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Teana's Report FILE-1

663 :名無しさん@秘密の花園 [sage] :2008/03/09(日) 04:08:51 ID:GZCI/H7N
664 :Teana’s Report FILE−1 [sage] :2008/03/09(日) 04:10:17 ID:GZCI/H7N
665 :Teana’s Report FILE−1 [sage] :2008/03/09(日) 04:11:17 ID:GZCI/H7N
666 :Teana’s Report FILE−1 [sage] :2008/03/09(日) 04:16:26 ID:GZCI/H7N
668 :Teana’s Report FILE−1 [sage] :2008/03/09(日) 04:18:27 ID:GZCI/H7N
669 :Teana’s Report FILE−1 [sage] :2008/03/09(日) 04:19:21 ID:GZCI/H7N
670 :Teana’s Report FILE−1 [sage] :2008/03/09(日) 04:21:30 ID:GZCI/H7N
671 :Teana’s Report FILE−1 [sage] :2008/03/09(日) 04:23:11 ID:GZCI/H7N
672 :名無しさん@秘密の花園 [sage] :2008/03/09(日) 04:25:39 ID:GZCI/H7N


単なるギャグになったけど一応おいておきます
ssは難しい...
8レスくらいです



 私ことティアナ・ランスターの目に飛び込んできた文言。
 扉を開けた姿勢で凝固し、そのあまりのインパクトに圧倒されている。初出勤における高鳴る胸の鼓動など吹き飛んでしまった。部屋を間違えたかと取り合えず無言で扉を閉めてみた。首を少し傾けて見上げた先には『チーム・ハラウオン』のプレート。
 場所は合っている。されば私の目の錯覚だろう。華々しい本局執務官のオフィスにどこぞの主婦が書いたような標語が貼るつけてあるはずはない。頭を一振りして気を取り直すと、握ったままのノブを再び回した。


《倹約第一!!》


 力強く書かれた文字が躍る。
 強烈なパンチに腰が砕けた。憧れの職業に夢を見すぎていたのかと、がっくりと肩が落ちる。

「ティアナで〜す・・・失礼しまぁす」
 覇気の無い声で名乗りをあげ室内へトボトボ足を進めた。

(うわっ・・・何、この部屋?!)

 人の気配がないのはまあいい。指定された時刻にはまだ少しある。
 薄暗い部屋には物が散乱し、うっかりすると何か踏みつけてしまいそうだった。本局内でなければ物盗りにあったと思うだろう。これが常態なら今後の付き合い方も考え直さなければならない。

「あら? ティアナよね」
 背中からかかった声に肩が跳ねる。部屋の惨状に放心していて気配に気づかなかった。慌てて振り返り踵を合わせる。
「は、はいっ! 本日より着任します。御指導よろしくお願いいたします!!」
 ピンと背筋を伸ばして敬礼。目の前には六課で幾度もお世話になったシャーリーさんが立っていた。親しき仲にも礼儀あり、見知った顔とはいえ隊における上下関係や挨拶は重要なのだ。
「あはは〜そんなに畏まらなくてもいいのに。それよりティアナ、スケジュール変更のメール見てないの?」
「――――えっ?」
 その言葉に血が引く。朝は身だしなみや法規の復習に一杯一杯でメールの確認などしていなかった。信じられない初歩的なミスにきりきりと胃が痛み出す。
「その顔だと見てないみたいねぇ」
「すみません。あのっ、スケジュールの変更って・・・」
「うん、フェイトさんが午前中外出になったから昼に来てって内容。やっぱりこれから苦楽を共にするチームなんだし、顔合わせは皆揃ってでないとね」
「うっ・・・そ、そうですね、気を回していただいたのに私ったら」
「ああ、いいのいいの。まあ他にも理由があったから。ティアナが来る前にこの部屋を片しておきたかったんだけど、もう見られちゃったし」
 けたけたと笑いながらシャーリーさんは手を振る。口に出してもいいものか躊躇うが湧き上がる好奇心を抑えられない。

