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その、明日の執務官に…

508 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 22:53:48 ID:Ae823tOe
それでは、
ネガティブティアナと過保護を自重しない執務官、所によりスバティア、な話です。
 シリアス、ちょっと長いです。10レス使用予定、嫌いな人はスルーで。

509 名前:その、明日の執務官に…[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 22:54:52 ID:Ae823tOe
 ――どんなに周りの人が否定しても、あたしには決して消えないコンプレックスがある――

 「凡人コンプレックス」――優秀だった大好きな兄さんと違って平凡な魔力と才能しかないあたし
――士官学校も空隊も落ちたあたし――前まで居た職場では、周りは皆才能の塊のような人達ばかり
だった。努力は才能を越えられない。でも、凡人のあたしでも、自分の出来ることを全力ですればい
いんだと教わったし、悟ったはずだった――それでも今になって自分の「凡人さ」に思い悩むのは、
あたしの上司と同僚があまりに優秀過ぎることと、超難関といわれる執務官への道の険しさが徐々に
分かり始めた故の焦燥、そして――天涯孤独のあたしが現在一番大切に想っている「あいつ」が、あ
まりにも才能豊かで、あたしから遠く離れていってしまった様に思えるせいなのだろう。

 そんなあたしの弱い心のせいで、敬愛する心優しい執務官が空から墜ちたのをみたとき、あたしは
自分に対する信頼を完全に失っていた・・・・・・




 ロストロギアの違法所持と研究の内部調査――ごく普通の任務のはずだったそれは、思いがけない
方向へ事態が進行した。研究対象内容は「質量兵器搭載の自立型機械兵器とその大量運用と強化のた
めの、とあるロストロギアの使用」という最悪なもの。さらに最悪なことに、調査対象組織は証拠隠
滅を企みそれに失敗、ロストロギアは暴走を始め、造られていた大量の機械兵器が暴走――個々の戦
闘力はさほど大したものではなかったが、異常に堅いバリアとその圧倒的な数、そして飛行型である
とがあたし達を苦しめた――

(シャーリー、プログラムの解析まであとどの位かかる?)
(あと15……いえ、10分だけ持ちこたえてください、フェイトさん)
広域範囲攻撃を交えながら、フェイトさんが上空で次々と機械兵器を打ち落とす。飛行魔法のあまり得
意でないあたしは、地上から幻影魔法を交えながらフェイトさんの援護。だけどあたしの魔力はそろそ
ろ限界。フェイトさんも肩で息をしていてかなり苦しそうだ。
(ティアナ、無理はしないで。後は私一人でなんとかする。)
(でも、フェイトさん!)

510 名前:その、明日の執務官に…[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 22:55:54 ID:Ae823tOe
 分かっている、分かってはいる。今のあたしの残存魔力では、フェイトさんの広域範囲攻撃もしのぎ
うる相手にたいして、有効な攻撃は与えられないだろう。いや、一つだけあるにはあるが、あの技はま
だ使いこなせてるとはとても言えない。発動まで時間がかかり、しかも暴発する可能性が高い。なの
はさんからも、フェイトさんの許可が無い限り、差し迫った局面ではまだ使うなと、最後に指導を受け
たときに言われた――
 だけど、それでも――二人が必死に頑張っているときに、私一人黙って傍観しているなんて出来ない。
 深呼吸と共に、クロスミラージュに意識を重ね、周囲に漂う魔力を集束していく。フェイトさんの
魔力は集めにくいが、先ほどまでの大魔法の連続使用のため、その量自体は半端ではない。大丈夫、必
要最低限の集束なら、自分のと合わせて十分いけるはず。周囲の空間にオレンジと金色の輝きがふくれ
あがり、クロスミラージュの銃口へと集束していく――
「スターライト――ッ」
(ティアナ! 無茶は駄目だッ!)
暴発しそうな魔力の塊を何とか制御――落ち着け、落ち着け、集中しろ――震える指でトリガーを引く。
「ブレイカ――ッ!」
空を貫く閃光と轟音。軌道上にいた機械兵器が次々と破壊されていく。やった……成功した――
「ティアナ!」
気がつくと目の前には信じられない――いや、信じたくない光景があった――攻撃を受け流しきれず、
白いマントを鮮やかな紅に染めながら落下していくフェイトさんの姿――なんで、どうして? 何が
あっても墜ちる事なんてないと思っていた、なのはさんさえ一目置くあたしの上司、そんな人が何で?――
 混乱する理性が状況を把握するよりも先に体が動き出し、地面に叩き付けられる寸前にフェイトさ
んを何とか受け止めていた。
「フェイトさん、フェイトさん!」
 混乱のあまり、彼女の名を呼び続けることしかできないあたし――
「ティアナ!!」
 いつだって穏やかなフェイトさんの、今まで聞いたことのないような怒鳴り声――
「まだ・・・・・・戦闘中だ! 気を抜くな!」
 いつもの優しさのかけらも伺えない、底光りする冷たい瞳――
《Difenser plus》
バルディッシュの低い無機的な声と共に金色に輝くバリアが展開し、あたし達を砲撃から守る。でも
、あたしは何もすることが出来ず――
(プログラム、解析終了。コントロール奪取成功。おまたせしました、全兵器システムダウン行きます!)
シャーリーさんの通信を聞きながら、意識を失ったフェイトさんの体をただ抱きしめることしかできなかった――

