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611 名前:iff (1/6) ◆6Gzt0D6RRc [sage] 投稿日:2007/12/29(土) 02:04:52 ID:pbKhbmI6
西日で赤く染まった階段に、足音が響く。
自分以外に人の気配はない。
放課後の学校の屋上に用がある人なんて、まず居ない。
私はその例外。
そして、この扉の向こうに居るはずの二人も。
私はドアノブに手を掛け、ゆっくりと扉を開く。

扉の向こうには、こちらと同じ赤い世界が広がっていた。
赤一色に塗りつぶされた視界の中に、辛うじて二人分の輪郭が見える。
二人とも私と同じ聖祥中学の制服で、髪の長さも同じぐらい。背の高さは左側の子の方が少し低い。

「遅かったわね、すずか」

私に気付いた右側の子が、若干不満げな声を上げる。
確かに、約束の時間からは、大分過ぎてしまっている。

「ちゃんと、考えたかったから」

言い訳の様にしか聞こえないけど、自分の中で答えを出してから、ここに来たかった。
相手もそれを承知の上なのか――あるいは、単に挨拶代わりだったのか、それ以上は何も言わない。

「ほなら、答えは決めてきたんやな?」

私は無言で頷く。

「じゃあ、今日こそハッキリさせて貰うわよ」
「私とアリサちゃん、どっち選ぶんか」

「私は……」

612 名前:iff (2/6) ◆6Gzt0D6RRc [sage] 投稿日:2007/12/29(土) 02:06:53 ID:pbKhbmI6
「選ばない。アリサちゃんも、はやてちゃんも」

私の答えに、二人は怪訝そうな表情を浮かべる。

「何? 他に好きな人でも、出来たの?」
「そうじゃないよ。でも……どっちか選ばなきゃいけないなら、私は二人とも諦める」

二人はチラリと目配せし、再び口を開く。

「選ばれんかった方の心配はいらへんよ」
「だから、さっさとハッキリさせてよ」

あくまで、二人は選択を迫る。
当然だと思う。選べないから、諦めると言われても、納得できるわけがない。

「……それじゃ、笑えないよ」

だけど、私の”答え”はまだ終わっていない。

「選ばれない覚悟は二人とも出来てるわよ?」
「覚悟が出来ていても、笑えるとは限らないよ」
「む」
「それに……例えば、私がアリサちゃんを選んだとして、アリサちゃんはそれで幸せなの?」
「へ……?」
「はやてちゃんは、どう? アリサちゃんを犠牲にして、私と結ばれて、それで幸せ?」
「それは……」
「私は、アリサちゃんを捨てて、はやてちゃんを選んでも、はやてちゃんを捨てて、アリサちゃんを選んでも、幸せになんて笑えないよ……」

613 名前:iff (3/6) ◆6Gzt0D6RRc [sage] 投稿日:2007/12/29(土) 02:08:53 ID:pbKhbmI6
結局、答えなんて出なかった。
こんな言い訳じみた言い訳しか用意できなかった。

何も失いたくなくて、誰も傷つけたくなくて。
逃げて逃げて、逃げ続けて。
結局全て失って、二人とも傷つけた。

一人傷つける覚悟があれば、
コインの裏表に身を任せる覚悟があれば、
もう一人は救えたかもしれない。

でも、出来なかった。
選んだ責任。選ばなかった責任。
どちらも、背負いきる自信がなかった。

……本当はそうじゃない。
背負いたく、なかったんだ。
一番傷つけたくなかったのは、他ならぬ自分。
私、最低だね。
そんなので”幸せに笑える”のかしら?

