Wiki内検索
メニューバーA
タグ
11-471 28-206 28-342 28-519 304 428 458 47 532 6-502 913 aa gbhs4w75 mspuqpiv pluto ピチピチ ◆1gx5q3ma8y ◆34ietljps6 ◆6gzt0d6rrc ◆8giervnano ◆9oq0gi8lfs ◆gtd5kcksn. ◆jhf0qdqssc ◆k1m2.fa0dm ◆nna2fui0zk ◆okpddn8iwc すいもう すずか すずか×アリサ なのは なのは×ティアナ なのは×フェイト なのはフェイトの娘 はやて はやて×すずか はやて×カリム アギト アクエリアス アリサ アリサ×すずか アリシア アルキメデス アルフ ウーノ ウェンディ エイミィ エリオ エロ オットー カリム キャロ キャロ×フェイト ギンガ ギンガ×フェイト クアットロ シグナム シグナム×ティアナ シャーリー シャッハ シャマル シャマル×キャロ スバル スピノザ セイン セッテ チンク ティアナ ティアナ×なのは ディード ディエチ デバイス トーレ トーレ×セッテ ドゥーエ ドクター ナカジマ家 ナンバーズ ノーヴェ バルディッシュ フェイト フェイト×なのは フェイト×ギンガ プレシア ヤンデレ ユーノ ユーノ×ロッサ ヨン◆h7y.esozi リインツヴァイ リイン初代 リンディ ルーテシア レイジングハート レティ ロッサ ヴィータ ヴィヴィオ ヴィヴィオ×なのは 或る捜査官 恭也 空気ブレイカー 高町家 鮫島 士郎 紫水 自作絵 修学旅行 宵月 八神家 非エロ 美由希 落ちはまだ未定 薔薇
最新コメント
最近更新したページ
フリーエリア

16-652

652 名前: (ω・`ミэ)ピチピチ [sage] 投稿日: 2008/04/16(水) 04:18:20 ID:/j0CX6aJ
かぴばら|・)ぴちっとな

このスレの遅さならいけるっ
というわけで,えろくない素朴ななのふぇい.
捏造妄想その他の成分が混じっておりますご注意下さい.
それでは,以下お目汚し失礼致します.

「如何にして彼女等は同居に至ったか」

1.

