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Teana's Report FILE-2

130 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2008/03/16(日) 16:56:18 ID:4U9BVLMg
131 名前:Teana's Report FILE-2[sage] 投稿日:2008/03/16(日) 16:57:46 ID:4U9BVLMg
132 名前:Teana's Report FILE-2[sage] 投稿日:2008/03/16(日) 16:58:57 ID:4U9BVLMg
133 名前:Teana's Report FILE-2[sage] 投稿日:2008/03/16(日) 16:59:51 ID:4U9BVLMg
134 名前:Teana's Report FILE-2[sage] 投稿日:2008/03/16(日) 17:01:03 ID:4U9BVLMg
135 名前:Teana's Report FILE-2[sage] 投稿日:2008/03/16(日) 17:02:10 ID:4U9BVLMg
136 名前:Teana's Report FILE-2[sage] 投稿日:2008/03/16(日) 17:03:29 ID:4U9BVLMg
137 名前:Teana's Report FILE-2[sage] 投稿日:2008/03/16(日) 17:04:21 ID:4U9BVLMg
138 名前:Teana's Report FILE-2[sage] 投稿日:2008/03/16(日) 17:06:21 ID:4U9BVLMg



Teana's Reportの続き書いたんですが、他の方のssと比べてあんまりな内容なのでこっちに投下させてください。
嫁も出したいんですが話が三行で終わってしまうので...
格好良い執務官好きな方は回避お願いします。
ティアナとフェイトのお話。笑っていただければ本望。



「ティアナって寒いのは平気?」
 突如投げかけられた問いかけに、私ことティアナ・ランスターは顔を上げた。
 鼻の先ほどの距離で宝玉のような赤と目が合い、思わず肩を波立たせ飛びのく。さっきまで自分のデスクで何やらやっていた執務官が目の前に瞬間移動していた。
「わっ?! びっくりさせないで下さい!」
「ねえ、ティアナ、寒い所は大丈夫?」
 こちらの動揺などお構いなしに、かの人はどうかな? どうかな? と顔を寄せてくる。異様なほどキラキラと輝いた瞳、それは私に一体何を求めているのだろう。

「暑いのよりはまだ耐えられますけど・・・何なんですか一体?」
 開いたままの執務官試験参考書を体の前に突き出して盾としながら問い返す。この人は夢中になると周りが全く見えなくなるからやっかいだ。
「実は依頼が来てるんだよね。今は暇だし、受けようかなと思うんだけど」
 開店休業状態なのは確かに事実。私達の仕事は暇であるにこした事はないのかもしれないが、はっきりと口に出してしまう上司に頭痛をおぼえる。こんなだからもう一人の補佐官からの小言が耐えないのだ。
「依頼? どんなものなんです?」
「『幻の雪竜を探せ!』 夢のある依頼だよね」
「さ、早く勉強の続きに戻らないと」
 与太話で時間を無駄にしてしまった。おとぎ話にしか出てこない架空生物がこの世にいるはずはない。骨折り損になるのは目に見えている。
「うろんな話じゃないんだよ! 本当だよっ! ちゃんと文献もあるんだから」
 あまりに気のない様子に焦ったのか、執務官はコンソールを呼び出し該当する資料を私の眼前に突きつけた。そこには雪竜がいるとされる世界、その生態についてなどが細やかにリストアップされていた。
「なんか嘘っぽい・・・」
「ところがどっこい、これは無限書庫のデータなんだよね。キャロにも聞いたし」
 おそらく使い魔のアルフさんに頼んで調べてもらったんだろう。彼女も書庫整理の手伝いで忙しかろうに付き合いのいいことだ。
 キャロを引き合いに出されては頭から否定してかかるのは難しい。何しろ彼女は『竜召還』というレアスキル持ちであり、実際に小型の飛竜を連れて歩いている。
「で、この極寒の世界に好き好んで飛び込んでいくと―――そういうわけでしょうか?」
「あはは、シャーリーには断られちゃって」
 さわやかに笑いながら執務官はのたまう。シャーリーさんは寒いのは大の苦手で、冬場は制服の下にババシャツを三枚着込んでいる。そして特殊資格持ちの彼女は局員のデバイスメンテに忙殺されていた。