「あの・・・いつも、こんな感じで?」
「そうじゃないんだけど、昨日ちょっと揉めてね」
「被疑者の取調べですか?」
「いや、私とフェイトさんが」
 あっさりと明かされた真実に愕然とする。仲が良さそうに見えたのに実は険悪なのか? 『ティアナはどっちにつくの?!』脳内の上司達が選択を迫った。女特有の陰湿な勢力争いはできれば勘弁願いたい。
「豪快に色々壊れてますけど」
「狙って投げてるのに全然当たらないんだもの」
 実戦叩き上げの執務官相手なら当たり前である。直属の上司に物を投げつける強者、この部屋の破壊はどうやらシャーリーさんが巻き起こしたものらしい。
「何たってそんな事態になるんですか?」
「!!――――それがフェイトさんったらねっ」
 地雷だったか。よくぞ聞いてくれたと身を乗り出す迫力に気おされる。これは長くなるなと覚悟したその時、呼び出しを告げる電子音がけたたましく鳴り響いた。二人同時に制服の内ポケットを探り自分の携帯端末を取り出す。着信はシャーリーさんの端末だった。
「あちゃ〜・・・残念。デバイスメンテだ」
 緊急の依頼が入ったらしい。細かい調整が欠かせないデバイスは局員の命綱だ。決して疎かにはできない。その道で確かな腕を持つシャーリーさんは、フェイトさんの補佐官とデバイス技師という二足の草鞋を履いていた。
「ごめん、ティアナ。話はまた後でね」
「引き止めてしまってすみません、シャーリーさん」
「あっ、ちょっとお願いがあるんだけど」
「はい、何なりと」
 同じチームで先輩にあたる人である。新米の自分にできる事ならと、言いよどむシャーリーさんを促す。
「この部屋片づけておいてもらってもいいかな?」
「了解しました!」
 予想どおり。根気のいる手強い任務だが、午前中いっぱい時間が空いてしまったので逆に都合が良い。それに私の性格上整然としていないと気持ちが悪いのだ。
「あと、もう一つあるんだけど・・・」
「? ――――はい、何でしょう?」
 片づけの順序を考えている最中におずおずと追加のリクエストがかかる。同じくらい重労働の頼み事なら午前中に済ませるのは厳しい。
「ティアナはバイク通勤だよね? 昼前になったらフェイトさんにこれ届けてもらえるかな」
 朝渡しそびれたというそれを受け取る。小さな紙片が二枚、その表面にはなんと『指定店舗共通食券』の文字と管理局印。紙の綴りを指でちぎった名残がシュールだった。
「今時、食券ですか?」
「うちは現物給付なの。ティアナの分もあるからフェイトさんと一緒に外で食べてきたらいいよ」
 デバイス調整が終わったら戻ってくるからと付け加え、シャーリーさんは慌ただしく部屋を後にした。チープな紙切れを握り締めたままそれを見送り、しばし遠い目で宙を見つめる。しょっぱい何かが込み上げた。夢見ていた未来に危機感を抱いた瞬間だった。

(さてと・・・まずは分別よね)

 片づけのコツ、それは潔く捨てる事。
 明らかに壊れている事務用品は廃棄でいいだろう。データ類は怖いので一ヶ所に集めて判断を仰ぐ。
 陶器やガラスの破片があちこちに落ちており危ない事この上ない。鉢植えの成れの果てを発見した時は、こんな物まで投げつけたのかと感心してしまった。床は土が散乱しひどい有様だ。水拭きする必要がある。

(全部ゴミでいいんじゃないの?)

 エンドレスな作業に心がすさむ。ここがスバルの部屋だったら丸ごと処分してやる所だがそうもいかない。あのバカがいたなら力仕事は楽勝だったのにと思うと何だかむかついた。
 取り合えず廃棄物を部屋の隅にかためた時点で、すでに持ち時間の半分を消化。昼前には出ないといけないのでペースを上げる。床を清めた後に生き残った物品を適当に組み合わせていった。元々の配置など知らないので仕方ない。

(こんなもんかしら―――って、もうこんな時間?!)