ミッドではネオンサインというのは珍しい.
その理由が景観を阻害するからなのか,それとも単にそういった文化がないからなのかは分からないが,
ネオンサインというのはあまり目にする事はない.
今,私がいるこの場所は,その例外だといえる.といっても,それ程大きなものではない.
店の名前が淡い青色に光っている程度のこじんまりとしたネオン.
暗がりに,遠目からでも見える店名が酷く,この場所にそぐわないと思うのは私だけだろうか.
地球と違い,魔法文化が発達した世界なのだから,それっぽいものにした方が良いのでは…と,思うのもこれで何度目だろうか.
周囲の店々は既に閉まっている事が,なおさらそう思わせる要因だった.
…などと真面目に考えるのもバカらしくなり,私はその店から出る.
「あざしたー」
何だか良くわからない言葉を耳に,自動ドアを抜けて,私はほっ,と吐息を吐きながら,
手にした白いビニール袋の中から今し方買った缶コーヒーを取り出し,頬に当てる.
暖かかった.
季節は春になりかけ,桜の蕾が芽吹こうとしているこの時期とはいえ,夜になれば,やはり肌寒い.
ついつい,こうやって暖を取りたくもなる.
そんな風にしていれば,ふと後ろから視線を感じ,振り返り見てみれば店員の姿.
目が合い,気まずそうに視線を逸らすその店員に,僅か恥かしさを覚え,缶コーヒーをビニール袋へと戻す.
「あはは…」
逸らされている視線に,自嘲じみた苦笑いを見せ,私は帰路に着く.
寒空の下で,缶コーヒーを頬に宛てながら,自宅へと向かう御歳19の女を見て,
あの店員は何を思っただろうか.恥かしい人だ,などと思われたのだろうか.
それとも,えらく目の下に隈のある人だなぁ,などと思われてないだろうか.
そして,ふと,思う.
私でも男の人の目は気になるものなのだな,と.
「はは……」
二度目の自嘲にもならぬ笑みを浮かべ,街灯に照らされ,わずか映えるアスファルトを踏みしめる足取りは僅か重い.
帰りたくないわけではない.
別に明日が来なければ良いなどとも,思っていない.
ただ,なんとなしに…こうやって毎日…いいや,数日に一度こうやって自宅に帰る自分を思うと,
苦笑いしたくもなるし,足取りも重くなる.
誰も起きていない時間から仕事に向かい,誰もが寝静まった後に帰宅.
出会うのは職場の人と,コンビニの店員くらいなものだ.
そんな毎日がこれからも続くと思うと…
「はぁ…」
やはり,自然と溜息が出る.
家に帰れば家族が待っていて,迎えてくれる人がいる…なんて事はない.
いるとすれば数日ぶりに役目を帯びて煌々とする照明くらいなものだ.
それを望んだのは自分なのだから,誰に文句を言えるわけもなく,
結局,私はこうやって暗い道路を1人で歩いて誰もいない家にとぼとぼと帰るだけ.
次第,家…というよりも社宅といった方が良いのだろうか,執務官用の簡素なアパートの近付いていた.
社員には社員用のアパートを貸し出すという所は,
地球もミッドも変わらないのだな,と何度か思った事を思い出し,三度目の苦笑.
星の誕生からして違うにも関わらず,文化すら全く異なるにも関わらず,
そういった会社の福利厚生の形態が同じという事実が,僅か面白い.
しいていえば,先程のコンビニもそうなのだが….
ちなみに,親友であると所の高町なのはも似たような所に住んでいる.
八神はやては,家族がいるという事で別途に家を購入してそこに住んでいるが,
まぁ,ともあれ私はこういった所に住んでいるのである.
653 名前: (ω・`ミэ)ピチピチ [sage] 投稿日: 2008/04/16(水) 04:19:10 ID:/j0CX6aJ
勤務先にも近く,取り立てて決まりごともなく,一人暮らしには些か大きすぎる部屋を考えれば,
良い物件といえる.しいていえば,駐車場も近くにあって欲しい,という事くらいか.
まぁ,おかげで帰り際に車を停めて,そのままコンビニに寄って部屋に向かるという意味では,良いのかもしれないが.
「到着…」
そんな事を考えていれば,いつのまにか部屋の前に着いていた.
疲れからなのだろうか,家についた,と思えば力が抜けてくる.
そういえば,昨日は碌に寝ていない.こんなだから,なのはに煩く言われるのだろうか…普段は私が煩く言ってるわけだけれども.
四度目の苦笑と共に,手を扉付近にある四角形の機械に手を当て,認証ロックを外す.
こういった所は便利である.魔法技術が生活にまで密着しているの所は地球より便利なのだ.
「ただいま…」
扉を開けながら,形式でしかない帰宅の挨拶をし,靴を脱ぎ,堅苦しい管理局の制服を乱雑に脱ぎ,それを近場に掛け,ポチポチ,
と照明の電源を入れていけば,やっと仕事だ,とばかりに部屋を照らし始める照明達.
そして…はた,と気付く.
「あ………また,やっちゃった」
視界に映るのはリビングルームの一角.
しなしなと,おなかが空きました,と私を責めるように萎びた白い百合の花.
「…ごめんね」
けれど,謝った所で,幾らお食事を与えても,もう,この状態から元に戻る事はない.
近付き,撫でてみても,もう彼…ないし彼女が咲き誇る事はもう,ないのだ.
心の中で,再度謝罪し,もう鑑賞植物は買わないでおこうと,誓う.
家に帰り,綺麗に咲いている花があれば,少しは心が安らぐだろうか,なんてそんな自分勝手な思いで買ってみたけれど…
これで,何度目だろうか.
水やりという義務も果たせない自分が,彼らから安らぎを貰おうなんておこがましくて,
彼らを殺すことは…もう,止めようと,そう誓う.
輝かしい程白いその花が,彼女を彷彿とさせるのが,尚更,そうしようと思った原因なのかもしれない.
「……はぁ」
五度目.
夜中に帰ってくると,いつもこんな感じだ.滅入ってしまう事の方が多い.
自他共に認める精神的弱さに,尚更滅入りながらも,コンビニの白いビニール袋から夕食…という名の夜食を取り出す.
コトン,と音を立ててテーブルの上に載せられたのは,ありきたりで質素なコンビニ弁当.
いつもは管理局で夕食も食べてから帰るのだが,そういった時間すらない日もあり,食べるのが遅くなる日もある.
こんな夜中に管理局の食堂がやってるわけもなく,この時間に料理をするのもさすがに辛く,こうしてコンビニで弁当を購入.
「いただきます」
その言葉と共に,コンビニで温めてもらった弁当に箸を付ける.
もしゃもしゃ,と咀嚼する音だけがBGMの我が家のリビングルーム.
テレビでも付けようか,と思い,即座に諦める……どうせ砂嵐くらいだろうし…
さすがに夜中に1人で食事をしながら砂嵐な画面を映すTVを見る,
というのは女として,いいや人としてどうなのか,と思い,今まさに電源を入れようとしていたのを止める.
御蔭で,もしゃもしゃという咀嚼音がやはりこの部屋のBGMだった.
そうして,しばらく呆としながら弁当を突いていれば,BGMも止み,がさごそと動く音がしだす.
……まぁ,食べ終えてゴミを捨てに行っているだけなんだけれども.
「お風呂どうしようか…」
まぁ,明日の朝でも良いかな,と言いながらも体は勝手に寝室へ.
お風呂に入るのもそうだが,着替えるのももう,面倒になってきていた.
どうせ一人暮らしだし,誰に文句言われるわけでもない.
そのままベッドに倒れこもうとし,やはり女としてどうなんだ?とか,食後に直に寝るというのもどうなんだ?
と,思い直す.
せめてシャワーくらいは,と体を動かし始める.
一旦,体が睡眠モードになった所為だろうか,どこかふらふらとする体を引き摺り,
衣装ダンスから下着を取り出し,浴室へと向かう.
浴室の電気を付ければ,姿見が私を映す.
なんとも眠そうな顔である.
時折,瞼が落ちている辺り最悪である.
とはいえ,そんな風体の自身に何を思う気力もない私は,いつも通り,いつもように白いYシャツに手を掛ける.
時折,Yシャツのボタンを外す手がずれて失敗するのもまぁ,眠いからだろう.
一つ一つボタンを外していけば,Yシャツの隙間からはオレンジ色のブラ.
なのはとお揃いが良いんだ!なんて,考えて購入した…わけじゃないんだよ?本当だよ.
などと自分に言い訳をしながら,Yシャツを脱ぎ,続いてスカートに手を掛ける.
これまた中から出てきたのは,オレンジ色のショーツ.

