話がきた。
『なのは…こっちは終わったから…今戻るね…』
『う…ん……。…大丈夫?フェイト』
『うん…なのはこそ…大丈夫?』
何でもないように答えたが、完全に念話にも疲れが出てしまっている。
『にゃはは、大丈夫だよ?ゆっくり戻ってきて良いから』
それでも今、彼女をこの人に会わせたくない。だからわざと平気なふりをした。
『うん……』
訝しげだったが、彼女は納得してくれた。念話が切れて、冷静になるために一つ息を吐く。
基本的に私のようなセンターガードは動かずに視野を広く持って正確に相手に攻撃を入れなければならない。
でも、すでに近距離戦に持ち込まれている。一度離さなければならない。
二人で出来なかったことを一人で出来るだろうか…。
「来ないのなら…こちらから行くわよ」
プレシアが何かを詠唱すると、デバイスが光った。だが、その光は一度消える。
そして、再び光り、魔法陣が広がった。
「サンダースマッシャー」
デバイスから砲撃が発射される。
「ディバインバスター!!」
攻撃を撃ち返すと同時に威力を弱めて押されるままに後ろに下がる。そうすれば…。
長距離とは行かないが、近距離では確実に当てられない距離まで下がれた。
101 :この温もりをただ抱きしめたくて:2008/02/20(水) 01:40:26 ID:LAZT6Jv2
「ここからなら…!!」
《Load cartridge》
薬莢が落ちる。
「スターライトォ…ブレイカァアアー!!!」
確実にこれは避けられないはず。
太い一本柱にも見える大威力砲撃が、プレシアの身体を直撃したのが見えた。
「これ…で……」
もう自分の聖力はほぼゼロに近い。これで終わらなかったら…。
「う、そ…」
煙が晴れたとき、なのはは自分の目を疑った。服がボロボロになりながらも、その人はまだそこに飛んでいた。
「少し…甘く見すぎていたようね……」
プレシアはそう笑った。まだ余裕がある顔だ。なのははこれ以上聖力消費を避けるために一度地上に降りるようと降下した。
しかし、身体が何かによって抑えられた。
「バインド…!?」
「……いい暇つぶしになったわ」
ゆっくりとプレシアが近づいてくるのを、なのはは見ていることしかできない。
「さっきの…」
102 :この温もりをただ抱きしめたくて:2008/02/20(水) 01:41:09 ID:LAZT6Jv2
デバイスが光ったとき。あの時に既にバインドを設置しておいたということか。
どこに降りるか分からないのに、バインドを設置するなんて、そうとう魔力が残っていなければ出来ない。
やはり…敵わないのか……。
「それじゃあ、死になさい」
複数の環状魔法陣の張り付いた剣のようなものがプレシアを取り巻く。
なのははカートリッジを二発ロードして、無理矢理自分に聖力を溜めた。
「サンダー…ブレイド」
《ProtectionEX》
お願い…保って!!
「…ブレイク」
次の瞬間、刺すような痛みが体中に突き抜けた。
「ああぁっっ…!!」
意識が落ちそうになるのを何とか持ちこたえさせる。
でも、身体はもう浮力を失っていた。
流石にこの高さ…死んじゃうかな?
なのはは落ちながら、朧気な意識でそんなことを考える。
103 :この温もりをただ抱きしめたくて:2008/02/20(水) 01:41:58 ID:LAZT6Jv2
もう一度…彼女に……
目を閉じる。涙が溢れそうだった。
だが、固い地面はいつまで待っても来ない。代わりに誰かに包まれているような優しい感覚があった。
目をゆっくり開けると、恋い焦がれていた紅い瞳が、私を優しく包んでくれていた。
「なのは……ごめんね、待たせちゃって」
彼女がゆっくり地上に降りる。
「フェイ、ト……」
「大丈夫…後は任せて…」
彼女は私をそっと地面に寝かせると、プレシアを見上げ、向かっていった。
私はその背を、もう見ていることしかできなかった。
Fin.