511 名前:その、明日の執務官に…[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 22:56:40 ID:Ae823tOe
「ティアナ、ごめんね。事後報告書作成押しつけちゃったみたいな形になって」
 執務官試験の勉強そろそろ忙しいでしょう?――なんて病室のベットの上で、作成途中の報告書を
確認しながら、穏やかな表情であたしに微笑みかけるフェイトさん。病室のカーテンの隙間から漏れる
陽の光が、フェイトさんの金色の髪に降りそそぎ、キラキラと反射して輝く金の光が、その優しい微笑
みを彩っている。あのときの表情はかけらもなく――あの後、彼女があたしを叱ることも一切無かった。
「いえ、フェイトさんは利き腕を怪我してますし、あたしは何のお役にも立てませんでしたから――」

 フェイトさんの怪我は、命に関わる様なものではなかった。脇腹に傷を負っていたが、大きな傷で
はなく、むしろ攻撃の受け流しの際に負った腕部の傷の方が酷いぐらいだった。とりあえず検査を兼
ねて数日入院とのこと。でも、それは、フェイトさんの受け流しが上手かったから。あの時フェイト
さんを狙った攻撃の軌道上にはあたしがいて――フェイトさんが攻撃を避ければ、あたしに攻撃がく
るはずだった――あたしがそのことに気がついていないのを察知したフェイトさんは、避けようとし
ていた攻撃をとっさに受け流そうとして、僅かに間に合わず負傷した――フェイトさんだったから軽
傷で済んだ。そう、本来なら怪我して重傷だったかもしれないのはあたしだ――
 
 後になってよく思い出してみれば、フォローしなくてはいけない私がフェイトさんにフォローされっ
ぱなしだった。フェイトさんは、派手な攻撃で敵の目を惹きつけ、あたしを狙おうとする敵を真っ先
に撃ち落とし、あたしに流れ弾が行かない方へ誘導しながらずっと戦っていた。シャーリーさんと違
ってあたしは何も出来ず、あまつさえフェイトさんに怪我をさせる原因となってしまった――

「フェイトさん……」
 なにかな? と優しく答えてくれたものの、あたしはフェイトさんの顔を見ることが出来ず、俯い
たままだった。あたしの事、叱らないんですか――そんなあたしの質問にも彼女は――どうして?テ
ィアナはとても頑張っていたよ?――などと穏やかに答えるだけ。どうしてですか、なんであたしを
責めないんですか……

「1つだけね――1つだけ怒るとするならば、ティアナ、無理はしないでって、私言ったでしょう? 
私を助けてくれるのは有難いけど、無理は駄目だよ?」
 あの時は怒ったりしてごめんね、せっかくティアナが助けてくれたのに。私、戦闘中はちょっと頭
に血が上りやすいみたいなんだ――どこまでも優しいフェイトさんの答え。どうして、どうして――
あたしは同情なんて欲しくない。駄目なら駄目といって欲しい。甘やかしてなんて欲しくない――悔
しさのあまり涙があふれ、零れた涙は白いシーツを汚していく。