「これは誰からの依頼なんです?」
「えっ・・・えっと、その・・・」
 執務官は急に目を泳がせ、あたふたと意味不明なジェスチャーを始める。この上なく怪しかった。
「フェイトさん?」
「夢を信じる・・・子供から、かな」
「ああ、なんだ、ヴィヴィオですか」
 回りくどい台詞を排して直訳する。そう言えば数日前に通信で会話していたはずだ。
 フェイトさんが親バカである事は折り紙つき。きっとヴィヴィオから『みんな雪竜なんていないって言うんだけど・・・いるよね、フェイトママ?』とか言われたに違いない。
 管理局への依頼に捻じ込んだのもフェイトさん本人だろうと、私は気づかれないよう小さく溜め息をついた。

 そこは身を切るほどの氷点下、どこまでも続く白銀の世界―――

「・・・しゃ、しゃぶひ・・・・・・」
 カチカチと歯が鳴り、思うように口が動かない。この世界に合わせて顔以外は素肌を完全に覆うバリアジャケットにしてもらったというのに。

(シャーリーさん、怒ってたなぁ・・・)

 引き攣った笑顔を思い返す。チクチクとした小言の投げつけ先は勿論フェイトさんだった。
 くそ忙しい最中に無理を言ってお願いしたので文句は言えないが、この仕様でもあまり暖かくはない。魔力で環境適応すれば短期なら大丈夫だろうという見通しは甘かった。肺に入り込む冷たい空気に、呼吸するたび咽てしまいそうだ。

「ティアナ、ちょっとこっち向いて」
 隣りからかけられた声にロボットみたく体の向きを変えると、突然首に長い何かが巻きつけられた。
「用意してきて良かった。これで少しはあったかいかな?」
 にこにことした邪気のない笑顔。この極寒の地に連行されたやり場の無い怒りが霧散する。下を向いて見れば手編みだと一目でわかるフワフワのマフラー。

(うわっ・・・イニシャル入ってるし)

 『T.L.』とよく見える位置にわざわざ編みこんである。一時的に貸してくれたわけではないようだ。
 これをどうしたものか対応に迷う。

「・・・えっと、器用なんですね、フェイトさん」
「そう? 手作りするのとか結構好きなんだよね」
「これは私がいただいても?」
「うん、そのつもりで作ったんだ。ほら、私のとお揃いだよ」
 ほら! と示されてフェイトさんの首元を見やると、確かに同じ毛糸で編まれたとおぼしきフワフワ。

(ペアーーー?!)

 カアァァァッと頬に血が上る。イニシャルの文字色は異なるが全く同じデザイン。誰かに見られようものなら絶対に勘違いされるだろう。
 だけど、それでも―――今の私の体はとても暖かかった。

「・・・ありがとう、ございます」
「さすがは氷の世界と言われるだけはあるよね」
 顔の下半分をマフラーに埋めてボソボソ呟いた声は、フェイトさんの耳にまで届かなかったらしい。
 自然が織り成す芸術に見入る子供のような顔。見つめ続ける私の視線に気づき『何?』と振り返ったが、二度は言えずただ首を振って曖昧に笑った。

「こう雪が多いと身動きがとれませんよ」
「魔力付与で雪の上でも普通に立てるよ。氷でも大丈夫だから」
 そう言えばさっきから分厚い氷の上に並んで立っているが、感触は地面とそう変わらない。試しに二三歩進んでみると、摩擦係数も適度に調節されるようだった。
 『滑る』には物体と氷の間に薄い水の膜が必要になるが、この寒さではそうなる可能性は低いだろう。足が氷に張りつかないように、雪に体が沈まないように、空戦適正のない自分にとって魔力付与は必須だった。
「で、これからどうするんです?」
「ターゲットは雪原に食事に現れるらしいし、それっぽい所へ移動しようか」
「食事? 生き物も植物さえも見当たりませんが、雪竜って何を食べるんですか?」
「―――『雪』」

 オー、ファンタジー。
 雪がエネルギー源とは何ともはや溜め息しか出ない。
 そんなのを真面目に探しにきている私達は言わずもがな。

「それじゃ行こうか。ティアナ、しっかり摑まってて!」
「―――っえ・・・ひゃあああぁぁ〜〜〜〜〜!!」
 流れるように体を掬われ空へ跳ねる。平衡感覚を失い、すがる何かを求めて手を振り回した。
「もう! 心の準備くらいさせてください、フェイトさんっ!!」
「ごめんごめん。それよりティアナ、見ておかないと勿体ないよ」
 両腕に私という荷物を抱えたまま、執務官はクイッと顎を上げる。首っ玉にかじりついた至近から『誤魔化されませんからね!』と一睨みし、示された方向へ視線を転じた。

