Wiki内検索
メニューバーA
タグ
11-471 28-206 28-342 28-519 304 428 458 47 532 6-502 913 aa gbhs4w75 mspuqpiv pluto ピチピチ ◆1gx5q3ma8y ◆34ietljps6 ◆6gzt0d6rrc ◆8giervnano ◆9oq0gi8lfs ◆gtd5kcksn. ◆jhf0qdqssc ◆k1m2.fa0dm ◆nna2fui0zk ◆okpddn8iwc すいもう すずか すずか×アリサ なのは なのは×ティアナ なのは×フェイト なのはフェイトの娘 はやて はやて×すずか はやて×カリム アギト アクエリアス アリサ アリサ×すずか アリシア アルキメデス アルフ ウーノ ウェンディ エイミィ エリオ エロ オットー カリム キャロ キャロ×フェイト ギンガ ギンガ×フェイト クアットロ シグナム シグナム×ティアナ シャーリー シャッハ シャマル シャマル×キャロ スバル スピノザ セイン セッテ チンク ティアナ ティアナ×なのは ディード ディエチ デバイス トーレ トーレ×セッテ ドゥーエ ドクター ナカジマ家 ナンバーズ ノーヴェ バルディッシュ フェイト フェイト×なのは フェイト×ギンガ プレシア ヤンデレ ユーノ ユーノ×ロッサ ヨン◆h7y.esozi リインツヴァイ リイン初代 リンディ ルーテシア レイジングハート レティ ロッサ ヴィータ ヴィヴィオ ヴィヴィオ×なのは 或る捜査官 恭也 空気ブレイカー 高町家 鮫島 士郎 紫水 自作絵 修学旅行 宵月 八神家 非エロ 美由希 落ちはまだ未定 薔薇
最新コメント
最近更新したページ
フリーエリア

20-236

236 名前: シグはや続き [sage] 投稿日: 2008/07/14(月) 23:21:34 ID:tUejol41

「……はやて……これ……」

魔方陣もろとも消え去ったシグナムとなのはの行方。
転送ポートを展開してもいないのに消えたということは、一体……?フェイトはたらりと油汗が額を流れるのを感じた。

「……あかん……多分ザフィーラがなんか知らんけど気ぃ利かせたんや……」

草陰から出てきたはやてがそう呟く。

「どういうこと……?」
「あの術式、見覚えあんねん……。これ、ザフィーラが時々自分で作って閉じこもってた空間の魔方陣やねん……。うち頭数結構あるからな、プライベートな空間ってあんまないんや。
せやからザフィーラなんかはたまに一人になりたい時とか使ってた」
「それに、シグナムとなのはが……」
「どういうつもりか知らんけど、……相談役に徹するやろ思たから何も言わんかったのがまずかった……!ザフィーラ、何のつもりでこれやったんやろ……?」
「で、でも一応なのは達は安全、ってことだよね?」
「……多分。とにかく一時中断や、解除させな!」

はやてはリインを呼び出し、その意を伝えた。

「了解ですー!今すぐ伝えますですっ」

はやての焦りように動揺が伝染したのか、リインがフレッツ光の速さで飛んでいく。
それを目で追ってから、はやては「やっちゃった」と表情で言った。

「だ、大丈夫……かな、二人とも……」

シグナムとなのはを心配する顔をしながらフェイトが考えていたのは、その閉鎖空間でシグナムが間違った気でも起こしたらどうしてくれよう、というただ一点だった……。

「……バルディッシュ」

相棒が明滅で応えると、フェイトははやてに聴こえないくらい小さな声で呟いた。

「ここ一帯、
…………焼け野原になるかもしれないね」








237 名前: シグはや続き [sage] 投稿日: 2008/07/14(月) 23:22:02 ID:tUejol41

「シャマル……、今、何が……?」
「…………ザフィーラの魔方陣が発動する前に、誰かが魔方陣を展開、それにシグナムが気を取られたと思ったら数秒遅れでザフィーラのそれが発動。
なんだかわからないけどそこになのはちゃんとシグナムが放り込まれた……としか言いようがない……」

出てくることを予想していなかった名前にザフィーラが面食らう。しかしヴォルケンリッター陰の長とも言うべき男、すぐに冷静沈着な普段の表情に切り替わる。

「何があったかはわからんが、30分もすれば出てこられる。その時事情を説明すればいいことだ。今や我らと時空管理局側は敵対していない、血を見ることもないだろう。
仮にそうなったとしたら、俺が何とか出向いて話を付ける。……その説明が面倒になりそうだが」
「30分、嘘がつけない空間にいるって結構厳しいよな……」