後書き
今回ははやてを精神的にいじめてみました。
862 :アクエリアス [sage] :2008/02/21(木) 01:04:03 ID:0ZIGwUNz
今日はこっちに投下できそうです。
フェイなのパラレル小説第二十一章投下いたします。
ギリギリかもしれないので途中で止まったら誰か支援してくれると嬉しいです。
863 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/21(木) 01:05:11 ID:0ZIGwUNz
第二十一章 伝え合い
「やっと来たのね…。随分と遅かったじゃない」
やっと楽しみが来たというようにプレシアは笑った。
「母さん……」
「あなたに…母さんなんて呼んで欲しくないわ」
心底憎々しそうにフェイトを睨み付けた。
「私は…あなたと戦いたくないです」
「そう…じゃあ、無抵抗で死んでくれるということね」
プレシアの手から砲撃が放たれる。
フェイトはそれを最小限の動きで躱した。さっき受けた傷が痛み出す。
でも、それに構っていられるほどの余裕はない。
「ほんの少し前だったら、母さんに死ねと言われたら死んでいたかもしれない。
でも!!たとえ母さんが私をいらないとしても、今は私を必要としてくれる人がいるんです!!」
叫ぶたびに、痛みが駆け上がってくる。
「だから…私は、母さんが分かってくれるまで説得するつもりです!!」
それでも私は叫び続けた。母さんが驚いたように一度目を瞬かせると、蔑んだように私を見た。
「不良品のくせに…私に逆らうなんて良い度胸ね」
プレシアがデバイスを振り上げる。空に暗雲がたちこめ、雷が轟く。
864 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/21(木) 01:06:02 ID:0ZIGwUNz
やっぱり…駄目なんだろうか?
任せてとは言ったが、はっきり言って魔力も気力もほぼゼロに近い。
どうすれば…。
だが、攻撃の直前に、下から白い砲撃が上がってきた。
予測していなかったのか、プレシアはそれをまともにうけた。
『少しは貢献せんとな…』
『はやて…!?』
遠目にはやてが空を見上げているのが見えた。
『…大丈夫。非殺傷設定やし、威力もそんなにあらへん』
『…ありがとう』
正直、いまのを受けきる自信はなかった。
「くっ…あの小娘!!」
プレシアは逆上して、はやてに向かって急降下し始めた。
やばい…!!
フェイトが追いかける。間に合いそうにない。
「はやて!!」
消耗しきっているのか、はやての反応が鈍い。プレシアの誘導弾がはやてに直進した。
865 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/21(木) 01:06:36 ID:0ZIGwUNz
「はやてちゃん!!」
そこになのはが現れ、はやてを抱えて横に跳んだ。
はやてのいた場所は、地面が抉れて煙を出していた。
降りてきたプレシアが今度は砲撃を放とうとする。なのはが防御するためにシールドを張る。
だが、ほとんど聖力を使い切ってしまったなのはでは防ぎきることは不可能だ。
《Sonic Move》
ソニックムーブで無理矢理二人の間に割り込み、咄嗟に背に庇う。痛みに耐えるため私は歯を食いしばった。
だが、いつまで経ってもそれはやって来ない。
恐る恐る後ろを振り返ると、そこには、
「……アリシア?」
プレシアが呟く。
「母さん…もう、やめようよ?」
アリシアが悲しそうにそう言った。
「…アリシア、どいて?母さんは…やらなきゃいけないことがあるの」
「フェイトを殺すの?」
その口調は、まるで純粋な子供そのものだった。
「…そうよ。だからどいて?ね?」
866 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/21(木) 01:07:26 ID:0ZIGwUNz
聞いたことのないような優しい声に、フェイトは顔を歪めた。
プレシアの言葉を振り切り、アリシアはフェイトの方を向いた。
「…初めまして、フェイト。こんな出会いになっちゃったけど…」
自分とそっくりだが、笑った顔は彼女の方が似合う気がした。
「フェイトは…人と一緒に仲良く暮らしていきたいんだよね?」
「…うん」
幼い子供のようにそう答えた。
