Song for ...
236 名前: 233 [sage] 投稿日: 2008/04/06(日) 20:24:47 ID:fYVlQ7Dj
それではお言葉に甘えて、投下させていただきます。
はやて×すずか(すずか→はやて)、4レス使用
という異端CPですので、アリすず派の方はスルーでお願いします。
237 名前: Song for ... [sage] 投稿日: 2008/04/06(日) 20:26:11 ID:fYVlQ7Dj
一度本を手に取ると、周りが見えなくなる癖は直したほうがいいかもしれない。
わたしはそんなことを思いながら、夜の濃い道をひとり歩いていた。
街灯があるものの、暗くて。見えない不安がまとわりついてくる。
「すずかちゃーんっ」
聞きなれた声。わたしが抱いていた感情とはまるで逆の明るい、そしてあたたかい声。
後ろからかけられたそれに、心臓が一瞬大きく跳ねた。
振り向くと声の主が――鼻先にいた。
「ひゃっ!?」
「ほへ?」
びくりと体を震わせ、一歩のけぞる。追って、熱が頭に上がってくる感覚。
へ、変な声出しちゃった……。
一気に後悔と恥ずかしさが襲ってくるわたしを、ことの本人はそ知らぬ顔で頬を掻きながら、その青い眼をぱ
ちくりとさせて見つめている。
「は、はやてちゃん、どうしてここに?」
「わたしは仕事の帰り。すずかちゃんは……図書館の帰りやろ。あかんでー、こんなに暗くなるまでおったら」
図星を指されて、熱い顔のまま苦笑いする。
するとはやてちゃんは、きょろきょろと辺りを見回して、何かを思いついたように、ぽんと手を合わせた。
238 名前: Song for ... [sage] 投稿日: 2008/04/06(日) 20:27:09 ID:fYVlQ7Dj
「よし、家まで送っていったげるわ。ここ、人通りが少ないし」
「え? ……いいよ、はやてちゃんに悪いから」
「悪ないよ。それに、すずかちゃんみたいな可愛い子がひとりで歩いとると危ないしな」
いつものおどけた調子ではなく、真摯に言う彼女に、下がり始めた温度が上がった気がした。
……さっきの熱がまだ篭っているんだ、きっと。
自分を納得させても、はやてちゃんの一挙一動に翻弄されているわたしが確かにいて。
ちょっと悔しいから、言う。
「……アリサちゃんが聞いたら、『はやてと帰るほうが危ないわよっ』って言いそうだよ?」
「あー、確かに言いそうやなぁ。アリサちゃんの中でわたしはどんな人間に見られてんやろ」
むぅ、と腕を組んで唸るはやてちゃんを見て、ひとつ笑みを零した。
そうしたら、はやてちゃんも笑顔を返してくれて。
自然とふたり肩を並べ、歩き出した。
冷たい、冬の夜。
……手袋を持ってこなかったのは失敗だったかも。
急場しのぎに、とりあえず手にはーっと息を吐くと、白く曇った。
やっぱり寒い。
その代わりというわけじゃないけど、空は静かで、月と星は見守るようなあたたかい光を放っていた。
ついさっきは、気が付かなかったのに。暗い闇が薄くなっていった気がした。
「きれいな空……」
「あー、せやなー」
ふたりして、とくに意味もなく、視線を空に移す。
それから少しの間、言葉を交わすことなく、ただ歩いていて。
――そのとき、それは聞こえた。すぐ傍、でも小さな声で。
239 名前: Song for ... [sage] 投稿日: 2008/04/06(日) 20:29:02 ID:fYVlQ7Dj
やっとたどり着けたね
ふたり 巡り会えた場所に
ゆっくりとした、透きとおるような歌。
聞いたことのない曲だったけど、漠然と思った。
「良い歌、だね」
「あ、あはは。ありがとうな、すずかちゃん」
聞かれてしもうたか、恥ずかしいなー。言って、はやてちゃんははにかみながら笑った。
そうして澄んだ夜空を見上げ、そこに何を想ったのか、遠い目をする。