 壁にかかった時計に目を剥く。さっき教えてもらったフェイトさんの出向先、それは今から法定速度上限でバイクを走らせてぎりぎり昼前に着くくらいの場所だった。
 新品の制服はあちこちよれてシワだらけ。しょうがないと諦め手だけ洗うと、預かった紙片をポケットに突っ込んで部屋を飛び出す。
 思い描いていたものとは180度異なる補佐官初日となった。



「フェイトさああぁぁーーーんっ!!」
 振り返る動作に合わせて金色の髪が広がる。びっくりしたようにその赤い瞳が見開かれた。
「ティアナ?」
「つい・・さっ、き・・・出られ・・・・聞い、て・・・追いか・・・てきま、た」
 全力ダッシュしたせいでハアハアしている自分が嫌だ。すわ何事かと注目してくる周囲に愛想笑いを振りまき、不思議そうな顔で立ち尽くすフェイトさんに近寄る。
「どうしたの? 何かあったのかな?」
 この人は基本的に年下に対して甘いが、凄く心配そうに顔を覗き込まれて焦った。六課の時とは空気の密度が違うというか、妙に距離が近いのだ。スターズの隊長はなのはさんであり、フェイトさんに指導を受けたり話をする機会は少なかったから戸惑う。
 どうやら専属補佐官についた事で私もフェイトさんのファミリー扱い=過保護対象となったらしい。
「あ、あの、これを届けるようにシャーリーさんから頼まれてっ!」
 近すぎる体を押し戻すべく両手を突き出す。毛穴が見えるくらい顔を寄せられたらさすがに恥ずかしい。どんなスキンケアをしているのか、フェイトさんの肌のきめは滅茶苦茶整っていた。
「食券? ああ、今朝急いでて受け取るの忘れたんだ」
「もしかして・・・もう食べちゃいました?」
 食券などなくとも自分の財布から払えば済む話である。せっかく届けたのに無駄足になったかと恐る恐る尋ねた。
「いや、まだだよ。私の用件も一区切りついたし、一緒にどこかでお昼食べようか」
「はいっ! お供させてください」
 このチケットがどこで使えるのかもわからないし、店の選択はお任せする。フェイトさんは午後からまだ少し用事があるらしく、ここから一番近い喫茶店に落ち着いた。


667 :Teana’s Report FILE−1 [sage] :2008/03/09(日) 04:17:24 ID:GZCI/H7N
「へっ? フェイトさん、お財布持ってないんですかぁ?!」
 素っ頓狂な声が店内に響き渡った。たった今聞いた驚くべき事実を脳が処理しきれない。ちなみに食券は入店時に渡したので無銭飲食を疑われる心配はないけども。
「う〜ん・・・というか、正しくは現金が入ってないんだよね」
「ああ、びっくりした。それじゃあ普段はカード支払いがメインと」
 正面に座るフェイトさんへの凝視をやめて胸を撫で下ろす。狭き門である執務官はただの栄誉職ではなく高給取りのはずだ。入局前にそのあたりは抜かりなくチェックしている。ほっと一安心してグラスを手に取った。

「?―――カードも止められちゃったから使えないよ?」
 
ブフォオオオオーーーーーーーー!!