512 名前:その、明日の執務官に…[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 22:57:41 ID:Ae823tOe
「ティアナ――」
頭のうえに、そっとフェイトさんの包帯の巻かれた手のひらが降りてきた。包帯越しであるはずなのに
――その感触はひどく優しく温かかった――

「ティアナ、こういう言い方はどうかと思うけど、私は君に私の補佐としては何も期待していないんだよ――」
あたしは吃驚して顔を上げ、フェイトさんの顔を見つめた。言葉とは裏腹に、彼女はひどく優しい眼を
してあたしを見ていた。
「私が君に執務官補佐としてついて欲しいと願ったのは、君に私の補佐をして欲しかった訳じゃない。
私が、お兄さんの遺志を継いで執務官になるという君の夢の手助けをしたかったからだよ。なのはがそ
の才能を認め育て上げた君の行く道を見届けたかったから。私も認めた才能溢れる君が、真っ直ぐ目標
に羽ばたいていけるように見守りたかったから。だから、ティアナ、君は君のまま思うように進めばいい――」

 甘い――この人は甘すぎる――

「私とシャーリーは『執務官』と『執務官補佐』の関係だけど、私とティアナは『執務官』と『執務
官見習い』の関係だから――私とシャーリーはお互いをフォローしあう関係、私とティアナは執務官
を目指すものと、それを導くものの関係だよ。
 誰もが最初から上手くできる訳じゃない、最初は間違うかもしれない、次も失敗するかもしれない。
だけど、君はまだ見習いだからそれでいいんだ。
 執務官になったら、一人で事件に向き合わなければならないけど今は違う。いくらでも間違えば良
いんだ、わたしが出来る限りフォローするから。今はいくらでも私に迷惑をかけても構わないよ。間
違いから学んで立派な執務官になって、そのときに道を誤らなければそれでいい。ティアナがいつか、
私と肩を並べて同じ道を歩いてくれれば、それだけで私は嬉しいんだ――」
 こんな事言ってるけど、私は今でも失敗ばかりだし、ティアナが私と肩を並べて同じ道を歩く日が
来たら、きっと泣いちゃうんだろうね――苦笑しながらフェイトさんがそう呟いた。

 馬鹿だ――この人は凄く馬鹿だ――

 でも、あたしにはつらいだけだったその甘さも、ここまでくればひどく優しく思えるようになった。
その馬鹿さ加減も、ここまで極められてしまえば、ひどく格好良く思えてならなかった。気がついた
ら、私は大声を上げて泣いていて、フェイトさんはあたしが泣きやむまで、ずっと頭を撫で続けてくれた。

513 名前:その、明日の執務官に…[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 22:58:54 ID:Ae823tOe
「ティアナ、焦る気持ちは分かるけどね、無茶だけは駄目だからね。ティアナに何かあったら私は
なのはに叱られちゃうし、それにスバルも悲しむよ」
「な、なんでここでスバルが出てくるんですか!?」
 フェイトさんは、あたしの言葉にかまわず話しを続ける。
「ティアナは自分のことを『凡人』なんて言うけどね、君のその真面目さと状況判断力は、とても得
難い才能だと思うよ。表だって見えない才能だから気づきにくいけど、それは執務官にはとても重要
なものだから、もっと自分に自信を持って良いと思うな。ティアナはきっと大器晩成型だから焦らな
くて良いよ。スバルは先に走って行ってしまっても、きっと振り返って待っててくれるから」
「だ、だからどうしてスバルなんですかっ!?」

 ――変なところでこの人は鋭い。確かに焦っていたのだ。夢に手が届く寸前まで来ているのに、あ
たしの行く手を阻む大きな壁。その一方で夢へどんどん駆け上っていくスバル――
 
 そう言えば、最近はスバルとあまり連絡をとっていなかった事を思いだした。スバルときたら、鬱陶
しいぐらいにメールと通信を繰り返し、その度に「ティア、元気にしている?」「ティア、怪我とかし
てない?」「ティア、無茶しちゃだめだよ?」とかあたしの心配ばかり。あたしのことより自分の心配
しろって事で、二週間ぐらい前に「執務官試験の勉強始めるのに鬱陶しいからこれからは必要もないのに
連絡してくるな!」とメールを入れたら、パタリとスバルからの連絡は途絶えていた。ちょっと寂しい
気はしたけど、スバルは人なつっこくてみんなから好かれる、ずっと憧れていた夢の舞台に上がれたん
だ――あたしなんかに構ってないでそこで頑張っていればいい……