614 名前:iff (4/6) ◆6Gzt0D6RRc [sage] 投稿日:2007/12/29(土) 02:10:53 ID:pbKhbmI6
「はやて、どうする?」
「まあ、いいんとちゃう?」

二人が何か話しているようだけど、もう言うことは全て言ったし、二人の返事なんて決まってる。
だから、もうここに用はない。
そう、踵を返して、立ち去ろうとする私をアリサちゃんが遮る。

「ちょいまち、すずか」
「……もう話す事はないよ、アリサちゃん」
「すずかちゃんには無くても、私たちにはあるんよ」

さらに後ろからはやてちゃんが、私の肩を掴む。

「すずか、あんたの言いたいことは、よーく分かった」
「その気持ちは、わからんでもないんよ」
「だから、ちょっとだけ譲歩してあげるわ」
「譲歩……?」
「そや」
「ひゃぁ」

はやてちゃんはそう言いながら、後ろから私の胸を掴む。
それだけなら、良くあることだけど、妙に手つきがいやらしい。

「ちょ、ちょっと、はやてちゃん! っ! ア、アリサちゃんもっ」

さらに、アリサちゃんの手がスカートの中に入りこみ、ショーツ越しに大事なところを撫でる。

615 名前:iff (5/6) ◆6Gzt0D6RRc [sage] 投稿日:2007/12/29(土) 02:12:53 ID:pbKhbmI6
「あんたの言いたい事って、要するに別れるか3Pって事でしょ?」
「なっ――」

アリサちゃんの口から、思いも寄らぬ単語が飛び出し、思考が一瞬止まる。
顔が真っ赤になっていくのが、自分でも分かる。

「いやぁ、すずかちゃんが、こんなエッチな事考える子とは思わんかったよ」
「ち、ちが――ひゃぅ」
「あんまり大きな声出すと、誰かに聴かれるかもよ?」
「っ――んんっ」

頭が真っ白になっていく。
放課後とは言え、ここは学校の屋上。
絶対に人が来ない保証はない。

「ふ、二人とも、んっ、場所、変えよ?」
「んー、仕方ないわね」
「アリサちゃん……」
「一回イかせたら、私の部屋に移動ね。はやてもそれで良いわね?」
「ええよ、アリサちゃん」
「い、今すぐじゃないの!?」
「それじゃ、お仕置きにならないじゃない」
「えっ……お、お仕置き!?」
「そや。選べないから両方なんて、ワガママ過ぎるやろ?」
「だから、いつ人が来るか分からないここで、一回イきなさい」
「そ、そんな……」
「その後は、アリサちゃんの部屋でたっぷり可愛がってあげるから、覚悟しとき」
「いやああぁぁああぁ」
「ちょっ、すずか! ホントに来たらどうすんのよ!?」

616 名前:iff (6/6) ◆6Gzt0D6RRc [sage] 投稿日:2007/12/29(土) 02:14:53 ID:pbKhbmI6
悲鳴を上げる私の口を、アリサちゃんの唇が塞ぐ。
私のファーストキス……
でも……アリサちゃんなら……

「あー、アリサちゃんずるい」
「……仕方ないでしょ、非常時だったんだから。それに、はやてだって、いつまで胸揉んでる気よ」
「すずかちゃんの胸は、いくら揉んでも飽きへんからなぁ」
「はいはい」
「あ、あの……」
「なんや、すずかちゃん?」
「やっぱり、ここは不味いよ」
「何度も言わせないで。あたしは、あんたをここで一回イかせる。Do you understand?」
「……ということや。世の中諦めが肝心やで」
「そ、そんなぁ」
「でも、声は何とかしないと……そうだ、すずか、これくわえてなさい」

そう言って、アリサちゃんが私の前に差し出したのは、私の制服のスカートの端。
つまり、たくし上げたスカートを、自分の口で固定する訳で。

「は、恥ずかしいよ……」
「こんな声聴かれるのと、どっちが恥ずかしいやろか?」
「あっ、やめ――あんっ」
「さあ、どうする? すずか」

同じぐらい恥ずかしい二つを、天秤に掛ける。
僅かに傾いたのは……

私は、ゆっくりとアリサちゃんの指に口を寄せる。
2007年12月30日(日) 09:54:02 Modified by nanohayuri




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