ヴィータがリビングに浮かび上がる異次元空間映像に目を落としながら言った。

「でも、ものすごい隠し事とかしてるわけじゃないし、せいぜい小さい頃のはずかしい話がばれちゃう程度よ、きっと」
「嘘がつけないってさ、要は黙ってりゃいいんだろ?」
「……さあ、私はよくわからない」

ヴィータは回答を知る唯一に目線をずらした。

「そうだな、そういうことになる。
だが疑問系で話しかけられた場合、勝手に口が動き真実を語りだす」
「うげ……。あたしぜってー行きたくねえ」
「一人で行く分にはいいのだがな、複数で行けばなかなかの修羅場に出会える場所だ」
「なんで一人ならいいんだ?誰かに質問されることないからか?」
「確かにその点は大きい。
しかしこの空間は俺が個人的目的でかつて作った場所だ。つまり俺が必要と感じたから作った。
利用目的は自己との対話」
「あ、……なるほど」

その言葉にシャマルが感嘆の声を上げる。ヴィータはやはり分からなかったようで、シャマルを見上げ自分にも説明しろと服の袖を引っ張った。





238 名前: シグはや続き [sage] 投稿日: 2008/07/14(月) 23:22:39 ID:tUejol41

「嘘がつけない場所だから、自分が本当に思っていること、……それが聞けるのね」
「ああ。例えば自分の嗜好が分からぬ者がいたとする。その者が入り、『俺の好きなものはなんだ』と言えばその答えを自分が語るという訳だ」
「ほぇ〜……、考えようによっちゃ便利なもんだな。ザフィーラは自分の何が知りたくて入ったんだ?」
「俺史上最大の謎を解きに行った」
「なに、それ?」
「意外な答えだった。浅野○澄だとは思わなかっ……」

ザフィーラがそう言いかけた途端、空間映像にノイズが混じりだし、あっという間に砂嵐となり画面が消失した。

「な……ッ?!どういうことだ……っ?!」

画面の再展開を試みるも、映像は全く回復しない。18型程の画面枠はひたすら砂嵐を映すのみだ。ザー、ザーという音だけがリビングに流れ続けている。

「……あちら側で、映像送信を拒否している……のか?」

映像回復の兆しが全く見えない様子に流石のザフィーラも動揺を隠せない。なにせ自分の手のひらのような感覚でいる空間で今何が起こっているのかわからないのだから。

「え、ど、どうゆうこと……?」

元々おどおどしたところのあるシャマルだが、今はそれがより顕著になっている。一向に映像の回復する気配のない画面とザフィーラとを交互に見比べた。

「……何らかの不測の事態が起こっていると見て間違いない。止むを得ん、俺が行く。
安全であることには太鼓判を捺せる上、二人とも一般人ではない。危険はなかろうが、……事情がわからんとなると何をしでかすか予想が付かない。
直ぐに戻る、お前たちは此処で俺の報告を待て」
「私も行くわ!」
「お、あ、あたしも!」





239 名前: シグはや続き [sage] 投稿日: 2008/07/14(月) 23:23:03 ID:tUejol41

転送ポートと同じ役割を持つのであろう魔法陣をザフィーラが展開すると、シャマルとヴィータがそう叫んだ。
ザフィーラは獣化を解くと二人の肩に片手をそれぞれ置き、笑った。

「俺の失態でお前たちに何かあれば合わす顔がないだろう。なに、簡単な映像障害が起こっているだけだ、恐らくな。
着いたら映像回復と両名の帰還援助に徹するが、無理でもシャマル、お前に通信を」
「……うん」
「心配は要らん、俺の作り出した空間……言わば俺の一部だ。起こったとしてもお前が言ったように幼い頃の話を暴露することになる程度だ」