「フェイトさーん。お見舞いに来ましたよっ」
 ドアをノックしながら、陽気な声をあげてシャーリーさんが病室へ入ってきた。
「そうだ、シャーリー、頼んでいた連絡入れておいてくれた?」
ちらりと、あたしの方を見ながらフェイトさんがシャーリーさんに問いかけた。
「お任せくださいっ。ちゃーんと連絡入れておきましたっ」
 そろそろ来るんじゃないですかー、なんて二人の要領を得ない会話に頭に疑問符を浮かべていると、
しばらく前までよく聞いていた騒音が、廊下から聞こえてきた――あ、あれってマッハキャリバーの駆
動音によく似ているわねぇ、まさか……空耳よね、うん空耳だ――あは、あはははは……

514 名前:その、明日の執務官に…[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 23:00:18 ID:Ae823tOe
「ティアー、ティアー!――へぶしっ」
 大声で叫びながら病室に闖入してくるスバルを目にして、あたしは思わすサイドテーブルにあった花瓶
を、スバルの顔面めがけて投げつけていた――
「こんのぉバカスバル! 病院の廊下をマッハキャリバーで走る奴があるか!! 病室に入るときはノ
ックしろっ! 病院で大声出すなっ! 恥ずかしいっ!!」
「ティアー花瓶投げるなんてひどいよー、ティアが怪我したって聞いたから慌ててきたのに――あ、あれ?」
 ティア怪我したのに元気だねー。あ、フェイトさんシャーリーさんお久しぶりです。あれ、フェイト
さん、怪我なされたんですか……あれれ? なんてスバルの脳天気な声を聞きながら、あたしは思わずフ
ェイトさんを睨み付けていた。
「フェイトさん! これは一体どういう事なんですか!」
「いや、ね、なんかここ二週間ぐらい毎日のようにスバルから『ティアは元気にしてますか?』とか『
ティアは無茶してませんか?』とか何回もメールが来るから――」
 頭痛っ――フェイトさんの寛容さをこれ程まで偉大に思えたことは、今までなかった――
「私がいくら『大丈夫だから』って答えても心配するのやめないから、いっそスバルを呼びつけたらど
うかなってシャーリーがいうものだからね、とりあえずティアナが怪我したから病院に来てと――」
「何恥ずかしいことしてるのよこのバカスバル!! 連絡してこないと思ったらなんてことをっ! い
くらフェイトさんが優しいからって、仮にも元上官に迷惑メール紛いのメールを日に何度も送るバカが
何処にいるかっ!――フェイトさんもこのバカにいちいち付き合わないでくださいっ!」
「だ、だってティアってば、迷惑だから連絡するなって言うし、でも心配だし、だけどティアに迷惑か
けたくないし――」
「だからって、なぁにフェイトさんに迷惑かけているのよ! こんの万年脳天お花畑!!」
「あいたーっ!? 痛いよティアー蹴らないでー」
 迷惑かけられたフェイトさんの方といえば――うん、ティアナ元気になってよかったね――これぞ、特
効薬ってやつですね――などと実に爽やかな微笑みを浮かべて、シャーリーさんとのほほんと話していた。

「ちょっとスバル外行くわよ!――お二人とも失礼させていただきます――」
 これ以上ここで話していても埒があかないと判断したあたしはスバルをつれて病室を後にした――


「そろそろフェイトさんにもお薬届く頃だと思いますよー……ちょっと苦いと思いますけど」
「えっ?」

515 名前:その、明日の執務官に…[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 23:03:01 ID:Ae823tOe
 スバルを引きずるように病院の屋上に来たものの、お互いちょっと気まずい雰囲気だった。あたし達は
何をするでもなく、二人でだまってフェンスに寄りかかって空を見上げていた。青い空と白い雲、そして
二つの白い真昼の月。二人で並んで空を見上げるなんて、久しぶりだ――そういえば、機動六課に勧誘さ
れたあの日に見上げた空も、こんな空だったかしら。あの頃を思いだして少し懐かしかった。
 