 のどを潤す水が鼻へ逆流する。咄嗟に口を閉じて前に噴き出すのを堪えたためえらい事になった。
 原因を作った張本人がむせて苦しむ私の背をさすり、懐から取り出したハンカチでグチャグチャになった顔を拭ってくれる。誰かの世話を焼くのが好きなのか、やたらとその笑顔は輝いていた。

「もう、ティアナは仕方ないなぁ」
「す、すみませぇん・・・」
 私が悪いんだろうか? 才ある人の思考は凡人には理解できない。
 苦しかった衝動がようやく消えたところで、きょとんとした赤い瞳を見据える。これは聞かずんばいられない。
「あの、フェイトさん。立ち入った話なのかもしれませんが」
「どうしたの、ティアナ。怖い顔して」
「もしかしてもしかすると、『チーム・ハラウオン』の台所事情は火の車なのでしょうか?」
「うん? あはは、今の所は大丈夫だよ」
「そ、そうですよねっ。何言ってるんだろ、私ってば」
 失礼かつ奇天烈な問いかけを笑い飛ばしてもらってよかった。
 よく考えてみればフェイトさんは解決件数ランキング上位に入っていたはず。管理局執務官は能力歩合制であり、基本給にプラスして扱った事件の報酬が上乗せされる仕組みになっている。一定期間毎に発表されるそのランキングは言い換えれば長者番付のようなものだった。

「チームの負債はちゃんと私の毎月のお給料から穴埋めしてるし」

ブフォオオオオーーーーーーーー!!

 鼻がぁ、鼻が痛ひ。タイミングを図ったように爆弾発言をかますのはやめてほしい。ハンカチを寄せてくる手を捉え、ズイッと身を乗り出す。

「借金?! どこで作ったんです、そんな物!」
「主に出動時の物品破壊かな。私は近接戦闘型だからどうしても建物とかに被害出しちゃうんだ」
「で、でも、それは管理局の依頼だから補償されるんじゃ・・・」
「壊しすぎなんだって。シャーリーに任せてるけど補償の累積上限を超えた分のやりくりが大変みたい」
 笑いながら執務官はのたまう。部屋に貼ってあった《倹約第一!!》はここに繋がっているようだ。
 そして更に驚くべき内情が立て続けに明かされる。なんとフェイトさんの口座はシャーリーさんに押さえられているというのだ。
「まあ、しょうがないよ。原因は私だし。シャーリーに用途を言えば必要分は渡してくれるしね」
 毎朝申告して補佐官から現金やチケットを受け取る執務官。しょっぱい、しょっぱすぎる。つまり私が食券を届けなければ昼食抜きだったという事か。
「突然の事態もありますし、最低限の紙幣とカード一枚くらいは持っていた方がいいんじゃないですか?」
 幾らなんでも侘しすぎる。たとえ本人が平気だとしても聞いていて居たたまれなかった。
「実は昨日こっそりカード作ったんだけど、それがシャーリーに見つかって大変だったんだよ」
「・・・・・・へっ?」
 
 なんですと?
 もしかしてそんなつまらない理由でオフィス破壊?
 今朝の重労働を招いた発端は一枚のカード?

「もう慣れっこだけどね。飛んでくる物を避ければ済むし。それよりティアナ、鼻から水が出てるよ」
 女性としてあるまじき醜態をさわやかに指摘される。しかしその親切は色々な事をぐるぐる考えている脳内まで浸透しない。
 ティッシュがあてがわれ『はい、チーン』という掛け声。複雑な思考を拒否した私の体は、操られるまま上司の手中にチーンしていた。


 次の出向先へ向かうフェイトさんと別れ、私はバイクでとろとろと閑散とした道路を流していた。お使いが済んだので先に管理局に戻るよう促されたのだ。
 フェイトさんの午後スケジュールは大したものではないらしく、小一時間との事。お互い車とバイクなので待っていても仕方がなかった。

(おかしい、おかしすぎる・・・)

 思考を占めるのは先ほどの会話。自分を特別感情豊かだとか人情家だとか思った事はないが、それでもあの仕打ちはあんまりではないか。虐げられているように見えるフェイトさんが物凄く不憫になってくる。

(こうなったら私がシャーリーさんに直訴して―――)

 新米が上司の待遇改善を訴え出るなど常識では考えられない。しかしこのモヤモヤした蟠りを何とか解消したかった。なのはさんから伝授された反骨精神を今こそ生かそう。方針が定まればスロットル全開、本局を目指してひた走った。