ぽう、と魔方陣の放つ光が術者を包み、数秒後にはザフィーラの姿は消えていた。
一人欠けたリビングで、ヴィータを抱き寄せシャマルが呟く。

「……ザフィーラ、色々聞かれないといいわね……」
「ちょっときもいよな、あいつ……。最近やたらと石丸電器行くしさ……」
「いい人、なんだけどね……」

シャマルは優しい嘘で作った笑顔で微笑んだ。








240 名前: シグはや続き [sage] 投稿日: 2008/07/14(月) 23:23:30 ID:tUejol41

彎曲した、見慣れぬ空間。見覚えなどある筈もなく、辺りを見回すこともしない。
私が視界に映しているのはただひとつ、
――高町なのは。

「どういうことだ、これは?」
「はやてちゃんに頼まれてシグナムさんをはやてちゃんちに転送する計画だったんですけど何故かこんな場所に送り込まれてて正直私も困惑中です」
「……主はやてが?」

主は高町教導官の元に居たのか。道理で街をうろついても見つからなかったわけだ……という感想はひとまず保留だ。

「そうなんです。シグナムさんがあまりにも鈍感だからってはやてちゃんが意味不明なプラン立てて……」

こんなによく喋るタイプだっただろうか。
いつになく饒舌な様子に少し驚いていると、相手も同じ顔をしたので妙な気分になった。

「え、……え?!ちょ……なんで勝手に……?!」
「勝手に?」
「いえ、今の発言はシグナムさんに向けたものではなく私自身への問いかけです。
……ちょ、えええ?!」
「………………大丈夫か?」

そう話しかけずには居られないほど普通ではない様子なので思わず言ってしまった。大丈夫です大丈夫、とやけに元気良く答えられてはそうか、と応答する以外に言葉はない。
今は様子のおかしい相手は放置することにして、この空間を脱出する道を探した方が遥かに建設的だ。
一体ここは、……何処だ?
あちらこちらに大型の本が空中を浮遊している以外は何もない白い空間。響く音はなく、静か過ぎる為に逆にいらつきが募りそうだ。

「何なのだろうな、此処は」
「……わかりません。本当に……見当も付かない」





241 名前: シグはや続き [sage] 投稿日: 2008/07/14(月) 23:24:03 ID:tUejol41

先程とはうって変わって、見慣れた口調に戻っているのを見て私は一息つく気になった。

「お前がそう言うのなら……本当なんだろうな」
「信じて、くれますか」
「……悪意は感じない」

ひとまず座りこみ、互いの持つ情報を提示しあう。が、この空間のデータは全くの皆無だった。
好きか嫌いかには分類し辛い相手なので、何故か今自分を占める懸案事項を口にする気になった。

「主はやてがな」
「え」
「先日のことだ。私がテスタロッサに好意を持っているだろうと言ってきた。無論、そんなものはないがその場は肯定したんだが後日否定したのだ、『その可能性は無い』と。そうしたら何故か突然不機嫌になられ家を飛び出された。
……我が主はそちらに邪魔していたようだな」
「まあ、そうですね。相談を受けて」
「……相談」

自分も訳のわからぬ心境を同志に打ち明けたことを思い返す。
………………そうだ、通信。
シャマルか誰かに伝われば何かわかるだろうか?
その時、空間に……、監視されているような、不快な違和感。それを覚え瞬時にレヴァンティンを起動、元凶と思しき物体を破壊する。
砕けたそれを見に行くと、

「……映像変換機?」

どこかで見たことのあるような外見のそれはビリビリと光を走らせ、完全に壊れたことを極めて明確に体現していた。

「……あの、シグナムさん。ひとつ聞きたいことがあります」

持っていても仕方がないので近くに置いておくと、名を呼ばれたので顔を向ける。
見ると、ひどく真剣な顔をした高町教導官がそこに居た。

「…………フェイトちゃんのこと、どう思っています?」
「私はフェイト・テスタロッサ・ハラオウンを非常に良い好敵手だと捉えている。決着は未だ付いていないのが残念といえば残念だ。だがいずれ雌雄は決する。
………………?!」




242 名前: シグはや続き [sage] 投稿日: 2008/07/14(月) 23:24:38 ID:tUejol41

「……不思議……というか、妙ですよね。私もさっきから思ってました。なんだか、……口が勝手に開いて喋るんです」
「そんな事が……」
「現に今、シグナムさんも体験したでしょう。……たぶん、質問されるとそれに嘘偽り無く、明鏡止水の如く答えてしまうみたいなんです。実際、私はシグナムさんが聞いてきた内容は黙っているつもりでした。それなのに、……勝手に。
だから、お互い質問することは控えましょう、あまりいい気分ではないと思いますから。それに……時空管理局の中枢機密を狙う第三者の仕業……とも考えられる」

