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5-216

216 名前:スピノザ[sage] 投稿日:2007/09/27(木) 19:50:35 ID:GYvRrYlS
小説は初めてじゃないけどここは初めて
あんまり叩かないでくださいね
ってことで以下どうぞ


『夢をみた』



「あ、なのは」

機動六課の廊下に響くソプラノの綺麗な声。
振り返らずとも、その声の主が誰なのかは想像がついた。

「・・・なに?」

自分の声を聞いて、ちょっと失敗したな。と思った。
普通に返そうとした返事が変に力が入って、不機嫌そうなものになっていた。

今日があまりフェイトちゃんに会いたくなかったから。

「・・・・用事がないと話しかけちゃダメなのかな?」
「そういうわけじゃ、ない、けど・・・・」
「・・・・なのは?」

フェイトちゃんが心配そうに私の名を呼ぶ。
普段の私なら、作り笑顔でもしてから振り向けるなのだろうけれど。

私はそんな簡単なこともできずに、まるで逃げ出すかのように早口に言った。


―――今日の私は、どこかおかしいのだろうか?

219 名前:スピノザ[sage] 投稿日:2007/09/27(木) 19:52:11 ID:GYvRrYlS
「ごめん、今忙しいから」

足早にその場を離れる。

なんとまぁ、下手な言い訳だろう。
こんなの、「ごまかしてます」って言ってるようなものじゃない。
もうちょっとマシな言い訳しようよ、自分。
なんなんだ、いったい。

今日は朝から元気が出ないし。
訓練中にぼんやりしてしまうし。
挙句の果てにスバルたちに加減間違えて攻撃しちゃったし。

―――今日の私は、どこかおかしいんだ

それもこれも全部・・・・

(あんな夢、見たからだよ・・・・・)

ふいに腕を強く掴まれた。

「待って」

いつの間に追いかけてきたのだろうか。
振り返った先には真剣な眼差しで私を見つめるフェイトちゃんがいた。

やめて。そんな目で私を見ないで・・・・

220 名前:スピノザ[sage] 投稿日:2007/09/27(木) 19:53:47 ID:GYvRrYlS
「・・・・なんで目をそらすの?なのは」

そう言って無理やりに私の顔を自分に向かせようとするフェイトちゃん。

少し見上げなければならないその顔は、
やっぱり夢にでてきたのはこの人なんだって、
確認されるみたいで。

「・・・・や!はなして!!」

パシンと乾いた音がやけに大きく廊下に響いて聞こえた。

フェイトちゃんの手を払いのけてしまったんだ、って一瞬遅れてから気付いて。
あ・・・、とフェイトちゃんを見るとやっぱり傷ついた表情をしていた。

だから、

(いや!!)

夢の内容を思い出してしまって、思わず手をぎゅっと握りしめる。

「ご、ごめんフェイトちゃん・・・・・・痛かった、よね」
「え、ううん。私の方こそ、突然、だったし・・・・ごめん」

気まずい空気があたりを漂う。
ああ、どうしよう。言ってしまおうか、この気持ち。
言ったら彼女はきっと、私からこの不安を取り出してくれる。

221 名前:スピノザ[sage] 投稿日:2007/09/27(木) 19:55:49 ID:GYvRrYlS
でも言って、彼女に助けられたくない。
自分で、立ち上がりたいんだ。

「なのは・・・」
「昨日」
「え?」

気づいたら、フェイトちゃんの言葉を遮るように声を重ねてしまっていた。

「昨日、夢をみたの・・・・」
「夢?」
「そう、夢。フェイトちゃんが・・・・・・」

途中、フェイトちゃんの顔を縋るように見る。


「フェイトちゃんが、いなくなる、夢」


夢の中の彼女はとっても悲しそうな顔をして闇のなかに消えていった。
私が呼びかけてもただ悲しそうに笑うだけ。
私は何度も彼女の名前を呼んだ。
会いたくて、会いたくて・・・・。

「どうしてあんな夢を見たのかは分からない。でも・・・」

ただ、起きたら涙が止まらなくて。
淋しかった。会いたかった。傍にきて、あの優しい声で名前を呼んで欲しかった。
そう思う自分が、フェイトちゃんにのめり込んでいく自分が、
ただただ恐くて。

「だから・・・・」

222 名前:スピノザ[sage] 投稿日:2007/09/27(木) 19:57:03 ID:GYvRrYlS
会ったら、自分がどうにかなってしまいそうな気がした。

「ごめんね。こんなこと、フェイトちゃんには関係な・・・い・・・」

気づいたら私はフェイトちゃんの腕の中にいた。
息を吸ったら彼女の匂いが肺のなかにいっぱい入ってきて、優しい気持ちになれた。
とくんとくん、と聞こえるこの心臓の音は、いったいどちらのものだろうか。

強く握りしめていた拳から自然と力が抜けていく。

「私が、なのはをおいてどっかに行くわけないよ」

・・・・ああ、ほら、やっぱり。
あなたはそのたった一言だけで、
私を不安から救い出してくれる。

「・・・・離れていったりしたら、嫌だからね?」

「うん」と嬉しそうに頬を緩める彼女の胸に顔を押し付けて、私は思った。

きっと、私はこうやって彼女にのめり込んでいくんだろうな、って。

でも、




それでもいいかな、って思えた。
2007年10月04日(木) 07:46:03 Modified by nanohayuri




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