 本当はさっきスバルが勘違いして会いに来てくれたと分かったとき、凄く嬉しかった。だけど、口から
出たのは、それとは裏腹な罵詈雑言。これもあの日と同じかもしれない。あたしは機動六課で少しは成長
出来たと思っていたのに、この可愛げのない性格はちっとも変わらない――
「ねえ、ティア――」
 まだ怒ってる?と恐る恐る尋ねてくるスバルに、あんな恥ずかしい思いさせられて簡単に怒りが収まる
と思っているの、このバカ、なんて悪態をつくあたし――ほんと可愛げがないったらありゃしない。ほん
とはもっと別なことを言いたい、もっと素直になりたい、素直にスバルに好きだと言いたい……
「はあ……」
 思わず深い溜息が出てしまった。

「ご、ごめん。だってほんと心配だったんだよ?今日だって、まさかあのフェイトさんがこんな嘘付いて
くるなんて思わなかったし、気が動転しちゃって――」
「もういいわよ、あんたに節度というものを求めたあたしがばかだったわ……」
 あぅ〜と情けない声をあげて口ごもるスバル。
 ちょっと可哀相なこと言っちゃったかなと思ったとき、スバルが急に真剣な目をして見つめてきた。い
つもは何処か子犬を思わせるキラキラ輝く翡翠の瞳が、真摯な光を浮かべて私を見つめるのを見て、どき
りとあたしの胸が跳ねた。

「ティア、あたしね、ティアが心配って事もあったんだけど――本当は、怖かったんだ……今まで五年間
ずっと一緒だったのに、今は隣にティアがいないから何だか不安で……なんというか、離れちゃうとあた
したちの心まで離れて行っちゃう気がして――」

 馬鹿、馬鹿、馬鹿、バカスバル――

516 名前:その、明日の執務官に…[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 23:04:00 ID:Ae823tOe
「も、もちろんあたしはティアのこと大好きだよ?だ、だけどね、最近ティアなんか冷たいし、落ち込ん
でるみたいなのに何も話してくれないし、ティアはあたしのこと嫌いになっちゃったのかなって考えたら、
なんだか寂しくなって――」
 
 ――スバルは先に走って行ってしまっても、きっと振り返って待っててくれるから――

 そっか、スバルは夢への道を先に走って行ってしまっても、あたしが追いかければきっと待っててくれ
るんだ……
 結局何だか同じようなことを思ってたあたしたちって事で――嬉しい反面この単純馬鹿と同じ事を考え
ていた自分に、ちょっとだけ複雑な思いがしたあたしはやはり素直じゃない。

「……一日一回」
 そう言いながらピッとスバルの目の前に人差し指を突き立てた。
「えっ?」
「一日一回ならメールは許すわ。ただし返信するかは保証しないわよ?」
 とことん可愛げのないあたしの言葉に、スバルはぱぁっと顔を輝かせて、「うん、うん、ティア、あり
がと〜大好きだよ〜」などと大喜びだった。

 ……全く、あきれるほどの、馬鹿で、単純で、脳天気で――
 ……でも、あたしは、純粋で、素直で、真っ直ぐ想いを口に出来るスバルが大好きで――

 ぎゅっとスバルに抱きつく。スバルが吃驚した顔をしたが、今は気にしない。
「あたしが、あんたを嫌いになるはずないでしょ……」
 これが素直じゃない私の精一杯。
「ありがと……ティア……」
 スバルはちゃんと分かってくれた――

517 名前:その、明日の執務官に…[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 23:04:55 ID:Ae823tOe
「……ところで、あんた仕事はどうしたのよ?」
 ちょっと気まずそうな顔をしてスバルが答える。
「いや、大事な人が怪我して入院しちゃったから、オフシフトにして下さいって頼んだら、なんかみんな
快くシフト変更引き受けてくれたよ?」
 は、恥ずかしい奴……
 