その時、視界の端で蒼い光が映り、レヴァンティンを構える。
しかしそこに出現した魔方陣から浮かんだのは……

「…………ザフィーラ?!」
「いかにも。
我は主はやての願いを叶える為に在る守護獣、ザフィーラ」
「いや、知ってるぞ」

何を今更?
と聞きそうになったところで理由は知らないがとりあえず『質問してはならない』という文句を思い出し、喉を飛び出しそうなそれらを飲み下す。

「……もう理解しているようだな、察しの通りだ。ここでは質問されればそれに偽証を加えることは不可能。
余計な世話を焼いてしまったが為の事態だ、先に詫びる」

ザフィーラはそう言うと背を向け、シグナムが破壊した機器へと足を運んだ。

「派手に壊してくれたな、これでは映像が届かないのも納得だ……
どうして部外者がここに居るのかわからんが、とりあえず脱出が先だな。計画が崩れている、何かあると後々面倒だ。行くぞ」

守護獣は片膝を立てると先程現れた魔法陣を展開した。
状況が理解できないものの、出られるならば話はその先でゆっくり聞けばいい。そうアイコンタクトを交わし、なのはとシグナムはザフィーラに従う。

「雑念は払え。直ぐに出られる。……転送先は主の元にするか。どちらにせよ説明が必要と見える」
「……そうですね」

もう意地など張っている場合ではない。何なのか未だ掴めないが、自分が軽く背中を押せばはやてはきっと伝えられるだろう。
そう考えたなのはとザフィーラの思考はほぼ一致したようだった。

「……シャマルか。俺だ。問題は解決……というか、なんでもない、ただの機器破損だった。
これより主はやての元に転移を開始する。いつまでも意地を張られては適わんからな。穏便にけりをつけて戴こう」





243 名前: シグはや続き [sage] 投稿日: 2008/07/14(月) 23:25:02 ID:tUejol41

苦笑の中に柔らかい笑みを浮かべながらザフィーラはシャマルへと報告した。
……さて、これからが面倒だが、はっきりとした事実を照らし合わせながら話せばシグナムも自分の本心に気が付くことだろう。
そもそも、こんな強引なやり方はやはり褒められたものではないからな……。
ザフィーラがそう思いながらはやての位置を確認し、転移を開始しようとしたその時。

「ふぇあっ?!」

どさん、という落下音と共に何かが降って来た。
――悪い予感が蒼の獣を包む。
壊れた首振り人形のような緩慢な動きで音の先に目をやると……

「…………主、はやて……」
「ふぇ……、ザフィーラ……、なんでここにおる……、


し、シグナム?!」

かなり『面倒なこと』が起こるのは予感だけで済んでほしい。
ザフィーラのその願いは数分後、敢え無く散ることになるのだった…………。





244 名前: 名無しさん@秘密の花園 [sage] 投稿日: 2008/07/14(月) 23:27:47 ID:tUejol41

終わりませんでした。
シグ姐さん、予想以上に手強いです……
シグはや恐るべし!




249 名前: シグはや最終章 [sage] 投稿日: 2008/07/15(火) 16:23:00 ID:JYLdjpO5

「ザフィーラ……なんでここにおる……んむっ?」
「……ご無礼をお許し下さい、今は一刻も早くここを脱出すべき状況。色々と耳にしたい事ばかりだとは思いますが、今だけは私の言う通りにして戴きたいのです。説明ならば後で幾らでも出来ますから」

ザフィーラの手がはやての口元を覆っていたのはほんの数秒だった。少し眉を下げ、申し訳なさそうな顔を浮かべると、ザフィーラはここに立つ数人を見回し、額を押さえた。
……人数が多い。俺の力では一度に一人しか運べんからな……。しかし、主はやてが何故此処に……?
質問すれば知りたい答えそのものが返ってくるが、ここでの長話は避けたいところだ。なにせ当初の計画ではシグナムとはやてのみが入る筈の場所だったのに今や部外者は自分を含めれば二人も存在するのだ。
一人の虚偽無き発言を受け、そのありのまま過ぎる感情を聞けば無数に会話の種が起きて益々やっかいになりそうだ。
その上、原因は不明だが見知った空間である筈の異次元に妙なものを感じる。……自分以外の者の放った魔力だ。
恐らく、この魔力の発信源ははやてだろう、とザフィーラは推測した。ザフィーラの魔方陣が起動する前に何者かのそれが一寸の差で先に展開されたのだ。
先程のシグナムとなのはとの会話を端ではあるが聞いたザフィーラは、はやてがなのはの元に居たことを知った。
ならばフェイトも同行していた可能性は高い。そして、厄介ごとを引き起こしそうな人物をなのは・フェイト・はやてから推理していけば自ずと主の名が残る。
どんな効力を持った魔法を使ったせいなのかわからないが、今この空間は時折篭るそれとは異質だった。

