修行ストーリー

876 名前:緒美@修行ストーリー ◆ZkZ0n1qyGY 投稿日:2003/05/05(月) 08:28
「はあ……任せてきてよかったのかな…」
僕はアカツキに勝つために修行し直すことにした。
修行の間アカツキが奇行に走ると困るので師匠と教皇以外で唯一、アカツキに勝てる
辰樹さんに留守番を頼んだ。
だけど、本当によかったのだろうか……
辰樹さんは強いけれど、ちゃんとアカツキを止めてくれるか心配だ。
そうこうしているうちに修行場に辿り着いた。
「悟道洞穴(ゴドウドウケツ)………」
大昔、『失われた神』が作り出した洞穴……
たくさんの人が修行した場所。
その入り口には鉄格子がはめこまれ、札や呪印による封印がたくさん施されていた。
「どうしよう…地元の教会の人から管理人さんがいるって聞いたけど…」
これじゃ修行どころか中に入ることすら出来ない。


877 名前:緒美@修行ストーリー ◆ZkZ0n1qyGY 投稿日:2003/05/05(月) 08:30
あなたが神埼緒美ね?」
ふいに背後からかけられた声に振り向くと、そこには14歳くらいの女の子がいた。
「失われたものを探しに『生まれ変わった神』の御加護を信じて来たのかしら?」
『失われたものを探しに〜』というのは修行者を装った盗賊と修行者を見分けるための合言葉だ。
これを知っていたということはこの人が管理者なのか…それにしては幼いと思ったけど、もしかしたら見かけが幼いだけで
実際は僕よりずっと年上なのかも知れない。世の中にはそういう種族がたくさんいる。
「ええと、いいえ。私は『失われた神』の声を聞くために聖都から来ました」
教会の人から教えてもらった合言葉の答えを返す。管理人さんはふわりと笑うと僕に何の変哲も無い石ころ…?を差し出した。
「あの、これは?」
「この石を洞穴の一番奥まで置いてきて。それが修行なの」
「はあ……」
僕は石を受け取った。
「待ってて。今門を開けるから」
管理人さんは鉄格子に向かって片手をかざして何やら唱えた。古語だとわかったけれど内容は理解できなかった。
「うわ………!」
急に強い光が放たれて目を隠した。と、同時に背中に衝撃を感じた。
「それじゃ、イッテラッシャイ。せいぜい死なないようにね。」
何かと思えば管理人さんがいつの間にか背後に回っていて僕を蹴っていた。そして僕は洞穴の闇に転げ落ちていった。
「ふふ。どうなるかしらねv」
管理人さんがそう言ったのを聞いて僕は意識を手放した。


916 名前:緒美@修行中 ◆ZkZ0n1qyGY 投稿日:2003/05/11(日) 01:32
「うっ……」
意識が戻って最初に目に入ったのは暗闇だった。
どうやら管理人さんに蹴られたのは夢ではなかったらしい。
起き上がった時に背中に鈍い痛みが走った。
「はあ…とりあえず『柔らかき灯火』」
力をあまり使わない簡単な詠唱とともに辺りがほのかに照らし出された。

「わあ………」

目の前に広がったのは考えていたようなありきたりな岩壁ではなかった。
岩壁にいろんな宝石の類が含まれているようで、それらがキラキラ光っていたのだ。
よく見れば、人や動物の形をしているものもあった。
まるで天然の美術館。
これなら盗賊が狙うわけだ。
感動していた僕はふと、あることに気が付いた。
「あれ……?」
おかしい。出口が見当たらない。これってもしかして…
「……修行が終わるまで出してもらえないってことですか…?」
教会の人に何度も本当に行くのかと言われたのはこのせいだったのか……
知っているのならきちんと説明して欲しかった…
ああ…もう涙が出そうです。
でも背後から近づくこの気配はなんでしょう……?



917 名前:緒美@修行中 ◆ZkZ0n1qyGY 投稿日:2003/05/11(日) 01:38
「グゥ……」

「(ぅわっ……!何……!?)」
低いうなり声のようなものに上がりかけた大声を抑えつつ、岩陰に隠れた。
僕の後ろにいたのは『ランペリニ』という大きいトカゲのモンスターだった。
南方の森に住んでいて、性格は大人しく、乗り物に出来る……と、本で読んだことがある…
「(…ってなんでそんなのがここにいるんですか〜!!)」
洞穴の中では目も利かないはずなのに…というか入れるはずないのに………
どうやらむこうは僕には気付いていなかったらしく、眠たそうな目をして通り過ぎていってしまった。
予想以上に不思議な修行場。悟道洞穴…これから僕はどうなってしまうのでしょう……