654 名前: (ω・`ミэ)ピチピチ [sage] 投稿日: 2008/04/16(水) 04:19:43 ID:/j0CX6aJ
なのはとお揃い……以下略.
そうしていれば,いつのまにか下着と靴下だけの姿に.
姿見に映る,顔から下,だけを見ていれば,まるでそこにはなのはがいるように見えて,少し気恥かしさを感じる.
だから,だろうか.
気付けば,『フェイトちゃん』などと自分の名前をなのはっぽく口にしていたのは…
が,瞬間,罪悪感とも云うべき,羞恥心が身を包み,慌てるように靴下,ブラ,ショーツの順に脱いでいく.
全く,何を考えているのやら….
「はぁ…」
これは世に云う変態さんなのではなかろうか,などと自問しながら浴室へと向かう.
御蔭で少し目が覚めたのは良かった事なのだろうか…
まぁ,少し,なだけでねむれーねむれーと言わんばかりに欠伸が出ているのだが.
少し頭を冷やそう,そう思い,タッチスイッチ式の水栓に指を宛て,シャワーヘッドを手に取る.
「ひゃっ」
冷たい水がシャワーヘッドからわさわさと出てきて,それが私の指先を,そして腕を伝い,二の腕まで辿り着き,腋辺りから,
腰に伝い,足元へと流れ,流れて排水口へと.
分かってはいた.分かってはいたのだが,やはり冷たい.
一瞬にして体が冷え,頭を冷やす余裕すら忘れて,温水に変更する.
が,そんな直に水が温かくなるわけもなく…こういった所も地球と同じだね!,と馬鹿っぽいテンションではしゃぎ,
はしゃいでいれば…相変わらず体を伝う冷水.
先に蛇口を閉めるべきだったと,思う.
眠気に,そんな判断力すら失われていたのだろうか…と,私は後になってそう思ったのだった.
「つ,冷たい…」
誰に言うわけでもなく,私は水が温かくなるまで,延々と水を浴び続けていた….



