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真っ赤な誓い ピリオド(前編)

812 名前:∧∧ ◆9oQ0Gi8lfs [sage] 投稿日:2007/12/16(日) 18:27:01 ID:3/R//Vsy
そんなわけでなんか似たような題材で申し訳ありませんが
>>739->>742の続き書き始めてしまったんで投下させていただきます。
他人のふんどしっつーかパロディでネタ引っ張るってのもどーかと思いますが。

『真っ赤な誓い ピリオド(前編)』



813 名前:∧∧ ◆9oQ0Gi8lfs [sage] 投稿日:2007/12/16(日) 18:31:40 ID:3/R//Vsy
フェイトは一人夜空を見上げていた。
今日は満月。二つの月の魔力が満ちる夜。


なのはが、空に消えた夜。


あの日、なのはとフェイトが放った一撃はヴィヴィオを取り込んだロストロギアを貫き、
二人は見事にヴィヴィオを助け出す事に成功した。

だが、それで全てが終わった訳ではなかった。
核たる聖王の因子を失ったロストロギアは暴走を始め、その力を増していく。
「ッ――――なのは、絶対に私の側を離れちゃダメだよ!」
フェイトは己の得物を構え直し、倒すべき相手を見据えた。そして叫ぶ。
「君と私は一心同体! いつだって! どんな時だって!」
二人の絆を確かめるように。

だからだろうか、フェイトは次の瞬間、自分の耳に届いた
その言葉の意味をすぐに理解する事が出来なかった。
だから、振り向いた。その真意を確かめる為に。




814 名前:∧∧ ◆9oQ0Gi8lfs [sage] 投稿日:2007/12/16(日) 18:39:24 ID:3/R//Vsy
――――ゴメン、フェイトちゃん。その約束守れない

「え?」

――――本当に、ゴメン

なのはの顔は穏やかで。でもその表情には確かな悲しみが浮んでいて。
やっとの事でその意味に理解した時には既に、
フェイトの体は重力に引かれるままになっていた。

「レイジングハート、A.C.S起動」
その掛け声と共になのはが手にした杖から合成音声が響き、
続いて杖の先端部から桃色の光を放つ翼が展開される。

「なのはぁぁぁぁっ!!」

フェイトは精一杯その名を呼ぶが、その声が届く事は無かった。
なのはの体は、ロストロギアに一直線に飛んでいき、その中心を貫く。
だがその程度ではビクともしない。故になのはは叫ぶ。

「全力!! 全開!!! うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

なのはの体が光を放ち、ロストロギアのその巨体を突き上げた。
なのはとロストロギアが一条の閃光となって空を昇っていく。
高く、高く、もっと高く。
どこまでも高く。
そして、遂に桃色の光は天を衝き、そこで消えたのだった。

――――世界は、救われたのだ。




815 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/12/16(日) 18:45:35 ID:3/R//Vsy

……

あの戦いが終わってから。
フェイトは夜になるといつも空を見上げるようになった。

「フェイトさん、いつまでもそんな所に居たら風邪をひきますよ」
フェイトの肩に、静かに上着が掛けられる。
「ん、ありがと……え?」
フェイトが振り向くと、その違和感に気付く。
それから小さく息を吐き、自分に上着をかけてくれた人物の頭を撫でた。
「ヴィヴィオ……ダメだよ。ただでさえ"それ"は魔力の消耗が激しいんだから」
「すみません。……でも、今日は満月ですから。この姿でも楽なんです」

高町ヴィヴィオ。
紅と翠の瞳を宿す、なのはとフェイトの大事な娘。
彼女は今、成熟した大人の姿を取っていた。

「もう、ザフィーラと一緒に寝てたんじゃないの?
明日はまた早いんだよ。ちゃんと眠らなきゃ。
今から魔力消耗してたら明日がもたないよ」
「はい。……だけど、もう少しだけこのままで」
ヴィヴィオは、そっとフェイトの肩に寄り添う。
「…………」
「辛いんです。子供の体と心のままだと、
悲しみに何もかも押し潰されてしまいそうで」
「……そっか」
フェイトは優しくヴィヴィオの体を抱き締めた。