普段の彼女とは違う、妙に大人びた表情。
――けれど、薄れて消えそうな横顔をしていたから。
そっと、その手をとって。離れないように、握り締める。
少し冷たい手のひらだったけど、確かな体温がそこにはあった。
「す、すずかちゃん?」
上に向けていた目線を、今度はわたしに向けたはやてちゃん。その頬は手と反対でうっすらと赤く、熱をもっ
ているのが分かる。
……いきなり過ぎたかも。
思っても、時すでに遅し。わたしははやてちゃんから目を地面に逸らして。
「その、ちょっと、寒いから……」
そう、ありきたりな言い訳を口にすることしかできなくて。
……それでも、後悔はほんのちょっとしかなかった。
240 名前: Song for ... [sage] 投稿日: 2008/04/06(日) 20:29:48 ID:fYVlQ7Dj
「え、えと、そういうことなら……構わんよ」
ちらちらと横目でこっちを窺いながら、はやてちゃんは言う。
ありがとう。と短く返して、首に巻いているマフラーに口元を埋めた。
しばらく、沈黙のままで足を運んでいたけど、――どうしても、あの歌が頭から離れない。
だから、マフラーから顔を出して。言ってみる。
「……ねえ、はやてちゃん。さっきの歌の続き、歌ってくれないかな?」
「ん、暇潰しくらいになりそうならええで?」
「違うよ。そんなのじゃなくて、わたしが聞きたいから」
「――そか」
はやてちゃんは優しそうに目を細めると、また、空を仰いで。でも、すぐそれを止めて。
――少しだけ、手に力が込められた。
そうして、はじまる柔らかな旋律。
また、思う。
わたしは、この歌が大好きだ――――。
241 名前: 233 [sage] 投稿日: 2008/04/06(日) 20:34:50 ID:fYVlQ7Dj
以上です。
なのは→フェイト、すずか→はやて
が個人的に好きな組み合わせなので、今回ははやすずのほうで書きました。
次はもう少し文章力を磨いてきます。
それではお言葉に甘えて、投下させていただきます。
はやて×すずか(すずか→はやて)、4レス使用
という異端CPですので、アリすず派の方はスルーでお願いします。
237 名前: Song for ... [sage] 投稿日: 2008/04/06(日) 20:26:11 ID:fYVlQ7Dj
一度本を手に取ると、周りが見えなくなる癖は直したほうがいいかもしれない。
わたしはそんなことを思いながら、夜の濃い道をひとり歩いていた。
街灯があるものの、暗くて。見えない不安がまとわりついてくる。
「すずかちゃーんっ」
聞きなれた声。わたしが抱いていた感情とはまるで逆の明るい、そしてあたたかい声。
後ろからかけられたそれに、心臓が一瞬大きく跳ねた。
振り向くと声の主が――鼻先にいた。
「ひゃっ!?」
「ほへ?」
びくりと体を震わせ、一歩のけぞる。追って、熱が頭に上がってくる感覚。
へ、変な声出しちゃった……。
一気に後悔と恥ずかしさが襲ってくるわたしを、ことの本人はそ知らぬ顔で頬を掻きながら、その青い眼をぱ
ちくりとさせて見つめている。
「は、はやてちゃん、どうしてここに?」
「わたしは仕事の帰り。すずかちゃんは……図書館の帰りやろ。あかんでー、こんなに暗くなるまでおったら」
図星を指されて、熱い顔のまま苦笑いする。
するとはやてちゃんは、きょろきょろと辺りを見回して、何かを思いついたように、ぽんと手を合わせた。
238 名前: Song for ... [sage] 投稿日: 2008/04/06(日) 20:27:09 ID:fYVlQ7Dj
「よし、家まで送っていったげるわ。ここ、人通りが少ないし」
「え? ……いいよ、はやてちゃんに悪いから」
「悪ないよ。それに、すずかちゃんみたいな可愛い子がひとりで歩いとると危ないしな」
いつものおどけた調子ではなく、真摯に言う彼女に、下がり始めた温度が上がった気がした。