2.


「はい?」
寝耳に水,というのだろうか.
私,高町なのはが本日昼頃に連絡を受けた事項に対して思ったのはそんな地球の諺だった.
「えぇ……はぁ……」
続く言葉に,なんとも言えない返答を返しながら,何やってるのフェイトちゃん,とここにはいない彼女に声を掛ける.
「…あ,はい…了解致しました」
その言葉と共に,通信を終えると,出てくるのは溜息.
「……もう,フェイトちゃんてば」
何してるのやら…と,頭をぽりぽり.
普段毅然とした態度で執務官という職をこなしている彼女だが,妙に抜けている所があったりするわけで……
「……冷水シャワー浴びてたら風邪引いたのでお休みしますって」
……そんな事態々欠勤の理由に言わなくて良いのに.
はぁ,と自然,溜息が出てくる.
傍から聞けば,なんとも言い訳にもならない理由な御蔭で,
出社拒否でもしてるのではないでしょうか!?などと通信が入ってきたのだ.
多分本人としては,理由をしっかり説明せねばなるまい,と考えて言ったのだろうけれど,
でも,傍からするとアホらしいとってつけたような理由なわけで……
管理局に行きたくないんだよ!の裏返しに聞こえるというわけだ.
いつも真面目だから尚更だろう.および,どうやらまた徹夜続きだったらしいというのも,その一因であった.
御蔭様で,私に彼女の様子を見てきてくれ,という話が廻ってきた,というわけだった.
執務官という役職にとっては部外者である所の教導隊にまで連絡を入れてくる辺り,フェイトちゃんは可愛がられている,
とは思うものの……
「……頭は冷えてるだろうから,もう少し暖めないとね」
などと変な事を考えつつ私はフェイトちゃんの所へ向かうため,管理局を後にする.
こんな理由で帰って良いのだろうか,と僅か思ったものの,上司からは良いとのこと.
そんな管理局に平和だよねぇ,だとか,なぁなぁだよねぇ…と口にしながら,
とりあえず,執務官的にはサボり,と目されているわけであろうけれど,本当に風邪だろう,と判断した私は,
お見舞いに何を持っていけば良いのか,と悩む.
こういった時はメロンなのだろうか?
とはいえ,それはそれで大仰すぎる.
それとも『これがお茶よ!』と,子供の頃にリンディさんがフェイトちゃんに伝授したお茶を作成するための……