816 名前:∧∧ ◆9oQ0Gi8lfs [sage] 投稿日:2007/12/16(日) 18:49:11 ID:3/R//Vsy
「ごめんね、ヴィヴィオ。辛い思いをさせちゃって。
ちゃんと私がなのはの分までヴィヴィオの面倒を見るから――――」
「……いいえ」
ヴィヴィオはフルフルと首を振る。
「私にとってなのはさんも母さん、フェイトさんも母さん。二人共私の大事な母さん。
……代わりなんていない。どちらが欠けてもダメなんです」


「フェイトさんにはいるんですか? なのはさんの代わりが――」


その言葉に、フェイトもまた、うつむく。
「なのはの代わりはいない。誰もなのはの代わりになれるはずもない。わかってる」
フェイトのヴィヴィオを抱き締める腕に力が加わる。
「それでも、私は……なのはの分まで、ヴィヴィオの側にいなきゃ」
「……」
ヴィヴィオもまた、無言でフェイトの背中に手を回す。
そして、フェイトの肩に埋もれるように体を預けた。
「私、待ちます、なのはさんが帰ってくるのを。
そして、また三人一緒に暮らせる日を、ずっと待ってますから」



817 名前:∧∧ ◆9oQ0Gi8lfs [sage] 投稿日:2007/12/16(日) 18:50:46 ID:3/R//Vsy
絞り出すようにその言葉を紡ぐと、ヴィヴィオの体がするすると縮んでいく。
魔力が切れてしまったのか、それとも緊張が途切れたのか。
元の子供の体に戻ったヴィヴィオを、フェイトは優しく抱きあげる。
その瞳は今にも涙であふれかえりそうだった。
「…でも、なのははもう――」


「あきらめちゃうの?」


フェイトの腕の中でヴィヴィオが呟くように言った。
「フェイトママは、なのはママをあきらめられるの?」
「――――――っ」

フェイトの思考が、なのはのイメージで埋め尽くされていく。

「なの……は…………っ」

「ママ……」
ヴィヴィオはゆっくりと夜空を見上げる。

そして、その視界に入った何か。それに気付いた。
「! あれは、おつきさま? うぅん、ちがう。あれは……」
「え?」
フェイトもまた、空を見上げた。
そしてその瞳が捉えたものは。


桃色の、綺麗な、光―――




818 名前:∧∧ ◆9oQ0Gi8lfs [sage] 投稿日:2007/12/16(日) 18:52:43 ID:3/R//Vsy
「あれは、まさか――」
そしてその光の意味に気付く。

「――テスタロッサ。緊急事態だ」
「ザフィーラ……! な、なのはが、なのはが……!」
「分かっている。その事で主はやてから連絡だ。
すぐに来てくれ、と。飛行許可も取ってある」
「……分かった。すぐ行く」
フェイトは腰を折り曲げ、そっとヴィヴィオを下ろす。
「フェイトママ……。なのはママは…………」
「大丈夫。フェイトママが必ずなのはママを連れて帰ってくるから。
それまで、ザフィーラと一緒にいいこにしててくれる?」
「うん。ヴィヴィオをいい子にしてるよ。
……だから、なのはママの事、おねがい。フェイトママ」
「うん。フェイトママに任せて。
……ザフィーラ、ヴィヴィオの事お願いね」
「心得た」
ザフィーラがうなずくのを確認すると、フェイトは大地を蹴り上げた――――

819 名前:∧∧ ◆9oQ0Gi8lfs [sage] 投稿日:2007/12/16(日) 19:10:09 ID:3/R//Vsy
すまない、ここで中断なんだ。続きはまた。

ファイナルはきっちり描こうとすると設定とかめんどいんで省略。
元ネタ知ってる方はヴィヴィオのポジションに色々とつっこんであげてください。
2007年12月20日(木) 03:21:59 Modified by nanohayuri




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