 迷惑かけっぱなしでフェイトさんの病室を出てきちゃったし、そろそろ戻らないと……と考えていたら
シャーリーさんから連絡が来た。
「あ、ティアナ。お取り込み中だと思うんだけどごめんね〜」
 いや、別に大して取り込み中じゃないですから……
「フェイトさんから連絡事項ね、報告書は今日中にフェイトさんが仕上げるから、明日取りに来て本部
に送ってくれって。今日はこのまま帰っていいって。」
「え、あたしがやりますから。いまから、病室に戻るつもりでしたし――」
シャーリーさんがちょっと笑いを堪えた表情で答えた。
「いや〜、今は病室に戻らない方が良いと思うよ? フェイトさんにも薬を処方しておいたんだけど、ち
ょっと効き過ぎちゃって――ただいま、スーパーお説教タイムだから、巻き込まれたくなかったら近づか
ないほうがいいよ? それじゃ」
 なのはさんに知らせちゃったんですか……あれだけ黙っててとフェイトさんに懇願されてたのに……
 無理ばかりする執務官にお灸を据えるシャーリーさんって、実はすごい人かもしれない……

「えっと、結局どういう事なの?」
 今ひとつ状況を飲み込めていないらしいスバルが聞いてきた。

 ――スバルのことだから、なのはさんが来てるんだよって教えたら「それじゃ、挨拶に行こう」なんて言
うだろうし――そう考えたらちょっと腹が立ってきた。

「ねえ、スバル。フェイトさんって素敵よね?」
「えっ、うん、そうだね」
「美人で、強くて、優秀で、とても優しくて。今回もあたし華麗に守ってもらったわけだし――」
「……うん」
「ちょっとだけ、フェイトさんに惚れちゃったかも」
「ええーっ」

518 名前:その、明日の執務官に…[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 23:05:35 ID:Ae823tOe
 そんな〜ティアー、なんて捨てられた子犬のような目をして泣きついてくるスバルを横目に考える。

 スバルのやつ、今まで散々なのはさんなのはさんって言ってたんだから、たまにはこんな仕返しした
っていいわよね?
 ――もし、あたしにスバルがいなくて、フェイトさんがあれだけなのはさんにべた惚れじゃなかっ
たら、ほんとにあの優しい執務官に惚れてしまったかもね――

「ところであんた、今暇なんでしょ?あたし、これから久しぶりに街に出ようと思うけどあんたも来る?」
そう言ったとたん、さっきまでどんよりしてた表情が一転して明るくなり、ティアとなら何処だっていくよー
などとスバルは喜んでいた。
 ――ほんと、単純なんだから――
 ――でも、そんな素直なスバルは大好きだ――





 兄さんの想いを抱えて一人暗闇を歩いていたあたしは、スバルに出会って一緒に並んで夢に向かって走り
始めた。夢への道のりは暗くて遠かったけど、なのはさんが道を切り開いてくれた。そして今はその道をフ
ェイトさんが照らしてくれている。ちょっと反則かなと思うけど、あたしにはそれでちょうど良いのかもし
れない。スバルは先に走っていってしまったけど、私の方を振り返って待ってくれている。

 自分のことは信頼なんて出来ないけれど、周りの人は信頼できるからこのままゆっくり歩いていこう。
そして夢に辿り着いたときに、過保護な執務官はいったいどんな顔をして泣くのだろうか
 ――それを思うと少しだけ楽しみだ――

519 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 23:07:26 ID:Ae823tOe

イメージ的には六課解散して半年くらいで。
スバティアって、べたべた恋人同士って言うよりも、恋人寸前ぐらいで仲良いんだけど、素直じゃ
ないティアにスバルが振り回され、同時に直球勝負のスバルにティアがどぎまぎさせられてるって
感じのほうが萌えると思うのは俺だけですか? そうですか……
スバティア、王道だけど、同じ王道のなのフェイに比べて圧倒的にSS少ないよね?
あれか、なのフェイに比べてエロスが足りないからかっ(SLB

527 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 23:46:15 ID:Ae823tOe
>>524
表テーマ 
ネガティブティアナ

裏テーマ
なのはさんが、ス◯ライ◯的な熱過ぎる心の漢な、兄貴の師匠が似合うとしたら、フェイトさ
んはA◯IAみたいな、綺麗で優しく同時に格好いいお姉さんな先輩がにあうよね、とほのぼの目
指したが、ティアナがネガティブすぎた……そんなティアが大好きです。
2008年01月16日(水) 22:57:59 Modified by nanohayuri




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