「質問をしないという前提で少し聞いて欲しい。まず言っておくべきなのはここが私の作り出した個人的空間だということ。何もない場所だが、ただひとつ特殊な力を持っている。
それは先にここに訪れた両名は既に承知のようだが、偽証が不可能と言うことだ。誰かに何かを問われれば一点の曇りない回答を自らの意思に関わらず喋りだす。
そして、重要な事実が判明しているのだが……、ここは私の一部のようなものなのだが、現在少し話が違う。私では無い者の魔力が空間に歪みを与えたようなのだ。
……説明が非常に面倒かつ厄介だが、此処に居ることは危険を孕んでいる。
脱出は容易だ、私の展開した魔方陣に乗りさえすればいい。しかし一度に運べる定員は一人。ここには私を除けば3人居る。全ての人員を脱出させる為には人数と同じだけの回数が必要という訳だ。
とにかく質問はあちらで幾らでも聞く、今は脱出することが先決だ。
……高町教導官、あなたから運び出す」
「え、あ……、はい!」
「全ての質問は後にして欲しい。一刻を争う」

ザフィーラが魔方陣を展開し、そこになのはが乗る。
蒼い光は二人を包み、あっという間に異次元空間から消滅した。

「ふぁ……、なんか……わけわからんな……。とりあえずここがザフィーラの秘密基地みたいなもんで、危ないからはよ出なあかんっちゅうのはわかったけど」
「……教育上良いとは言い難いもので溢れていますね」

シグナムが足元に落ちてきた本を拾いながら言う。「まだまだ☆やまと○でしこ〜ゆいたんとゆかりたん〜」と書かれた薄い本は明らかに成人向けである。

「……たまに気持ち悪いなあ思うとったけど、あかんやろコレは……」





250 名前: シグはや最終章 [sage] 投稿日: 2008/07/15(火) 16:23:40 ID:JYLdjpO5

ただの白い空間に写真集が浮遊している程度だった場所は、混入してしまったはやての魔力により皹が入っていた。
その皹から生じた歪みの奥からころりとひとつ本が落ちてきたのを呼び水とするように物の雪崩が発生した。空間の歪みからごろごろと転がり出たそれらをどん引きしながら見る二人の目はきっと氷よりも冷たいだろう。
エロゲキャラの添い寝シーツに始まり、卑猥な塗装済みガレージキット、○林ゆうの出演情報が書き込まれた手書きのノート、多種多様なカップリングの声優同人誌――100冊は優にあるだろう――が所狭しと現れだした頃にははやての表情は凍結を3段階程超えていた。

「どんな顔してこれから会えばええねん……なんか薄ら寒いで」
「……知らない振りをしてあげましょう」
「そやな……」

ごく普通の会話。
偶然にもそこに禁じられた『疑問系で終わる言葉』は発せられなかった。二人とも意識していたわけではないのだが、ただそうなっただけだ。
しかし、質問をしてはいけない、というここでの禁忌をこの会話の流れに乗って無意識にシグナムは……。

「主はやて、何故お怒りだったのですか」

……数秒の、間があった。

「なんでって、私はシグナムのことが好きやからそう言ってもらいたいんにシグナムのあほぅは全然それに気が付いてくれへんからちょっとイジワルしたんや!」
「………………は」
「フェイトちゃんのこと好きなんやろ、言うたら幾らなんでも自分の気持ち気付くやろ思ってたけど全っ然!気付かん上にわけわからん理屈こねだすし!
だって、だって…………、
シグナムは私んこと好きやんか!ずっと………………前から!
なのに主、主ばっかゆうて私の……
…………気持ちも知らんと……そないなことばっか言うて……………………、この……あほぅ………………」

本当の意思。
不本意ながらも口を抜けていくその本音に、百戦の勇も戸惑いを隠せない。

「あ、あ、ある、あるじ、はや……て……?」
「そうや、私の名前は八神はやて。リインフォースを相方に時空管理局務めの機動六課部隊長。
守護騎士シグナムを、
たぶん……、……………………。
やなくて、すごく………………好き」