「シャーリーさんっ!!」
 高ぶる感情をのせ体当たりするようにオフィスのドアを押し開ける。目指す人物は綺麗に片づいたデスクに茶菓子を広げ、優雅なティータイムの真っ最中だった。
「どうしたの、ティアナ? 噛みつきそうな顔して。フェイトさんに会えなかった?」
「無事会えて御飯食べてきました! ご馳走様です。そんな事より聞きましたよ、シャーリーさん!! チームに負債があるのは仕方ないとして、フェイトさんのあの現状はあんまりじゃないですか?!」
 フェイトさんばかりに重荷を課すのは理解できない。のほほんと茶をすする先輩に詰め寄り、チームである以上等しく痛みも共有すべきだと迸る青臭い主張をぶつけた。私の勢いに動じる事もなく、シャーリーさんは心得たとばかりに眼鏡を光らせる。
「ああ、なるほど。先にそっちから聞いたらそう思うよね」
「・・・な、何ですか? そう簡単には丸め込まれませんよ!」
 冷静な声と異様な迫力に腰が引けるが、反骨心を拠り所にして踏みとどまった。これでも分析能力には定評があるのだ。シャーリーさんの言葉に欠片でも矛盾があったなら見過ごしはしない。

「まずはチームの負債の話だけど、あれはフェイクだから信じないで」
「フェイク?―――つまり借金なんて無いんですかぁ?!」
 想定外の変化球が飛来する。ここまでの話を根底から覆す第一声に動揺は隠せない。
「あれはフェイトさん対策にでっちあげたストーリーなの。資金豊富な管理局が執務官に補償を出し惜しむはずないじゃない」
 確かにそれはそうだ。そんな細かい事で優秀な局員が他の組織へ移りでもしたら、組織として受けるダメージは計り知れないだろう。
「つまり・・・何らかの理由があってフェイトさんの個人資産を凍結している、と?」
「はい、よくできました。やっぱりティアナは頭の回転が速いね」
 褒められてはみたが釈然としない。これは明らかな裏切り行為であり、そうまでして一体何を成しえたいのか?
「私だって人様のお金の使い道に口を出したくないんだけど」
「えっ? フェイトさんって金遣い荒いんですか?!」
 六課時代を思い返すが浪費家のイメージは浮かばない。六課と本局を往復する毎日で、買い物する時間などほとんど無かったんじゃないだろうか。
「自分自身には呆れるほど無欲。問題はねぇ・・・これちょっと見て」
「 これは最近出たばかりのバーチャルゲーム、ですよね」
「うん。ティアナも興味ある?」
「いえ、スバルが欲しいって喚いていたもので。でもこれ高いらしくて」
 駆け出しの自分達の給与三か月分が丸々吹っ飛ぶ。最新鋭の技術を凝縮したマシンは現時点で手が出ないほど高価な代物だった。

「これが先月のプレゼントなのよ」
「はい?」
 誰が誰に対してなのか、全然わからない。話の流れからフェイトさんが誰かにこのマシンをプレゼントしたのだと思われるが。
「保護した子供達の施設に、ね」
「うぇ? フェイトさんが保護したって―――確か10施設くらいなかったですか?!」
「そう。その全てに一台ずつ」
 ふぅ〜と溜め息を落とし、シャーリーさんは頬杖をつく。フェイトさんが子供好きなのは周知の事実として、その贈り物は度が過ぎている。総合計の金額を考えるとそら恐ろしくなった。
「そりゃ給料も消えますよね。しばらくはただ働き決定と」
「まあ一般人なら即時破産だろうけど。フェイトさんの一ヶ月分のお給料半分くらい飛んだし」
 
(どんだけ〜〜〜・・・)