 刹那、心を持っていかれる。
 信じられないような速度で次々と追い越していく景色。
 遥かな高みから見下ろす白銀の世界。

 視界がよくなるよう片手を解いて上体を捻る。その動作にも全く揺らがない私を支える二本の腕。この腕は絶対に私を落としたりしない、そう無条件に信じて体の力を抜いた。

「この辺りで待ってみよう」
 空から見渡して目をつけた広大な雪原へ羽のように舞い降りる。足を下ろした雪の絨毯はふかふかで、それ以上体が沈む事はなかった。
「・・・現れますかね?」
「現れてくれればいいね」
 時が止まったかのような世界に、二人してぼうっと立ち尽くす。ただ待つだけというのは手持ち無沙汰だった。
「暇つぶしに雪合戦でもやる?」
「嫌です。勝負になりません」
 コンマ一秒で即答。
 この人は自分が機動力に特化しているのを忘れてはいまいか? 連弾をあびて即効落とされるに決まっていた。
「ちゃんとハンデもつけるから、ね?」
「可愛く頼んでも駄目です。拒否します」

 六課最後の4対4。周りを諌めるような事を言っていたのに、手加減なしのフルドライブで斬りかかってきたのは誰か? 外見に騙されるが、この人はシグナムさんに並ぶくらい勝負好きだ。
 あの手この手のお誘いをつれなく断り続けていると、目の端に映る大きな雪塊が少し動いた気がした。
 執務官はしゃがみ込んで雪に『の』の字を書いている。「ティアナが冷たいんだ・・・」とか小声で呟くその人の肩へそっと手をかけた。

「やる気になった?!」
「なりません。フェイトさん、あれを」
 期待と喜びを込めた笑顔をあっさりスルーし、私は指をすっと前にのばす。
 フェイトさんの表情がキリリとした執務官モードへ変わり、触れれば切れるような空気を纏う。いつもこうだといいが、元々の造形が整っているだけに近寄りがたくなるのが難点だ。

「・・・現れたね」
「まさか本当にいたなんて」
「ちょっと想像と違うな」
「と言うか、大きすぎやしませんか?」
 距離があるのではっきりしないが、比べると召還されたヴォルテールの数倍くらいか。
 翼は退化し全身真っ白で丸い体躯、それは周りの風景に完全に同化する。実は最初からずっとそこに居たのだ。
「段々大きくなるね」
「こっちに近づいてきてるんですよ」
 鈍重そうに見えて侮れない。短い手足で雪の上を滑るように移動する姿は竜とかけ離れていた。その巨体が口らしき器官を全開にして雪を頬張りつつ向かってくる。
「逃げようか・・・」
「ええ、全力で・・・」
 顔を見合わせ虚ろに笑う。示し合わせたように同時に踵を返すと、脱兎のごとく駆け出した。

「雪竜って人間も食べるんですかぁ?!」
「いや、雪しか消化できないはずだけど」
 振り返るとパカッと開いた大きな口。雪竜は並んで駆ける私たちの背にピッタリついてきていた。差がじりじり迫っている気がして背筋に寒気が走る。
「目的も果たしましたし、もういいでしょう?!」
 かなり不細工だが雪竜は本当にいた。子供の夢も守られた。ここでこれ以上する事はないと撤退を持ちかける。
「はっ! そうだ目的だよ。忘れるところだった。ありがとう、ティアナ!」
「それじゃあ撤sy」
 言いかけた私の傍から金色の魔道光が飛び立つ―――私を置き去りにして。


「ちょ、ちょっとフェイトさん、 どういう事ですかあぁぁぁーーーーー!!」
「ティアナ、1たす1は? ほら、笑って笑って!」


(そんな余裕あるわけねェーーーーー!!!)


 高速で空を飛びながら光るレンズを構える執務官。私と雪竜を一緒のフレームに収めるベストポジションを維持していた。
 これは一体どんな種類の苛め? 鬼気迫る表情で走りながら酸欠気味の脳で必死に考えた。生きて帰れたら絶対に報復してやる。


ゴスッ!!