251 名前: シグはや最終章 [sage] 投稿日: 2008/07/15(火) 16:24:39 ID:JYLdjpO5

俯きながらもはっきりと伝えられた言葉達。
なのはのように勝手に飛び出していった言葉に慌てる様子がなかったのは、きっと自分でも『やっと言えた』と……誰よりも感じていたからに違いない。
……そして、シグナムは。

「わ、わた……!」

その時、蒼い光が現れザフィーラが手招きした。どちらでも良いから早く来い、という意味だろう。
はやての肩をそっと押し、シグナムは振り向いたはやてにそっと笑いかけた……。

「では参ります、主はやて。遅くなり申し訳ありません」
「あ、……う、ん」

上の空なはやてを見て、ザフィーラは目を細め微笑んだ。
少し手荒だったが、上手くいったに違いない。そう内心呟き、魔方陣を展開する。
ぽう、と一瞬で消えた主の跡をシグナムはぼんやり見つめた。

「私は…………主を………………
好き、なのか…………………………?」

ぽつりとこぼれた自問に答えたのは、紛れもない事実から来る言葉。

「私は……。
主はやてが『主だから』守ってきたのではない。『守りたいから』、守ってきた。
好きだから、共に在りたいから、
…………守るのだ」

とうに知っていたはずの気持ち。
随分と遠回りしてようやくたどり着いた声に、シグナムは耳を傾けた…………。







252 名前: シグはや最終章 [sage] 投稿日: 2008/07/15(火) 16:25:16 ID:JYLdjpO5

「おかえり、なのは……、大丈夫だった……?」
「う、うん。ちょっとまだよくわかんないんだけどね。
フェイトちゃん……なんでバリアジャケット?」
「血が流れるかもしれないと思ったから……」

怪訝な顔を向けたなのはの肩にぽん、と額を預けるとフェイトは「良かった」と言って少し笑った。
その笑みの意味はきっと、フェイト本人しか知ることはないだろう。

「ちょっと話聞いてくるね。質問したいこと、いっぱいあるんだ」
「うん」

繋いでいた手をほどき、「あとでね」と囁いてからなのははザフィーラの元に駆け寄り、事の顛末を聞きだした。
嘘がつけないことのもたらす危険性、はやての恋路を応援しようとしたが為の空回り。それら全ての事実が氷解する頃には、今回の一騒動の面々が顔を揃えていた。

「もぉ……。一時はどうなるかと思ったわ」

シャマルがお茶を載せた盆を運びながらぼやく。

「まー、いいじゃねーか、丸く収まったみてーだしぃー」

にやにやしながらヴィータははやてとシグナムの方を見た。
二人の表情はどこか照れた空気に染められてはいたものの、あたたかさがあったからだ。







253 名前: シグはや最終章 [sage] 投稿日: 2008/07/15(火) 16:26:00 ID:JYLdjpO5

はやての転送が完了して数分、ザフィーラが空間に現れシグナムを魔方陣へと誘導し全員が脱出してからのこと。

「……主、はやて」
「……うん」
「やっと、憤りの理由がわかりました」

シグナムの手のひらがはやての髪に触れる。
さらさらとした感触の中で、続けた。

「騎士シグナム、守護の意味を……新たに見出しました。
いや……、きっと最初から……私は知っていたのでしょうね」
「ほんなら、…………私かて」
「知らない振りはつらいものですね」
「……そう、やな」

はやてはシグナムの空いた左手にそっと、指で触れた。
握り返してきた体温に、不覚にも少し泣きそうになってしまったこと。
こればかりは何があっても黙っておこう。
はやてはそう思いながらシグナムのあたたかさをかみしめた…………。



後日――
ザフィーラの更正計画がシグナムとはやてを中心としたメンバーで企画されることになり、あの時感じた『面倒なこと』が現実となったことに守護獣は軽い目眩を覚えたのだった……。




おわり



254 名前: 名無しさん@秘密の花園 [sage] 投稿日: 2008/07/15(火) 16:27:48 ID:JYLdjpO5

全てを通してザフィーラな展開でしたがお付き合いくださりありがとうございました。
次はシャマシグで行こうかな、などと思っています


ザフィーラ好きな方にはこの場を借りてお詫びいたします……




20-263
2009年07月05日(日) 22:38:18 Modified by yotsubato




スマートフォン版で見る