655 名前: (ω・`ミэ)ピチピチ [sage] 投稿日: 2008/04/16(水) 04:20:07 ID:/j0CX6aJ
いや,流石に病人にあれは拙い.
「う……」
想像するだに,口内を甘さが襲う.そう,『襲う』だ.触れたわけでもないのに,舌を通り,脳髄へとその情報が伝わってくる.
脳を粗方汚染した後は,その甘さが,血管を通し全身へと伝わる.それは,まさに蹂躙だった.
「にゃは……」
想像にて蹂躙されたのならば,想像にてお返ししよう,と脳内でスターライトブレイカーをぶっ放してみたものの,
効果は見られない…なんて事は,さておき今は病人優先.
ふるふると頭を振り,よし,と両手を胸の前でぐっと握り締める.
「よし…っと,何か作ってあげれば良いのかなぁ」
うん,そうしよう,と思いフェイトちゃんの所まで行く途中にお店があったかどうか,と思い出す.
コンビニがあるのは確かだが,そこで食材が整うわけもない.
ので,結局一旦家に帰り,その辺りにあるスーパーに寄る事にした.
フェイトちゃんと違い,私は車で通勤しているわけではないので,公共交通機関やら徒歩で帰宅する事になる.
御蔭で,自宅に着き,服を着替えてスーパーによっていれば,いつのまにかもう午後三時頃.
そうして,今現在,フェイトちゃんの部屋の前に.
「フェイトちゃん,入るよー?」
勝手知ったる親友の家,という事で認証ロックを勝手に外し,扉を空け,中に入る.
入ってみれば,妙に乱雑に脱がれた靴と,何故かコート掛けに掛けてある管理局の制服がそこに.
せめて靴は綺麗に,制服はハンガーに…と思ったが,多分,疲れてたんだろうなぁ,と想像し,
靴を綺麗に並べ,制服をコート掛けから皺にならないように手に移し,ととと,とリビングに向かう.
カーテンが閉められ,電気の消えた,リビングルームは,当たり前のように暗かった.
けれど,その傍らに僅か白い色が.そう,枯れた白百合の花が.
「はぁ……」
これも後で片さないと,と思いながら手に持ったままのフェイトちゃんの制服を掛けるハンガーを探す.
どこにあるのだろう,と探してみればソファーの上にぽつん,と置いてあった.
「……うーん」
フェイトちゃんが片付けの出来ない子というわけではないのだから,多分…ここにこうやって
ほっつけてある事も,フェイトちゃん自身は気付いていないのだろう.
その事実に気付けば,また溜息交じりの苦笑を浮かべながら,ハンガーを片付けるだろう.
それが…私には嫌だった.
それくらいに,日々の疲れが溜まっているのだと…そう,思う.
日々の疲れは判断力を失わせ,こんな簡単な事もフェイトちゃんに出来なくさせる.
けれど,フェイトちゃんはそうは思わないだろう.
自分がそんな事も出来ない人なのだ,と自分を責めるのだ.
そんなフェイトちゃんが可哀想…というよりも,心配になってくる.
だから,せめて……今だけは…
「とりあえず,片付けよう」
ハンガーを手に取り,制服を掛け,いつもフェイトちゃんが置いてあったであろう所に掛け,
お疲れ様,と小さく口にしながら,多少あった皺を指先で伸ばす.
「よし,それじゃあ…」
と,荷物を台所において,フェイトちゃんの様子を見に行こう…として,台所でまた,足が止まった.
目に映るのはゴミ箱から僅かに顔を出すプラスチック包装.
「…………」
近付き,良く見てみれば一つ二つではない.
妙に整然とゴミ箱に並べるように捨ててあったが,一番上…恐らく昨日のものだろうか?が,斜めに入っており,
その御蔭で気付いたわけだが……つまるところ,良くこういった物をフェイトちゃんが食している,という事の証明だった.
「………んんん…」
ここまで来ると,心配を通り越して怒りになってしまいそうな自分を押し留める.
これは……と,一つの思いを胸に秘め,その斜めになったプラスチックケースをその下にある物のように,整理し,
今度こそ,と台所に先程買ってきた食材入りビニール袋を置く.
「さて……それじゃあフェイトちゃんの所に……」
行こうとした.行こうとしたのだが……ふいに,体が勝手に動き出し,隅の方を見遣れば,瞬間,笑みが零れる.
「……あはっ」
何と言えば良いのだろうか,これはつまり……心配やら怒りを通り越してしまった,とでも云うのだろうか.
視界に映るのは乱雑に籠に入れられた下着とYシャツ,下着とYシャツ.
どこかで見た事があるような色と柄の,けれどサイズが異なる下着に僅か嫉妬しつつも,この際置いておくとして,
何日分だろうか.流石に数を数える気にはならなかったが,ぱっと見で一週間分.
明日が週末である事を考えると,多分,週末にまとめて洗濯しようとでも思っていたのだろう.
「…………」
私が言える立場にはないのかもしれない.