(あ〜あ・・・後ろ向いて飛んでるから)


 雪塊から横に突き出した大きな氷の柱。天罰なのか何なのか、それがシャッターチャンスを狙う執務官の後頭部にクリティカルヒットする。
 想像するだけで痛そうだと顔をしかめると、衝撃に目を回した人物がヒュルヒュルと落っこちてきた―――私の進行方向にむかって。


「いやあぁーーー! こっちに落ちてこないで、フェイトさん!!」


 トップスピードで走る私が今さら軌道を変えられるはずもない。叫ぶ声もむなしく、私達の軌道は重なった。
 二人一塊になって勢いのままゴロゴロ転がっていく。やっと回転が止まったと思ったその時、もうどうにもできないほど間近に迫った巨大な影、鋭い牙。
 こんな馬鹿らしい最後を迎えるなんて! 幸薄かった人生が走馬灯のように脳裏に流れる。死の恐怖に耐え切れず、抱えていた執務官の体に強くしがみついて目を閉じた。
 その体が私に覆いかぶさるように動き、瞬間的に膨大な魔力が弾けたように感じたのだが、それは定かではない。

(・・・・・・あれ、私)

 ―――生きてる?
 もう駄目だと思った瞬間に気を失ったようだ。
 辺りは暗闇に包まれていて自分の体でさえ見る事はかなわない。全てが都合の良い夢なのではないかと、本当の私はもうこの世にいないのではないかと、そう思ったらパニックになった。

「フェイトさん! どこですか?!」
「ここにいるよ、ティアナ。心配ないから落ち着いて」
 後ろからかかった声、というより耳の真横から聞こえた声に肩が跳ねる。全然見えないのでわからないが、フェイトさんは物凄く近くにいるらしい。
「あ、あの、一体どうなったんです? 周りが暗くて状況がわからないんですけど」
「ああ、そうだよね。少し出力上げようか」
 光り輝く金色の魔道光。その光に照らされて周囲にあるものが浮かび上がる。そこは雪がそこかしこに敷き詰められた氷の世界、ようするにさっきまで居た世界と同じだった。
「取り合えず逃げられたって事でしょうか?」
「う〜ん・・・それがその」
 もごもごと耳元で囁く声。思わず振り返ると、私を後ろから抱え込む形でフェイトさんが曖昧に笑っていた。

「わっ! びっくりした―――何で私に引っついてるんです?!」
「それは省エネって事で」
 フェイトさんの言葉を受けて、自分の体を包む金色の魔道光に気づく。気絶していた私の分まで、この人はずっと魔力付与を続けてくれていたのだ。あんまりな態度だったかと反省する。
「ここからは自分で何とかしますから、付与を解いても大丈夫ですよ」
「一人も二人も変わらないし、このままでいいんじゃないかな」
「でも、それじゃフェイトさんが・・・」
「私はまだまだ大丈夫だよ」
 確かに悔しく思うのが馬鹿らしくなるほど、私とフェイトさんの魔力総量・出力は桁違いだ。この金色の魔道光は自分で付与するものより数倍快適な環境を私に与えてくれていた。 
 少し気恥ずかしくはあるが、私はこの快適な環境へ身を委ねる事にする。力を抜いて柔らかな体へ身を沈めると大きく息をついた。
「―――で、ここはどこなんです?」
「ここはね・・・実は雪竜のお腹の中、かな」


!!!!!!!


「冗談、ですよね・・・?」
「あはは〜そうなら良かったんだけど、ちょっと失敗しちゃって」
 据わった視線から逃げるように赤い瞳が泳いだ。
 私が最後を覚悟したその時、まだフェイトさんには余裕があった。機動力に富んだこの人ならではの回避行動。しかし私を抱えて場を離れようと飛び出した方向が・・・。

「へえ〜・・・口の中にドンピシャ」
「すみません。反省してます」
 私の冷たい口調に肩を落とす執務官。しょげる様子に毒気を抜かれる。これでは怒りたくても怒れない。
「まあ、過ぎた事を言っても始まりませんし。ここから出る方法でも考えましょう」
「・・・うん。ごめんね、ティアナ」
「もういいですよ。それでフェイトさんには何か考えが?」
「力技で出るのは簡単なんだけどね」
 フルドライブのザンバーを叩きつける、私はその光景をイメージして気分が悪くなった。
 体の内側からの痛みに身悶える白い巨体、血まみれの産声をあげるエイリアン、それは少し前に見たスプラッタ映画と酷似していた。
「それはなるべくなら遠慮したいです」
「うん、私も同じ意見。そんな酷い事をしなくても、たぶん一日くらいで出られるよ」
「??―――どういう意味です?」
 簡易のコンソールが宙に呼び出され、前に見せられた資料のとある一点を指で示される。そこには『対象の消化・吸収・排泄について』の記載があった。