 プレゼント云々より、そんな無茶な買い物をして半月分の給与で済む事実に打ちのめされる。私の上司になった人はどれだけ高給取りなのだろう。
 シャーリーさんによると、フェイトさんが好んで受ける依頼は他の執務官が二の足を踏む危ないものばかり。毎月の基本給に危険手当などが付帯して雪達磨式に給与は増えていく。
 フェイトさんは給料アップのために危険な依頼を選んでいるわけではない。次元犯罪者の確保やロストロギアの追跡、そんな困難な事件の影には必ずと言っていいほど巻き込まれた子供達の姿があった。

「資金凍結は自制を促すためですか?」
「プレゼントがいけないってわけじゃないけど限度があるし。実は保護した子供達から泣きつかれたのよ、フェイトさんを止めてって」
 苦労してきただけあって、よくできた子供達だ。好意だとわかっているので贈り主には直接言えず、シャーリーさんに連名で対策をお願いしてきたらしい。自分達は手紙をくれるだけで十分だから、と。
「・・・納得しました。あらぬ言いがかりをつけて申し訳ありませんでした」
「いいのいいの。朝に話そうと思ったけど流れちゃったし仕方ないわ」
 素直に非を認めて深く頭を下げた私を、眼鏡の奥の瞳が優しく見つめる。執務官を目指すには多方面から物を見る目と判断力が必要なのだと、改めて思い知らされた。

「ただいま! シャーリー、ティアナ」
 背後のドアが突然開かれた。渦中の人物の登場に固まった私から注意を逸らすべくシャーリーさんが立ち上がる。そのままフェイトさんに歩み寄り、手に持ったコートや鞄を引き受けた。
「お帰りなさい、フェイトさん。先方との話はつきましたか?」
 この笑顔なら話し合いは上手くいったのだろう。微笑み返しながらシャーリーさんは一応確認を入れた。一方的だったみたいだが昨日大喧嘩した仲には見えない。
「いや、そっちはまだ引き摺りそうなんだ」
「あらそうなんですか。『そっち』という事は他に何か?」
「うん、ほらこれっ!!」

ドドーーーーン!!

 印籠のごとくかざされたカードに私達の目が点になる。輝くその表面には有名な消費者金融の社名がデカデカと書かれていた。

「負債分を全額借りてきたからもう大丈夫だよっ!」
「な、何言ってるんですか! その借りたお金を返すのはどうするんですっ?!」
 何が大丈夫なのかこの凡人に教えてほしい。私は石化した脳と体を奮い立たせ、にこにことした笑顔の襟を掴んで前後に揺さぶる。相手が上司だという事は頭からスポンと抜け落ちていた。

「え? 私のお給料から毎月返すつもりだけど」

(駄目だ、この人―――早く何とかしないと・・・)

 掴んだ手から力が抜ける。脱力してデスクに寄りかかる私を、赤い瞳が心配そうに見つめた。『初日で疲れたのかな?』とか言って頬に手を当ててくれるが、今はできればそっとしておいてほしい。

「こ、こ・・・・ここ・・・・・」
 微かな声に反応して顔を向けると、不気味なほど静かだった人が小刻みに震えていた。光るレンズが発する迫力たるや、いつぞやの教導官を思い起こさせる。
「どうしたの、シャーリー? 体の調子でも悪い?」
 きっと他意はないのだ。あくまで真面目に執務官は言っている。火山噴火の予兆を感じ取れないのは、人間が火を恐れなくなってしまった為か。
 カウントダウンが始まり、私は自分の両耳を塞いだ。


「・・・こぉの、甲斐性無しがあぁぁぁーーーーーーーーーー!!!」


 宙を舞う数多の品々。
 今朝片づけたばかりの室内があっという間に破壊されていく。
 機動力を如何なく発揮して部屋中を逃げ回るフェイトさんと、それを鬼のような形相で追いかけるシャーリーさん。
 流れて飛んできた鞄に直撃され、私の補佐官初日はブラックアウトした。


                                                                       FIN


終わり。
スレ違いだったらごめんなさい。
書き忘れましたが登場はティアナ、フェイト、シャーリーです。
2008年06月03日(火) 18:50:46 Modified by sienn1




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