……さっきの熱がまだ篭っているんだ、きっと。
自分を納得させても、はやてちゃんの一挙一動に翻弄されているわたしが確かにいて。
ちょっと悔しいから、言う。
「……アリサちゃんが聞いたら、『はやてと帰るほうが危ないわよっ』って言いそうだよ?」
「あー、確かに言いそうやなぁ。アリサちゃんの中でわたしはどんな人間に見られてんやろ」
むぅ、と腕を組んで唸るはやてちゃんを見て、ひとつ笑みを零した。
そうしたら、はやてちゃんも笑顔を返してくれて。
自然とふたり肩を並べ、歩き出した。
冷たい、冬の夜。
……手袋を持ってこなかったのは失敗だったかも。
急場しのぎに、とりあえず手にはーっと息を吐くと、白く曇った。
やっぱり寒い。
その代わりというわけじゃないけど、空は静かで、月と星は見守るようなあたたかい光を放っていた。
ついさっきは、気が付かなかったのに。暗い闇が薄くなっていった気がした。
「きれいな空……」
「あー、せやなー」
ふたりして、とくに意味もなく、視線を空に移す。
それから少しの間、言葉を交わすことなく、ただ歩いていて。
――そのとき、それは聞こえた。すぐ傍、でも小さな声で。
239 名前: Song for ... [sage] 投稿日: 2008/04/06(日) 20:29:02 ID:fYVlQ7Dj
やっとたどり着けたね
ふたり 巡り会えた場所に
ゆっくりとした、透きとおるような歌。
聞いたことのない曲だったけど、漠然と思った。
「良い歌、だね」
「あ、あはは。ありがとうな、すずかちゃん」
聞かれてしもうたか、恥ずかしいなー。言って、はやてちゃんははにかみながら笑った。
そうして澄んだ夜空を見上げ、そこに何を想ったのか、遠い目をする。
普段の彼女とは違う、妙に大人びた表情。
――けれど、薄れて消えそうな横顔をしていたから。
そっと、その手をとって。離れないように、握り締める。
少し冷たい手のひらだったけど、確かな体温がそこにはあった。
「す、すずかちゃん?」
上に向けていた目線を、今度はわたしに向けたはやてちゃん。その頬は手と反対でうっすらと赤く、熱をもっ
ているのが分かる。
……いきなり過ぎたかも。
思っても、時すでに遅し。わたしははやてちゃんから目を地面に逸らして。
「その、ちょっと、寒いから……」
そう、ありきたりな言い訳を口にすることしかできなくて。
……それでも、後悔はほんのちょっとしかなかった。
240 名前: Song for ... [sage] 投稿日: 2008/04/06(日) 20:29:48 ID:fYVlQ7Dj
「え、えと、そういうことなら……構わんよ」
ちらちらと横目でこっちを窺いながら、はやてちゃんは言う。
ありがとう。と短く返して、首に巻いているマフラーに口元を埋めた。
しばらく、沈黙のままで足を運んでいたけど、――どうしても、あの歌が頭から離れない。
だから、マフラーから顔を出して。言ってみる。
「……ねえ、はやてちゃん。さっきの歌の続き、歌ってくれないかな?」
「ん、暇潰しくらいになりそうならええで?」
「違うよ。そんなのじゃなくて、わたしが聞きたいから」
「――そか」
はやてちゃんは優しそうに目を細めると、また、空を仰いで。でも、すぐそれを止めて。
――少しだけ、手に力が込められた。
そうして、はじまる柔らかな旋律。
また、思う。
わたしは、この歌が大好きだ――――。
241 名前: 233 [sage] 投稿日: 2008/04/06(日) 20:34:50 ID:fYVlQ7Dj
以上です。
なのは→フェイト、すずか→はやて
が個人的に好きな組み合わせなので、今回ははやすずのほうで書きました。
次はもう少し文章力を磨いてきます。
2009年04月04日(土) 23:33:31 Modified by coyote2000