656 名前: (ω・`ミэ)ピチピチ [sage] 投稿日: 2008/04/16(水) 04:20:30 ID:/j0CX6aJ
けれど,フェイトちゃんは無理をしすぎだ,とそう思う.
がんばっているフェイトちゃんをいつも見ているから,だからこそ心配になる.
管理局で見る執務官然としたフェイトちゃんの姿からは想像もできない,この状況に,私は胸に秘めた思いを深くする.
…つまり,これはもうフェイトちゃんを一人にしておけないという事.
これまた空から堕ちた私が云う事ではないのかもしれないけれど,でも…一人にはしておけない.
今はまだ良いかもしれないけれど,大きな事件でもあればもっと大変な事になるのは想像に難くない.
だから―――いいや,私も…フェイトちゃんと一緒に暮らしていきたいと,そう思っている.
「むむ…」
自身の思考に,唸り声をあげ,はて?と考えてみれば,…心配だからという理由も後からとって付けた言い訳に思えてくる.
「むむむむ…」
再度唸り声をあげていれば,耳朶を打つぽつぽつ,という雨音に思考が途切れる.
窓辺に寄り,淡いピンク色のカーテンを持ち上げ,外を見る.
ここに来る時にはさっぱり気付かなかったが,空はいつのまにか一面の曇り空.
予報では晴れだったというのに,何処の世界も天気予報は曖昧なものなのだな,次第早くなる雨音に対して呟く.
いくら高精度な天気予報だとて,初期値が不明確ならそんな程度なものだ.
ともあれ,この雨模様では洗濯物も乾せない.
付加えれば帰るに帰れない.
傘は持ってきてないし,フェイトちゃんの家にはフェイトちゃん用の傘しかなく,借りるわけにもいかず….
困ったものである.
ある意味仕事とはいえ,勝手に来て,泊めて下さいというのは虫が良い話…と,思えば.
看病という名目があるので,ま,良いっか.
と自分を納得させる.それに,予行演習もできるのだから……
「ありがとう」
それは,何に対しての感謝だったのだろうか.
降る雨が,次第にアスファルトを埋め尽くし,その色を灰色から黒色へと変える最中,私は…確かに,そう口にしていた.


3.


先程からがたがた,と時折なる音に,少し煩いな,と思いながらも私は布団の中でまどろんでいた.
吐き気はないものの,熱と頭痛に悩まされ,動く気力もなく,今朝方,とりあえず管理局に連絡を入れたものの,
『はぁ…そ,そうですか…』という何とも云えない声で答えられ,不可思議に思いながらも,
そんな余裕はなく,布団の中で眠りについたのが…何時だろうか?
あれからどれくらい時間が経ったのかは,分からないが,しかし目が覚め始めている原因はわかる.
先程から時折なる,がたがたとした音の所為だ.
なのは曰く,私は寝起きが非常に悪いそうなので,そんな私の目を覚まさせるという事は,
それはそれは大きな音なのだろう.
とはいえ,泥棒でもいるのだろうか,などと想像しながらも,まぁ,いいや,と楽観的に考えてしまう辺り,
熱で頭が侵されている事の証左.
とりあえず,静かにして欲しいものだ…なんて,思いつつ,私は布団に包まっているのであった.
そんな時だった.
ガチャ,と部屋の扉の音と共に声が聞こえたのは.
「ふぇ〜い〜と〜ちゃ〜ん」
あぁ,なのはの声がする,と呆とした頭が認識する.
「なの……は?」
「あ,起きてるの?」
「ん……」
もぞもぞ,と起き上がろうとは試みるものの,どうにも躰が動かない.
「お見舞いに来たよ……いいよ,寝てて」
呆とする視界の中で,なのはがいつもより三割くらい増しで微笑んでいた.
手に持ったプラスチック製の湯桶が妙にミスマッチではあったが,そんななのはが綺麗だと,そう思う.
珍しく髪留めを解き,後ろに流した艶やかな髪,それを飾るのは穢れる事を知らぬ純白のカッターシャツ,
スカートは管理局の制服のような,タイトな感じの紺色.
どうやら私服のようだが,けれどどこか管理局の制服を想起させるそれに,一瞬,笑みが零れたのだが,
何故か,そのなのはの服の上を飾るのが私のエプロンだった事に困惑する.
最近ではお役目御免といった感じで使ってはいなかったが,縁がフリルで装飾された,僅か汚れた白いエプロン.
特別思い入れがあるわけでもなく,使わないのならば捨ててしまえば良いかったのだが,
どうにも残しておきたい,と残しておいた一品.単に物が捨てられない性格なのかもしれないが…
そんな私の視線に気付いたのか,借りてるよ〜と.ベッドに近付きながらなのはが一言口にする.



続き16-657
2009年04月04日(土) 23:40:45 Modified by coyote2000




スマートフォン版で見る