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カリムの恋

636 名前:カリムの恋 ◆34IETlJpS6 [sage] 投稿日:2007/11/04(日) 18:41:29 ID:oxF8CjHM
「義姉さん、最近なんだかご機嫌だね。何か良いことでもあったのかい?」

仕事の都合で久し振りに教会を訪れたロッサはそんな事を口にする。
この義弟は普段は昼行灯なように振る舞っているのにも関わらず、こういう事に関しては非常に鋭い。
別に隠さなければいけないような事でも無いので、わたしは特に誤魔化したり等はしなかった。

「あら、わかっちゃうかしら」
「それは勿論。普段はキリっとしてる義姉さんが、そんな風にニヤけるのは僕だって初めて見るからね」

そう言われて、わたしは慌てて顔に手をやる。
僅かではあるが確かに顔の筋肉が弛んでいる気がした。

いけないいけない、気を付けないと・・・

わたしは教会の皆の模範となるべき身なのだから、だらしない姿など見せるわけにはいかないのだ。

そう考えながら身を整えるわたしを見て、ロッサは笑いを堪えるように身体を折り曲げている。

「ロッサ!」
「・・・いや、ごめんごめん。義姉さんの態度があまり可愛らしいモノだから、ついね」
ロッサは軽く謝ると、体勢を元に戻した。

「しかし、義姉さんがそんなになるなんて・・・いったい何があったんだい?」
「・・・聞きたいの?」
「問題がなければ」

638 名前:カリムの恋 ◆34IETlJpS6 [sage] 投稿日:2007/11/04(日) 19:17:46 ID:oxF8CjHM
わたしはロッサのその応えに頷き、コホンと咳払いをする。
「実は・・・ね。恋をしたの(//////」

口に出すと、やはり恥ずかしい。
頬に赤みが射すのが自分でもわかる。
「・・・・・・・」
しかし、わたしの目の前に立つロッサは
信じられないものでも見たような驚きの顔をして、目を見開いたまま固まっていた。
「ロッサ?」
義弟の名前を呼んでみる。
その声に反応したのか、ロッサは一分ほどの間を置いてやっと我に還った。

「そんなに驚かなくてもいいと思うのだけど・・・」
「いや、ね。僕は義姉さんは教会一筋だと思っていたから、意外で」
少し不満そうな顔をしたわたしに、ロッサは慌てて取り繕うように言葉を返した。

「それで・・・相手は誰なんだい? もしかして、僕も知っている人物かな?」
「ええ、知っていると思うわ」

わたしの答えに、ロッサは顎に手をやって考え始めた。
多分、わたしと自分が共通して知っている人物を頭の中に並べているのだろう。

「ヒントは・・・貰えないのかな?」
「そうね、少し位なら」
「・・・まず、第一にその人の身長は姉さんより高いかい?」

ロッサは最初からいきなりふるい落としにかかってくる。
良い質問だった。
もし下であればかなりの人数を絞り込めるだろうし、上と言われても何も利益がないわけではない。
「いいえ、わたしより下よ」

639 名前:カリムの恋 ◆34IETlJpS6 [sage] 投稿日:2007/11/04(日) 19:51:10 ID:oxF8CjHM
ヒントは出しても良いと言った以上、正直に答える。

「ふむ・・・次に、その子は義姉さんに縁のある人間かい?」

『その子』と聞く以上、ロッサは気付いているようだった。
わたしが恋をした相手が・・・女性であると言うことを

わたしはその質問に、黙ったまま頷く事で答える。
ロッサはそれ以上質問しては来なかった。

もうその頭の中では、答えが出ているのかもしれない。

「もしかして・・・その相手は、はやて?」
そして、暫くの間を置いてからロッサは予想通りの答えを返す。
質問の内容から、きっとわたしとはやてとの仲を勘繰っているだろうことには気付いていた。
確かにわたしとはやては実の姉妹かそれ以上に親しい関係を築いているし
第一候補に上がるだことは間違いないだろう。

でも、わたしは・・・ロッサの回答に対して、静かに首を横に振った。

確かにはやての事は好きだけれど、それは姉妹としての好きであって
恋、と呼べるようなものではない。

「なら、この前来ていた六課隊長陣の誰かかい?」
「いいえ、それも違うわ」

わたしが否定すると、ロッサはお手上げとばかりに降参のポーズを取る。
わたしはそれを見て、少し気紛れを起こした。
いや、実はずっと・・・誰かに話したくて仕方なかったのかもしれない。
わたしと、あの子の出会いを。
2007年11月11日(日) 02:10:13 Modified by nanohayuri




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