「あの、まさか・・・」
「魔力付与で環境適応できるし、雪以外は消化されないから安心だよね」

(そして捻り出されるのを待つ、と)

「何が安心なんですか! 嫌すぎます!!」
「ちょ、ちょっとティアナ、落ち着いて、くっ、苦しい〜〜」
 振り向きざまに目を吊り上げて上司の首をきゅうきゅう絞める。
「捻り出されるんですよ! 汚物ですよっ! これからずっと後ろ指さされて生きていくんですよ!!」
「私も一緒だから大丈夫・・・って落ちる、落ちちゃう〜〜」
 フェイトさんを絞め落とす寸前で両手の力を抜いた。なんかもう全てが空しくなった。だらんと弛緩した執務官を開放して元通り背中でもたれかかり、ぼんやりと虚空を見つめる。

(天国の父さん母さん兄さん、ごめんなさい・・・ティアナは汚れてしまいます)

「お嫁の貰い手がなくなったらフェイトさんの責任ですよ」
「それは切実な問題だね。誰か意中の人でも?」
「いませんけど。未来の話です」
「あれっ、スバルはどうしたの?」
「な、何で突然あの馬鹿が出てくるんですか! そんなんじゃないですよ!!」
 腐れ縁な仲の友人の顔が浮かぶ。一緒にいる時間が長かったためか、何故か行く先々で関係を揶揄される。それは主にスキンシップ好きなスバルのせいだろう。
「そうなんだ。まあティアナは器量良しだし大丈夫だろうけど。もし本当に貰い手がなくなったら私に相談して」
「へっ? そうすると、どうなるんです?」
「私が責任持って引き受ける」
 この人はまた突飛な事を。文句を言おうと振り向いた先には、優しく微笑む澄んだ瞳。綺麗な笑顔に結局何も言えず、首を元に戻す。遅れて顔に血が上ってきた。
 フェイトさんは呆れるほど正直だ。だからきっと、その言葉に嘘はない。真っ赤になった己を見られないよう、抱え込んだ両膝に顔を伏せた。
「ティアナ? も、もしかして嫌だったかな?」
 何だかんだと後ろからかけられる執務官の焦った声。ただそれだけが、薄暗い空間に響いていた。

 悪夢のような世界から生還を果たして後、本局のオフィスにて。

「雪竜はおとぎ話の存在じゃなくて本当にいるんだよ!」
「はいはい、夢のあるお話ですね。もうそろそろ現実に戻ってきてください」
 デスクについて参考書を広げる私の背後で、上司達は飽きもせず平行線な会話を繰り広げていた。ちなみに私は自らの名誉を守るために記憶を失ったふりをしている。
 証拠として持ち帰ったのはフェイトさんが撮影した一枚の写真のみ。その一枚も白い部分が光を反射してターゲットの詳細はわからずじまいだった。
 上着のポケットに入れた携帯端末が震える。

(メール受信っと―――私宛にヴィヴィオから?)

 珍しい事もあるものだと、端末を操作して文面を呼び出した。


『ティアナさんへ

うちのフェイトママが迷惑かけてごめんなさい。
家へ帰ってきたら、なのはママに叱ってもらうので許してあげてください。

                                       ヴィヴィオより』


 フェイトさんのメールに添付されていた画像を見たのだろう。白っぽい何かから悲壮な顔で逃げる私を。
 成長著しいヴィヴィオに胸が熱くなる。いつまでも子供だと思っていたら、それはとんだ大間違いだった。
 それに比べてと溜め息を1つ落とし、椅子ごとくるりと振り向く。朝からずっと変わらない光景―――


「本当に見たんだよっ、シャーリー」
「フェイトさん、あなたは疲れているのよ」


 『チーム・ハラオウン』は今日も平和だった。


                                                                  FIN
2008年03月24日(月) 01:14:42 Modified by nanohayuri




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