彼女は再びプレシアの方を向き、はっきりした声で再び話しかけた。
「母さん…私もフェイトと一緒で、人間と仲良く暮らしていきたい!」
プレシアが、驚きを隠せずに笑った。
「アリシアもそんな事を言って……私達は人の血を吸わなければ活動できないのよ?」
フェイトはアリシアと並ぶように立った。
「それでも…!!人とは自分の意志を話し合える!!だから、絶対気持ちを通じ合わせることは出来ます!!」
フェイトがもう一度叫んだ。
どうか
伝わって
867 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/21(木) 01:08:07 ID:0ZIGwUNz
「フェイト……」
プレシアが振り上げていたデバイスを下ろした。
「それに…母さんも…私があんな風にならなかったら…きっと、こんなことしなかった。だって母さん、あんなに優しかったもん…」
ね?と、確かめるようにアリシアはプレシアを見上げた。
フェイトも懇願するようにプレシアを見つめる。
だが、下ろされたデバイスはもう一度振り上げられた。雷が空から降ってくる。
「母さん!!」
フェイトはそれを避ける。だが、
「きゃああ!!」
叫び声を聞いてその声の主を探す。
「アリシア!?」
何年も眠っていて、急に身体が動くはずがない。そんなこと、少し考えれば分かることだった。
その魔力に当てられて、彼女の身体は木の葉のように吹き飛ばされた。
木にぶつかってすぐに止まったが、意識がなくなったらしい。
「母さん!何で!?」
フェイトが振り返ると同時に、再び雷撃。それをギリギリでまた避けた。
「人と共には…生きていけないのよ…」
俯いた顔から、そんな悲しみの籠もった呟きがフェイトの耳に届いた。
869 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/21(木) 01:09:12 ID:0ZIGwUNz
「母さん!!」
「私を倒さなければ…あなたの大切な人が死ぬわよ?」
フェイトを見つめる表情からは、何も読み取れない。
「かあさっ…!!」
呼びかける前に、何かが脇を通り過ぎた。
それがプレシア自身だと気づく前に、叫び声が聞こえた。
すぐさま身を翻すと、そこにあったのは、デバイスを折られ、腕から血を流して地面に倒れているなのはだった。
プレシアのデバイスは再び攻撃を与えようと、振り上げられていた。
《Haken Form》
「うおぉぉおおおお!!」
バルディッシュの声と同時にフェイトはプレシアに斬りかかった。
彼女のデバイスごと、右腕が飛ぶ。
プレシアは痛みに声もあげずに、フェイトから距離を取った。
「うわぁぁぁあああ!!!」
フェイトはそれを追いかけ、バルディッシュを振り上げる。
869 :アクエリアス [sage] :2008/02/21(木) 12:36:00 ID:0ZIGwUNz
頭に血が上って、何も考えられなかった
直線的で単純な攻撃
簡単に避けるどころか、反撃だって出来るはずなのに
プレシアは動かなかった
金色の魔法刃がプレシアの胸を貫いた。
「…!!」
血飛沫が顔に飛んで、フェイトは理性を取り戻した。
「かあ、さん…?」
訳が分からない。
でも、うっすらと笑いながら、灰と化していった母親を見て、何故なのかを理解した。
理解できてしまった。
870 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/21(木) 01:10:16 ID:0ZIGwUNz
「あ、ああ…」
叫びそうになった口を閉じて、懸命に耐える。
そうだ
まだ終わっていない
否
終わったのだから
続く
871 :この温もりをただ抱きしめたくて [sage] :2008/02/21(木) 01:11:58 ID:0ZIGwUNz
後書き
プレシアを止められるのは彼女だけだと思いました(結局止まってないけど
支援ありがとうございます。
あと残すところ三章…かな?長いようで結構短いです。
あともう少しだけお付き合いお願いします。
ではノシ
前:この温もりをただ抱きしめたくて-3
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2008年04月21日(月) 15:34:14 Modified by gonn90