177 名前:アカツキ@ストーリー ◆ZkZ0n1qyGY 投稿日:2003/05/25(日) 22:48
前スレ876、877、916、917参照。

許せない。許せない。許せない。
魔術器ごときに緒美の記憶を変えられるだなんて…!
緒美の気配を頼りに全力で飛んだ。
悪魔の翼は並みの竜よりも早く移動ができる。
だけど足りない。
修行場には着いたけれど入り口が見つからない。

「緒美っ…どこにいる!!」

修行場の壁をぶち破ってでも緒美を助けたいが魔法の作用かわからないが気配が掴めない。
仕掛けたはずの発信機も役に立たない。
早く、早く、早く……!

「こんなところで何をしているのかしら?」

上を向くと木の上に14ぐらいの女がいた。容姿こそ幼いがその実力はあなどれないものがある。
久しぶりに嗅ぐ、強いものの匂いがする。
「俺の片割れを助けに来た…返せ」
「片割れ?ああ、あの子ね。」
女はくすりと笑うと、木から音も立てずに飛び降りた。
「そんなに怖い顔しなくても平気よ…彼が本当に強いものであればね。」
さっきとは別種の残忍な笑みを浮かべる女に怒りが増した。
この女からは聖職者の気がしない。
聖職者とは違う、むしろ俺に近い存在……
「貴様、魔族か…?」
「そうだと言ったらどうするの?」
「はっ…!決まっているだろう。邪魔立てする奴は殺す!」
そう言って睨みつけると、女はしょうがないガキを見るような笑い方をした。
実際にそんな感じがするけど、腹が立つ!!
「…いいわ。相手になってあげる」
「クク…後悔させてやるよ……」
こんなことさっさと終わらせてやる。
緒美、待ってろよ………すぐに助けてあげるね…



238 名前:緒美@ストーリー ◆ZkZ0n1qyGY 投稿日:2003/06/13(金) 23:37
「これからどうしよう……」
僕は岩陰にうずくまって呟いた。
どうしてだか、いるはずのない魔物がいる洞穴。
出会ったのが大人しいランペリニだったからよかったけれど、凶暴な魔物だったら……
僕より強い魔物だったら、もし僕が疲れている時に出てきてしまったら…
そのうえ、出口は消えていて…
僕は顔をひざにうずめずにはいられなかった。
「こんなことじゃ駄目だ…」
自分を変えるためにここに来たのに弱音ばかり吐いて…こんなことじゃいけない。
どの道、修行が成功しなければ僕はここで死ぬしかないんだ。
「しっかりしなきゃ」
僕は立ち上がって気配を探った。
何かが複数近づいてきている。
やがてそれが羽音をたてる生き物だということがわかった。
息を殺してそれらが通り過ぎるのを待ったほうが良さそうだ。
「は…なんだ」
僕は羽音の持ち主たちを確認して胸をなでおろした。
5匹の赤いこうもり。『ウレン・ブレン』だ。
分類的には魔物だけれど、こちらから手出ししなければ人を襲うことはない。
襲われたとしてもこの数なら対処できる。

僕は岩陰から出て先に進むことにした。
「キィ、キィ、キィ」
いきなり現われた僕にウレンたちは警戒の声を上げた。
「大丈夫です、攻撃しません。」
頭のいい部類に入るウレン・ブレンは人語を理解することが出来る。
僕は攻撃するそぶりを見せていないからこれで大丈夫。

「キィキィ!!」
「うわっ!?」
ウレンたちがいっせいに噛み付いてきた。
引き離そうとしても鋭い爪が皮膚に食い込んでそれを許さない。
5匹が同時に血を吸い取った。
「ああああああああ!!!」
痛みに僕は床に崩れ落ち、のたうちまわった。
そうして、ウレンたちは巻き込まれては大変とでもいうように僕から離れた。
やられた。まさかこんなに血を吸われるなんて…
術を発動させようにも、血を一度に大量に抜かれたせいで集中出来ない。
岩陰に走って逃げることも出来なさそうだ。
またウレンたちが噛み付いた。血が採られていく感覚が生生しくて恐ろしい。
もう駄目だ…!

 ボタボタボタ。

「え…?」
ウレンたちが僕から落ちた。
僕の血で口を真っ赤にしたウレンたちはぴくりとも動かない。
おそらく許容量以上の血を吸ったせいだ。
「一体、どうして……」

ここには僕以外に誰かいるんだろうか……

敵意を持った誰かが…
2006年07月10日(月) 23:46:27 Modified by og_wiki




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